朝のドイツ語学習よりも卒業研究は、厳しかった。卒業研究は、シクラメンの香りの全合成だったが、日々の実験は、指導してくださっていた助手の方の研究用の原料を合成することが任務だった。
予定量合成されていなければ、厳しい声で名前が呼ばれた。ただ、言われた量の合成ができておれば、空き時間に好きな実験ができたので当方にとって問題は無かった。
しかし、周囲からは学生を奴隷のように使って原材料合成させている、という噂が進級前からあった。また、廊下まで響く叱責の声で厳しい講座と言う噂もあった。
当方にとっては、叱責よりも具体的な指示が原料合成だけであり、その他の進捗の問いが無いことが厳しかった。卒論をまとめることができるのかどうか、という不安があった。講座の先輩からは言われたことだけしっかりやれ、と激励されるだけだった。
ゆえに見よう見まねでシクラメンの香り成分の合成経路探索実験を勝手に始めた。しかし叱られることは無かった。実験がうまくいって、シクラメンの香りが漂ったら、厳しい呼び声が無くなった。
今から思い出しても1年間、名前を呼ばれた記憶しかない。厳しく呼ばれるのか優しく呼ばれるのか、どちらかだった。名前の呼ばれ方で、卒業研究の進捗を判断しなければいけなかった。
これをひどい指導と評価するのか、自主性を重んじた指導と評価するのか微妙であるが、自主性が育った実感はあった。学生と言う身分で悩みにならなかったのだろう。
卒業研究論文の受付も乱暴な扱いだった。締め切り直前に50報もの論文を渡されたのである。しかし、不思議にも徹夜して、今見ても立派なコピペなど無い学位論文並みの卒業論文を仕上げることができていた。
昨今のアカハラの記事を読むと、記事よりもひどい一年間だった、と思い出せなくもない。しかし、大学4年間で能力が最も向上した1年間であったことだけは確かである。
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昨日当方の学生時代の体験を書いたが、大学4年から大学院の2年間の研究生活で、日々具体的な指示があったのは、毎朝1時間のドイツ語学習だけだった。
大学院を予定していなかった当方に大学院へ進むように促し、ドイツ語まで強制して勉強をさせてている、と奇妙なうわさがたった。当方の所属していた講座が教授の定年退職により閉鎖されるとのうわさも出ていた。
外部から見れば、毎朝8時から9時までの1時間、大学院に進学予定でなかった学生が、ドイツ語のスパルタ教育を受ける風景は奇妙に映ったのかもしれない。さらに状況を第三者が見たならばアカハラか熱心な学習指導か問われれば、アカハラといっても良いような雰囲気だった。
ただ当方にとって、噂よりも熱心にご指導される教授が面白かった。大学院の試験を受験しないかもしれない学生に熱心にドイツ語を教えているのだ。
しかもおよそ語学教育と言うよりも専門教育と言った方が当てはまった。すなわち、専門教育をドイツ語でやっていた、と表現できるような学習内容だった。それゆえに第三者から見れば語学教育ではなく、ドイツ語の分からない学生にドイツ語で専門の指導をしているように映ったのかもしれない。
正直に気持ちを表現すれば、ドイツ語の学習について最初は気が進まないだけでなく、教授にからかわれているようで憂鬱だったが、大学まで進学し、3年間高校の延長線のような授業で不完全燃焼していたので、難解な論文解読が途中から面白くなっていった記憶がある。
このご指導のおかげで、大学院の試験は優等生用の下駄をもらえなくても1けたの順位で授業料免除の特典がある合格点だった。アカハラか、熱心な指導かは、試験の結果が語っていたのだが、今の時代には通用しない教育方法だったかもしれない。
結局教授の退官により大学院に合格してもその研究室で研究を続けることができなかった。この結果を見れば、乱暴な指導という批判も出るのかもしれない。しかし、ご指導してくださった教授は、大学院の授業料免除や奨学金の手配までしてくださった。
そして当方は、卒論の研究を続けることはできなかったが、大学院に進学し2年間SiCウィスカーを研究していた講座で学べたことを後悔はしていないし、またこの3年間があったからこそ今の人生がある、とこの教授に感謝している。
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研究開発部門でハラスメントを防止したいならば、役員以下皆コーチングスキルを身に着ける必要がある。しかし、当方のサラリーマン生活でもコーチングスキルの優れた役員を見たことが無いので、難しい願望だろう。
学生の時に今でいうところのアカハラとうわさのあった研究室を希望して研究生活をスタートしている。確かに厳しい研究室だったが、おかげで大学院に進学予定でもなかったのに進学でき、奨学金ももらえるほどの成績で、さらに教授推薦で授業料も免除されて幸運な3年間を送った。
3年生までパチンコ麻雀に明け暮れた生活が、勉学一色の生活となったがこれはこれで楽しかった。このときご指導くださった3人の先生は、今から思えばコーチングの名手だったのかもしれない。
ドイツ語を選択せず、英語だけの単位で進級してきた当方に対して、教授は毎朝1時間ドイツ語の指導をしてくださったが、ドイツ語の授業ではなく、毎日ドイツ語の専門書1ページ読むのが目標という指導だった。
ドイツ語の文法など全く分からない当方に、辞書の引き方を毎日丁寧に指導してくださった。不思議なことに1週間でドイツ語文法が身についた。1年間のカリキュラムで使用するドイツ語文法書を1週間で読み終えたのである。
無言の圧力が毎晩の復習のモティベーションとなって学習が加速度的に進んだのかもしれないが、これもコーチングと呼べる指導かもしれない。教授から決して褒めてはいただけなかったが、「今日はここまでか」とため息交じりに言われると不思議に明日こそ頑張ろうという意欲が沸いた。
4年の時に指導してくださった助手は、当方の名前を呼ぶだけだったが、その意味は声のトーンで理解できた。1年間名前しか呼ばれた記憶がなく、唯一明確な指示だったのは卒論を提出した時で、明日までにこれをまとめて序文としてつけるように指示された。その「明日」とは提出締め切り日だったのだが、50報もの英語で書かれた論文を渡された。
できるかどうか迷っている時間はなかった。すぐに家に帰り徹夜して論文を読み卒論を書き直した。翌日卒論を提出したところ、すぐに英文に直すように言われた。卒論を受理されたのだが、すぐにアメリカ化学会誌へ投稿する論文を書く宿題が出たのだ。
青色吐息で卒業証書を頂けたが、ショートコミュニケーションではあったが学会誌に載った体験は大学院で半年ごとに研究成果について論文をまとめる習慣となった。
有機合成の講座から大学院では無機合成の講座へ移った。この2年間ご指導してくださった先生は、毎日もうそのテーマは面白くないだろう、というのが口癖だった。
教授から出されたテーマだったが、毎年教授が出されたテーマを最後までやり通した学生はいなくて、皆が助手の方が企画した研究テーマに変更していた。
理由は、二週間ほど調査して理解できた。すでに研究成果が出ているテーマで研究するところが無いようなテーマだった。当方はホスフォリルトリアミドの重合によりポリマーを合成するのが課題だったが、すでにその重合機構や反応について研究論文が存在していた。
耐熱高分子から高分子の難燃化が興味を持たれる時代で、たまたまPVAの難燃化を某塗料メーカーの研究者が相談に来られた。そこてPVAの難燃化を研究したところ、アイデアが当たってすぐに良い結果が出た。そこで教授から出されたテーマを拡大解釈し、応用研究を2年間することにした。
研究の方向を自ら決めてショートコミュニケーション含め2年間6報の論文を書ける成果を出せたのだが、これだけ成果を出せた背景には、図書室にケミカルアブストラクトを調べに行くと、表紙に鉛筆で丸と二重丸の落書きがされ、紙片が挟まっている不思議な現象のおかげだった。
すなわち、誰かがホスフォリルトリアミドや、その他の高分子難燃化技術、あるいは無機高分子など当方の研究に必要な論文を先回りして読んでおり、重要度別にマークをつけておいてくれたのだ。
ゆえにある日から当方は、紙片と落書きを目標にケミカルアブストラクトを読むようになり、調査の効率が上がるとともに、研究アイデアも自然と浮かんだ。
2年間を終了し、図書室でケミカルアブストラクトに落書きしている犯人を図書担当の女性に尋ねてみたら、指導してくださった先生だった。くだらないテーマを辞めよと言いながら、研究の方向を当方よりも先に調べていたのだ。そしてそれを落書きとして残していた。
古いケミカルアブストラクトも調べたところ、教授の出された過去のテーマについて皆落書きのマークがついていた。当方以外の学生は、おそらくこのマークに気がつかなかった可能性がある。
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はるか昔にスポコン漫画が流行した。「巨人の星」を子供の頃憧れを持って読まれた老人が多いと思う。この世代は定年まじかか大半は退職老人になっている。
「巨人の星」世代から見ると現代のハラスメントに対する判断は、おそらく信じられない光景に映るのかもしれない。民間企業では、1990年代から、すなわちバブルがはじけた頃からハラスメント対策が始まっている。
写真会社に転職して間もなくハラスメントの管理職研修を受けたときに、その内容にびっくりした記憶がある。ゴム会社と大きく異なる風土の会社だと感じた。しかし、それが社会の標準となってゆく流れに気づき風土の問題ではなく日本社会の変化として捉えるようになった。
ただ、ここで見落としていけないのは、マネジメントの進歩が追いついていない点である。マネジメントとは人を成して成果を出させることである、とドラッカーは定義している(定義からしてパワハラの原因になりそうである)。
2000年前後からコーチングが注目を集めた。今でもコーチングを主体にしたコンサルティングや書籍の出版があるが、スポーツと異なるコーチングスキルが重要であることに気がついていない。
特に技術開発では、コーチ役がそれなりの問題解決能力なりスキルを身に着けていなければいけないと思っているが、当方がサラリーマン時代に3度ほど受けたコーチングの研修では、その観点が欠如していた。
弊社の研究開発必勝法ではその問題に着眼し、この10年指導方法も研究し、従来の問題解決法のスキルに重点を置いたセミナー内容からコーチングスキルの説明も増やす努力をしてきた。
新しい技術を実用化する場面では、担当者も含めどうしても熱くなる。この熱くなる感覚を理解されていない技術者は成功体験が無いと思われるが、成功体験があればあるほど熱くなる。成功体験を積んでいるにもかかわらず、皆が冷静な場合にはたいしたイノベーションも起きない。
この技術開発の問題を理解していると、ハラスメントが起きやすい職場として日常注意するが、そこに神経質になりすぎるとマネジメントに失敗する可能性が大きくなる。
このあたりをここで表現するのは難しく弊社のセミナーを聞いて頂きたいが、マネジメントの失敗をどのように防いだらよいのか、という思いで研究開発必勝法を企画している。
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40年以上前の出来事なので、ここで公開しても時効として許されるだろう。新入社員の技術開発実習発表会における出来事だ。当方はグループでまとめた「タイヤの軽量化因子」について、この実習の成果として試作されたタイヤを前に置き発表していた。
発表が終わり、CTOから「君が目標としている軽量化タイヤとは何か」という質問があった。これは事前に想定される質問として回答が用意されていた。
すなわち、軽量化因子についてコンピュータIBM3033で処理を進めた段階的重回帰分析により軽量化した時の到達重量を計算として出していた。実は、試作されたタイヤは計算値より3%ほど重かったので、計算値をプレゼンテーションでは示さず、試作タイヤの重量を示していた。
あらかじめ用意していた計算式と最低重量、試作タイヤの重量増の原因を示し、自信をもって回答した。指導社員からは、当時一般的に行われていたリバースエンジニアリングの手法により解析を指導されたのだが、せっかく多数のデータが得られたので科学的にまとめなおそうと、新入社員で自主的にマテリアルインフォマティクスしたのだ。
このような事情もあって、当方は自信満々科学的にプレゼンを行い、質問に対しても科学的に丁寧に回答をしたところ、CTOから「大馬鹿モン」と会場全体が凍りつく程の大きな声で叱られた。
発表していた当方は、張りつけ状態となり、CTOの講評を聞くことになった。講評は「科学的に解明できても市場で品質問題を起こす可能性があるのがタイヤだ。実地試験でその品質が確認されない限り、タイヤとは呼ぶな、」という科学的な発表内容を全否定し技術とは何かを熱すぎるくらい熱く語った内容だった。
今、世の中ではマテリアルインフォマティクスが話題である。40年前マイコンが登場したばかりの時代に大型コンピューターを用いた多変量解析により、「科学的」に解析した成果で、今ならばハラスメントになりかねないシーンが展開された。
しかし、その場にいた誰もがこれをハラスメントとは思っていない。発表会終了後、懇親会が開かれた。そこには人事部の役員は出席していたが、CTOは出席されていなかった。
後に社長となられたこの役員は優しかった。「とんでもない雷が落ちたが、気にしなくてよい。立派な発表だった」とねぎらってくれた。
役員が去った後、人事担当者が当方の発表に関わったメンバーが集まっているところへ来て、「CTOは指導された方たちへ雷を落としたのであって、君たちのことは褒めていた」と新入社員に配慮した言葉をかけてくれた。
当時ハラスメントなる概念すらなかった。むしろ、叱咤激励に熱を入れ過ぎた行為ぐらいに思われていた時代である。今ならばハラスメント体質の組織が日本中で常識的に存在していた時代である。
一方で今でいうところのハラスメントを受けたメンバーに配慮し、優しく励ます風土も存在していた。ゴム会社は、荒削りでありながら従業員に優しいところがある風土と社会で思われていた。懇親会ではそれを感じるに十分なアルコールと料理が用意されていた。
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昨日トヨタで起きたパワーハラスメントの和解がニュースになっていた。TVの扱いも含め国内の重要ニュースの一つ、として扱われていた。
ニュースの扱いも含め、様々な問題を抱えているニュースであることを感じた。トヨタのような会社でも起きたのだ、という驚きからここで文章として表現しにくい問題までさまざまである。
類似の事件として財務省の忖度事件があり、こちらはまだ最終解決まで至っていない。ニュースの扱いも昨日のように大きくはない。
報じられた内容を比較する限りにおいては、財務省でもハラスメントが存在した可能性が高いが、財務省の裁判はハラスメントを前面に出していない。昨日報じられた内容よりもひどい状態が想定されてもである。
昨日報じられたニュースは、ニュースを聞く限り難しい問題を含んでいる、と感じたので、それを伝えるために連載として書いてみたい。
まず、誤解を防ぐために最初に結論を書いておく。
21世紀においてハラスメントとは、被害者となる受け手が訴えて、その「事実」が存在した瞬間にハラスメントとして認定される。ここで「事実」が存在しても、受け手の対応で事件となるかならないかが左右される。第三者がその程度はハラスメントにならない、と思っていても、受け手が「事実」の存在を主張し、「事実」が認定されたらアウトである。「事実」に至るプロセスや状況は、「事実」に影響を及ぼさない点に注意する必要がある。
これが今回の事件でわかりにくいと思われた方は、セクハラの事件を調べていただけば理解しやすいかもしれない。文春砲がさく裂しても裁判になっていなかったり、裁判になっても加害者側が事実を否定しているにもかかわらず、否定できない「行為の事実」が提示されたなら裁判で負けるのだ。夫婦関係でも成立することを理解できたならば、ハラスメントの特徴を把握できる。
しかし、ハラスメント事件の中には、加害者側の「思い」が強すぎたためにその意図が無くてもハラスメントとされる場合もあったのかもしれないが、それを公に述べることも「ハラスメント容認」と受け取られるリスクが大変大きくなった。「思い」が強くても、一呼吸おいて「ハラスメントになるかもしれない」と考えながら「アドバイス」しなければいけない時代になった。
これはイノベーションを必須とする職場ではマネジメントが大変難しくなったことを意味している。この「マネジメントの難易度が極端に上がった」と、今回のニュースを聞き感じなかった方は、ハラスメントについてよく理解していない人である。
もし、今回のニュースでマネジメントの危機を感じられた方は、弊社にご相談ください。
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金属材料やセラミックスの教科書を眺めると、結晶系を基にした分類が出てくる。セラミックスでは鉱物学の本を読んでいるような感覚になる。
学生の時にある先生が、機能性セラミックスについて問われたらペロブスカイトの説明をすればセラミストのような顔ができる、と授業で言われていた。
有機材料に比較してセラミックスという学問を簡単に感じたが、実際に両者を研究してみてもやはり有機材料、とりわけ高分子は難しいと感じている。
この原因の一つは、学術に耐えうる分類法が存在しないことによる、と思っている。また材料をリバースエンジニアリングしようと分析しても、セラミックスの様に明確な分析結果を示すことが難しい。
目の前に組成も何もわからない材料を置かれたときに、セラミックスならばX線分析法で大体の推定ができ、組成分析を行ってこの推定結果と照合すれば、リバースエンジニアリングの90%は成功する。
しかし、高分子ではこのようにいかない。例えばPPS/ナイロン/カーボンのコンパウンドの分析でもリバースエンジニアリングで類似コンパウンドを開発できないことを以前この欄で述べている。
カテゴリー : 一般 高分子
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ブリードアウトにケミカルアタック、想定外の劣化など開発段階でロバスト設計を行ったにもかかわらず、高分子材料はしばしば市場で問題を発生する。
厄介なのは、多くの場合にコンパウンド供給メーカーと成形メーカーとが異なる点である。どちらの問題なのか明確にする必要がある。
ところが、組み立てだけ行っているメーカーにとって、これは頭の痛い問題である。組み立てメーカーにも品質検査の必要性から材料担当が配置されているが、その担当者が学会活動を行っているケースは稀だろう。
高分子材料については未だに新しい現象について学会で報告されたりする。ところが最近問題に感じているのは、発表者が市場の様子をしらないので、研究で見出された現象が実務的に重要な現象であると気がついていない点である。
もっとも学会の目的は科学の発展のため、と考えておられる研究者が多いので、それが問題となっていないし、それを問題にしても笑われるだけかもしれない。
しかし、学会活動の目的の一つに人類への貢献がある以上、本来このような日常の問題についても議論すべきだと当方は考えている。しかし、それが難しいことなのでこうしてそれを補う活動を起業して行っている。
すなわち日常の材料に関する問題を高度な視点から根本的に解決するために当方は活動している。このような活動も行っている理由は、複写機の外装材で起きた問題の原因について某コンパウンドメーカーのCTOと議論した苦い経験があるからだ。
すなわち、状況証拠の数々がコンパウンド起因であることを示し、さらにコンパウンドそのものもスの入ったロットが混ざっていたりして、そのロットで市場問題が起きていても、CTOは無関係を主張していた。
このCTOは高分子技術には詳しいが大変不誠実な人でコンパウンドに問題があると気がついていても、今の科学では完璧にそれを証明することができないことを知っているので無関係を主張していたのだ。
当方はそれを見抜いたのだが、科学的に完璧に証明できない以上、追及が難しいと折れなければいけなかった(注)。ただし、再発を防がなければいけないので、ロットばらつきの是正だけでもCTOに納得していただいた。
コンパウンドメーカーのこのような不誠実な対応が存在するので、当方の起業の動機になっているが、中国ナノポリスに招聘されたときに、指導しているコンパウンドメーカーの総経理には市場問題について誠実真摯に対応することを求めている。
(注)ビジネスではこのような場合に折れた方が負けになる、という人がいるが、ドラッカーは、ビジネス交渉こそ誠実真摯に行うべきことを説いている。
カテゴリー : 一般 高分子
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文科省が社会人教育に力を入れ始めた。ネットサーフィンをしていたらW大学で某企業フェローが大学院の学生に向けて送ったメッセージを見つけた。
そのフェローは、その内容から自己の人生には満足しながらも、一方でそれを覆い隠して後悔しているかのような不誠実な語り口であったようだ。
その内容は学生にためになることを話しているようでも、「博士の学位は企業で何の役にも立たない」とか、企業では、「専門能力が秀でていること」よりも、「皆ができることを普通にできる人が良い」とか、誤った組織論を展開していた。
一方で、「ビジョンを持った社会人になってほしい」と当たり前に良いことを発しながらも、「フェローまで昇進した自分は、そのような人生を送ってこなかった反省がある」と、聞きようによっては皮肉になるようなことを語っている。
この人物の公開されたメッセージメモを読むとドラッカーがいうところの誠実とは何か、ということを理解するのに役立つ。なぜなら、部分を見ると誠実そうに語っているようで全体が不誠実なメッセージだからだ。
ところで、このフェローの語った「博士の学位が企業で価値がない」という説だが、これは誤った認識である。「学位を持っていてもそれにふさわしい働きをしなければ、学位をその人物の価値の尺度として評価しない」というのが正しい。
これは、肩書だけあっても実力が無ければ評価されない時代だからである。また、ドラッカーは「頭の良い人が、間違った問題を正しく解いて成果を出せない」組織における悩ましい専門家の存在を指摘している。
大学院まで進学し、高度な教育を受けたならば、それを肩書だけで終わらせるのか、それを組織なり社会で役立てることができるのかどうかは、その個人の努力の問題である。
このフェローは自分の博士という肩書にふさわしい専門性を組織で生かせなかった、と後悔している。そのかわり、運よく組織を泳ぎ切りフェローまで昇進できた満足感を学生に語っている。
ちなみに、当方はゴム会社で博士の学位を取得する機会を設けていただき、転職してもゴム会社およびその関係者のご尽力で学位を取得することができた。もし、企業が博士の学位に意味を見出していないならば従業員に学位取得を促したりしない。
上司の方々に感謝と敬意を表すために、学位を取得してからは学位にふさわしい仕事を目指し、学会活動を転職した写真会社でも積極的に行ってきた。
転職した会社では、単身赴任するまで高分子同友会や日本化学会産学連携懇話会の窓口担当の職に就いている。学位を組織で生かす努力をして、日本化学工業協会や写真学会から賞を頂けたような、学位にふさわしい成果も出してきた。
ただ、成果にふさわしい昇進ができたかと問われると言葉が無いが、その原因が「皆が普通にできること」をできなかった、とは思っていない。
むしろ皆ができない過重労働でもそれが必要ならば、部下にやらせず当方が行ってきた。会社が成長する方向を提案し続け、そのように仕事をした結果である。毎年届く特許報償の通知の封筒が今年も届いた。
組織における昇進は運が大きく左右すると若い人には自信をもって伝えたい。当方の退職日には東日本大震災で退職祝いのパーティーまで吹っ飛び最後まで運が悪かった。しかし、何とか部長までは昇進できたのは、今も継続している多くの学びの結果だろう。
社会に出ても学ぶ努力は大切で、その時学位は学ぶ機会を増やしてくれる。少なくとも社会は高学歴の人にその活躍を期待しているのだ。期待外れとならないように学位にふさわしい知のポテンシャルを維持し高めてゆく日々の努力が大切だ。
学位は高度な学びのスタート地点に立っている証明書ととらえるとよい。スタート地点のままならば評価されないのは当たり前で、その時学位に価値が無いと感じるのだろう。
学位を取得したならば、そこを起点として社会に還元しながら学ぶ努力が求められている。誰でも学位を取得できるわけではないのだ。
カテゴリー : 一般
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最近話題となっているビッグデータの解析では、必ずしも科学的な解析とは言い難い例も出てきた。そのような例では、解析結果が普遍的真理とはならず、単なるその場限りの現象理解に終わる。
これを科学的ではないから、という理由で否定的に見ていると時代に乗り遅れるか、あるいは間違った情報を形式知としてしまうミスを犯したりする。せめて解析プロセスも含め経験知の一つ程度に考えるとよい。
すなわち、現代のデータ解析事例を眺めるときに、科学的に解析された結果なのか、単なるデータを整理し傾向を記述しただけの結果なのか、あるいは眉唾も含むその他の結果なのか、それを自ら検討する必要がある。
一方で、科学的ではないデータ解析あるいは手法の中には、技術開発にうまく取り込むと業務を効率化できる可能性もあるので、その手法がどのようなプロセスで行われているのか調べてみると面白い。
よく使われる手法として、多変量解析あるいはマハラビノスのTMがあるが、これは技術開発で集められた大量のデータから、未知の情報を絞り出すときに使える。高分子の難燃化技術セミナーで一例を示す。
15年以上前に歩留まりを10倍近く改善できた中間転写ベルトの技術開発では、それまでの開発で収集されたデータを解析し歩留まり向上のヒントを導き出している。CMCリサーチのセミナーで手法を詳しく説明する。
カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子
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