何か楽器を弾ける人ならば、和音が3つの異なる音の組み合わせだけでなく4つ以上の音の組み合わせも含むことをご存知かもしれない。しかし、当方はこの年になるまでこのような事実を知らなかった。
義務教育で習う和音は、その響きが気持ちよく聴こえる3つの異なる音の組み合わせとして記憶するように指導される。それ以外の音の組み合わせは不協和音だ、という冗談を何度も聞かされた。
しかし、和音(コード)は、3つ以上の音の組み合わせも存在し、7thコードはじめテンションなど様々な和音の技法が存在する。しかし無限にあるわけでなく、そこにはルールが存在し限られた種類となっている。
昔アメリカンフォークが日本に輸入されてフォークソングブームとなった時には、3和音を中心とした循環コードの単純な曲が多かった。当時の楽器の教則本を読むと3和音に7番目の音を加えた7thコードという説明が出てくることから1970年代の音楽の常識は、3和音でもよかったのかもしれない。
しかし、最近のポップスの音の複雑な響きを理解するためには3つ以上の音の組み合わせの存在も知らなければ感動することすらできず、単なる騒音として認識し聞くことができないケースもある。
老人が若者の声を聞けなくなる原因には、価値観の断絶だけでなく知識や情報量の違いがあることを多くの老人は気がついていないので老害とも表現されたりするが、若い人たちの身に着けている情報量は、現在の40過ぎの人間の身に着けている情報量とは比較にならない。
ただ、現代の若者の問題は情報を消耗品扱いにし、それを知識に展開できない点である。音楽も今やポップス系は消耗品であり、20年前の懐メロといっても百花繚乱となる。昔のように各年代において数曲思い出されるという状況ではない。
この20年間のポップスではダンス音楽有り、ロックあり、ジャズ系あり、何でもありの状態である。ダンス音楽が一つの特徴かと思えばマイケルジャクソンのような大ヒットは平野ノラ以外に思い出せない。エグザイルは指摘されて思い出すような状況だ。
その弟分のグループと言われても名前は出てこない。孫グループがあるかどうか知らないが、AKBはじめとする女子集団になってくるとパターン認識でかろうじて**坂が思い出される程度である。しかしこれら女子集団もすでに下り坂46であり、世の移り変わりのスピードは速くなっていることを感じる。
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バッハが平均律を発明したのは科学誕生の直前だった。バッハの平均律により現代音楽の音階が決められた話を以前活動報告に書いている。最近新しい音楽としてコンピューターで人が歌えないような、あるいは歌いにくいような音階の曲が注目を集めている。
このような展開は、科学がコンピューターの登場によりシミュレーション技術を発展させた流れとよく似ている。シミュレーションにより科学の問題を解いていったように、コンピューターにより新しい歌唱の世界を創り出した。
コンピューターの発声による歌ではあるが、それをカラオケで人間が歌うことも流行しているようだ。歌いにくい歌をわざわざ歌う、という興味を持つ人がいるのも驚くべきことだが、承認欲求と言うものがそれを促しているのかもしれない。SNSでそれを公開している。
マテリアルインフォマティクスでは、AIを使ってデータマイニングし、その結果をシミュレーションや実験に展開することが行われている。
歌いにくい曲をわざわざ歌おうとしているように、このマテリアルインフォマティクスのプロセスをAIではなく人間がやる、という発想が出てきても良い、と考えたら、当方は社会に出てからそのようなデータマイニングをして研究開発をしてきたことに気がついた。
昔はAIが無かったので多変量解析などを行ってもその結果を自分の頭で処理しなければいけなかった。その経験から言えることだが、マテリアルインフォマティクスでAIを使うよりも自分の頭で考えた方が面白いアイデアが浮かぶ。
例えば、電気粘性流体の耐久性問題を多変量解析で解いているが、同僚は科学により否定証明を行い、解決できない、と結論を出していた。AIに任せて科学的に解くときには否定証明の存在に気を付ける必要がある。
音楽と科学の関係を考えていて、マテリアルインフォマティクスに飛んでしまったが、音楽を単なる芸術の一分野と考えるのではなく、人間の営みの一つとして技術と同じまな板に載せると面白い世界が広がってくる。
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ペルチェ素子は、直流電圧をかけると一方が冷却系で他方が加熱系となるデバイスである。すなわち片側の熱量を反対側へ運ぶことが可能な素子で、小型冷蔵庫に活用されている。
また、最近は自動車用電池その他のデバイス冷却用の特許出願が多い。古くから存在した素子だが意外と使い勝手が悪い。すなわちうまくデバイスを設計してやらないとうまく冷却ができないからだ。
特許もそのあたりの技術を狙った発明が多い。しかし、いずれも冷却側は冷やしたい媒体に直接接触している。ペルチェ素子を冷蔵庫に用いる場合にも熱伝導性の金属を冷却側に接着して用いている。
この理由をよく考えず、ペルチェ素子で空間を直接冷却しようとして技術を設計すると失敗する。これ以上書かないが、弊社へご相談に来られた方は、この点で失敗していた。
それでは、ペルチェ素子で空間を直接冷却できないのかと言うとそうではない。それを可能とする技術が存在する。それが当方による発明である。
科学的には発想が難しい技術である。なんでも科学で解決できると思っている人では考えつかないアイデアであるが、技術が出来上がってみると、その動作を科学的に説明可能である。
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ただ扇風機を2基つけただけの空調服がヒットしているという。もうすぐ冬になるので来年の夏用に売れているのかもしれない。この扇風機をつけただけの空調服の問題は、外気温が高い時に温風が服の中に吹き込まれる点である。
それを冷風とするためにペルチェ素子で空気を冷却する空調服が考案された。しかし、ただペルチェ素子を組み込んだだけでは冷却できないことがわかり、発明者が弊社へ相談に来たのが2年前である。
ペルチェ素子デバイスを提供していたのはKという中堅の電子デバイス製造メーカーだが、そこでもペルチェ素子を扱うノウハウが無かったようだ。
すぐに特許を調べたところ、最近ペルチェ素子を活用した冷却システムに関する特許出願が多くなっている。おそらくペルチェ素子の価格が安くなってきているからだろう。
小生はネットで150円で購入したペルチェ素子を用いて実験を行い、1か月もかからず改良技術を作り上げた。3か月後にはプロトタイプを作り上げ冷却できることを証明できた。
今年のオリンピックに間に合わせるように開発を急いだが相談者の会社の経営が傾き、とん挫した。結局3件特許出願しただけで終わったが、もしペルチェ素子を用いた空調服に興味のあるかたは弊社へ問い合わせていただきたい。
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イノベーションにはインクリメンタルイノベーションとラディカルイノベーションがある、と一般に説明されるようになった。これはシュンペンター博士著「経済発展の理論」で有名になった言葉である。
1980年代には、染み出しイノベーションと落下傘イノベーションという表現をしていた経営者がいた。当方はゴム会社で高純度SiCの半導体治工具事業を1980年代に起業しているが、これは高分子から高純度SiCを製造するという従来とは異なる概念の技術であり、またゴム会社からセラミックス事業へ進出するようなイノべーションなのでラディカルイノベーションである。
GDPが30年も伸び悩んでいるのでラディカルイノベーションが検索ワードで目立つようになったが、ことばなど無くても40年ほど前からイノベーションの二つの形態については知られていたのだ。
ゴム会社でラディカルイノベーションを行った経験からいうと既存の事業と異なる事業を起業するときには、死を覚悟するぐらいの気持ちで決断せよ、と言う一言に尽きる。また、従業員を自死に追い込みたくなければ、経営者は自ら腹を切るぐらいの覚悟をせよ、と申し上げたい。
なぜなら、当方は自死か転職かの2者択一を迫られた経験があるからである。また当時当方が転職後、理由は不明だがゴム会社で切腹事件が実際に起きニュースになっている。サラリーマンが組織でイノベーションを起こすときにはそのくらいの凄惨な事態も覚悟する必要がある。
安直に自社でもラジカルイノベーションを、と言っている経営者は少し頭を冷やした方が良い。また従業員は従来と変わらぬ風土の中でラジカルイノベーションを求められた時に死あるいは転職を覚悟しないで手を挙げてはいけない。
これは公的研究所も同様で、STAP細胞の騒動では著名な研究者の研究所における首つりという結末で終わった事件が21世紀に起きている。イノベーションが求められる日本の公的研究所の中でも死ぬほどの覚悟が要求されるのである。
イノベーションの素を創り出すのが研究所のミッションの一つだが、日本の研究所の体質はイノベーションを好まないという風土のところが多い。ゴム会社の研究所はアカデミアよりもアカデミックで科学の殻に閉じこもるような保守的な体質だった。
これは日本人と言う国民性も関係しているのかもしれない。SNSに見られるように不特定多数の顔も見えないような状況で他人を責める状況があってもそれを社会で容認するところがある。
ゆえに社員にイノベーションを求める場合には、それなりの手順なり仕掛けで風土改革を行わなければいけない。もしイノベーションを希望される企業があるならば、弊社へご相談いただきたい。ラディカルイノベーションを成功させ転職により生き延びた経験からの学びを伝授したい。
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ギターの教則本と言えば、昔はクラシックギターの定番、カルカッシの教則本ぐらいしかなかったが、最近はいろいろ発売されている。当方は何冊もそれらを買い込んだ話を以前書いている。
それらを読んでみると面白いのは、それぞれ筆者の世界観が見えてくるのだ。ジャズのアドリブと言っても無茶苦茶に弾いているわけではなく、曲の流れで要求されるコードを展開しているわけだが、まずコードというものを学校で習った概念から解き放つ必要がある。
学校で習ってきたコードと言えば3和音になるが、ジャズでは団子を並べられるだけ並べるのだ。ただ、無茶苦茶並べても不協和音になるのでそこにはルールが自然とできている。また、並べる音の個数もドレミファソラシドと制限があるから限られてくる。
テンションという概念は和音のルールの一つで、まず和音が3和音ではなく4和音を理解し、そしてテンションへの理解と流れると学びやすい。このテンションは、良い響きを選ぶという観点では感覚的になるがこれまでの経験知から一定の規則が出来上がっている。
ここで出来上がっていると書いているのは、マイルスデイビスが登場した当たりの頃は、このような規則など無かったように思う。神田の古本屋でジャズのアドリブについて説明した本を見つけて読んでみたが、そこには今の教則本に書かれているテンションのルールなど出てこない。
学生時代からただ好きでジャズを聞いてきただけだが、ジャズという音楽の世界で和音のインクリメンタルイノベーションがあったのだ。その結果、40年以上前の教則本と最近の教則本では書かれている内容が異なってきている。
ただ、最近の教則本では、コードを中心に解説する派とスケールから解説する派があるように思われる。イノベーションを理解しやすいのは、コードから解説している教則本であるが、眠くなるような展開になっている書物である。
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最近高分子科学の分野であまり流行っていないが、線形破壊力学という学問分野がある。グリフィス理論や応力拡大係数などガラスやセラミックス分野では一定の評価を得ている。
セラミックスを勉強するときに数学の苦手な材料技術者がつまずく壁のような学問である。当方は数学やプログラミングは趣味のようなものだったので苦労しなかった。
1980年前後には高分子材料分野でもこの理論やパラメーターの応用がなされたが、芳しい結果が得られなかったようだ。しかし、ゴム会社の研究所では声高にこれらの理論を振り回し、理論に合わせてデータを取得していた研究者がいた。
ガラスやセラミックスに比較して、高分子材料は室温においてクリープ速度が速い。これも一因となり引張試験や曲弾性率測定では、破壊に至るまで引張速度の影響なども出る。
高分子科学としては少し怪しく見えるグリフィス理論や応力拡大係数ではあるが、この視点で高分子材料の破壊を眺めるのは有益である。
ガラスやセラミックス分野では科学的に耐えたこれらの理論やパラメーターだから高分子材料でうまく合わない理由は高分子材料の破壊に至る過程において高分子特有の問題があると理解できて、高分子と言うものをイメージしやすい(注)。
言い換えると、線形破壊力学の視点で高分子材料を眺めると、金属やセラミックスと異なる高分子の構造的特徴を「なんとなく」理解できる。「なんとなく高分子」という小説でも書いてみたくなる。
例えば横軸に弾性率をとり、縦軸を応力拡大係数とすると、セラミックスから金蔵、高分子まで反比例のグラフのようにきれいにサンプルの点が並ぶ。これは材料技術者の経験知として有名な事実である。
このグラフ面で高分子複合材料を眺めると、複合材料の開発方向が、弾性率と応力拡大係数を上げることという材料に求められる特性が見えてくる。
(注)ポリウレタン発泡体の開発もセラミックスを勉強してきた当方には面白い体験だった。この時発泡体をプレスしてシート化し諸物性を評価していたら笑われた。意味が無い、と言うのだ。グリフィスの理論で問題となる欠陥よりもはるかにおおきなセル構造の発泡体と圧縮シートを評価しても解析が難しいことは分かっていた。しかし、シート化して測定されたデータには配合因子の特徴がきれいに現れた。発泡体のデータでは、配合因子の効果をうまく議論できなかった。アカデミアよりもアカデミックな研究所ではあったが、現象を眺める姿勢には多くの疑問となる思い出が残っている。
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高分子混練技術の難しさは、科学の研究で進められている分配混合と分散混合の考え方を用いて実務で遭遇する現象を説明できないためだ。このような問題があっても機密の壁のため問題が表に出ず、その結果研究も進まない、というジレンマがある。
コロナ禍となる前に混練に関する小生の経験知をハンドブックとして上梓したが、その内容は40年以上前ゴム会社へ入社した時に、混練の神様と呼びたくなるような指導社員に指導された知識が中心になっている。
ただし、指導社員はダッシュポットとバネのモデルで混練現象を教えてくださったが、小生はそれを最新のレオロジーで書き直している。
混練に関する最新のレオロジーの知識をどこで入手したのかというと、学会活動である。今でも時間とお金が許せば学会に参加している。もう客員教授もやめており大学の先生ではないが学会で勉強することは継続している。
余談だが学会参加は一般人でも可能なので、時間のある老人は学会へ出かけ目の保養をしてくるとよい。最近の学会のプレゼン資料はカラフルで見ていて楽しい。腹のムシの居所が悪い時には意地悪な質問をして欲求不満の解消をするとよい。
いい加減な発表もあるのでそのような発表をポスターで探し、関連する口頭発表で奇妙なまとめ方に対して質問するとよい。若い研究者のためにもなる。枝葉の質問では研究者に失礼かもしれないが、当方も若い時にどうでもよいような質問をされて発表を台無しにされたことがある。遠慮はいらない。
混練技術に関する発表は、高分子学会でも1-2件ある。ただしこの時当方は質問をしない方針にしている。話がかみ合わなくなることが多いためで、老人ゆえにかみ合わない、と思われても気分が悪いからである。
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5Gはじめ情報通信分野でPPSの売り上げが世界的に伸びている。当方も5年ほど前に米国で問題となった通信会社向けにコンパウンド開発を中国で指導した経験がある。
その時、射出成型用添加剤としてPH01という新材料を開発している。この添加剤をPPSに添加すると流動性が著しく向上して0.5mm以下の薄肉射出成型が可能となる。
これはPPSの結晶化も抑制した効果もあり、割れにくくなったからである。さらに200℃で熱処理しても強度低下しない。この温度で24時間保持すると無添加のPPSと同様の強度低下を起こすことから、結晶化を抑制していると推定している。
おもしろいのは、このPH01を架橋タイプのPPSへ添加してやると繊維を引くことができた点である。これは某大学で繊維化装置を借りて実験して得た結果である。大学教授もその結果に驚かれていた。
もっと驚くべき結果は、この添加剤は一般の可塑剤と同じような効果がありそうな物性データが出ているにもかかわらず、この架橋タイプPPSが繊維化できたという結果以外にTgを下げない点も驚くべき結果である。
すなわち、高分子に可塑剤を添加すると可塑化効果により緩和速度の指標となるTgは添加量とともに低下する。しかし、この添加剤はそのような挙動を示さない。
この原因は、電子顕微鏡観察で明らかとなったのだが、ご興味のあるかたは弊社へ問い合わせていただきたい。弊社ではこの添加剤の特許に関してこれから審査請求をするところだが、事業として生かせる企業に特許を売却したいと考えている。日本でそのような企業が現れなければ、海外企業への売却も考慮中である。
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ペルチェ素子は片面で発熱その反対側で冷却が可能となる半導体素子である。発熱専用にはヒーターがあるのでペルチェ素子はもっぱら冷却用の熱ポンプとして利用される。すでにペルチェ素子を用いた小型冷蔵庫も発売されている。
熱伝導を知らない町の発明家は、これを空調服に活用できるということで特許を出願した。しかし、実際に空調服を作ってみると冷えない。あたりまえである。
密閉系でペルチェ素子を稼働させれば、熱ポンプとして機能して密閉空間内を冷却することは可能である。しかし、開放系でペルチェ素子を使い、そこに風をあてて冷気を送ろうとしてもうまく冷気を送ることはできない。
これはペルチェ素子表面に空気が接触して空気が冷えるまでに熱伝導が必要となるからだ。わずかな熱量を低減された空気はすぐにエネルギーを吸収して周囲の温度と同じになり冷気とならない。
これを冷気とするためにはそれなりの仕掛け、技術が必要であり、それを弊社の問題解決法で開発している。特許を3件ほど出願し、その中で重要な特許については出願時の審査請求をしているが、関心のあるかたは問い合わせていただきたい。
ペルチェ素子を応用した空調服については、今年の春すでに開発を完了しており、展示会にも出品したが、推進していた企業の経営状態が悪化し、せっかくのオリンピック前の良いタイミングを逃がした。
すでにその企業と調整済みなので、弊社に問い合わせていただければ技術やノウハウを公開いたします。空調服は成長分野ですが、外気の生暖かい空気しか送れない空調服ではなく、ペルチェ素子で冷却された快適な空調服を一度体験するともう2万円の空調服など買う気は無くなる。
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