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2021.01/06 高純度SiC開発(2)

アチソン法は、SiCの生産方法としてエジソンの時代に開発された生産技術である。石英と炭素、おがくずなどを混ぜて積み上げた山に電気でこの山ごと高温に加熱し、SiC化の反応を行う。

 

このプロセスでαSiCのインゴットを製造後、それを粉砕し粉を製造する。そして何段階かの精製プロセスを経て98%から99%の純度とし、それを昇華法で高純度化するのがレイリー法である。レイリー法ではシリカ還元法で製造されたβSiCも用いることが可能である。

 

それならば、最初に100%の純度の原料を用いてシリカ還元法を行えば、100%の純度のSiCができるのでは、と誰もが考えるので、1980年頃この視点による特許が多数出願されていた。

 

その中には、ポリエチルシリケートと高純度カーボンの組み合わせ(これをA法)や高純度シリカと高純度フェノール樹脂の組み合わせ(これをB法)を原料とする製造法の発明があったが、ポリエチルシリケートと高純度フェノール樹脂の組み合わせ(これをC法)は特許として出願されていなかった。

 

高分子について知識があれば、この組み合わせではフローリー・ハギンズ理論のχが大きいので相分離し、前駆体として用いることができないことに気がつく。

 

これは、科学の視点で当たり前の考え方である。だから特許として出願されていないのだろうと理解し、納得している人は、AIと同じで21世紀において創造的な発明は難しい。

 

また、A法やB法が実用化されていないことから、C法も実用化が難しいだろう、と簡単にあきらめる人は、頭は良くてもおそらくアイデアの出にくい人だ。

 

C法が理想的にできたならば、シリカとカーボンが分子レベルで混合された固体となり、A法やB法で製造された前駆体の状態とは大きく異なる。

 

そしてこの前駆体を用いれば、当時シリカ還元法において誰もなしえていない均一固相反応でSiC化の反応を行うことができる。

 

このことがどれほど科学の世界において斬新かつ重要であったかは、約10年後当方がまとめた研究を勝手に論文投稿したアカデミアの先生がおられたことから理解できるかもしれない。すなわちパイロットプラントができた当時でさえ未発表の内容が数年後でも科学の視点で鮮度を失っていなかった。

 

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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