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2022.08/09 情報化時代の技術開発(6)

40年前と現代と比較して大きく異なるのは、情報を簡単に得られる時代になったことである。高純度SiCの事業化を検討していて苦労したのは、情報を得るためには金と足が必要だったことだ。


それなりの機関にお金を支払っても月並みの情報しか得られず、新しい情報を得るためにはそれを持っている人に面会する必要があった時代である。そして情報の価値が支払った対価、時間と金額で判断された。


今は無料で自分の興味ある分野について最大1年半の誤差で最新情報を誰でも得ることができる。昔その調査に万単位の費用がかかった特許調査さえもタダである。


インターネットの普及で身の回りに情報が溢れてきたのだが、正しい知が分かりにくくなってきた。コロナ禍における専門家の頼りなさを見れば明らかである。


時代が変わっても専門家にがっかりさせられる。学生時代に企業の技術系役員による特別講義があった。そこで、π型人間が求められている時代だと強調されていた。すなわち一つの分野の専門家ではだめでもう一つ専門を持たなければ技術者は役に立たない、とまで言われた。


有機材料と無機材料の両方の専門家になることか、と質問したら、その通りという回答だった。学術の世界では学際思考が話題になっていた。例えば有機材料と無機材料の境界領域となる無機高分子材料の研究会が高分子学会で設立されたのもこの時である。


しかし、情報化時代の今日ではπ型人間でも成果をあげにくい時代になってきた。学問でさえそのような様相を呈してきた。マテリアルインフォマティクスも怪しい学問の一つであり、これは学問ではなく今の時代技術者が身に着けておくべき常識である。

カテゴリー : 一般

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