今月質問の多い高分子のブリードアウトについて、2時間の無料セミナーを開催する。通常6時間ほどの内容からポイントだけ取り出して解説する。
高分子初心者のためには、なぜ科学の結果と実務における結果が異なるのか、という視点で解説するので、材料開発の経験が無くても得るものがあると思っている。
二時間のセミナーだが、テキストは、補助資料として解説できなかった部分を添付するので購入する価値はあると思う。
さて、ブリードアウトを理解するためには、二つの重要なポイントがある。一つは溶解現象とは何か、他の一つは高分子の高次構造である。
ブリードアウトという現象は拡散現象であり、その理解は重要だが、実務では拡散現象よりも高分子の高次構造と溶解現象の理解が不可欠である。
これは、教科書に書かれている解説と少し異なる。しかし、実務でブリードアウトという現象を扱った経験から、この二つを十分に理解したうえで拡散現象の理解が重要だと思っている。
すなわち、拡散現象だけでブリードアウトが制御されているのであれば、品質問題の解決は容易である。しかし、現実は実験室の結果が市場で再現されない。
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10月度無料セミナーで予定している問題解決法のセミナーでは、9月度に行ったセミナーのタイトルから「ヒューリスティック」を外している。
9月度と少し内容を変更し、アイデアの生み出し方を中心に構成しなおそうと思っている。
問題解決法について20世紀は科学的手法のセミナーが人気を博したが、その結果が21世紀の日本の技術の現状である。
科学という哲学に対する誤解がある。科学が命ゆえに非科学はダメという考え方が科学そのものをダメにしてきた。
イムレラカトシュは科学と非科学の境界は時代により変化すると述べている。すなわち科学と非科学の境界は曖昧なのだ。
21世紀には非科学的だと言われてきたあみだくじ方式の実験でノーベル賞受賞者が生まれている。
まったく根拠のないヤマカンではさすがに問題解決に役に立たない確率が高くなるが、根拠のあるヒューリスティックな解決法でアイデアも出てくる。
9月のセミナーではアイデアを出す方法について紹介例が少なかったが、10月度はそこに重点を置き、講義する。
頭の良い人が「間違った問題」を迅速に「正しく解いて」成果を出せない、とはドラッカーの言葉だが、頭の悪い人でも正しい問題を根性で正しく解けば成果を出せる、とは当方の経験談である。
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下記予定で今月WEB会議システムを用いた無料セミナーを予定しています。ご希望の方は弊社へお申し込みください。
10月19日(月)13時30分から15時30分 問題解決法
10月20日(火)13時30分から15時30分 高分子の難燃化技術
10月23日(金)13時30分から15時30分 高分子のブリードアウト
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昨日の続きになるが、水と油のように混ざり合わないものを混ぜようとしてもなかなかうまくゆかず、2相に分離するが、100℃ぐらいまで温度を上げてやると、油が少なければ油滴となって水の中に分散する様子を観察することができる。
すなわち、温度という因子は、それが高くなると物質が混ざり合うようにするような感覚に思えてくる。
温度が上がると水の分子運動が高くなるので、と説明すると教科書的になるが、混合のエントロピーの効果は、肉の煮込み料理を作ってみれば、教科書を読むよりも容易に理解できる。
男子厨房に入るべからず、は頭の固い昔の爺の考え方だが、男も料理をすべきである。率先して料理を行えばこのような物理現象を何度も観察できる機会に恵まれる。女性だけにそのような機会を独占させておくのはもったいない。
サラダドレッシングでも肉の煮込み料理でも100℃から室温まで冷却してくると、細かい油滴は連結して大きくなって相分離が明確になってくる。
この時油が少ないならば、大きな油滴が何粒もできるような状態になるが、水と油が同じような体積であると、水と油の二相に分離する。
少し難しい表現をすると、界面エネルギーが粗大化を支配する相分離では、このような体積割合の違いで共連結構造になったり粒子状構造になったりする。
もし、混ざり合わない(χが0でない時)AとB2種の高分子を無理やり分子レベルで均一に混ぜたとする。
A分子とB分子の接触した界面エネルギを下げるよう(混ざり合わないAとBが一緒にいるのは居心地が悪いはずである)に、すなわち界面を少なくするように力が生まれそうだ、と気がつくはずだ。
相分離が始まると、AとBの割合が変化、すなわち濃度変動を起こす。やがて許容できる、お互いに許しあえる濃度範囲で安定になる。しかし、最も安定なのは、A相あるいはB相単独であるはず(χが0とならないので)で、最終的にはA相だけあるいはB相だけになる。
このような相分解様式をスピノーダル分解と呼ぶ。高分子の相分離で見つかっているのは、多くがスピノーダル分解でありその他の粘弾性相分離などよくわからない相分離形式もあるが少ない。
当方が驚いたのは、PPSと6ナイロンは一般の混練機で混練する限りは、少ない成分が島となる海島相分離するが、カオス混合を行うとこれが相溶し、急冷しても5年以上室温で相分離せず安定であったことだ。
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スピノーダル分解は高分子の相分離や濃度の高い合金でみられる一般的な相分離現象である。決して難解で特殊な分解機構ではない。言葉が難しいだけで、100回ほど唱えれば易しく見えてくるはずだ。
油(仮にA相と呼ぶ)と水(仮にB相と呼ぶ)に分離したサラダドレッシングを見つけたら振ってみてほしい。室温であれば、放置するとすぐに二相に相分離する。
玉ねぎその他がこのドレッシングに入っていても、少しなかったことにしてほしい。目の前のサラダドレッシングは、A相とB相に分離している(層ではなく相という表現に慣れてほしい)、とみていただきたい。
どうしてもそのように見えない方は、実際に油と水を混ぜて透明な容器に入れて眺めていただきたい。A相とB相の二相に分かれている現象を観察することができる。
1日眺めていてもそれらが自然と混ざり合うことは無い。分離していること、別々にいることが安定状態だからだ。だから強引に振って単一相にしようとしても二相に分かれる。
水と油は混ざり合うことが苦手なので、すなわち均一に単一相となることが不安定なので二相に分かれるという現象の説明は理解できるだろうか。人間関係の水と油の関係は理解できるが物理現象は理解できない、という方は、明日の説明を読まないでほしい。
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10月に2時間の無料WEBセミナーとして、高分子のブリードアウトについて企画している。もし聴講をご希望される方は、希望日を明日までに弊社へ申し出ていただきたい。
当初WEBセミナーの研究用として休日行ってきましたが、平日を希望される方もおられましたので、平日にも行ってみようと考えました。
そこで、平日行うならば希望者の予定に合わせて開催しようと考えました。弊社の予定もありますが、参加者の希望を優先したいと思いますので、参加者の多い日を重視して決めさせていただきます。
そのほか、ケミカルアタックや射出成型、押出成形、混練、シリコーンポリマー、高分子の誘電率制御、5G、高分子の難燃化技、機能性セラミックス、問題解決法などこれまでセミナーの講師として招聘されたテーマでも行ってみようと思っていますので、希望テーマにつきましても明日までにご連絡いただければ、と思っています。
注意点として、2時間という短時間であるため、テーマによりましては質問時間が無くなることがあります。また、セミナー資料は有料でダウンロードしていただくことになります。
テキストを有料としておりますのは著作権を考慮しての扱いであり、WEBセミナーの録画は禁止行為となりますのでご注意願います。
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科学の成果として技術がある、という言い方は、一部の当たり前の技術では正しいかもしれないが、高純度SiCの発明については、根性の成果として技術が完成している。
技術が完成してから、その技術の成功が科学的に考えて必然だったことを完成した技術を用いて明らかにしている(注)。
フェノール樹脂とポリエチルシリケートの分子レベルで均一に混合された前駆体によるSiC生成の反応速度論解析もその一つで、この解析を行うために、2000万円かけて熱分析装置まで開発している。
すなわち科学的に厳密な実験を行うために、世界初となる分析装置まで発明したのだ。学位論文には詳細がかかれているので興味のあるかたはそちらを読んでいただきたい。
ポリエチルシリケートとフェノール樹脂を分子レベルで均一に混合する技術については根性で見つけているが、SiC化の反応を解析する分析装置についても一度は分析機器のメーカーがギブアップした装置を当方の手作りの部品を使い根性で完成している。
前者は鼻歌交じりに行っているが、後者は2000万円がかかっていたので、冷や汗かきながらの作業だった。しかし苦労のかいがあり、2000℃まで1分未満で昇温可能な熱天秤を完成させることができた。
すなわち、技術ができて初めて新しい科学の真理が生まれたのだ。技術の成果として新しい科学が生まれた、と高純度SiCの発明では言える。
このような新しい科学を生み出すような技術開発を目指しているのが弊社のコンサルティングポリシーであるが、これがなかなか理解されない。それだけ科学信仰が強いのだろう。
当方は科学を否定しているのではない。新しい科学を生み出すような技術開発が重要だと思っている。最初に根性の成果と書いたのは半分冗談だが、新しい科学を生み出すためには、既知の科学のロジックを超えるロジックを適用して初めて成功する。
弊社へお問い合わせください。昨日の無料セミナーでもこの点について解説しました。
(注)山中博士も同様にヤマナカファクターを見出し、それを用いて科学を展開している。ヤマナカファクターは技術の成果としてまず生まれたことを理解する必要がある。その技術は科学で生まれているので、科学の成果と山中先生は謙虚に言われるが、ヤマナカファクターそのものはあみだくじ方式による技術成果である。くじを引くか根性を使うか、あるいはーーーー。
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フェノール樹脂とエチルシリケートの組み合わせを高純度SiCの原料に用いることが新規であることをどのように知ることができたのか。
簡単である。大学院時代に在籍した研究室でSiCウィスカーの研究をテーマとしていた研究者が数人いて、彼らの輪講や研究報告会に欠かさず出席していたからである。
そこでもフェノール樹脂やエチルシリケートを原料とした方法が研究されており、失敗している。すなわち、この原料の組み合わせは高純度SiCに不向きであることが科学的に証明されていた。
論文には書かれていないが、失敗実験のデータとして報告され、その失敗の原因がSP値にあったからである。高分子の世界ではフローリー・ハギンズ理論で否定される組み合わせだった。
すなわち、ポリエチルシリケートとフェノール樹脂を均一に混合し安定な前駆体を製造することは、科学的に困難な技術とされていた。
よく技術は科学の成果であるから科学の研究に力をいれよ、という人がいるが、科学を信じれば信じるほど技術開発が難しくなる、というパラドックスをそのような人はご存じない。
技術開発で少しでも成功体験のある人は、一応周囲への配慮から科学への殉教を誓うが、内心は非科学的でも成功する可能性のある限り、なんでも実行しようという考えを持っている。
科学が進歩すればするほど、そのような人でなければ新しい発見ができなくなるから面白い。
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大量の情報を短時間にどのように処理するのかは、情報処理が容易になった現代でも重要問題の一つである。
最近ビッグデータがよく話題になるが、大半はコンピューターで多変量解析を行った結果である。重回帰分析か因子分析(主成分分析など)が良く用いられている。
こうした手法を用いることが最近の成果だと誤解している人が多いが、重回帰分析や因子分析の手法は1970年代にすでに利用できた。
ちなみに、当方は新入社員研修で担当したタイヤの軽量化問題について、重回帰分析と主成分分析を駆使して解いている。これらのプログラムがIBMの大型コンピューター3033に付属したソフトウェアーのパッケージに入っていたので、英文の読解力があれば簡単にデータ処理ができた。
その時に大きな問題となったのは、データ入力の部分である。最近ビッグデータ解析がよく用いられるようになったのは、文献などの良質なデータがデジタル化されて、それを大量に集めて処理しAIに入力することが容易になったからだ。
特許のような文献データについて40年以上前の状況は、まずそれを紙にコピーして整理するところから始めなければいけなかった。そのためそれが作業の障壁となっていた。
セラミックスフィーバーの時代にセラミックス業界以外から多数参入できたのは、古典的方法によらないセラミックスの高純度化技術が全くの新規分野であったため調べるべき情報データが少なかったからである。
当時「高純度化」という技術は、ファインセラミックス開発の目標の一つであり、経済性の高い高純度化技術はどのようなものでも新規技術になる可能性が高かった。
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セラミックス材料を高純度化する技術はコストがかかる。なぜなら結晶に固溶した不純物を取り除くために一度結晶を壊す必要があるからだ。
SiCであれば、BやAl,その他遷移金属は容易に固溶する。これら不純物を除去するには、昇華と再結晶を繰り返さなければいけない。いわゆるレイリー法である。
高純度原料を用いて高純度プロセスにより製造すれば、高純度セラミックスができることは、だれでも容易に想像できるが、レイリー法と比較して経済性が優れているのか、という検証は容易ではない。
それができたとして、価格を比較することは容易だが、実際にできるのかどうか、すなわち実証実験に費用がかかるからだ。
1980年代に高純度SiCの原料として、C(炭素)源は、高純度カーボン、有機物が、Si源は高純度Si,高純度SiO2、有機Si化合物、有機シリケート化合物が知られていた。
そして、これら原料の組み合わせ特許とそれを原料として製造する方法の発明がミカンの段ボール箱で15個分出願されていた。
このミカン箱の個数は、ゴム会社の知財担当の部長が当方に整理するよう送ってきた個数である。当時はデジタル化されていなかったので、20年分の関係する特許のコピーをこのように集めてそれらを整理することから技術開発をはじめていた時代である。
留学中毎朝テニスを一時間、夕方はボールが見えなくなるまでテニスをしてます、と日常を語ったことを後悔したが、段ボール箱15箱を2週間で整理している。
整理した結果は、どんぶり調査(ざる調査ではない)の結果と同様であり、エチルシリケート(ケイ素源)とフェノール樹脂(炭素源)の組み合わせ特許が存在しなかった。
エチルシリケートと他の炭素源の組み合わせや、フェノール樹脂と他のケイ素源の組み合わせ、並びにそれらを原料とした製造プロセス、応用技術に関する特許はミカン箱2箱分存在した。ただしSiCの製造方法に関係しないノイズ特許もこの中に含まれている。
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