一次構造があたかもフェノールとメチレンとの重合が進行して生成したような構造をしているフェノール樹脂だが、触媒存在下フェノールとホルマリンとの付加反応で生成したモノマーを含むオリゴマー前駆体のメチロール基が反応し、縮重合して合成される。
ここで、フェノールとホルマリンとの反応は、触媒と反応温度等で制御されるのだが、フェノールのホルマリン付加体が1種類ではなく、多種類の混合物となる。
酸触媒が用いられた場合は、ノボラック樹脂となり、レゾール樹脂はアルカリ触媒で合成されるが、それぞれのフェノール樹脂前駆体の構造を合成時の反応で1種類に制御することは困難である。
すなわち、ノボラック樹脂もレゾール樹脂も、その硬化後の高次構造の正確な情報を前駆体から得ることが難しく、その結果物性制御は、プロセスと原料管理で行うことになる。
難燃性について品質管理活動により、LOI値の偏差で1以内に追い込むことは可能だが、一般の樹脂は、0.5以内で管理できることを考慮するとこの偏差は大きいと言える。
問題は、フェノール樹脂前駆体のスペックをどうするかであるが、これはフェノール樹脂メーカーのノウハウに依存することになり、40年近く前はそのメーカー間の力量に大きな差があった。
あるメーカーAとゴム会社は契約を結び、高防火性天井材の開発を行ったのだが、M社の難燃剤が添加されていないフェノール樹脂発泡体の防火性能と同等の発泡体を得ることができなかった。
リバースエンジニアリングにより、前駆体の品質制御が重要ということを理解できたが、A社にはそのような制御技術が無く、それゆえ難燃剤を添加して防火性能を補わなければいけなかった。
M社のフェノール樹脂は、ソフトセグメントがほとんどないのだが、A社のレゾール樹脂を使用してフェノール樹脂発泡体を合成するとソフトセグメントが5%以上必ず生成した。
このソフトセグメントの量が防火性能に影響していると推定されたのだが、レゾール樹脂を硬化させる反応をいろいろ検討してもM社のように5%以下とすることができなかった。
すなわち、レゾール樹脂合成条件まで踏み込んで研究しなければ高防火性天井材開発を難燃剤無添加で開発することは難しかった。
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フェノール樹脂は、フェノールとホルマリンが縮重合した樹脂であるが、大半が2段階以上のプロセスで製造されている。古くからその耐熱性は知られており、絶縁性が要求される分野で主に使われてきた。
その製造方法は、フェノールとホルマリンとの反応でオリゴマーを合成する。そしてこのオリゴマーを前駆体として重合と3次元化を進め、硬い耐熱性樹脂とする。
すなわち、大半のフェノール樹脂は、まず一次構造を決定する前駆体を合成し、その前駆体を反応させて熱硬化性樹脂として完成させる。
前駆体合成時に、アルカリ触媒を使用した場合には、レゾール樹脂と呼ばれ、熱硬化性樹脂とするときには、酸触媒が使用される。
また、前駆体合成時に酸触媒を使用した場合には、ノボラック樹脂と呼ばれ、熱硬化させるときにアルカリ触媒を使用する。
すなわち、フェノール樹脂にはレゾール樹脂とノボラック樹脂の2種類が存在するが、熱硬化樹脂となった時には、いずれもフェノールとホルマリン由来のメチレンとの縮重合した樹脂となる。
それなりの製造条件で合成すれば、空気中で変色しながら250℃(280℃と書いてある論文も存在)まで耐えられるので耐熱性高分子として古くから知られていた。
空気中の加熱により150℃前後から変色するのだが、これはキノンの生成が原因である。このキノンの生成具合が、フェノール樹脂により大きく異なる。1960年代の耐熱性高分子に関する研究論文にはこのあたりのことが詳しく書かれている。
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高分子の難燃化技術の開発を行っていると、時々冗談のような現象に遭遇する。その時、大笑いできれば精神衛生を健全に保てるが、科学で理解できると信じ、悩み続けると精神を病む場合もあるので注意を要する。
フェノール樹脂天井材の開発では、プロジェクトメンバーの一人が鬱で入院している。それにもかかわらず、メンバー補強の無いまま納期通りに完成することが求められた。
さらに残業時間の上限は、毎月20時間の制限付きである。当然この開発はサービス残業でこなすことになる。それだけではない。頭の固い上司の壁が、メンバーを苦しめた。
上司がマネジメントではなく、支配者として機能していた会社である。コーチングは1990年代から日本に導入されたが、マネジメント手法としての目標管理は、QC手法として日本で古くから実施されていた。
この目標管理のマネジメントを間違えると、最下層の担当者は地獄となる。管理者は、支配者となり、目標数値を達成できないのは部下の能力として評価を低くつけ、経営者に詫び許しを求めるようになる。
その結果、社内の有能な人物をアドバイザーとして招聘したり、コンサルタントを雇ったりする。すなわち、目標を達成できない原因がマネジメントにあるのではなく、周囲の能力にあると見せかけるのである。
すなわち、目標の基準の誤りや目標実現方法の誤解など管理者の責任を隠蔽化し、すべて部下の責任と見えるように、管理者がアクションを取り始めると現場は地獄になる。
ロバスト確保のために難燃剤を添加した配合を認めて欲しい、と上司に説明しても、難燃剤を使用しなくてもライバルは商品化している、と譲らない。
上司の意味するライバルは、フェノールとフォルマリンの反応から、すなわち原料開発から行っている企業であり、原材料の品質制御も可能な環境で技術開発を行っていた。その発泡体の価格は、高価であったが力学物性が天井材の目標を満たしていなかった。
防火性以外にフェノール樹脂の力学物性改良とコストダウンがゴム会社では解決すべき技術課題として設定されていた。難燃剤の添加はコストアップとなる場合が多いので、その観点で上司は反対している、と考えるようにしていた。
ここで、仮に無能な上司であっても、有能な上司と信じることがコツである。本当に有能ならば、ヒントに結び付くアドバイスなりできるはずであるが、そのようなことが無くても、「自分が上司ならばどのように部下を指導するのか訓練している」とでも捉えると良い。
上司の能力に対してその不満まで蓄積してくると、難しい難燃化技術の問題では精神を病む恐れが出てくる。部下の立場では、上司を選べないことをまず悟り、ストレスを少しでも和らげる努力をすべきである。
基本機能が防火性にあり、そのロバスト確保は技術開発として当たり前であるが、科学こそ命の研究所では、難燃剤無添加でも目標を達成できる場合があれば、そこを目指せとなる。ロバストという言葉は死語であった。
ただし、レゾール樹脂を外部から購入するサプライチェーンの条件で、フェノール樹脂の高次構造を自由に設計し、ロバスト確保と高防火性を目指す開発は困難だった。
当時市販されていたレゾール樹脂は、ポットライフが短いだけでなく、品質のばらつきが大きかった。その問題を解決できない以上目標達成は困難だった(原材料メーカーとは共同開発契約が結ばれ、原材料の品質はそのメーカーの力量という条件で開発が進められていた。不幸なことにこのメーカーの力量が低かった。)。
すなわち外部からレゾール樹脂を購入し開発を進めるというサプライチェーンでは、ロバスト確保のために購入したレゾール樹脂に難燃剤を添加する以外の技術手段が無かった。
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高分子の難燃化技術で困るのは、開発過程で疑心暗鬼となるトランスサイエンス特有の問題である。例えば、耐熱性高分子として知られているフェノール樹脂は、その分子構造から空気中で自己消火性を示すように思える。
ところが、プロセス条件を制御して、空気中で面白いほど燃えるフェノール樹脂を製造することもできれば、マッチの火で着火さえも難しいフェノール樹脂も創り出すことができる。
すなわち、難燃性に高分子の高次構造が関わっているため、プロセスでその難燃性が大きく変化する。高分子の高次構造がその難燃性に影響していることをご存知ない方は多い。フェノール樹脂天井材の開発において、難燃剤を添加した配合をプレゼンテーションしたら、馬鹿にされた経験がある。
したり顔で高分子の難燃化機構の説明を聞かされ、それゆえ耐熱高分子の大半は自己消火性のはずだ、と説明してきた。科学的に推論を進めればそのような言い方もできるかもしれない。
そのとき、小便小僧の代わりを少女ができたか、と逆に質問して会場が大笑いとなったことがある。今ならば問題発言かもしれないが、当時は意味不明の発言として大笑いとなった。
何でも科学で説明できると考えている人には、意味不明の命題をぶつけると面白い。一緒に笑いだす人もおれば、突然怒り出す人もいる。
後者は、冗談を理解しない人であるが、科学で現象をすべて説明できる、と盲信している人も技術のプレゼンテーションの場で冗談を言っていることに気がついていない。
今ならトランスサイエンスという言葉も常識となったので、すべての現象を科学で説明できる、と信じている人は少なくなったかもしれないが、40年以上前の日本は、アメリカでトランスサイエンスが話題とされてもセレンディピティーだけ輸入するような時代だった。臭いものに蓋をしたのだ。
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科学の方法に従う実験のやり方では、仮説を確認するために一因子実験となり、その実験で仮説が否定されるように計画を立てる。統計で帰無仮説を設定するようにあらかじめ否定される仮説を立てて実験で確認する。
このように、一因子実験が一般的であり、さらに他の因子からの影響を受けないように実験を仮説の扱いに添うように管理して行わなければいけない。
科学の方法以外、すなわち非科学的方法には様々な方法があるが、仮にこれらを技術の方法と呼びたい。科学の方法は論理学の誕生により生まれており、技術の方法は、ピラミッド建設事例など古くから行われている。
フェノール樹脂とポリエチルシリケートとのリアクティブブレンドによる高純度SiCの開発において最初の実験は、配合の異なる4種類の前駆体を同一条件、同一水準の加熱処理で行われた。
しかも、温度コントローラーが途中で暴走したために非常停止して得られた特殊な熱処理条件となったのだが、これがベストの条件という、まさにセレンディピティーによる方法となった。
この方法をこの欄の読者に勧めても軽蔑されるかもしれないが、誠実真摯に生きていると、時々神様か仏様、その他人知の及ばない力に遭遇する。
例えば、PPS/6ナイロン/カーボンの配合をカオス混合で製造したコンパウンドにより、半導体無端ベルトの歩留まりが10%から100%に向上したのだが、これは、フローリー・ハギンズ理論で否定されるPPSと6ナイロンの相溶が起きたためである。
その結果わずかに生じたスピノーダル分解により、あたかも分配混合が進んだかのようなカーボンの分散構造のコンパウンドが製造された。
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1980年代にイムレラカトシュが、科学の方法を完璧に遂行したいならば否定証明となる、と指摘してから40年以上経過した。
この意味がどれほど正確にゴム会社で理解されたのか知らないが、基礎研究所から批判されてもKKD法でタイヤ開発を遂行し大成功を収めて世界のトップになった。
ゴム会社の基礎研究所同様に今も科学の方法で開発を進めている企業があるならば、実験のやり方を見直した方が良い。理由は簡単で、イムレラカトシュの言葉は、科学の方法で開発を完璧に遂行したならばモノはできない、という意味だからである。
実験方法のパラダイムとして、科学の方法とそれ以外の方法とがある。それ以外の方法にはタイヤ開発で行われている方法以外に同じく1980年代に日本で流行したセレンディピティーに頼る方法も含まれる。
このセレンディピティーなる単語は、サイエンス&トランスサイエンスなる記事が雑誌「サイエンス」に掲載された時に日本で流行している。
トランスサイエンスについて、深く理解できなかったアカデミアの研究者がセレンディピティ―のみ日本で流布している。学会の特別講演などで講演者がしたり顔で説明しているのを何度も聞いている。
セレンディピティーは犬も歩けば棒にあたるというような意味だそうで、アカデミアの偉い先生が自慢げに説明している姿を失礼だが正直間抜けに見えた。これを高分子同友会で某企業のCTOが得意げに用いて講演をしていたので絶句した。
本来は、トランスサイエンスを理解した上でセレンディピティーという言葉が生きる。当時日本でも科学論が盛んで似非評論家が本を書いたりしてデビューしているが、誰もアメリカで注目されたトランスサイエンスについて書いていない。21世紀になって、大阪大学の先生がようやくトランスサイエンスなる書を上梓されたが、遅すぎる。(明日に続く)
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オリンピックを辞退した宮田選手の話題が毎日掲載されている。やはり、それだけ社会に対するインパクトが大きかったのだろう。
ここで心配になってくるのは、体操協会はじめ関係者と宮田選手との信頼関係である。禁止されていた酒タバコをやっていた本人が辞退を申し出たのだから、何も問題は無いと思っていたら大間違いである。
日本体操協会は、現地における内部告発、と明確に言いながらも、告発者を守るためにそれを開示しないと言っている。しかし、現地にいる人間とNTCに出入りできる人間は限られている。
恐らく宮田選手は内部告発者に気づいているだろう。そこで問題になってくるのは、信頼関係である。指導する側と指導される側との信頼関係は重要で、それが崩れると指導効果は上がらない。特にコーチングでは信頼関係の構築が重要である。
これは、FD事件の被害者となっているときに指導社員として新入社員に3か月ほどで転職されて痛切に感じた。組織からいじめられている指導社員を新入社員がどのように見ていたのか。
偶然にもその新入社員が助手を務めていた大学と当方の転職先とで共同研究を行うことになり、偶然出会った。そして当方は彼のおかげもあり、客員教授に任命されている。
この時ぐらい、指導者がいくらつらい立場にあっても、それを隠して我慢して行動しなければいけない掟を痛切に感じたことは無い。当方は指導者として未熟だったと気づいた。
トヨタ会長の「日本を出ていきたくなる」発言が批判されるのは、このような気づきを学びに変えていない指導者の姿が見えてしまうからだろう。指導者に対して社会は聖人であることを求めている。
それだけに、宮田選手の将来が心配になってくる。指導者との信頼関係をうまく構築できなければ、体操選手としてだけでなく、人間としての成長も期待できない。今回の辞退が無駄になってしまう。
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今回のトヨタの不祥事における記者会見で、「日本を出ていきたくなる」と会長が回答し、それがニュースとして報じられた。
トヨタ会長については様々な評価があるが、企業リーダーとして成功した人で、イノベーションが進行する自動車業界にあって、的確な指針を示している。
「日本を出ていきたくなる」発言は、売り言葉に買い言葉で答えた意見のようで、記者の質問に失礼があったのだろう。おそらく本音ではないが、言ってはいけない言葉と思っている人は多いのではないか。
トヨタが海外に出てゆけば、日本経済は破綻することが明白なので、今回の発言は余計に言ってはいけない言葉となる。しかし、不祥事を犯したのだけれどもう許してほしい、という気持ちから出てしまったのだろう。
かつて、トヨタと日産が競っていた時に、旧通産省はどちらかが日本に残る政策を行っている。その結果、日産は日本に本社を置きながら海外進出を加速させ、失敗し、現在に至る。それ以来当方は応援のため技術の日産車に乗り続けている。
トヨタが今海外に出るという意味は本社機能を海外に移すことである。その結果どうなるかは自明である。企業の不祥事があった時の記者会見では辛辣な意見が質問として出てくる。やはり、その質問の内容は、影響を考えてすべきだろう。
忖度の無い質問をカッコいい、と思っている新聞記者は多いようだ。しかし、国民が心配するような言葉を引き出すような質問は、いかがなものかと思う。
あの大トヨタをこの際、徹底的に攻撃してやろう、と考えるマスコミも一部いるかもしれない。しかし、考えていただきたい。トヨタが不祥事を改善できず、このまま沈没しても日本経済への影響が大きいのだ。
ここは、不祥事を起こした体制を立て直そうとしているトヨタをマスコミは激励しなければいけないのではないか。
社会に出て身に染みて感じたのだが、日本は、頑張っている人を叩く風土である。そのためバブル崩壊後なかなか立ち上がれない。
ゴム会社に入社し、研究所へ配属されて、混練の神様と呼びたくなるような優秀な指導社員が昇進で遅れていることを不思議に感じた。しかし、その後頑張れば頑張るほど叩かれたので、それが研究所の風土の結果であると納得できた。
セラミックス事業を起業した時には、トップ経営陣は応援や激励をしてくれたのに、多くの管理職から徹底的にいじめられ、挙句の果ては、研究所の共通エリアに置いていた機器を管理職権限で廃棄する妨害やデータFDの破壊のような嫌がらせまで行われている。
研究所のミッションとして新規事業の育成が求められており、セラミックスフィーバーの時には、電池とメカトロニクス、ファインセラミックスが新事業の3領域として定められた社長方針が出された。
当方は、高純度SiCの事業立ち上げを推進しながら乞われるまま、電池と電気粘性流体のテーマを手伝っている。しかし、成果を出すたびに嫌がらせを受けた。当方は住友金属工業とのJV立ち上げ成功後転職している。今回のトヨタ会長の気持ちはよくわかるので、出ていかないで欲しいという気持ちで書いている。
ちなみに、転職後見捨てた電池と電気粘性流体のテーマは影も形もなくつぶれたが、転職後も応援し続けた高純度SiCの事業は2018年までゴム会社で存続し、今も愛知県にある(株)MARUWAで事業が継続している。
転職後の当方の応援を示すエビデンスが残っているので機会があれば公開したい。頑張っている人を応援するような国に変わって欲しいと思うのは、当方だけだろうか。もっとも、当方が応援していた人からは、業務が順調になってから、お礼ではなくもう小平へ来なくてよい、という手紙が来ている。
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メダルを取れるかもしれない選手が、開催直前で辞退して憔悴しきっているという。そうだろう、まだ19歳である。直前まで、素行が悪くても主将に祭り上げられたと思っていたら、急に辞退を迫られて、では反省どころではない。
新入社員の時に、世界初の技術を企画せよと命じられ、半年で工場試作まで成功させて、始末書を命じられたときに、何を反省したらよいのかわからなかった。あれから50年近く考えてきても反省すべきことが未だに不明である。
上司や指導社員が書きたくなかった気持ちは理解できる。誰だって給与が下がるのは嫌だ。新入社員なら給与が少ないから下がらないかもしれない、と言われても訳が分からなかった。
ただ、OA委員として仕事を進めるときに、80万円のローンの保証人に上司がなってくれたのは、会社の仕事のためだとわかっていても、自己実現のきっかけとなったので感謝している、と言える年になった。
ゆえに、仮に10年年を重ねたときに、少しは感覚が変わるかもしれないが、くやしさとか周りの無責任さは、一生の傷として残るかもしれない。これは自己責任論とかではかたずかない問題である。
なぜ人は誠実真摯になるよう努力しなければいけないか、ドラッカーは述べていないが、このような傷を癒せるのはそのような努力しかないからである。ちなみに、ドラッカーは、リーダーを選ぶときに誠実真摯さだけで選べと言っている。
禁止区域で酒を飲んだことを大いに反省はできても、そのような悪行を容認して主将に任命しておきながら急に辞退を迫る矛盾は、19歳には理解が難しい大人の都合である。そんな都合を振り回す大人になってはいけないのだ。
一方、バドミントンでパリに行っているかと思っていた29歳が、もう一度世界を目指す、という決意をしてニュースになっていた。リオで銅メダルを取り、東京五輪は怪我でベスト8位に終わった奥原選手である。
結局ケガから立ち直れず残念な状態だが、多くのアスリートが引退宣言する中、もう一度世界を目指すという。あっぱれである。まだ、29歳だ。4年後は33歳である。
若い人が台頭してくる中、厳しいかもしれないが、自分が満足できるまで頑張ることは結果よりも大切である。今回辞退した19歳が今後どのような道を選択するのか楽しみである。
周囲が恵まれた環境ならばよいけれど、かつてパワハラ騒動のあった日本体操協会である。本人の努力はもちろん大前提になるが、それを支える環境が悪ければ、努力が実を結ばないだけでなく腐ってゆく可能性もある。
日本体操協会は、4年後彼女をまた主将に任命できるだろうか。今回の問題は、日本体操協会がオリンピック精神を正しく理解して深く反省しなければいけない大問題である。
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今回女子体操選手団主将宮田選手は、体操協会から迫られ直前の辞退を申し出たことは、記者会見の様子など公開情報から明らかである。これはパワハラを悪とする社会の潮流の視点から見ると問題を含んでいる。
一方ネットには様々な情報が流れ、関係者から彼女の日常の素行の悪さが指摘されている。確かな公開情報だけでも、「素行の良くない選手がたまたまこの3年間急成長し、オリンピックでメダルの可能性が出てきたので、体操協会もそれを承知でおだてて主将にまで任命しオリンピックへ送り出したが、世間に悪行がばれそうになったので、団体規律を乱した罰として辞退させた。」という流れが浮き出てくる。
この妄想が本当かどうか知らないが、それでも彼女の支払った社会的代償は、罪の罰としてあまりにも大きい。今日におけるオリンピックの扱いを見れば、オリンピック貴族という階層が存在するように、それを辞退までしなければいけない、とはあまりにも大きな罰である。
豚もおだてりゃ木に登る、というお笑いから出た格言があるが、主将まで任命して送り出した責任の問題はどうなった?団体規律違反がオリンピック辞退ならば、その責任は、謝罪だけでは償えず重いはずである。
例えば、未成年者が規則で禁じられたエリアで酒を飲む行為が、飲酒運転よりも厳しい罰であってよいのか、あるいは、団体規律違反が法律以上に厳しい罰でも良いのか、法律に詳しい方は教えて欲しい。
戦争を始めた当事者国の選手(世界平和を維持するよう当事者国選手は国民として活動する義務が求められている。それを果たしていない責任がある。)でもオリンピックに出られるのに、国内組織の規律違反でオリンピックに出られない、という前例を作ったことになる。
もっとも、オリンピック憲章では、良い模範での教育的価値のような抽象的なものを求めているので、酒やたばこを見境なくするような選手は参加資格なし、と言えなくもない。彼女は、救いようのないダメ選手だったのか。
それでも、まだ19歳である。体操協会としてオリンピック精神に添うよう教育する義務を負っていたはずである。STAP細胞の騒動では、学位まで返上させられている。未熟者として参加資格剝奪も妥当なのであろうか。
本欄で書いたように今回の問題は、上手に解決すれば、相応の罰を彼女に与え、さらにそれぞれの立場が相応の責任を果たし、その結果偶然彼女が参加しなければいけない状況になったのである。
本当にそうなったかは、すでにニュースで報じられているように、補欠を繰り上げることができなかったことから明らかである。体操協会が、自分たちの責任を棚上げし、すべての責任を彼女に押し付ける解決方法を行ったために、彼女は大きな社会的代償を払うことになった。
このように、日常で発生する問題には複数の解決方法が存在する場合が多く、問題解決法の知識の有無と責任感の有無が影響し、とんでもない解決方法を行ってしまい、その結果個人が大きな責任あるいは負債をしょい込むことになる。
社会はそのような場合でも、身から出た錆と表現したりするが、今回の彼女の場合には、19歳という年齢を考慮すると、あまりにもコーチを含めた周囲の無能さと無責任が浮かび上がる。
弊社では、ドラッカーからヒントを得た科学よりも幅広い知による問題解決法を提供しています。是非お問い合わせください。
(注)弊社の問題解決法の実績を確認したいならば、PPS/6ナイロン/カーボンの配合による中間転写ベルトの特許検索をしていただきたい。2005年の夏、半年後には量産しなければいけない中間転写ベルトの問題解決のため、豊川へ単身赴任した。コンパウンドメーカーにカオス混合をお願いしたら、コンパウンドを自分で作れ、と言われた。これは予定外の回答だったので、改めて自責の観点から半年でコンパウンド工場を建てる決断をして成功させている。その後このコンパウンドメーカーからカオス混合についての特許が10件近く集中して出願されているので、弊社の問題解決法の威力をご理解いただけると思う。
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