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2020.01/29 高分子の熱重量分析(2)

TGAには二種の測定モードがある。一つは等速昇温測定であり、もう一つは恒温測定である。

 

前者よりも後者の方が詳細で精度の高いデータが得られる。ゆえにTGAの使い方として、等速昇温測定を行ってから、緻密なデータが必要な時に、特定温度で恒温測定を行う、という手順となる。

 

ちなみに、この両者で測定精度の違いがどのくらいあるか、評価をした経験がある。例えばSiC生成の速度論的解析を行ったときに、活性化エネルギーが等速昇温測定では恒温測定よりも10%から20%高めに得られた。

 

恒温測定で得られた活性化エネルギーの値がSiC中のカーボンの拡散における活性化エネルギーに近かったので、等速昇温測定では誤差が大きくなったと推定している。

 

この時、2000万円かけて室温から2000℃まで1分以内に昇温可能な超高速昇温熱天秤を開発して測定している。それゆえ恒温測定モードの値には自信がある。

 

しかも、反応が起きない1000℃まであらかじめ加温しておいてから恒温測定を行っているので測定データには誘導期間の情報まで現れていた。

 

等速昇温測定では昇温速度が問題となるが、昇温速度を早くすると誤差が大きくなるだけでなく、失われる情報も出てくる。また昇温速度を早くすると測定データは高温度側へシフトする。

 

ゆえに、TGAでは10℃/minよりも遅い昇温速度で測定すべきで、DSCや粘弾性測定もTGAの昇温速度に合わせて測定すると比較できて便利である。

 

また、実務では10℃/minで測定すると600℃まで一時間でできるので都合がよい。

 

注意しなければいけないのは、15℃/minの昇温速度で600℃まで精度よく測定できない製品を使用する時である。

 

TGAは少なくとも昇温速度30℃/minで600℃まで精度よく昇温できる製品を選びたい。

 

その理由は、サンプルの昇温速度がガス流量の影響を受けるからで、ガス流量を多くすると温度が上がりにくくなる。

 

酸素濃度の影響を調べたいときに、酸素濃度の異なるガスを同一ガス流量で測定するのがよいが、実務ではガスの混合比を変えるよりもガス流量を変化させた方が簡便である。

 

補足だが天秤部分の構造により、ガス流量を変化させたときの浮力の影響に違いが現れる機種も存在する点にも注意するように。

 

昔真空理工が浮力の影響を受けにくく昇温速度が速くても精度よく測定可能な赤外線イメージ炉の製品を供給していたが、最近見かけない。

カテゴリー : 電気/電子材料 高分子

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