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2020.11/03 スピーカーと科学(3)

完成品も販売している自作スピーカーキットメーカー音工房zのセールストークは、うん百万円するスピーカーを数万円で提供、という少し怪しいスローガンである。

 

しかし、これはスピーカーというデバイスが未だ科学として完成していない、と思われる状態だから許される。また、新製品の販売にあたり高価なスピーカーとの比較視聴サービスを提供しているが、これは無料であり良心的だ。

 

部屋の状態を完璧にできない以上、大多数の人間の感性までも満足させるスピーカーは、まだ存在しないのでこのような方法が「科学的成果」とPRするよりも良いかもしれない。

 

すなわち、どこの部屋においても感性を満足させるような完璧な動作が可能なスピーカーを科学的数値で記述などできないので、同一条件でスピーカーの動作比較を行うヒアリングテストによりお客様に優劣を決めさせる音工房Zの方法は、怪しくはなくむしろ良心的である。

 

もし、このことについて疑問に思われる方がいたら、音工房Zの新製品発表会として行われる無料視聴会に参加してみるとよい。

 

うん百万円もするJBLのスピーカーよりも良い音がしたり、100万円を越えるB&Wのスピーカーよりも自然な再生音を聞かせる安価なキットスピーカーを自分の耳で確認できる。

 

最初に指摘したように、オーディオという商品は、それを設置する部屋の条件でその性能が左右される。視聴会では音工房Zが自社製品に合わせた部屋の設計にしている可能性を否定できないが、視聴会で怪しい仕掛けはみつからない。

 

ところで、音の出口となるスピーカーについて、デジタル時代となってもアナログ技術のままである。振動板など各パーツの材料開発は進んだが、電気信号を音に変換する機構についてその進化は20世紀に止まったままである。

 

音工房Zは、スピーカーの箱に着眼し、故長岡鉄夫を師としながら試行錯誤で箱の開発を行っている。開発過程を聞く限り、過去に大手企業で行っていたような科学的プロセスではない。しかし、優れた商品がそれでも生まれている。

 

うまいコーヒーがずば抜けた臭覚の人物により開発されたり、日本料理の達人の存在を認めているように、その性能が感覚に左右される製品では試行錯誤による開発を多くの人は認めている。

 

仮に、これを科学的に行うべきだと思っている人がいるならば、マハラビノスのTM、すなわち多変量解析を行うことになる。

 

1990年ごろ色材の開発に多変量解析を用いた研究成果を拝聴する機会があったが、ナノオーダーの変化を人間の目は検知しているという驚くべき結果が説明された。

 

しかし、これを科学的に検証したという話を聞いていない。目の前に財布があってもポケットの中を探してしまう当方には、この科学的成果がどうでもよい話に聞こえる。

 

試行錯誤について非科学的だから研究開発では許されない、と今でも思っている人(20世紀にはこのような研究者が多かった)には、次の例で納得していただけないだろうか。

 

iPS細胞を生み出すヤマナカファクターの効果について、今科学的に検証が進められている。ところが、その機能については、非科学的方法で見出されたままであり、なぜヤマナカファクターが機能するかは特許が公開されても謎である。

 

もしこれが分かれば、類似機能を発現できる物質を作り出せるはずであるが、そこは科学的解明が難しく、今でもブラックボックスのままである(だからSTAP細胞の騒動が起きたともいえる)。

 

音の出口であるスピーカーにAIを搭載し、出力された音に部屋の情報を加味した成分を載せて完璧な音を出せるようにすればよい、とスピーカーのあるべき姿を仮に描くことができたとしても、それを経済的に作り出すことは難しい。

 

また、バックロードホーンの機構についてさえ、科学的に否定する人がいるのに、このようなフィードバック機構では科学的に明らかな遅延を避けられないので、科学者に開発意欲もわかないかもしれない。

 

どのような機構でiPS細胞ができるのかについて注力するよりも、その応用研究を進めた方が人類への貢献度は高いように、世界最高性能のスピーカーと比較視聴して、それよりも優れた安価なキットのスピーカーを作りだしたほうが、庶民に貢献できる。

 

オーディオの開発の歴史において、科学的成果による優れたパーツが声高に「科学的」と説明されて商品に搭載されては、時代の流れの中で消えていった。

 

今でも残っている「科学的」技術成果も存在するが、それは歴史の流れの中で実績の積み重ねにより皆が良いと認めたものであり、必ずしも科学的に優れているという理由からではないことに気がつくべきである。

 

デジタルアンプが主流になりそうな気配なのに、未だに真空管アンプが最良という人がいる。SN比ではデジタルアンプに負けるがその芳醇な音色は真空管アンプならではである。

 

消えつつあるオーディオ業界から科学が全てではない工業製品が存在することを学ぶべきだと思う。科学は技術進歩を促進するのに役立つ哲学であることは否定しないが、それだけで技術開発がすべてうまくゆくとは思ってはいけない。

 

11月24日、25日に問題解決法の無料セミナーを予定していますので参加希望者は、お申し込みください。時間は13時30分から15時30分までの二時間で、テーマを絞った解説を予定しています。

 

 

カテゴリー : 一般 電気/電子材料

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