2018.12/10 技術開発経験談(6)
過重労働に限らず、労働というものは、人に命じられて行う場合にはその量に関わらず少なからず面白くないものである。しかし、自ら進んで行う場合には、過重労働であっても楽しい。
樹脂補強ゴムは後工程ですぐに商品化され会社に貢献した研究テーマと評価されたらしいが、指導社員も当方もそのような評価を受けていない。また入社二年間は残業手当が無いルールだったので、残業代も0であった。
さらに、テーマが完了したということで、当方は新たなテーマを抱える職場へ異動となっている。指導社員は、その立場から、新たなテーマを企画することになった。
1年間のテーマを3ケ月で仕上げたことを研究所内では批判されたようだ。当方は社会人になったばかりで陰口に対し理解できなかったが、指導社員には申し訳ないことをした、と反省した。
メーカーの研究部門において新しいテーマの企画業務は、予算が決まっているテーマを推進するよりも大変である。なぜなら、企画が採用されるまで研究所では評価されないからだ。
また、テーマが商品化されてその成否の結果から初めて評価される。当方はこの仕事を楽しく推進することができたが、指導社員は全く知識の無かった当方を指導することになり、どのような気持ちだったのか異動後想像し申し訳ない気持ちになった。
指導社員の技術者育成プログラムは1年間の計画として作られていたが、そのメニューを当方のペースに合わせ繰り上げて進めてくださった。40年たった今から当時を思い出してみても高分子科学の先端を見据えた優れた内容だった。
シミュレーションによる材料設計、ワイブル統計を用いた材料の信頼性評価、高分子の高次構造写真や豊富な熱分析データ、これらと関連付けされた粘弾性データなどお正月を返上して報告書としてまとめたが、年末年始の休みを返上しても十分に満足できる宿題だった。また、この時の教育のおかげで約30年後に指導社員から夢と言われたカオス混合装置を発明することができた。
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