この3月末に高分子の難燃化セミナーを企画しているが、新技術について公開しようか迷っている。いくつかアイデアを中国で試してみて可能性を確認しているが、特許を書いていない。一部基本特許をあるメーカーから出願し先日公開された技術もあり、それは今回のセミナーで初公開となる。
判断で悩んでいるのは、特許を出願していない技術である。これは中国のコンパウンドメーカーにも教えていない方法でまだ実用化されていない。しかし、幾つかの現象を組み合わせると新しい難燃化機能が見えてくる。
難燃化技術は、科学の世界ではとらえきれない技術であり、元名古屋大教授武田先生もその難しさについて語っている。科学では難しくとも人類は経験で、ハロゲンとアンチモンの組み合わせやリン系化合物を見つけてきた。燃えるイメージの赤燐さえも難燃剤になるのだ。
高分子の難燃化技術で難しいポイントは、難燃剤を高分子にどのように均一に分散するのかという問題である。すなわち、難燃剤成分の分散プロセスがその機能発現に影響する。難燃剤を使わないで可燃性高分子を難燃化する技術もセミナーで紹介するが、この技術は難燃剤の分散というプロセスから解放された技術である。
従来の高分子の難燃化セミナーとは少し異なる視点で、科学で対応できない技術にどのように取り組んだら良いかと言う問題解決法的な要素も講演しようと考えている。ご興味のある方は弊社へ問い合わせてください。3月29日に東京で開催します。
<セミナーのご案内>
日時 2019年3月29日
場所 大井町きゅりあん
<内容>
高分子の難燃化を科学で体系化するのは難しいですが、アカデミアのチャレンジ結果も出そろい経験からおおよその体系が見えてきています。混練技術にまで遡及し、経験知による体系を提示します。
カテゴリー : 一般 学会講習会情報 電気/電子材料 高分子
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実験を行う目的は、大別すると2つある。一つは、仮説を確認するためであり、他の一つは、機能を調べる、あるいはチェックするためである。
前者は、主に科学者が研究のために行うものであり、後者は、多くの技術者が行うべき実験である。前者は小学校から学習してきたので、主に後者について考えてみたい。
写真会社に転職してびっくりしたのは、実験は仮説を確認するためだけにやれ、と仮説に基づく実験だけを強制していた管理職がいたことだ。
タグチメソッドが導入されたときには、L18の実験は仮説を確認する実験だと大変狭い意味の指導をしていた。
ラテン方格を用いるL18実験は、本来すべての条件で実験を行っていては時間がかかるので、一部実施の実験で基本機能のチェックを18種の実験で確認しているのだ。
制御因子を配置していても実験結果を検討するとそれが制御因子とならない場合があり、そのため制御因子を仮説だなんて説明していたが、制御因子は仮説ではない。
技術者が考案したシステムを機能させるために操作すべきレバーあるいはダイヤルに相当するものだ。
実験開始前に制御因子として設定しても、それがSN比の制御因子と言えるほどの寄与が無かったときには、調整因子として利用できる。
すなわち、SN比に影響を与えないで機能の調整ができる因子となる。ゆえに最初に制御因子を設定した時にこれを仮説だけの意味に捉えるのは少し無理がある。仮説の様にみえてしまうが、単なる仮説だけの目的で制御因子を設定して実験をするわけではない。
カテゴリー : 一般
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この一カ月近く表題のキーワードを見ない日がない。およそファッションには興味が無く、その結果ZOZOTOWN(以下ZOZO)については通り一遍の知識しかないが、表題の現象について、必ずしも一般に書かれている内容のような見方で当方は現象を捉えていない。
ZOZOについては、高級ファッションをインターネットで安価に購入できるようにした功績が大きいが、そもそも高級ファッションであり続けるためには、販売もその価格維持ができる販売形式でなければいけない。
若いころにJUNとかVANとかのブランドが流行った。しかしこのような流行はやがては下火になる。すなわち流行らなければだれも着なくなるからだ。ある日新品VANジャケットが1500円代で販売されていた。それまで10倍の値段で売られていた商品である。
さすが名古屋の投げ売りはすごく、今でも某高級エビせんの割れたかけらは1/3の価格で売られていたり、マロングラッセの砕けた粒の袋詰めが200円程度でデパ地下で売られたりしている。名古屋のこのような投げ売り商品は「買い」である。
ところでこのVANジャケットを購入して通学時に着たのだが、何か違和感があった。周りが着ていないのだ。そもそも流行ブランドと言うものは周囲が来ているから流行であって、流行が過ぎればいくらデザインが良くてもだれも着ず、そのようなデザインを着続けていると、周囲から浮く。
結局価格が1/10であっても1シーズン着なかったので高い買い物になったのだが、およそファッション関係の価格はこのような宿命である。だから一流ブランドが流通革命というキーワードに踊らされてZOZOに進出したが、それがブランド価値を落とす行為だと理解したら撤退するのは当たり前である。
高級ブランドは新品が安価で販売されたとき、その命を失うのである。高級ブランドを追いかける層は一定量いるので、その市場で事業を行うのが鉄則である。当方は高級ブランドよりも自分磨きにお金を使う主義なのでZOZOには興味が無かったが、これだけ世の中で騒がれると知らなくてもよいことを知ってしまう。
カテゴリー : 一般
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平成の働き方の変化、ハラスメントはなぜ増えたか、という記事を昨日見つけた。その記事に次のようなことが述べられていた。
「これは、セクハラやパワハラが悪いことだと世間に認知され、「我慢しなくていいんだ」と考える被害者が増えたこともあるでしょうし、いじめや嫌がらせの内容が昔に比べてひどくなっているという可能性も考えられます。」(ヤフーニュースやつづかえり氏の記事から引用)
この見解について、前者について同感だが、後者については昔のほうがひどかったので、この意見は外れているように思う。
例えば、小生は20年ほど前にフロッピーディスクを壊されるような嫌がらせを受けてゴム会社から写真会社に転職しているが、「この程度は大したことではない」というのが当時の見解である。
しかし、当方はこれを異常な犯罪として捉え、せっかく立ち上がり始めた高純度SiCの事業を他の人に任せ、転職している。少なくとも20年ほど前は、職場のハラスメントに対する感覚が今ほど敏感では無かったと思う。
転職後、社外活動の機会が増えたので、職場の問題を他社の方から聞く機会が増えたが、さすがに当方ほどひどい事例は聞かない。むしろ、20年間に職場の問題は、改善されてきたはずである。
写真会社を早期退職し起業したら、ゴム会社から講演依頼という最初の仕事が飛び込んできた。転職した時の古巣からの依頼だったが、聴衆の雰囲気は20年前とすっかり変わっていた。そこに経営陣の努力を感じた。
多くの会社は、職場を働きやすくすることが業務効率につながることに気がつき、ハラスメント撲滅に努力しているのが実態ではないか。注意しなければいけないのは、ハラスメントに過敏になりすぎると、コミュニケーションやOJTに障害が出てくる可能性がある。
2年ほど前から品質データの改竄問題が明るみに出たりしているが、これが、上司が部下の指導を厳しくできなくなった結果であると厄介である。
カテゴリー : 一般
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お客様の個別ニーズに応じて課題を絞った内容で弊社事務所において少人数セミナーを開始しました。それ以外に下記一日セミナーも従来どおり行っております。参加をご希望される方は弊社へお問い合わせください。
記
1.開発手法を中心にした信頼性工学の基礎
日時 2019年3月5日 (火)10時30分から16時30分
場所 千代田プラットフォームスクエアー
受講料 50,000円
<内容>
開発設計段階からロバストの高い製品開発を行うための手法、タグチメソッドの基礎とツボからワイブル統計まで、従来の信頼性工学の教科書よりも幅広い内容を紹介します。故田口玄一先生は、タグチメソッドは統計ではない、とおっしゃっていたその意味は重要で、一方でSN比の計算などタグチメソッドに現れるパラメーターは統計の体系とそっくりです。この点も故田口先生から直接伺ったお言葉をもとに解説します。
2.高分子の難燃化技術
日時 2019年3月29日
場所 大井町きゅりあん
<内容>
高分子の難燃化を科学で体系化するのは難しいですが、アカデミアのチャレンジ結果も出そろい経験からおおよその体系が見えてきています。混練技術にまで遡及し、経験知による体系を提示します。
カテゴリー : 学会講習会情報
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プレジデントオンラインによると、最近ミドルの転職が好調とのこと。理由として就職氷河期に採用を手控えた結果、管理職の人材が不足してきた、と書かれている。
当方はゴム会社でFD事件があり、不本意ではあったが、立ち上げた新事業へ影響を避けるため退職を決意している。そして高純度SiCの開発を成功させて以来、会社として交流のあったヘッドハンティング会社にセラミックスのキャリアと異なる分野の調査をお願いし、写真会社の紹介を受けている。
湾岸戦争の時であり当方はゴム会社で管理職昇進直前だった。写真会社からは研究管理部門の主任研究員と言われて転職したのだが、退職までにヘッドハンティング会社から伺っていた雇用条件を満たされていたわけではない。
原因は、バブルがはじけたために写真会社は転職の一年後にリストラを行っている。そして転職先の部門が無くなったり、分社化したり、他の会社との統合があったりと、転職時の約束がリセットされるような事情があった。
しかし、そのような雇用条件が異なっていた環境でも腐ることなく成果を出している。ライバル会社の緻密な特許網に穴をあけた金属酸化物を用いた帯電防止技術の開発やAPS用巻き癖防止PEN、高靭性ゼラチン、環境対応接着剤はじめ数多くの成果をフィルム事業で出している。
当方がいなければ写真会社に生まれなかった技術、と胸を張って言える。またライバル会社の方からもそのように褒められて悪い気がしなかった。
他の会社との統合時には左遷されて豊川へ単身赴任となったが、その時でもカオス混合装置を発明して転覆直前だったPPS製中間転写ベルトのテーマを無事事業化している。
さらに退職予定を一年延ばし環境対応樹脂の開発で成果をだして、退職予定日だった2011年3月11日は帰宅難民となり会社へ宿泊している。
日本の会社で転職者が成功する可能性は低い、ということをこれから転職される方は心しておくように。転職で成功するためには、成果を出そうと意気込まず、転職先の上司にまず気に入られるような仕事の進め方が、日本においては成果を出すよりも大切である。
すなわち、昇進よりもキャリア形成に力点を置くべきで、上司に便利に使っていただけるようにすれば、自己のキャリアアップのベクトル方向へ進むことが可能である。
写真会社では高分子技術の人材育成に尽力し博士を一名育成したが、成果を出しても評価されないと悟った50歳を過ぎてから退職までの7年間自己の高分子スキルを磨くことに専念し始めた。
PPSコンパウンドの生産ラインについては、卒業試験のつもりで半年で立ち上げている。基盤技術の無かった会社で、たった8000万円でカオス混合が可能な半自動化ラインを0から生産を立ち上げている。環境対応樹脂は、このようなチャンスを頂けたささやかなお礼である。
3月11日の退職記念パーティーは中止となり、総務部から頂いた非常食2食と誰もいない広い事務所で宿泊した。このサラリーマン最後の思い出は、転職というものがどのようなものかを理解するに十分だった。
転職先のリストラの嵐の中でゴム会社の御厚意で無機材研における高純度SiCの研究も含めた論文で学位を取得し、セラミックスのキャリアに終止符を打つことができた。
その後、福井大学客員教授の職はじめ外部の方々から頂いた御支援による様々な機会に理解を示してくださった内外の上司のおかげで高分子スキルを磨くことができた。PPSコンパウンド工場の決済をしてくださったセンター長には感謝している。
カテゴリー : 一般 高分子
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ミラーレス1眼の流れを作ったのはソニーで、去年キャノンとニコンからもようやくミラーレス1眼が発売された。ソニーのミラーレス1眼をみながら早く他社から同一コンセプトの製品がでないかと心待ちにしていた。
材料部分に難があることを覚悟でZ6を購入したが、ファインダー設計はさすがはニコンと思わせる使いやすさだ。明らかにソニーのファインダーより良い。ソニーは高額製品ではニコン並みのファインダーが使用されているが、安いカメラのファインダーはダメである。
いろいろ書きたいことはあるが、各社共通したミラーレスカメラの長所がある。それは、それぞれのミラーレスカメラにアダプターを付ければ、旧一眼レフのレンズが、メーカーを問わず使用できるのだ。
さっそくニコンZ6を購入し、ペンタックスのレンズを取り付け撮影してみた。絞り込み測光かつマニュアルフォーカスという制約はあるが、調子よく撮影可能である。
もちろんニコンの一眼用レンズならば、マウントアダプターを介して、ペンタックスよりは快適な撮影が可能である。ペンタックスのレンズを使った場合には、レンズ情報がカメラに伝わらないので焦点が合ったときにマーカーが点滅しない。
しかし、Z6のファインダーはZ7と同一品質で大変見やすく、ピントの山をつかみやすいので、マーカーの点滅は不要である。その結果、ニコンカメラのボディーにペンタックスのレンズをつけて撮影する機会が増えた。最近は、これならばペンタックスカメラのボディーを買う必要が無い、と思っている。
カテゴリー : 一般
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今年度のナノテク展で高分子材料関係のシンポジウムを聴き、がっかりさせられた。詳細は以前のこの欄の報告を読んでいただきたいが、高分子物理に対する展望をシンポジウムでは聴きたかった。
1990年前後にレオロジーについて大きなイノベーションがあり、ダッシュポットとバネのモデルは忘れようと宣言されたのに、時折学会発表にゾンビのごとくバネとダッシュポットのモデルが登場していたりする。
バネとダッシュポットのモデルは技術では便利な考え方だが、科学ではもう使わないようにしてもらいたい。高分子物理は金属やセラミックスと異なり扱いにくい分野である。なぜなら高分子材料は、それら二つの材料に比較してプロセス依存性が大きな材料だからだ。
すでに特許が公開されたので話すが、オリゴマー添加剤という面白い添加剤がある。低分子可塑剤にはみられない挙動が観察される。例えば、オリゴマー添加剤を添加した処方について、カオス混合を行った場合と行わなかった場合では異なる物性のコンパウンドが得られる。
詳細は問い合わせていただきたいが、面白い現象は、オリゴマー添加剤はそれなりの分子量があるので、ラメラから球晶まで育つのだ。すなわち可塑剤として機能しない、といえばご理解いただけるかもしれない。
高分子の融点だけは下げたいが、ガラス転移点を下げたくない時にオリゴマー添加剤を活用可能である。もちろんこの添加剤はそれなりのデザインが必要であるが、今この添加剤を用いて様々なコンパウンドを開発している。
高分子物理がまだ未熟なのでこのあたりの学術情報は存在しない。だから技術として好き勝手なことができる。すなわち特許を多数書くことが可能である。ご興味のある方はご相談ください。
カテゴリー : 高分子
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ミッドレンジの複合プリンターの中間転写ベルトには、一般にポリイミドが使用されている。理由は、ベルトの周方向の抵抗ばらつきに対して厳しいスペックが定められているからだ。
ポリイミドのベルトは溶媒キャスト成膜で製造するので、周方向の抵抗安定化は容易だった。これをPPSの押出成形で作ろうとすると強度の問題以外に周方向の抵抗安定性を管理する技術が必要になる。
強度の問題については6ナイロンを添加して靭性を高めることができたのだが、その代わり、6ナイロンの島相が動く問題が生まれ、抵抗安定化が難しくなった。
6ナイロンをPPSに相溶させれば強度と抵抗安定化の両方の問題が解決するのだが、フローリー・ハギンズ理論から、その考え方は科学的に否定される。
ところで自然現象に潜む機能には、科学的に不可能であっても技術で実現できる場合がある。そもそも非平衡状態で行われる生産で発生する問題を科学で忠実に考えようとする姿勢がおかしい。
しかしこのようなおかしさについて意外と気がつかないものである。現場で発見した現象を現場で再現させて、それをモデル化して改めて問題を考え直す作業は、それが非科学的であっても、また、たとえ思いつきであっても新たな技術を創り出すには良い方法である。
思いつきの技術を否定される方もいるが、形式知や経験知、暗黙知に裏付けられた思いつき技術であれば、科学技術に匹敵する。時には、この中間転写ベルト生産技術のように科学技術の成果よりもロバストが高い場合もある。
当然のことだが、なんら知識の裏付けのない思いつきは、技術と呼べない。正真正銘の妄想である。単なる妄想かあるいは知識に裏付けられた崇高な思いつきであるかの評価は、科学第一主義では、全部妄想に見えてくるから注意が必要である。
ゴム会社の新入社員時代に2ケ月現場実習を体験しているが、これは貴重な財産になっている。科学では説明できない数々の現場の技術を目にしたとき、科学とは何かという疑問がわいた。
一方そのような現場を見て、非科学的な技術があふれた会社を否定し、転職して会社の社長にまでなった人物がいる。技術が科学的に開発されることが最重要という価値観の社会では当方の様な考え方は受け入れられにくいが、科学を前面に出せば容易に評価される。
しかし、中間転写ベルト実用化過程で開発されたカオス混合装置は、科学的というよりも経験知と暗黙知の具現化された技術であることをあえて力説したい。そのような技術でもトラブルなく20年近く安定に稼働している。
同様に試行錯誤で完成したフェノール樹脂とエチルシリケートのポリマーアロイを前駆体として用いた高純度SiCの事業は30年続き、昨年暮れに名古屋の会社に事業移管された。また、この技術の概念はアカデミアでも受け入れられ、同様の手法で新しい材料を生み出している研究者も出てきた。これらに限らず当方の開発成果には非科学的な成果が多い。
ただし、新しいモノを創り出すときには非科学的ではあるが、できたモノの解析は科学的に行うのが当方の開発スタイルであり、学位論文はその科学的成果をまとめたものである。
過去の雑誌「機能材料」に、2ケ月間連載で当方の学位論文の要約版が掲載されている。当方の学位論文をどなたかが編集者に推薦してくださったようだが、光栄なことである。今の時代学位論文は大量に生産されているが、このような栄誉は数少ないと思う。
カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子
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20世紀には技術の世界で経験知や暗黙知がやや軽んじられていたように思う。形式知は重要だが、経験知や暗黙知も重要で、経験知を正しく伝承できるようメーカーはその仕組みを備えなければいけない。
PPSと6ナイロンの相溶は、形式知からは否定される現象だが、当方の暗黙知によれば発生しうる現象であった。また過去に経験知としてΧが正であっても相溶して透明になる現象を成功させた二つの経験知があった。
さらに、ゴム会社の新入社員研修で現場の職長から「押出成形は行ってこいの世界だ」という経験知を伝授されていた。すなわち、押出成形では、コンパウンドの完成度が低いと押出成形で狙った形状を付与することすらできなくなる、という。
これらの経験知や暗黙知から、PPSと6ナイロン、カーボンのポリマーブレンドの押出成形ではコンパウンドの完成度が低いことに着目し、パーコレーション転移の制御のためにはPPSと6ナイロンが相溶しなければいけない、とまで思っていた。
このような思いで中間転写ベルトの製造工程に立っていたので、音の変化に敏感に対応することができた。以上にのべた経験知や暗黙知が無かったなら、仮に音の変化に気がついたとしても、俊敏にDSC測定を行ったり、ベルトの廃材を集めさせる指示を出せなかったと思っている。
半年しかなかった開発時間において、形式知だけで対応していたら技術を成功させることはできなかった。また、カオス混合装置の発明はロール混練の経験知があったからこそ少ない実験で実用化可能な設備を完成させることができた。
退職直前に頂いたチャンス、高分子学会賞の審査会ではこのあたりを正直に述べて落選しているが、ポリマーフロンティアで講演できる機会を頂いた。またカオス混合装置については元神戸製鋼の技術者が自分の発明と称して講演されるぐらいの評価を頂いている。
ただし特許はコニカミノルタと、その別のバージョンが小平製作所から出願され登録されている。芸能界では物まねが出てくれば一流と言われているが、技術の世界でもパクリが現れれば一流である。しかも混練の世界では一流と言われている人にパクられたのだから技術者として本望であるが、偽物に騙されている人に同情する。
カテゴリー : 一般 高分子
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