2025.01/31 オブジェクト指向(6)
1953年伊奈製陶の実験は、当方が知る限りタグチメソッド(TM)による最も古い実験である。田口先生の実験計画法の教科書に事例として載っている。田口先生は、TMは実験計画法ではない、と常々言われていたが、最初は堂々と実験計画法で実施されている点が面白い。
なぜなら、当時のTMは、直交表の外側に割付が行われず、直交表の内側の交絡する列を利用して行われていた。この初期のTM事例を理解できると、データ駆動の手法であることに気がつく。
その後、TMは改良され、内側には制御因子が割り付けられ、外側に信号因子と誤差因子が割り付けられるスタイルとして完成する。すなわち、これは誤差存在下の実験でSN比を最大化できる制御因子の探索実験という見方もできる。
TMを知らなかった当方は、ゴム会社の研修で実験計画法を学び業務に用いた。しかし、確認実験で最適条件が良く外れる問題に遭遇し、オブジェクト指向によるTMもどきを発明している。
よく知られているように、実験計画法では、直交表の外側には実験で得られた生データを配列し、解析する。この時の生データは誤差因子の影響を受けている。すなわち誤差の影響を受けたふるまいをするデータと内側の列との交互効果を評価していることになる。
ゆえに、直交表を用いた実験計画法では、内側の列と誤差との交互効果が大きい時には最適条件の見積もりがうまくゆかないケースが出てくる。開発対象であるオブジェクトのふるまいを改善するとは、信号因子に対する相関係数を最大化できる条件を求めることである。
そこで、直交表の外側に相関係数を割り付けた実験を行ったところ、最適条件がうまく求まるようになった。これが、当方の考案したTMもどきの方法である。
この方法を田口先生にお話ししたところお褒め頂いた。しかし、当方の方法はTMにおける感度の最大化実験であり、好ましくはない。TMの目標はロバスト改善であり、誤差因子も配置しSN比最大化を目指している、と述べられていた。
カテゴリー : 一般
pagetop