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2022.11/28 データサイエンスとトランスサイエンス(8)

ゴムケースからブリードアウトした物質により増粘して電気粘性流体の耐久性を阻害した問題は、界面活性剤を添加しなければ解決できない、という考え方は、ゴム材料の知識があればヒューリスティックな解として出てくる。


界面活性剤では問題解決できない、という科学的に完璧な答えが出ても、界面活性剤で解決しなければいけないのだ。


この当たり前のことを優秀な人はすぐに理解できない。そこで、加硫剤も老化防止剤も何も添加されていない世界初のゴム材料開発という、常識で考えればアホと言いたくなる企画を真顔でまとめる。それを科学こそ技術開発で唯一の方法と信じているI本部長は、アホな企画で世界初に挑戦しようとするその姿勢をほめちぎる。


アメリカのタイヤ会社を買収しやがて世界トップとなるゴム会社のアカデミアよりもアカデミックな研究所で30年以上前の企画に、今ならば誰もが大笑いするだろう。


しかし、ゴム開発担当の技術者が買収後の事業立て直しに狩りだされたため、当時残された研究員の誰もが、そのおかしさに気がついていなかった。


科学の時代とはこのような時代だった。1980年代に科学論が日本でも盛んに論じられるようになり、著書も多数出版されたが、アメリカではトランスサイエンスという言葉が生まれている。


1990年代にバブルがはじけ、科学論ブームが幕を閉じるが、2007年に突然日本でトランスサイエンスというタイトルの著書が発売された。環境問題とりわけ地球温暖化の兆候を無視できなくなってきたからである。


科学的には界面活性剤では問題を解けない、科学に問いこのような結果が出たとしても問題を解かなければまじかに迫った、それをテストする自動車会社の試験走行に間に合わない。


当方は界面活性剤について主成分分析を行い、HLB値と相関の高かった第一主成分の軸から離れた群に存在していた界面活性剤をヘドロのように増粘した電気粘性流体に添加したところ、それは初期の特性にすぐに回復した。


科学に問い、科学が出した答えと、データから統計的に出された答えが異なっていた。ただし、データサイエンスは、科学で解明されていない分野について存在する機能を示したに過ぎない。

カテゴリー : 一般

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