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2022.08/12 情報化時代の技術開発(9)

ゴム会社に就職すると特許の実務研修があった。しかし、それはその後転職した写真会社のそれよりも実践的ではなかった。特許の読み方と書き方程度の内容だった。


研究所に配属されても特許マインドの高い研究者は皆無でアカデミアのように学術論文を読まれている方が多かった。そしてケミカルアブストラクトの廃棄が話題となっていた。


研究所以外の他の技術部門はすでに民間のデータベースを利用するようになっていて、ケミカルアブストラクトをたまに利用しているのは、成果を出していない研究所だけだという噂があった。


その研究所ではケミカルアブストラクトを廃棄するような感覚では良い研究などできない、と論じる研究者が多かった。新入社員の配属の日にゴム会社に技術は無い、技術のない会社に興味は無いと言って転職した同期がいた。


その同期はアカデミアよりもアカデミックな意識の社員がいた研究所の存在をおそらく知らないと思うが、当方は技術開発を希望して創業者にあこがれ入社した会社の配属先で体験した一種異様な光景に戸惑っていた。


ただ、研究所以外の風土はKKDによる技術開発が標準であり、転職した同期がイメージしていた科学技術を開発していた職場など研究所以外に無かった。また、それが理由で嫌気がさして当方に声をかけてくれた先輩社員は研究所への異動がかなわず転職している。


恐らく、当時のゴム会社は、研究所と他の技術部門を合わせ、それでバランスの取れていた企業だったのかもしれない。


ただ、研究所以外のメンバーと酒を飲めば「ミシュラン神社に手を合わせてアイデアを練る」という冗談がとびかっており、KKDといってもリバースエンジニアリングを主体にした技術開発スタイルという説明ができるぐらいに市場の商品解析には力を入れていた。


そしてその商品解析に多変量解析を用いるなどデータの扱いについては、先端だったように思い出される。ただしこれはタイヤ開発の技術部門の話である。


当方の配属された研究所では多変量解析を行いたくてマイコンの導入希望を出しても自分で購入しろと言われるような情報工学の視点では未開人に近い職場だった。もっとも情報工学に関する学部の設立が議論され始めた時代の話である。

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