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2026.05/03 研究開発プロセス(15)

量産試作段階で押出成形歩留まりが10%前後と低迷していたため、中間転写ベルトの量産を行えば大赤字となることは自明だった。それで半年後のMFP(複合プリンター)量産前に役割を交代してくれ、と言ってきたのである。

ただ、この依頼が口先だけだったことは理解できていたが、その口先だけで量産試作前のデザインレビューを乗り切ったとは思えなかった。デザインレビューの報告書を読むとロバストの再現チェックで量産移行可能とある。

一流メーカーのコンパウンド技術は完成しており、押出成形のロバストが課題という易しい問題と記されていた。それでデザインレビューを通過し、量産試作へテーマを昇格できたのである。

このようないい加減なデザインレビューの報告書の山を過去に手繰ってみても、量産試作段階の問題解決のヒントなど得られないことは明らかだった。

問題解決のために過去の資料を検討しなおすことは有効な方法である。しかし、過去の資料には、生データから会議の報告書で使用されたデータまで複数の種類がある。

研究開発段階においてどのような会議が行われるのか、研究所の課単位、すなわちマネージメントの責任者の考え方で変化する。

新入社員時代に初めて担当した樹脂補強ゴムでは、毎日指導社員と打ち合わせ及び勉強会があった。おかげで、3カ月のご指導だったがゴムタイムズ社から混練に関する本を出版できるまでスキルが向上した。

指導社員は、週に1回主任研究員に新入社員の指導報告するだけでなく、月1回の課内会議用に報告書を作成していた。3カ月後主任研究員の異動でグループが解散する時、指導社員は報告書を書かないと言っていたが、主任研究員は当方に報告書をまとめるように指示してきた。

このあたりは複雑な気持ちだったが、報告書を書いている。そしてその報告書を基に後工程との打ち合わせが行われた。この打ち合わせには、主任研究員と指導社員、そして当方が出席している。

そして、後工程で顧客である自動車会社のスペックに合わせて配合の最適化が行われ実用化されているが、この過程において、主任研究員も指導社員も当方も担当を外れている。

すなわち、担当者と指導社員、指導社員と主任研究員、指導社員と課員全員との進捗共有の3種の会議でそれぞれ報告書が存在し、実験データはその報告書に転記されてゆく。

このプロセスにおいて、メタデータ全てが転記されないことを新入社員時代に悟っている。これは指導社員の指導の賜物である。指導社員は、グループ解散時に報告書を書かないと言われていた。それは、報告書を書いても、誰も読まないからだ、というのが理由だった。

主任研究員は、グループ解散時に成果のないことを嘆かれ、新入社員の当方に1年間のテーマの予定だが3カ月でまとめてくれないか、と言ってきた。

無茶苦茶な相談だったが、大学院時代にも企業からもらっていた奨学金のお礼のためと言われPVAの難燃化について短期間に論文をまとめ上げた経験があったので引き受けた。

研究開発プロセスが、課長レベルのマネジメントで大きく変化することをこの時学んだが、このようなマネジメントに実験データの情報量は影響を受ける。

すなわち、指導社員が言われていたように、研究所内で量産されていた報告書の技術的価値は、実験の生データに比較すると低くなる。研究開発プロセスでは、様々なアウトプットがあるが、メタデータもすべて揃っている実験の生データが最も重要であることを最初に学んだことは、今思い出すと大変幸運なことだった。

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