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2021.12/23 創造に科学は必要か(1)

新技術を生み出したり、イノベーションを引き起こしたりするのに科学が必須と誤解している人が多い。これは産業革命が科学の成立とともに引き起こされたイノベーションとして理解されているために生じている誤解である。


産業革命における科学の役割は大きかったが、それゆえイノベーションが科学の進歩だけで引き起こされる、という考え方では、今日起きているイノベーションに追従さえできない(バブル崩壊後30年日本のGDPが上がらない原因かもしれない)。


ここで、今起きているイノベーションとは、「第三の波」(アルビントフラーが名付けた情報革命)で始まったデジタルトランスフォーメーション(DX)で進行しているイノベーションである。


このイノベーションの30年の過程を振り返っていただきたい。従来の科学の方法とは異なる方法により、新しい技術が生み出されている。しかし、その方法の正体について日本では誰も声高に言わない。言わないのではなく、言えないのかもしれない。


科学の方法以外を信じることができない技術者が日本では多い。このような技術者にはアジャイル開発など理解ができない許しがたい方法となる。実際にそのような見識の人物に、アジャイル開発により新素材を生み出した時、当方はFDを壊されるなど嫌がらせを受けている。


新しいことを生み出すために科学の方法が唯一の方法であるのか今一度考えなおしていただきたい。演繹論理により仮説を設定し、それを証明するために実験を行い、帰納法的に仕事を進める。このような手法で完璧さを求めた場合に、仮説を否定する実験結果が得られた時に否定証明となるイムレラカトシュが指摘した問題に気がついていない。


また、科学の進歩は、古い技術開発手法に影響を与え、心ある技術者はその手法を改良してきた。タグチメソッドはその一つの成果である。ただしタグチメソッドでは基本機能について技術者の責任としている。すなわち新しい基本機能を見つけ出すのは技術者の責任なのだ。


新しい基本機能を見つけ出すために科学の成果を活用できるが、知識労働者が多くなった現代では誰でもそれを行うので世の中に科学的に当たり前の製品が溢れてくる。しかし、今求められているのは新たな科学を生み出す新技術である。


(注)30年前に実用化された電気粘性流体の開発過程では、当時科学的に未知の現象を引き起こした3種の粒子がその開発を促進している。また劣化問題では、今話題となっているデータサイエンスを応用した手法で発見された界面科学の未知の領域で技術が誕生している。また、高純度SiCの製造技術では、高分子科学で否定される現象を活用したセラミックス前駆体が使われている。この開発にはラテン方格を用いた試行錯誤法が寄与しているが、これもデータサイエンスと呼べる方法である。データサイエンスというと科学的に聞こえるが大量のデータから新機能を見出す、ある意味「なんちゃって」技術である。今これを科学的に研究しようという学部の新設ラッシュである。当方はマイコンの登場した時代に計算機科学の未来を信じ、いわゆるデータサイエンスの手法を科学的手法と併用して材料開発を進めてきた。来年それらを事例として用いたセミナーを企画しています。

カテゴリー : 一般 連載 電気/電子材料 高分子

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