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2022.05/30 バッハとジョーパス

以前ここに書いたが、バッハは現代のピアノの発明者である。すなわち、ドレミファソラシドを決めた音楽の父として知られている。


ピアノを生み出したのだから母かもしれないが、とにかく440Hzをラとし気持ちよく聞こえる音の並びの規則(注)を決めたのである。この時決められた1オクターブ8音の並びで現代音楽が作られる。


それだけでなく和楽はじめ民族音楽も現代までにこの音の並びの基準に揃えられていった。アメリカに奴隷として連れてこられた黒人がギターを手にしてブルースが生まれ、この独特のブルーノートがジャズやロックで使われるようになった。


音楽の歴史については専門書を読んでいただきたいが、ドレミファソラシド8音の並びや3和音の響き、ハーモニーの基礎などを周波数解析機器の存在しない時代に作り上げたバッハの経験知と暗黙知に驚かされる。


ソロギターアルバム「バーチュオーゾ」で知られるジョーパスは、その演奏で和音の拡張やハーモニーに対する新しい概念を展開している。


彼の演奏を聞くと、バッハとは異なるアプローチのように感じられる。バッハの音楽のような美しい響きを追及する姿勢ではなく、新しい曲の流れあるいは論理性や新しい体系について追求しているように感じる。


それはCとAmは同じようなものだという発言にも現れている。CとAmはメジャースケールとマイナースケールの和音だが、曲の流れの中で特に区別する必要が無い、と言っている。


確かに両者のコードの2音は同じであり、ルートが異なるだけだ。彼のような和音の捉え方をすると、演奏においてコードから解放され、ギターのような楽器を演奏するときにはメロディーの可能性が広がる。


ジョーパスの考え方で注目したいのは、よほどの不協和音でない限り、クラシックで重視された3和音にとらわれる必要が無いという点である。これは、バッハとは異なる視点で音楽を眺めていたことを示しているように思われる。


バッハが考案した単なる8個の音の並びにも異なる視点を用いると、異なる世界が広がる。現象を科学の視点だけで眺める習慣を早く卒業したい。


(注)440Hzの2倍880Hzは1オクターブ高いラになる。ラとミの関係(完全5度)は440Hzと660Hzの関係すなわち周波数が2:3の比率である。ラとドの関係(短3度)は440Hzと528Hz、すなわち5:6である。ラと#ミの関係(長3度)は440Hzと550Hz、すなわち4:5の関係になっている。その他の音程の関係についても一定比率になっている。

カテゴリー : 一般

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