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2019.08/21 高分子のプロセシング(37)

A,B2種類の物質が固体なり液体の場合、両者に必ず界面が生じる。この時それぞれの表面における分子の自由エネルギーは、内部に存在する分子の自由エネルギーよりも大きい。この状態から系全体のエネルギーを最小にするように形状が決まる。(この捉え方は間違っていない。)

 

物理化学では、溶解状態と分離状態の取り扱いについて理想溶液を前提にしている。すなわち混合はランダムに生じ、エントロピー項はモル分率だけで表現できる、と仮定して溶解について議論を進める。(高分子についてこの仮定が不十分であることは明らかである)

 

この低分子の溶解理論において最初からすでに誤差が入っていることに注意する。さらに溶質と溶媒との間の凝集力が分散力(ファンデルワールス力)だけで議論できる、とする正則溶液(regular solution)という前提も出てくる。

 

有名なHildebrandの溶解性に関する概念では、液体の凝集エネルギー密度を溶解性パラメーター(Solubility Parameter:SP)と定義している。

 

この時の熱力学的前提条件として、溶液は正則容液であること、また、分子間力は分散力に基づく分子間力のみ、となっている。

 

そして、モル凝集エネルギーをE、モル容積をVとして、溶解性パラメーターδ = (E/V)1/2を表現している。この定義により、δの近い物質同士では、理想溶液の混合を前提にして相互に溶け合う。

 

これに対して、Hansenが、分子間力の相互作用について分散力成分のみで処理できないとし、分散力相互作用(d)、極性相互作用(p)、水素結合性相互作用(h)の総和が溶解性パラメータ、すなわち(δtotal2=(δ+(δ+(δ であるとした。

 

その後も、この概念の拡張は行われているが、拡張された概念であっても皆正則溶液という制限がついていることを忘れてはいけない。一般に行われる高分子の混練においてそのような系は存在しないのである。

 

混ざる議論について基本的にこのような原則で現象を眺めている、ということを忘れてはいけない。おかしな現象が現れてもおかしくないのである。

 

混練で起きている現象は、科学で論じられた教科書の内容をはみ出すことがあるのだ。それならば、アイデアも大胆に展開したほうが新たな技術を生み出すチャンスが増える。

 

PPSと6ナイロンを混練したところ、科学の真理に反する透明な樹脂液が出てきて、腰を抜かした人がいたが、当方はカオス混合の成功で飛び上がって喜んだ。

 

但し、目の前の現象は、科学を否定しているのではない。科学で解明されていない領域の現象が起きているにすぎないのだ。それは、混合に関する科学が大変狭い領域の現象について真理を明らかにしただけで、科学で解明できていない現象がまだあることを示している。

 

余談だが、実験を何のために行うのかについて、諸説あるが、新しい現象を見出すために行うのも実験の目的の一つであり、またこれは実験の最大の楽しみである。

 

仮説を確認するために行う実験は大切かもしれないが、その実験が新しい現象を生み出さないようでは、面白みが無い。単なる自己満足で終わる場合もある。

 

誰も見たことのない新しい現象が目の前に現れたとき、人生最大の興奮状態になる。最近は実験をするときに命を心配するようになった。

カテゴリー : 高分子

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