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2021.11/28 高分子材料のツボ(13)

高分子材料について組み紐を用いて説明している。この組み紐が重なっているところを糸でしばり、ほんの少しだけ一部を動かしてみる。するとほかの部分も動き出し、力が伝わる部分まで変形する。


最初に動かす量を大きくしてゆくと全体の構造が変化する。組み紐では、変形したまま元に戻らないが、これがゴム分子であると、糸で結んだ以外のところは一次構造が変形するので、分子が切れない限り、元の状態に戻ろうとする。


ところが、大きく引っ張った時に一次構造が最初の状態よりも安定な状態になったならば、分子は元の状態に戻ろうとしなくなる。これは積み将棋をやってみると理解しやすい。


積み将棋は、最初箱の中に入っていた将棋を将棋盤の上にばさっとあけた状態から始める。1個ずつ指一本で将棋を動かしつつ自分の手元まで寄せる。この時将棋の山が少しでも変形したならば、取り出そうとした将棋を山の上に積み上げる、という単純なルールだ。


小生が藤井聡太氏と将棋をやって勝てる可能性があるのはこの積み将棋である。少し自信がある。山積みとなっている中から、それを取り除いてもほかに影響を及ぼさない将棋を探し、神経を集中してほかの駒を動かさないようにゆっくりゆっくりと引っ張り出すのだ。


この時引っ張り出そうとした駒以外が動いたならば、引っ張り出そうとした駒はそのままとするので、次の人はその駒を引っ張り出すときに有利となる。すなわちその駒を動かしても他の駒が動きにくくなるように安定状態となるよう他の駒が動いたからだ。


もし、それでも不安定状態の駒があったとすると安全と思って動かした駒により不安定状態だった駒が安定状態へと動く。このようにして取り出しやすい駒が必ず一つできる。このゲームの面白いところは、ただ取り出しやすいところだけを探してもそれができなくなることだ。


二手三手先まで見込んでチャレンジし、相手にとらせないように自分のところに駒を貯めるのが極意なのだが、この一部分の変化が他に影響を及ぼし変化してゆく、そしてその時変化が安定方向に動く、という現象は、自然現象として重要である。


話が長くなったが、高分子材料を扱う時に緩和という現象を説明するために積み将棋を持ち出した。応力が緩和するとは、ある応力を高分子材料にかけて歪を与えると、歪が変化しないように保ったときに時間とともに応力は次第に減少する。


これが応力緩和と呼ばれる現象である。逆に応力を取り去った時に歪が元に戻らなくなる時も緩和現象である。肥満体の人のトランクスのゴムひもは緩和してゆるゆるとなるのが早い。これは緩和速度が速い、と表現される。

カテゴリー : 一般 高分子

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