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2023.06/14 ポリマーブレンドでできる相

2種類以上の高分子を均一に混ぜたポリマーブレンドあるいはポリマーアロイについて考察するときにχが用いられる。χ>0の場合には2相以上に分離すると言われている。相の数は混ぜた高分子の種類の数となる、と言うようなことが一般的にいわれている。


教科書にはこの見解が正しいような説明がフローリー・ハギンズ理論として説明されている。一方1種類の高分子だけでも細かく見ると幾つかの構造が存在する。


結晶性高分子であれば、結晶相と非晶質相の2相が少なくともできるが、結晶相はラメラの集合体であり、多少の非晶質相を含んでいることが分かっている。


高分子の非晶質相は、無機材料の非晶質相と異なり、密度が不均一である。最も密度が低い部分で室温において得られるエネルギーで分子運動している相は自由体積あるいは部分自由体積と呼ばれている。


1種類の高分子でもこのように複雑なので2種類以上のポリマーブレンドではさらに複雑になる。力学物性では遭遇する機会が少ないが、それでも同一組成でありながらプロセス条件が異なると異なるSSカーブとなるケースが観察されることがある。


電気電子物性になるとその頻度は高いはずなのだが、測定パラメーターが直流の体積固有抵抗だけであるとばらつき程度に考えて深く追求しない。


18年前に中間転写ベルトの開発を行っていた時にインピーダンス測定を行っている。どのような測定を行ったか秘密であるが、その時面白い現象を発見している。


この発見は、中国ナノポリスでローカル企業が電子部品の外装材を開発している時にも類似と思われる現象の解釈に役立った。同じ高分子素材を使用していてもローカル企業のコンパウンドが優れた特性を示したのだ。ご興味のあるかたはお問い合わせください。


今日の話題は、今の科学の体系では典型的なトランスサイエンスの問題と捉えることもできるが、そもそも50年前とそれほど変わらない内容の高分子材料に関する教科書にも問題があるように感じている。


高純度SiCの反応速度論を中心とした学位論文を書いているが、無機材料の視点で高分子材料を眺めてみると、LGBTの問題以上に複雑な問題が見えてくる。

カテゴリー : 一般 高分子

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