2018.06/19 形式知の限界(1)
高純度SiCの事業化を一人で推進していた時である。30年近く前の話なのでもう時効と思うが、電気粘性流体をゴムの袋に入れてデバイスとして組み上げると増粘するという問題が起きた。
電気粘性流体とは、絶縁オイルの中に半導体微粒子を分散した粘性流体で、電気のON-OFFで固体になったり流体になったり、さらに電圧でそのレオロジ挙動を制御できるレオロジー流体である。
当時その現象がウィンズローにより発見されて40年ほど経過したころで実用化研究が活発に行われていた。そこで起きた増粘問題に高学歴のスタッフが数名投入されてこの問題を一年かけて研究した。
そして、「電気粘性流体の増粘問題は界面活性剤で問題解決できない」という間違っている一つの科学的真理を論理的に導いた。
この真理はゴム会社だから現象を早く見出し、結論も優秀なスタッフで迅速に出すことができた、と研究所でもてはやされた。そして、この真理は重要な極秘情報として扱われた。
新たなテーマで「電気粘性流体を増粘させない新しいゴム材料の開発」というとんでもない企画が研究所の最重要テーマとなり、新入社員時代にたった3ケ月で樹脂補強ゴムを開発した、という噂から当方にこのテーマが回ってきた。
「電気粘性流体の増粘問題は界面活性剤で問題解決できない」という結論は、最新の分析機器を用いて解析的に進められ、その手順は極めて科学的プロセスで進められて導き出されていた。
科学的真理が間違っていた、という事実はこの事例だけではない。過去の学会発表を見ればいくつか存在する。またSTAP細胞の騒動でも間違った科学的真理が導き出されたかもしれない。
カテゴリー : 一般
pagetop