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2026.05/12 実験データは企業資産(5)

不思議に思ったのは、5年間のExcelファイルにパーコレーションというフレーズが一度も用いられていなかったことである。コンパウンドメーカーとの議事録をC#プログラムで検索しても見つからなかった。

また、コンパウンドメーカーの混練の説明にはカオス混合というフレーズや伸長流動というフレーズも用いられていなかった。

導電性微粒子を絶縁体高分子に分散して半導体材料を設計するときに、パーコレーション転移の制御を行うことは、1990年代に当方が日本化学会で講演してから常識になっている、と思っていたが、高分子技術では国内トップクラスの企業にも注目されていなかった事実に愕然とした。

カオス混合については、ゴム会社で防振ゴム用樹脂補強ゴムの開発を担当した3か月間に指導社員から知識と技術を伝授されていた。さらに宿題として二軸混練機で実現する方法を出されていたので30年近くあれこれと暇なときに考えていた。

5年間の半導体無端ベルトの実験生データや多数の会議の議事録をC#で作成したプログラムで解析し、コンパウンドメーカーとの共同開発でパーコレーション転移の議論がなされていなかったことや、混練技術について分散混合と分配混合による議論しかなされていなかったことを理解できた。

すなわち、5年間に考えられるすべての策が検討されたわけでなく、重要なパーコレーション転移の制御技術やカオス混合技術についてコンパウンドメーカーの技術者含め知らなかった可能性が高く(注)、量産試作段階に問題解決できる確信を得た。

そこで、混練技術の経験がある若手技術者を中途採用し、定年前の技能員を一人加え、カオス混合プラント立ち上げプロジェクトチームを編成し、コンパウンドメーカーの許可も得て、ライン立ち上げに着手した。

すでに量産試作段階だったので、ライン建設はじめ様々な業務について、関係部署や経営の許可を得る必要があった。それらは、上司であるセンター長が全て対応してくださって、当方は中古機を集めてラインを立ち上げことに専念できた。

但しQMSの制約から、配合の変更は不可能であり、QMSに登録されている場所でのコンパウンド生産もQMSの変更作業などに時間がかかるので難しかった。

運よく静岡にQMS未登録の子会社があり、そこの敷地でコンパウンドラインを立ち上げると、コンパウンドを外部購入する量産段階のサプライチェーンを変更しなくてもよいことを品質保証部長から教えていただいた。

一番問題となったのは、コンパウンド技術である。コンパウンドメーカーはコンパウンディング条件を教えてくれなかった。そこで粘弾性測定実験を行い、混練条件を推定した。

カオス混合方法は、新入社員時代に出された宿題を思考実験で解決していたので、それを実戦で使えるかどうか確認するだけだった。幸運だったのは、5年間のデザインレビューには使用されていなかった、実験生データに答えのメタデータが幾つか思考実験の答えと一致していた。

すなわち、成形後の不良品ベルトを集めて再練りし、押出成形を行ったデータを集めて生産した押出成形では、半導体無端ベルトの面内抵抗変動が小さくなっていた。

さらに、不良品ベルトの押出条件その他のメタデータが揃っていた実験とサンプルが残っていたので、解析や分析を少し行い、Wパーコレーション転移の制御シミュレーションを実証するデータを得ることができた。

すなわち、カオス混合のコンパウンドライン設計のためにコンパウンディング条件を確認する実験は、粘弾性試験以外行っていない。組織内の検討会でも用いられなかった5年間のExcelファイルに残っていたゴミデータから情報を拾い集め、カオス混合ライン建設のためのデザインレビューを行っている。

(注)2005年にカオス混合の説明をコンパウンドメーカーに行っている。その結果、勝手に工場たててみろ、となったのだが、不思議なのは、その3年後から10件近くカオス混合技術についてこのメーカーから特許が公開されている。コンパウンドメーカー名xカオス混合と入力して特許検索すると、そのリストが特許検索サイトで得られるので、ご興味のある方は検索してみてください。

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