詳細な経緯を知らないが、カネカから育休問題に関するコメントが昨日公開されていた。
そのコメントを読むと大筋の経緯が見えてくるのだが、育休を終えて会社に出てきたら転勤になった人がおり、それについて不満をSNSに書いたことが発端らしい。
長いサラリーマン経験を踏まえてアドバイスをするならば、会社の人事異動等に異を唱えるぐらいならさっさと会社を辞めたほうがよい、ということだ。
今回の育休の人は結局辞めたようだが、それならそれで問題解決のはずで、もし何か問題があるとするならば、育休の件と結びつけないことだ。
まず自分の責任でやめたことを明確にすることである。すると不満にはならないはずで、前向きのコメントに必ずなる。
一方、もしその会社に勤めたいのなら、いつでも誠実に前向きに努めるべきで、理不尽な人事でも前向きに受け入れて一生懸命自己実現を図るべきだ。
そしてその組織にいるのが嫌ならば、さっさと円満退社する。小生は昔、3枚もFDを壊され、その事件に対して会社の対応に不満があったので、せっかく死の谷を6年歩いて立ち上げた事業でも他の人に成果を渡して会社を辞めている。
セラミックスの専門家として自己実現に努め学位までとったが、それは転職先の仕事には活かせず、あらためて高分子について勉強しなおすことになった。
写真会社はゴム会社とまったく異なる風土で、これもまた不満が無いわけではなかったが、一応55歳の早期退職制度が使える年齢まで勤めようとした。
ありがたいことに、退職前にもう半年仕事をやってほしい、と言われ仕方がないので退職日を一年延ばして2011年3月11日に設定して退職している。
結局その日は会社に帰宅難民として泊まることになり、やることがないからいろいろ考えた。目の前にはその日の退職祝賀パーティーでどなたかかわいい女性からもらえるはずだった大きな花束が置かれていた。
不満があったとしても、自分がその組織にいたいと思うならば、不満を解消できるように一生懸命働くことが一番である。それが嫌ならば会社をやめる、これが一番精神衛生上健康的である。
カネカは1社員のために丁寧な声明を出しており、人を大切にしている会社に見える。本当かどうか知らないが(説)、それを信じて働かない限り、良い仕事などできない。働くのは給与のためだけではないのだ。
社会に良い人と悪い人がいるように、会社も一つの社会であり大なり小なり悪い人が必ずいるのだ。その影響が不満の原因であり、組織とこの悪人とは無関係である。悪人には因果応報でかならず天罰が下る。
小生はせっかくの退職記念パーティーと3時からの最終講演が地震でつぶれた。なぜこのような天罰を受けねばならないのか真摯に考えた。
まったく仕事を行わず会社に来て本だけ読んでいる社員に対してガミガミと怒っていた過去がある。今から思えばモーレツなパワハラである。しかし周囲もその人に怒りたかったようなので、また本人も働かないことで叱られていることを納得していたのでパワハラとはならなかった。
ある日その方は自分が働かないのはあなたのせいじゃない、過去の処遇に対する不満だからほっといてほしい、と言われ、当方が叱ることもなくなったが、本来は、人事に相談するのではなく、当方がその方の心の闇について真摯に向き合うべきだったろう(注)。
管理職としてそれができなかったのだから、気がつかなかったが悪人の一人かもしれない。しかし、それ以外は誠実真摯に親身に部下と対応してきたつもりである。
誠実真摯に努力しておれば、かならず感動するようなことが起きる。最後の仕事は自分が評価されるような仕事ではなかったが、一応やり遂げ退職している。
その後社長賞をその仕事が取り、元部下がその時の記念品を10本も段ボール箱で送ってきてくれたのには感動した。サラリーマン人生とはこうした感動の積み重ねでありたい。
(注)人事に異動を申請していた怠惰な社員が異動になるのではなく、当方が窓際に異動になった。恐らくパワハラが問題になるのを会社は恐れたのかもしれない。しかし、不思議なことにこの怠惰な人は当方のことを人事に悪く報告していなかったそうである。この怠惰な人との交流は不思議な体験であり、未だにどう対応すべきだったのか悩むことがある。管理者としての立場と個人の思いの乖離は悩ましい問題である。ただ、窓際となり会社を辞めるのかどうするか悩み、豊川への単身赴任を選んだ。その結果カオス混合と言う大発明が生まれている。これはゴム会社で事業化した高純度SiCと同じくらいの成果である。本日セミナーで混練におけるイノベーションとしてこの技術について説明する。
(説)会社と言う組織は人類が自ら社会的動物と自覚して考え出した組織で、今の自由主義経済の国では、会社と言う組織は、国家の仕組みおよび社会の仕組みの中でうまく調和するように運営されている。だから会社ぐるみの不正に対して厳しい罰が与えられたり、社会から組織そのものが排除されたりする。今コンプライアンスを重視した経営を行うのは当たり前のことである。この組織の中で皆働いているのだが、そこで一つの社会ができたときにある一定量の悪人が生まれてしまうのは自然のことで、不満はおもにその悪人が活動するために生まれる。企業の中には警察は存在しないので悪人は国家の法律に反しない限り罰せられることはない。このような悪人の存在を認めたうえで、どこまで我慢してその組織で働くのか、と考えるのか、悪人を吹っ飛ばすぐらいの成果を出そうと頑張るのかは考え方ひとつである。忘れてはいけないのは誠実真摯に努力しているつもりでも組織にとって気がついたら悪人になってた、ということも起こりうるのである。ドラッカーを読むと彼の企業感は今でも先進的な考え方であることがわかる。誠実真摯に努力して働くことが重要である。企業という組織を正しく理解しよう。学校教育でも本当は現代の企業と言うものについて教えるべきだろう。
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6月7日に都内で混練の講演会を予定しています。ゴムタイムズ社の企画ですが、弊社で割引のお申し込みを受け付けています。
ところで、この講演会では、特許が公開されたばかりのPH01についても使いこなしを解説します。従来の添加剤と異なる点が見つかっており、従来の混練の概念では性能を引きだせません。
樹脂の混練技術は、二軸混練機の開発の歴史のように思います。1980年以降二軸混練機の性能は著しく向上しました。ローターの発明が一役買っているのですが、ニーディングディスクでは実現できない混練が可能になりました。
しかし、問題はトルクが高くなるため非力なモーターでは、ローターを使えないケースもありました。中国ローカル企業を指導していた時にこの問題に遭遇しました。
カオス混合技術は一つの解であり、非力なモーターの二軸混練機にも取り付けることが可能です。しかしそれは内部構造が設計されていることが必要で、うまく設計されない場合には十分な効果が出ません。
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長年写真をペンタックスカメラで撮ってきて、20年ほど前ニコンF100を購入して以来、ニコンとペンタックスの両方を使用するようになった。そして今回ニコンのミラーレス一眼Z6を購入し気がついたことがある。
ポートレートを撮影するときには、ペンタックスレンズのほうが自分の好みの絵柄が得られるということだ。
どこが異なるのか過去の写真を比較してみると、ペンタックスで撮影した写真の方が立体的であり、全体が柔らかいのだ。これはニコンZ6にペンタックスレンズを取り付けて撮影しても同じ傾向だった。
ニコンのレンズ85mmF1.4DをZ6に取り付けて人物を撮影すると、極めてクリアーに映る。ペンタックスリミテッドレンズ77mmを同様にZ6へ取り付けて撮影すると少しヌケが悪い。しかし、立体感はこちらのレンズが優れている。
写真は3次元の世界を二次元に展開して絵を描く技術だが、この観点ではペンタクスレンズの方が優れていることになる。
おそらくこれはレンズの諸収差をどのようにバランスさせるのか、という問題だと思われるが、ペンタックスリミテッドレンズは31mmも含め似たような絵作りになっている。
恐らく光学的評価を行ったら、クリアでヌケの良いニコンレンズの方が優れた数値になるのかもしれないが、得られる写真の比較では、ペンタックスレンズに分があるように思われる。
車のCMに、いつかはクラウンに、と言うのがあった。写真の世界でも20年以上前はいつかはニコンに、といわれていた。これはニコンカメラやレンズが他社に比較して高価だったことと、プロ写真家がニコンカメラを使う人が多かったからである。
しかし、今はキャノンがトップであり、ミラーレスに限ればニコンは3位でソニーがトップである。ソニーはカールツアイスレンズを使うことができて、こちらの描写はペンタックス同様に立体感が優れている。
最新レンズは解像感の高さが前面に出てきてそれが描写力のように言われているが、写真は3次元を二次元に展開する手段であり、ペンタックスやカールツアイスのレンズ設計思想が注目されてもいい。
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単身赴任する前に赴任先のセンター長に挨拶に行った。余った時間は、押出成形の現場で過ごした。現場に一人暇そうにしている職人風の男がいた。
サングラスをかけ、いかにも、という風貌である。休憩時間には休憩室に行かず、一人で灰皿のある戸外でパイプを吸っていた。その光景は、十分絵になっていた。
休憩時間が終わっても職場に戻ろうとしないので、話しかけてみた。すると、今日はもう仕事が終わったからヒマしてると答えてきた。仕事は前日に不合格となったベルト素管を粉砕する役目だった。
毎日毎日粉砕しているのか、と聞いたら、本当は一日の生産でよいところを歩留まりが悪いから、毎日生産するような事態になった、と聞いていると説明してくれた。そして、粉砕したくずを再度ペレットにして使っているとも話してくれた。
さらに、不思議なことに粉砕したくずの方が歩留まりが高い、と貴重な情報を教えてくれた。とにかく高価な材料だから再利用しなければいけないが、本生産では、再利用できない仕組みになっている、とも説明してくれた。
奇妙なことを言うのでさらに質問したら、QMSを御存じないのか、と言われた。
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15年ほど前、単身赴任の話が出た。二つの写真会社の統合で管理職が余り、それまで倉庫として使われていたところが居室となっていた当方に、カメラ会社の部長が声をかけてくれた。
居室の窓際には、そこに移る前に使用していた机が置かれていた。当方は居室の中央に倉庫にあった小さな机を置きそこで特命業務をしていた。
居室を訪問してきた部長は、なぜボロ机を使っているのか聞いてきたので、まだ窓際には座りたくない、と答えたら複雑な顔をしていた。
それから時々当方の居室へ訪れて、中間転写ベルトの成形について相談してきた。6年開発し半年後までに歩留まりを80%以上にしないとコストが合わない、と嘆いていた。
せっかく相談に来られても、コンパウンドに問題があるとしか答えられない、と繰り返していた。PPSと6ナイロンは一流メーカーから供給され、そこと連携して国内トップメーカーのコンパウンダーが混練しているのだから、コンパウンド技術は確かだと言っていた。
コンパウンドに問題がない、というのなら、絶対に問題解決できないので、テーマを中断したほうが良い、と言ってからしばらくして単身赴任の話が出た。
研究所長はグループリーダーとしての赴任だから、テーマ判断を間違えないように、と言われたので、中止と言う判断をすでに出している当方でよいのかと言ったら、中止でも良い、と笑顔で送り出してくれた。
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ゴムの押出成形は難しかった。すなわち押し出されるゴムの形状と金型の口金の形状が異なるのだ。だから大卒の技術者でも、あるいはCADがこれだけ進歩した現在でも現場のスキルが要求される。
単純なシート状のゴムの押出でも大変だった。ダイスウェル効果でその厚みを金型のリップ部のサイズで決めることができない。
押し出されたゴムを「工夫」してうまく目標サイズの厚みのゴムシートにするのだが、未加硫ゴムなので厚みの変動が避けられない。それをスペックに収めるように押し出すのだ。
職長は押し出されたときのゴムの性状をよく観察することが大切だと言った。ひどいコンパウンドでは一発目から分かるという。
加硫剤の配合が適切でない場合には、押し出したときにゴムが焼けるという。また焼けなくても微妙な音がする、という。すなわち、押し出されたゴムの性状を観察するとは5感を使って観察することだった。
ゴムをなめることもあると言われたときには思わずそれは健康に悪いですよ、と叫んでしまった。とにかく押出成形では、ダメなコンパウンドの場合には早く成形努力を諦め、前工程にフィードバックをかけることが重要だと教えられた。
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検査工程の職長はいろいろと当方の面倒を見てくださった。サンチョク明けには、一日の過ごし方まで指導してくださった。しかし、サンチョク明けは毎日ゴルフ三昧と言う生活には少し驚いたが。
押出成形の職長を紹介してくださったときには、話が盛り上がる途中まで一緒にいてくださった。押出成形の職長とは一日仕事の合間に説明を聞きながら、過ごすことができ、有意義だった。
とにかく押出工程は行ってこい、の世界であり、行ってこい精神で形を作る以上の技術開発を考えてはいけない、と言われた。すなわち、うまく形ができないならばすぐにコンパウンドを疑え、と言っていた。
それが仕事ならば職長は何もやらなくてもよい、という意味ですか、と失礼なことをずばり聞いたら、何もしないで判断する、と言うのは、スキルが無くてはできない、と教えてくれた。
実際には、開発部隊が設計した金型について改善をするのが仕事なのだが、金型を改善するのか、前工程のコンパウンドの改善を提案するのかは、早く判断をしなければ、生産立ち上げの時には時間のロスが生まれるという。
換言すれば、よいコンパウンドか悪いコンパウンドか判断するのが重要な仕事ですか、と尋ねたら、その通りだと言った。
一日成形してみれば悪いコンパウンドはすぐにわかる。早い時には一時間でわかる、とも自慢していた。一分ではわからないのですか、とくだらない質問をしたら、金型の改善点を見つけるのにどうしても一時間かかる、それが今の私の課題になっている、と真顔で答えられたので、恐縮した。
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「押出成形は行ってこいの世界だ」、と言うのはこの道30年の職長の名言である。写真会社で退職前の5年間中間転写ベルトの押出成形を生産立ち上げから製品展開を担当したが、この時にはゴム会社における工場実習の体験が生かされた。
メーカーにおいて現場実習は重要である。タイヤ会社では技術系も事務系も新入社員は現場実習を体験する決まりになっていた。事務系はその期間が短く、そのかわり営業実習が2ケ月と長かった。
技術系も営業実習があったが、こちらは1ケ月である。短期間の実習で結婚相手を見つける新入社員も何人かいたので、この実習は公私においてアウトプットが期待できるプログラムだった。
当方のアウトプットは、原材料管理から検査工程までの品質管理において、見落とされていたささやかな問題を改善できたことだ。検査工程の職長の指導を受けながらまとめることができた。
現場の職長は中卒から商業高卒までその学歴はさまざまであるが、皆技術者だった。人心管理もたくみで、実習生が溶け込みやすいようにうまくマネジメントしてくださった。
大学を出てきたばかりの生意気な新入社員に社会の掟を指導することも忘れてはいない。同期の中には職長に優しく叱られて感動した話をしている者もいた。
同期の情報で押出工程のある職長が優れた技能者であることを知った。検査工程の職長にその話をしたら、職長も褒めていた。そして当方をその優れた技能者に紹介してくださった。
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材料は、形になって初めてその機能が発揮される。高分子材料でも金属やセラミックスでも高度な成形技術が要求される分野では、成形技術が他社の参入障壁となっている。
面白いのは、金属やセラミックス、高分子材料のそれぞれの科学の黎明期には、成形技術に関する研究がアカデミアの研究テーマとして存在した。
現在でもその流れで研究をされている先生もおられる。どの分野の成形技術でも原材料の影響を無視できない。すなわち、どのような原材料でも成形できる技術をゴールとした研究テーマは、永遠にゴールを実現できない可能性がある。
40年ほど前にゴム会社へ入社し、約2ケ月工場実習を体験できた。そこでタイヤ部材の押出成形を担当している職長と仲良くなった。
実習生として配属されたのは、商品になる直前のタイヤの検査工程だったが、たまたま検査工程でエラーを見つけ、そのエラーの原因が押出部材にあるのでは、と提案したことがきっかけだった。
検査工程では、品質エラーと製造工程の関係が体系化されており、検査でエラーが発生するとすぐに工程へフィードバックがかけられるようになっていた。
さすがに最高の品質で社会に貢献、という社是を掲げる会社である。最高の品質を維持するための技術開発において現場も巻き込んで活動が行われていた。
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混練技術について、他の技術者はどのような説明をしているのか知るために、二軸混練機メーカーK社を退職された有名なH氏のセミナーに参加した。
そこで、混練機のスケールアップが難しい話や、データの再現性の問題など教科書には書かれてこない話を聞けて良かった。
しかし、セミナーのまとめに入ったところで、H氏の発明と称して、伸長流動装置(カオス混合装置)の紹介があった。あきらかにパクリである。
ただ会場でそれを言っては失礼と思い、セミナー終了後に名刺を渡して、すでにカオス混合装置の特許が成立している話などしたら、話が終わる前に、「君は良い仕事をしたねえ」と褒めてくれて、お茶を濁された。
二軸混練機の開発の歴史はH氏の人生そのもの、とセミナーの中で言われていたが、その方が自分の発明と偽って講演したくなるような技術が、当方の発明した「カオス混合装置」である。
混練技術の歴史は、グッドイヤーの加硫ゴムの時代から発展し、この由緒正しい混練技術の流れと、ひき肉を作っていた装置を改良してきた流れとがある。
その流れの中で、K社の技術者H氏は大変な貢献をされたらしいが、その方が特許を十分に調査されていなかったとは考えにくい。
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