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2021.02/06 危機に勝つ方法

すでに中止が決断された、など怪しいニュースが飛び交い、東京オリンピックが開催危機である。おそらくもう延期は無いので、このまま感染拡大が続く限り、オリンピック中止は妥当な判断であり、国民のアンケート結果もそのようになっている。

 

 

残念なのは、中止という判断を下す背景が、現在の世界の感染状況にある点である。あまりにも当たり前すぎて、やはりウィルスには勝てないのか、という諦めが日本中を支配する点に、未来に向けて後悔が残るのではないか。

 

 

隠居蟄居しか対策手段が無い、というのは残念であるが、実際にはそれを認めて蟄居してきても、この科学の時代にこれではあまりにも情けない気がする。

 

 

もう少し、英知を絞り出して、開催の可能性を探ったほうが良いのではないか。映像だけに特化した無観客開催は一つの方法であり、選手の行動を十分に管理すれば選手から感染者を出さない方法があるのではないか。

 

 

商業化したオリンピックは開催ごとに派手になってきたが、今回の東京大会は思い切って派手な演出を辞めて予算を削り、お金を選手の感染予防に向けて開催することはオリンピックの歴史を考えたときに大きな意味がある。

 

 

また、それができたときに、事業の危機に遭遇した時にどのような対応をとり、判断を下してゆくのかのモデルになるのではないか。

 

 

残念なのは、開催を叫ぶ人が開催するための具体策を提案していないだけでなく失言を繰り返している。予算は明確になっているのだから、改めて感染予防のための予算編成をして国民に提示する義務があると思う。

 

 

開会式や閉会式は、聖火の点火と選手宣誓だけにして予算0でもよいような気がする。オリンピックの中止は、リスクを考慮すればあまりにも当たり前の判断である。しかし、リスク回避策が徹底されてオリンピックが成功した時に、感染症予防に対する知恵を獲得することになる。

 

 

可能性がある限り、ぎりぎりまで否定的決断を出すべきではない。かつての高度経済成長下では、早めの否定的決断は、成長を約束したが、低成長下では、時間のある限り、ぎりぎりまで「どのようなアクションをとれば実現できるのか、その可能性」を考える事が重要である。弊社のコンサルティングの基本姿勢である。

 

カテゴリー : 一般

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2021.02/05 高分子の難燃化技術を考える(5)

高分子材料の難燃化技術は、1970年代に体系的な科学としての研究が始まったととらえている。その後もアカデミアでの研究が続けられているが、不燃化ではなく、難燃化という考え方が確立されたのも1970年代である。

 

 

実は、高分子を燃えにくくしようとする試みは、ピラミッドの時代から存在し、竹取物語では、高分子の不燃化が不可能である予測が登場し、かぐや姫のセリフにそれが示されている。もっともかぐや姫は月よりの使者だったので未来技術を知っていても不思議ではない。

 

 

それがようやく1970年代に火災に関する科学の体系的研究が活発になり、極限酸素指数法や、1983年にはコーンカロリーメーターの発明がなされている。

 

 

1980年代は高分子の難燃化が、科学による形式知が明確となり技術として発展し始めた時代であり、1993年につくばで第一回発熱速度と火災に関する国際会議が行われている。

 

 

この高分子の難燃化というテーマは、科学と技術について学ぶには大変適したテーマである。形式知だけで火災という現象をすべて記述できないことは明らかであるように、どうしても経験知をその理解のために使う必要がある。

 

カテゴリー : 一般 高分子

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2021.02/04 5G情報通信用材料のセミナー

2月18日(木)と2月22日(月)に情報通信(5G)用材料技術についてセミナーが開催されます。前者はゴムタイムズ社主催で、後者は技術情報協会の主催です。いずれもWEBセミナーです。

 

 

弊社へお問合わせ頂くか、直接主催企業へお申し込み頂いても構いません。またその時弊社のご紹介であることをお知らせいただければ、講演者紹介割引をご利用頂けます。

 

 

セミナーでは、材料技術の観点から今後の自動車分野のニーズについても解説いたします。また、最近特許出願も増加してきました負の誘電率についても少し解説いたします。

 

5Gの普及で新たに登場する市場を理解するために、情報通信分野の発展史について触れ、プロセシングも含めた高分子材料設計技術をどのように開発してゆくのか講演します。

カテゴリー : 一般 宣伝

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2021.02/03 怪しい専門家

昨日菅首相の記者会見で、尾見会長から、コロナウィルスを単なる風邪のウィルスと同じ扱いにすれば医療崩壊を防げるという専門家もいるが、という発言が飛び出した。

 

 

科学で十分に解明されていない分野では、この発言に見られるような、いい加減な怪しい専門家が出現するものらしい。尾見会長は、単なる風邪のウィルスとは異なる、と力説されたので安心した。

 

 

急激に変化する感染者の症状及びそれに対する医者の混乱の状況を見ても分かるように単なる風邪のウィルスとは異なる、未知のウィルスである。

 

 

ド素人が判断しても単なる風邪とはいいがたい未知のウィルスを平気でインフルエンザと同様の扱いで良いと考えている医者の見識を疑う。

 

 

実は、1980年代の高分子難燃化技術でも似たような状況だった。極限酸素指数値が21未満の高分子材料は、ろうそくの火程度のわずかな炎でも燃焼をし続ける。この値が小さければ小さいほど空気中では燃えやすい。

 

 

それが19前後の高分子材料でも炎から逃げる様に変形できる高分子材料なら難燃性高分子とみなしても良い、というアカデミアの先生がいたのだ。

 

 

たしかにこのような高分子材料ならば、燃焼試験で炎を近づけたときに炎の熱で変形し、着火しにくくなるので「難燃性」と呼べなくもない。

 

 

しかし、着火すれば、燃焼し続けるのだ。この先生のご指導のおかげで、市場に燃えやすい建築材料が溢れて社会問題となった。社会問題となったが、この先生は何も責任をとっていないし、当時学会で見かけても反省のご様子もなかった。

 

 

形式知が不十分な分野では、人気取りとなるような見解を述べる「専門家」がいるので注意をする必要がある。昨年12月上旬には感染者数は減少に転じる、とシミュレーション結果を示した専門家がいたが、どこに行った?

カテゴリー : 一般

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2021.02/02 高分子の難燃化技術を考える(4)

1970年代に高分子難燃化技術について形式知の整備が進んだ。ゴム会社就職前に東北大村上先生らが翻訳された古典的名著も出版されていた。

 

当方は大学院でこの書を読み、ホスホリルトリアミドをPVAの反応型難燃剤として使用できるようにデザインして、PVAの難燃化に学生時代成功していた。

 

PVAを難燃化材料の対象に選んだのは、難燃化が難しい高分子として知られていたからだ。当時は一部の高分子について難燃化が成功していた時代で、難燃化の基準も提案され始めた。

 

極限酸素指数法についてJIS化が検討されており、スガ燃焼試験機が発売された。PVAは環境にやさしい水性塗料に使用されていたので、極限酸素指数法で評価した結果を色材協会誌に論文投稿している。

 

当時すべての有機高分子材料を不燃化する技術は現実的ではなく、難燃化すなわち燃えにくくする技術が実用的と言う考え方が普及し始めており、そのための難燃化規格が各業界で検討されていた。

 

難燃二級は建築用の難燃規格として登場して、炎から逃げるように変形する硬質発泡体が、高分子発泡体メーカー各社から発売されるようになった。そしてアカデミアからも炎から逃げるように変形する高分子材料は難燃性高分子材料の一つ、とまでお墨付きがでた。

 

その結果、極限酸素指数値(LOI)で20にも満たない発泡体で台所用天井材が開発され、1980年になって社会問題化し始めた。ちなみにLOIは1970年代に提案された難燃性高分子材料の評価技術で、1970年末から各国で難燃化規格として検討され始めた。

 

高分子の難燃化技術について体系的な科学的研究は、1970年頃から始まった、と捉えている。ただし、森林火災についてホスホリルトリアミドのようなりん系化合物を散布する技術は知られていたので、高分子を燃えにくくする技術は古くから存在した。

 

 

 

カテゴリー : 一般 高分子

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2021.02/01 高分子の難燃化技術を考える(3)

軟質ポリウレタン発泡体製造技術及び、それを実験室で簡便に行う方法など、軟質ポリウレタン発泡体を開発するための周辺情報についてそろったが、高分子の難燃化技術については、当時各社が競っていた時代である。

 

また、市販されているリン酸エステル系難燃剤について現在ほど種類が多くなかった。臭素系難燃剤について開発が盛んになるのはこの5年後である。

 

ただ、塩素系化合物と三酸化アンチモンとの組み合わせ難燃剤については、開発が先行しており、ゴム会社でも米国のタイヤ会社から技術導入した塩ビ粉とアンチモンとの組み合わせ難燃化技術が難燃性軟質ポリウレタン発泡体に使われていた。

 

この系の問題は、配合された処方を半日以上放置すると塩ビ粉やアンチモン系化合物が沈降し凝集して使えなくなる現象だった。また、この系の検討過程で難燃剤成分の分散状態が難燃性に影響を与えることも知られていた。

 

ところで、高分子の難燃化技術について、すでに一部難燃化機構が学会で議論されており、それなりの体系が見えつつあった。

 

教科書には、リン酸エステル系難燃剤による燃焼時の高分子の炭化機構が図示されており、また燃焼時に塩素とアンチモンが反応して塩化アンチモンが生成して空気を遮断する機構も解説されていた。

 

新しい難燃化機構として、溶融型や、炎から遠ざかるように変形する技術などが提案されていた。後者は当時の硬質ポリウレタン発泡体の難燃化技術として市場で成功していたかのように見えた技術である。

 

実はこの難燃化研究を担当してから半年後に難燃性天井材としてすでに販売されていた製品による火災多発が社会問題となっている。

 

カテゴリー : 一般 高分子

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2021.01/31 高分子の難燃化技術を考える(2)

ホスファゼン変性ポリウレタンフォームの企画は、すんなり採用された。10か月後に新入社員発表会があるのでそれまでに1回目の試作の工場実験を済ませる計画が指導社員により作成された。

 

この計画も,ただ言葉が躍っているだけの計画であり、実際の実験については、当方に丸投げされた。そうはいってもポリウレタン発泡体など未体験の技術だったので、指導社員に教えを乞うたところ、発泡体生産現場の技術課に情報をもらいにゆく、と説明された。

 

すなわち指導社員も硬質ポリウレタン発泡体の開発経験はあるが、軟質ポリウレタン発泡体の開発は初めて、ということで現場で指導してもらった。この時、企業において技術は現場に存在することを改めて復習した。

 

新入社員研修の工場実習で技術と現場の関係について散々教育されたから、「復習」である。すなわち、現業の技術は現場が維持改善する使命を担っていた。

 

ホスファゼン変性軟質ポリウレタン発泡体は、ゴム会社では新技術であり、また実用化されれば、ポリウレタンでは世界で初めての技術となる。

 

ホスファゼンの構造については、いろいろなデザイン案が考えられたが、イソシアネートとの反応を考慮して、ジアミノホスファゼンを検討することにした。

 

もちろん当時ホスファゼンなど市販されていなかったので、自分でこの化合物を合成する必要があった。

 

しかし入社前の実験でジアミノホスファゼンについては、4種類合成しており、論文の原稿が出来上がっていた。ゆえにこの作業は経験をそのまま生かせるので朝飯前だった。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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2021.01/30 高分子の難燃化技術を考える(1)

ゴム会社に入社して10月に研究所へ配属されたかと思ったら、たった3か月で研究所内の異動により、ポリウレタンの難燃化技術を担当することになった。

 

当時大八化学が、各種リン酸エステル系難燃剤を開発し伸びていたころである。異動先のグループでは、硬質ポリウレタン発泡体天井材を上市した時であり、研究所内で勢いがあった。

 

課長(主任研究員)が、新たな企画を説明してくれたが、そこには「最先端の難燃化技術開発」とか、「不可能だった難燃性と物性の両立」など、華々しい言葉が躍っていたが、具体的な技術手段は何も書かれていなかった。

 

当時はこのような言葉遊びの企画でも経営陣がありがたがった時代である。具体的に何をすればよいのですか、と質問したら、課長は、若い頭で考えだしてくれたまえ、と言うだけだった。40年前は、これで優れたマネジメントができていると言われていたグループだった。

 

新しい指導社員と企画の具体化作業に入った時に、ホスファゼン変性ポリウレタン発泡体を提案している。当時ホスファゼンを用いた高分子の難燃化技術は、論文が出始めたばかりだった。

 

1970年代にアメリカのオールコック、日本では梶原鳴雪先生らが基礎研究を進め、アメリカのジェミニ計画では、ファイアストーン社で開発されたホスファゼンゴムが採用されている。

 

大学院の2年間無機材料の講座でホスホリルトリアミドの縮重合を梶原先生にご指導いただき、ファイアーストーン社のニュースと日本のゴム会社がサンプル取り寄せを行い研究している、という情報を調査して知っていたので就職先としてゴム会社を選んでいた。

 

大学院を修了し、ゴム会社入社式までの3週間弱の春休み期間に梶原先生のお手伝いをしてホスファゼンの研究を行っている。当方にとって趣味は研究であり、卒業旅行よりも楽しかった。

 

この3週間弱の自由な研究で、ホスファゼンのジアミノ体についてショートコミュニケーションと新規環鎖状型ホスファゼンポリマーに関する論文を書くための実験データを得ていた。

 

梶原先生から度重なる催促の手紙を頂いたので、ゴム会社に入社後研修中に論文を作成し投稿している。そのような経緯があり、ポリウレタン発泡体の合成において、反応型難燃剤としてホスファゼンジアミノ体を使用するアイデアを無理なく提案できた。

 

カテゴリー : 一般

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2021.01/29 考える(13)

機能を取り出すための実験をどのように行うのか、それこそ技術者は七転八倒しながら考える。実は技術者にとって、この考える作業が最も難しく、技術者の力量に差が出る作業である。

 

故田口先生が、基本機能を考えるのは技術者の責任と言っていたのは正しく、それにより、この大先生はありとあらゆる分野でコンサルティングができたのだ。

 

しかし、この大先生は、タグチメソッドのご指導をしてくださったが、基本機能をどのように考えたらよいのかまでは指導してくださらなかった。

 

この大先生のコンサルティングを3年間直接ご指導いただいた経験に基づき、タグチメソッドだけでなく、基本機能をどのように考えるのか、そもそも新しい機能を取り出すためにどのように考えなければいけないのか、といった相談まで受け付けています。ご相談ください。

 

カテゴリー : 一般

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2021.01/28 考える(12)

機能が明確になっているときには、設計を行い、機能の動作確認の実験を行うこととなるが、機能が不明確の時、あるいは、新しい機能が必要なときには、設計ができない。

 

 

おもしろいのは、ここのところが良くわかっていない人がいる。いつでも何かモノの設計ができると勘違いしている人である。

 

 

新製品のためにいきなり設計できるケースでは、新製品の機能が既存の商品よりも大差ない場合である。新しい機能を導入した新製品では、機能の動作確認だけでなく、機能を設計するために必ず実験が必要になる。

 

 

ここで実験せずにいきなり設計を行うので、クレームの山となるのだ。アジャイル開発では、クレームは了解事項と考え対策しているので、それほどの経済的負担とならない。

 

 

しかし、通常のステージゲートで着実に開発してきた場合には、大きな経済的負担となるケースがある。

 

ゆえに設計段階で、必ず機能の動作確認のための実験をおこなうことを勧める。機能の動作確認以外に、新しい機能が必要となり、機能を取り出すための実験も技術で考えるときには重要である。

カテゴリー : 一般

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