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2024.04/19 データサイエンスと私(8)

加工されたタイヤ部材の面積データを主成分分析と重回帰分析にかけたところ、それぞれで意味のある解析結果が得られた。また、重回帰分析から、解析対象のサイズのタイヤを当時の材料技術で軽量化した時に到達できる重量も見積もることができた。


この解析結果で感動したのは、ミシュランのタイヤが中央にあり、就職したゴム会社のタイヤが、ミシュランタイヤより少し性能が良い位置に、そして他の18社のタイヤが、その他の4群を構成していた。


当時バイアスタイヤとラジアルタイヤが共存していた時代で、ミシュランのラジアルタイヤの基本特許の期限が切れ、熾烈なラジアルタイヤ開発競争が展開されていた時代である。


「ミシュラン神社に手を合わせると新技術のお告げがある」という冗談をこの研修終了後のパーティーで聞いたが、まさにそのお告げで少し性能の良いタイヤができていたのだろう。


研究所では、このようなタイヤ開発の姿勢を批判していたが、これは技術開発の一つの戦略であって、性能が良いものができていることを評価すべきではないか。


すなわち、技術力が無ければ、製品品質で勝つことができない。いくら科学の研究で優れた成果を出すことができても、製品品質の悪いものしか市場に提供できなかったなら、メーカーとして失格である。


優れた科学の研究成果と、優れた製品品質を創り出す技術とは二者択一をすべきではないが、企業では高い品質の製品を市場供給しなければ競争に勝てない。


小林製薬の紅麹問題は前者に胡坐をかいた結果かもしれない。特許や学会報告を読むとグンゼの紅麹製造技術は優れた科学の研究成果と思われる。


(注)優れた科学の研究成果があれば、よい技術ができると勘違いしている研究者は多い。科学の研究成果など無くても、製品品質を作り込むスキルがあれば、優れた製品品質の製品を生み出すことができる。例えば日本の高分子科学を牽引している某社が6年研究開発をしたコンパウンドでは、抵抗変動の安定した半導体無端ベルトの押出成形を実現できなかった(コンパウンドの品質が悪かった)。研究もおこなわず、気合一発でたった3か月で立てたカオス混合プラントから生産されたコンパウンドでは、同一配合でありながら歩留まり100%の押出成形を実現できた。ゴム会社の研究所ならば、KKDと批判されるような荒業だが、ゴム会社に入社し研究所に配属されて出会った指導社員から学んだカオス混合の暗黙知を30年温めてそれを実施した成果である。コンパウンド工程の設計にはタグチメソッド(TM)を使用している。TMは優れた製品品質を作り込むことができる品質工学の手法である。

カテゴリー : 一般

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