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2021.07/01 靭性を上げるには(1)

弾性率と靭性の関係について、昨日経験知を説明したが、硬くて靭性も大きな材料が欲しければ複合材料で創り出す以外に手段はない。以前硬くて振動吸収の良い材料を創り出すために樹脂補強ゴムが考え出された話をこの欄に書いた。


このような材料は、物性が二律背反の材料であり、科学的に考えるのは難しい。経験知に基づく技術で初めて創り出せる。技術で作り出された二律背反材料について科学的に解析し、新しい形式知を見出すことは容易だが、科学で不明確なものを創り出すには、人間の創造力に頼る以外に方法はない。


創造性は誰にも備わっているはずだが、自己啓発でもしなければ衰えてしまう。但しどのような分野で創造性が発揮されるかどうかは、日々の営みの中でその人間の能力がどのように発揮されているかによるのだろう。


絵を描くことを強く希望せず、日々の営みの中で仕方なく絵を書いていても創造性は発揮されない。これが才能によるのかどうかという議論があるが、脳みその重量にそれほど差はないので、やはり自己実現意欲の強い方向に才能は磨かれると思う。


絵を描くことは難しいが、カメラを被写体に向けてシャッターを押すことは誰でもできる。写真の良いところは、経験知がうまくまとめられており、カメラの性能が著しく人間の能力を超えてしまったので、ニコンカメラを使って経験知に従えば誰でも創造性豊かな写真を撮ることができる。


ただし、その写真が万人に支持される創造性の賜物かどうかは、フォトコンテストで確認してみなければわからないが、自己満足できる、そこそこの写真が撮れるのが最先端のデジカメである。


当方は、ペンタックスカメラで幾つかフォトコンテストで入賞している。世界的な大会では一等をとり、それを最後にフォトコンテストを卒業した。当方はニコンとペンタックスを使い続けてきたが、なぜかニコンカメラでの入賞は1度だけで、それもキャノンが後援だったフォトコンテストの二位である。このコンテストでペンタックスを使っていたら何位だったのだろうか。


おそらくペンタックスカメラには写真を撮る意欲を掻き立てる無形の性能があるのではないか、と思っている。ただ、ピント性能などはニコン製のカメラより劣る。ピント性能は、雑誌のテスト結果を見ても未だにニコンの最先端デジカメがトップである。


それでもペンタックスファンがペンタックスを使い続ける理由は、写真を撮る文化を追求し続けている姿勢をカメラから感じるからだろう。ただ、ニコンカメラが高いから、と言う理由ではないことをペンタックスからニコンに乗り換えようとして、結局両方を使うことになった経験から理解している。ペンタックスでしか撮れない写真が確かにある。


ところで、この年齢でギターを弾き始めたが、写真撮影のようにうまくならない。しかし、才能が無いとは思っていない。才能に責任転嫁するのは神様に責任を押し付けるようなもので、自己責任が叫ばれている現代の視点では加齢に見合う努力をしていないことが原因と考えなければいけない。ただし、加齢に見合う努力をしたときに寿命を縮めるのではないかという恐怖もある。


ギターの腕は上がらないが、新しいメロディーを創造することはできる。カラオケでは常に新しいメロディーを創造しているのだが、これはただ音程を外しているだけではないかと言われてしまう。しかし、正しくチューニングされたギターから新しいメロディーが出てくれば、音程が外れた、と指摘されないだろう。


リズムとコードの組み合わせについてはほぼ無限である。聞きなれたメロディーでもリズムを少し変えてやると異なる雰囲気となる。練習をしながら新しい発見があると上達速度が遅くても飽きない。粘り強く、まさに靭性豊かな練習である。


ただ、これもリズムを外した結果の発見、と考えると少し情けなくなる。積極的に新しいリズムを作りながら(弾きやすいテンポで練習しているだけだが)練習していると考えると、意欲は上がる。レゲエだってそのように生まれたのかもしれない。


研究開発で隘路に陥った時にどれだけ気持ちを強く持てるか、と言われたりするが、心の強さを上げるのに意思の力を上げることは難しいが、粘りっ気あるいはテキトー、柔軟さを持たせることは心の視点を変えるだけで良い。心の靭性は材料の靭性を上げるよりも容易である。今日からでも失敗しない技術開発を実践できるノウハウを書いてみた。

 

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