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2024.02/22 ダイハツの不正検査

ダイハツや豊田自動織機の不祥事をトヨタの責任という論評がある。しかし、両者は一応一つの組織として活動している企業である。トヨタの責任を論ずる前に組織に隠れている問題を考察するのが最初のアクションのように思う。


しかし、ツイッターなどのSNSに一部社員の愚痴が書かれているにもかかわらず、この問題に鋭く迫っている記事を見かけない。


当方はゴム会社から写真会社へ転職したのだが、まずゴム会社には二つの異なる風土が存在し、さらに写真会社は、これら二つの風土とまったく異なっていたのでびっくりした。


ゴム会社の研究所は、科学が唯一の方法という風土だったが、タイヤ開発部門はQC手法、すなわちデータ重視の現物現場主義の風土だった。


ゆえに前者では、ダイハツのようなことが起こりうる風土で、実際に商品評価において科学的な評価で代用して済ませて社内規格を無視する輩もいた。


当然成果はタイヤ開発部門で採用されないのだが、研究所なので成果よりも科学の研究を優先していた。タイヤ開発部門は、当方の新入社員研修の体験で書いたようにCTOが科学よりも現物現場主義を徹底する姿勢を示していたので、ダイハツのような不祥事は起こりえない風土だった。


写真会社は多面評価の影響もあって、科学云々の前に不正そのものをやりにくい風土だった。また、貪欲に成果を求めるわけでもなく、牧歌的企業風土であり、ある意味良い会社である。


また、ゴム会社の研究所は隠蔽体質であり、グループリーダーは自グループのテーマを囲い込み情報をグループ外に出さない秘密主義だった。


当方が電気粘性流体の仕事のサポートをすることになっても、技術資料を一切見せてくれない徹底ぶりだった。そして、言われたことだけやれ、というのである。


そこで、否定証明された耐久性問題を一晩でかたずけたり、傾斜機能粉体の技術をグループに提供したり、実用化のために解決しなければいけない目の前の問題を解決したら、リーダーに怒られた。


6年も基礎研究を続けてきて実用性が見えなかった状態を事業ができる状態まで技術を向上したので褒められるのかと思ったら、FDなど壊されたりしたのである。


写真会社は正反対で、仕事をやればやるほど周囲が仕事を持ってきてくれた。おかげで、3か月でコンパウンド工場を建てる離れ業まで楽しむチャンスが得られた。貢献と自己実現を志すには大変良い会社だったので、気がついたら20年も勤めていた。


このように企業風土というものは仕事のやり方に大きく影響する。ゴム会社の研究所では、本部長が交代し、当方が転職した時に相次いで若い研究員が転職するような風土(注)に変わったが、成果に見合った対価が得られるタイヤ部門なら働いてみたいと思う魅力があった。


写真会社は、不正などできる環境ではなく、貢献と自己実現には良い会社だった。ダイハツや豊田自動織機の風土を見直してはどうだろう。


トヨタ会長は、パワハラ騒動があった時に多面評価を導入することを公表されていたが、それだけでは不十分のように思う。多面評価はパワハラなど各種ハラスメントには効果があるかもしれないが、それだけでは風見鶏的風土となる。


企業は、ゴム会社のタイヤ部門のように常にイノベーションが湧き出てくる風土が理想である。このような会社ならば勤めてみたい、と思わせる風土がゴム会社のタイヤ部門にはあった。風土問題で困っている企業はご相談ください。


(注)当方が転職した時に、電気粘性流体を担当していた二人の若者が次々と転職した。一人は福井大学へ転職され、当方が客員教授となるきっかけを作ってくれた。

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