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2021.11/24 高分子材料のツボ(9)

品質検査をしていると、樹脂成形体の物性がばらつくことに疑問がわく。金属材料やセラミックスと比較してそのばらつきが大きく、時には品質規格から大きく外れる製品があり、それを0にできない。


これは、樹脂の高次構造が、結晶相とガラス相、自由体積の3つの構造の中で、自由体積の割合を制御できないことが原因である。


自由体積の割合が増えれば密度は下がる。密度がばらつけば密度と相関する弾性率や誘電率はばらつく。弾性率や誘電率がばらつけばこれらのパラメーターと相関する他の物理パラメーター、例えば引張強度や靭性、屈折率などもばらつくことになる。


引張強度や靭性値は、欠陥の個数や大きさにも左右されるので、弾性率のばらつきよりも大きくなる。すなわち自由体積のばらつきが、樹脂成形体の品質ばらつきを大きくしている。


また、樹脂にはその性質を改質する、あるいは機能性を付与するために添加剤が加えられたりするが、これら添加剤は、自由体積に多く含まれそうだ、と言うのは妄想になる。


妄想であるが、ブリードアウトという品質故障を見ていると、そのような妄想が真実のように思えてくる。すなわち、設計段階ではブリードアウト故障が起きていなくても量産になったところ、添加剤の分散が不均一となり、添加剤を抱き込んだ部分が高次構造のあちこちにできる。


やがて、熱力学的に安定な構造に変化してゆくときに多く抱き込んだ部分から添加剤が押し出されることになる。添加剤の分散が自然に均一化してくれればよいが、不均一なまま押し出されると表面にあふれてくるような状態になる。


このような現象があればフィックの拡散法則からずれるので実験室でもわかるはずだ、というツッコミをされる方は現場で起きている現象をよく観察していただきたい。


簡単には樹脂の密度のばらつきが設計段階と同じかどうか調べてみるとわかる。密度ばらつきはフィーダーのばらつきがある以上仕方がない、と納得していてはこのような問題解決に苦労する。

カテゴリー : 一般 高分子

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