高分子の難燃化技術は、2000年以上前からあった、とする説もあるが、その技術開発について科学誕生前では試行錯誤により進められてきたはずである。
科学の時代となっても、この分野は学問として扱いにくく、未だに科学的に満足な研究は少ない。武田先生はその経験談を公開されているが、科学者の悩みを読み取ることができる。このような事情はやはりこの分野の研究を科学的に完璧に進めることの難しさにあると思う。
東北大村上先生は、当時先駆的な研究成果をまとめた洋書の翻訳をされているが、その研究室では研究の調査だけで終わっている。科学的に研究を進めるには、それなりの勇気のいる分野であり、当時の高分子分野には難燃化技術研究以外に面白い取り組むべき研究テーマが多数あった。
有機物材料はセラミックスと異なり、空気中で必ず燃焼する。そもそも燃焼とは急激に進行する酸化反応を意味し、実際の火災についてそれを科学的に再現可能なデータになるようにモニタリングすることが困難である。しかし、そこで諦めていては科学や技術の進歩が無い。
1980年前後の高分子の難燃化技術開発において力がいれられたのは、評価技術についてである。今はあまり使用例を聞かなくなったが、煙量を評価するアラパホメーターと呼ばれる装置があった。
煙量は、燃焼時に発生する煤の量に相関することに着目した評価装置だが、他の評価法でも煙量の直接測定手段が用意されたりしていたので、最近は見かけなくなった。この装置の優れていた点は、簡便に煙量を測定できたことである。
建築材料に関するJIS難燃2級の規格もこのとき生まれている。面白いのは同じ時代に生まれたUL規格やLOI法との考え方の違いである。UL規格は、実際の火災で発生する多数の現象を整理し、高分子材料が使用され火災に至ったときに大きな問題となる現象に着目して評価法としている。LOI法は、燃焼を継続するために必要な酸素量だけに着目した評価法である。
一方、JIS難燃2級やその後この改良版として生まれた準不燃規格は実火災の再現を目指している。この点が、UL規格やLOI法と大きく異なっており、サンプルの大きさも含め評価装置の規模が大きく扱いにくい問題がある。
TGAやDSC、TMAなどの科学的な熱分析評価法を用いて、これら多くの難燃性評価法との関係について研究レポートが登場したのもこの時代である。日本化学会の春季年会でも報告がされており、アカデミアでも高分子の難燃性を科学的に研究しようという意気込みが見られた。
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1980年代は、高分子の難燃化技術が大きく進歩した時代である。難燃剤有力メーカー大八化学で縮合リン酸エステル系難燃剤が多数開発された。大八化学はこの時代を代表する難燃剤メーカーである。
また、ホスファゼンの日本メーカーによる事業化もこの時代に数社がスタートしている。大塚化学はその老舗メーカーで、当時からホスファゼンの研究開発を続けている。
LOIやUL規格もこの時代に普及した。建築材料評価法のJIS難燃2級が欠陥評価法であり、プラスチック天井材の新たな規格である準不燃規格はダンフレーム登場後3年経過して制定されている。この準不燃規格制定にあたり筑波にある建築研究所のお手伝いを半年行っている。
当方は、大学4年生の時にシクラメンの香りの合成に成功後大学院は大学の都合で無機の講座へ進学しなければいけなかった。学問の自由など学生には認められていなかった、と感じるような出来事だが、半分やけくそになって無機の講座へ進学している。
もっとも、授業料は免除され、企業の奨学寄付金や奨学金を頂けたので、家庭教師のアルバイト収入も含め今よりも裕福な研究生活をおくれた。また、おもしろい個性的な先生のご指導を受けることもでき、やけくその選択が良い結果をもたらした。
1979年ゴム会社へ入社するまでの2年間、ホスフォリルトリアミドについてその応用研究を行っている。重合様式の研究や燃料電池用プロトン導電体、ホスファゼンとのコポリマー、PVAの難燃化と2年間にしては多くのテーマを企画し研究を進め、ショートコミュニケーションも含め、2年間の研究で5報論文を書いている。
色材協会へ投稿した論文では、ホスフォリルトリアミドホルマリン付加体を用いてPVAを難燃化してLOI法によりその性能評価を行っている。この時高分子の難燃化について調査をしているが、今のように多数の教科書が無かった時代であった。
色材協会の論文をまとめたころに、東北大学村上先生から良い本を出版するから、とご紹介を頂いたが、とにかく情報の少ない時代だった。LOI評価装置も普及しておらず、近くの女子大にあることをスガ試験機の営業の方から紹介を受け、研究に使用している。
この時、某女子大の先生には測定法のご指導などいろいろお世話になったが、まさかゴム会社で高分子の難燃化を担当することになるとは思わなかった。しかもゴム会社の指導社員は、この時お世話になった方よりもさらに世話好きで、高分子の難燃化と言うテーマを今日まで続ける十分な動機の一つになっている。
1980年前後の高分子の難燃化研究は、このような出会いが無ければおよそ好んでそれを研究しようと興味を持てない分野だった。元名古屋大学武田先生がこの分野の研究を始められたのは、臭素系難燃剤などが登場し、高分子の難燃化技術が出そろって研究分野として面白くなってきた頃である。
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異動した研究室の片隅にあった装置では、サンプルに手動で着火後、燃焼筒の周囲を覆う黒い筒状の蓋を手動でセットする必要があった。サンプルの燃焼状態を監視するセンサーのためだが、面倒な作業だった。
この作業を終えると自動的にスイッチが入り、自己消火しそうな値から自動的に温度や雰囲気を制御しながら測定を続け、LOIを決定する動作を行う。
だから発泡体の様な燃焼速度が速い材料では、装置の制御速度と合わず、LOIを決めることができない。ただし、この問題は自動測定する仕様のため発生しているのであって、制御機構をすべてはずし、すべての作業を手動で行えば、発泡体のLOIを測定できるようになる。
しかし、この手動測定法についてマニュアルに書かれておらず、また、この設備の仕様では手動計測は考慮されていなかった。そのため当方は、この装置の制御部分のコネクターを外して、手動測定した。
LOI法は、混合雰囲気でサンプルの燃焼状態を評価するだけの仕組みなので、自動化の恩恵は少ない。自動化により測定精度があがる、とカタログには書かれていたが、手動でも十分な精度を出せる測定法で、もし自動化を行うならば、サンプルセットから着火まで自動化しなければ意味がない。
また、各種センサーの位置が悪く、測定後の掃除が大変な装置だった。ゆえに、測定や測定後のメンテナンスをやりやすいように、センサーやカバーを取り外し、評価法の規格で決められた必要十分な設備状態にした。その結果、作業性も上がり、発泡体も測定可能な装置になった。
ただ、このような改造を見たリーダーから「君のためにこの装置を購入したのではない」と訳の分からない注意を受けた。異動した時の最初の面接では、グループで管理している設備を十分に生かして成果を出してくれ、と言われたばかりだったので、使いやすいように改良しました、と思わず答えてしまった。
意味のない自動化が行われた自動酸素測定装置の自動化部分を取り外し、手動で使いやすいように改良した行為について、上司の許可を得てから行うべき、と指導社員から後日注意を受けた。
ただ、難燃剤も添加されていない硬質ポリウレタン発泡体が空気中で自己消火性を示す、というリーダーの説明に胡散臭さを感じ、品質問題が会社に与える影響を懸念して自主的に実験を行ったのである。
リーダーは部下のモチベーションを考えてその言葉には注意をする必要があることをドラッカーは述べている。当方はリーダーがドラッカーを読んでいないのではないか、と疑った。
当時ドラッカーの本を知識人であれば読んでいるのが常識と言われていた。また、マネジメントの研修ではドラッカーが使われたりする、と夜のアルコール研修で人事部担当者から話を聴いていた。
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極限酸素指数(LOI)法とは、窒素と酸素の混合雰囲気で燃焼性を調べる方法である。そして酸素の濃度を指数化して、難燃性の優劣を決める。
空気には酸素がおよそ21%含まれているので、LOIは21と表現できる。すなわち、あるサンプルに火をつけてLOI測定装置で21以下と計測されたなら、空気よりも酸素濃度が低い雰囲気で燃焼したことを意味している。
だからLOIが21未満と評価された材料に着火したなら空気中で燃え続け、自ら火が消えることはない。一方、21以上の材料では、緩やかな燃焼条件であれば空気中で着火しても燃焼を継続できず火が消える。これを自己消火性という。
LOIは温度に影響を受ける。例えば、温度が高くなれば、LOIは低く評価され、室温でLOIが21以上と評価されても、空気中で激しい燃焼状態であれば自己消火できず燃え尽きる材料も出てくる。
ゆえにLOI測定装置では、ろうそくの様な炎で燃えるように気流の速度や温度条件など、測定条件について細かい規定がある。
異動した職場に設置されていた酸素指数測定装置は、自動化されており当時の最新鋭の装置だった。
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樹脂補強ゴムのテーマを終了し、新年早々人事異動となり、報告書を指導社員に提出するとともに新しい職場へ挨拶に行った。異動した職場は高分子合成研究室という看板の研究所で、リーダーは、ダンフレームという難燃性ポリウレタン天井材を商品化された方だった。
このダンフレームという商品の説明をこのリーダーから聴いたときに欠陥商品だと直感で感じたので、異動したばかりの職場にあった極限酸素指数測定装置(LOI)でその難燃性を評価してみた。
このLOIについては、訳アリ設備のようで、新しい設備のようだが、ホコリをかぶっていた。設備管理者はリーダーだったので、使用許可を申し出たら、研究室の設備は自由に使ってよいから成果をどんどん出してくれ、とはっぱをかけられた。
そこで、すぐに測定したのだが、国の難燃基準に合格しているというのに21よりも小さい19という値が得られてびっくりした。当時の難燃2級という建築材料の規格に合格するためには自己消火性の材料でなければいけない、と聴いていたからだが、それにしてもLOIが19という値は不思議だった。
当方の修士論文の研究の一節に、ホスホリルトリアミドのホルマリン付加体を応用した難燃性PVAという研究がある。これは色材協会誌に投稿した論文である。この研究開発経験からLOIについて熟知していた。ゆえにLOIを測定したのだが、19という測定値が出たので当方の勘が当たっていたことになる。
しかし、この当方の行動と知識が問題をひき起こした。そもそも当方が使用したLOI測定装置では、発泡体の評価ができないと結論づけられていて、実験室の隅に放置されていた。しかし、異動したばかりの当方はそのことを知らなかった。
使えないような装置で評価した値だから信用できない、とか、命じられないことを勝手にやったとか、いろいろ職場の同僚から批判された。さらに、業務終了後に実験をしたことで叱責された。
樹脂補強ゴムの開発で無茶な仕事のやり方をやっている新入社員がいる、と評判になっていたので、この業務終了後の実験の習慣は、新しい指導社員からすぐに禁止令が出た。仕事が終わったらすぐに帰宅することが、その日から義務となった。
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全社方針は社長が決めなければいけないが、その方針が各部門にブレークダウンされて、細かいテーマが企画されてゆく。
技術に関する企画は、商品化計画あるいは新製品のロードマップ、事業シナリオ等から決められる場合が多いだろう。
この技術企画について、どのように決めたら成功率が高くなるのかは投資の問題も関わり、どこの企業も頭を悩ませる問題である。
特にイノベーションを起こしうるような技術企画は失敗のリスクもそれなりに高い。ただし、指導社員の技術企画立案の手法は堅実であった。
研究所には一応企画部門が存在したが、当時の研究員は軽視していたように思う。少なくとも周囲のうわさ話からあまり信頼されていなかったように記憶している。
指導社員は、技術企画をするにあたり、まず本当にできるかどうかが重要だ、と言われていた。一個あるいは一回でもできることを確認してから企画すべきで、机上の理論だけで企画するから失敗する、とぼやいていた。
防振ゴム用樹脂補強ゴムは、指導社員が企画されたテーマだが、バネとダッシュポットによるシミュレーションがその企画書には書かれていた。
企画書では、シミュレーション通りの樹脂補強ゴムが出来上がるのは半年後で、そこに至る実験計画も説明されていたが、すでにシミュレーションに適合したゴムが企画段階で出来上がっていることなど書かれていなかった。
しかし、指導社員はKKDでそのゴム配合の一例を企画書を提出するときには見出していた。それについては、他のテーマを担当していた時に作ったゴムだと言われていた。そして、当方を指導しながら、新たな技術企画を立案のための実験をされていた。
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今シーズンから競技時間やジャンプに制限がかかり、GOEの幅が広がるようにルールが改正され、4回転の競演よりも演技全体の芸術性、作品性が見直される流れに変わった全日本フィギュアスケート選手権2018が終わった。
採点方式が変わったということで、今回は下位の選手の演技も金曜日から楽しんだ。フィギュアスケートというスポーツは、渡部絵美選手が1979年の世界選手権で3位になったときから興味深く観戦している。
名古屋出身の伊藤みどり選手の登場は、競技の評価ルールが変わったことにより世界のトップ選手になった思い出として残っている。今ゲームチェンジしトップになることが戦略の一手法として指摘されているが、彼女のジュニア時代から見てきた当方は、ゴム会社で高純度SiCの事業を提案し、続ける勇気を彼女から得ている。
当方が観戦するようになって以来フィギュアスケートというスポーツは、競技方法やその採点形式などが定期的に見直されて現在のような姿になっている。伊藤みどり選手は、演技内容や評価方法の大幅変更の結果トップスケーターになれた、とご自身のインタビューで答えている。
なぜなら、変更前の演技内容は規定とフリーで競う競技で、規定とは規則正しい円や動きをすることを競っていた。伊藤みどり選手はこの規定が苦手だったという。この規定が現在のようなSP形式になって彼女はトリプルアクセルを武器にして世界のトップスケーターとなっている。
その後も採点方法が少しずつ見直されていたが、男子の4回転時代になり難易度が上がってくると、難易度の高い演技でミスをした場合と難易度の低いクリーンな演技との評価の矛盾が出てきた。浅田選手とキム選手の対決における評価やザギトワ選手がジャンプを後半にすべて行い高得点を狙うと言った具体的な問題が出てきて、今シーズンの新たな評価方法への変更となった。
新たな評価方法では、難易度の高い演技を無理に組み込むよりもクリーンな演技をすることが求められ、フィギュアスケート本来の美しさが求められるようになった。そしてこの評価方法の変更がきっかけになったかどうか不明だが、32歳の高橋選手が全日本選手権に参戦し、昨日見事銀メダルを獲得した。
彼はフリーで果敢に4回転に挑戦したが、失敗し二回転になってしまった。しかしこれはご愛敬、迫力ある演技で、途中で手をつくなど細かいミスがあっても会場を十分に沸かせた。そして二位になった。本人は試合後のインタビューで全日本の最後のグループで滑ることを目標にしてきたので、と応え、今後のことを語らなかった。
ところで、このフィギュアスケートと言うスポーツの面白いところは、自己の目標とする得点をとれるようにあらかじめ演技構成を考えなければいけないところにある。すなわち、自分の実力と目標を考え、演技構成を決める必要がある。昨日の高橋選手のプログラムは、宇野選手に挑戦することを意図していたかのように思わせる内容であり、明らかに試合後のインタビューは謙遜だった。
残念ながら世界選手権を辞退したが、「辞めるつもりはない。きょうの演技だと悔しくてすっきり終われない感じ。もうちょっとできるはずだという気持ちが出てきている」と現役続行の意思を見せた。恐らく年齢から予想されるレベルでは今後世界選手権のチャンスは巡ってこないかもしれないが、本人はそれも覚悟しているとのこと。自己実現とは何か、を改めて考えさせられた大会だった。
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防振ゴム用樹脂補強ゴムの特許は、指導社員が全体をまとめている。当方は実施例を指導社員の指示で書いた。当方も今では時間の許す限り、自分で特許の明細書を書くが、この時の指導社員ほどのスキルは無い、と日々今でも反省し努力している。
この特許にはダッシュポットとバネのモデルを常微分方程式で解いた話も出てくる。今この特許を読むとダッシュポットとバネのモデルによる解析手法は高分子技術の一つと感じさせる内容である。
当時の防振ゴムは、カーボン量と加硫密度を調整し、すり合わせ技術でその物性が設計されていた。但し、ゴムを硬くするためにカーボン量や加硫密度を上げると損失係数が変化する。
カーボン量を増量すると、損失係数はわずかに上がるが、ゴム硬度が硬くなり、75Hz付近の防振性能が低下する。加硫密度を上げると、硬度が高くなり、損失係数も低下し、15Hz付近の防振性能が低下する。
高速道路を走行中のエンジンから発生する振動とアイドリング時にエンジンが発生する振動の周波数は異なり、この両者の防振性能を得るためには、カーボン量や加硫密度の調整だけでは難しいことが分かっていた。
当時は仕方がないので自動車ごとにエンジンマウントの配合を調整し、うまく両者の妥協点を見つけて製品としていたのだが、車の高性能化の前に新たな技術開発が望まれていた。そして、オイル封入エンジンマウントやエアーダンパー形式のエンジンマウントなどが登場していた。
それをゴム配合で問題解決しようとしたテーマが樹脂補強ゴムで、ゴム硬度を上げる手段が従来はカーボンの増量や加硫密度の向上以外になかったところへ、第3の技術として提供された。詳しくは特開昭56-122846をご覧ください。
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樹脂やゴムを研究開発段階で混練するときに簡便なニーダーを利用できる。指導社員は、ニーダーを使用した配合研究のやり方は実用化との距離を長くすると教えてくれた。
すなわち、実用化された時のプロセスと同等の混練プロセスで配合研究を行うべきだと指導された。例えば、防振ゴムは、バンバリーとロール混練でコンパウンドが製造されているので、実験室でもそのプロセスで検討すべきだと、と言われた。
実は、ゴム会社のコンパウンドの大半はこのプロセスだが、研究所ではバンバリーの稼働が大変という理由で、ゴムの配合研究をニーダーを使って研究する人がほとんどだった。
バンバリーを稼働させるためには、最低でも10kg以上でゴム配合を検討する必要があり、混練後の掃除も大変だった。一バッチの稼働時間は5分以下だが、半日10バッチ以上も混練すると全身がうっすらとカーボンで汚れる。
無意識に作業中に顔をこするとひげが生える。バンバリーを運転した後は風呂に入る必要があり、パイロットプラントとはいえ大変な作業だった。ゆえにバンバリーは嫌われ、研究所の研究員は皆ニーダーを用いて配合研究を行っていた。
しかし、指導社員は評価に使用するゴム量が100g程度でもバンバリーで混練するように言っていた。そして余った10kg以上のゴムは惜しまず、すぐに廃棄するように指導された。すぐに廃棄するのは、サンプル置き場が狭かったからである。ゆえに、必要量混練すると台車でゴムを廃棄するという習慣になった。
ところでニーダーではゴムが液状になるまで温度を上げることができたので、樹脂を溶解することもでき、サンプル作成は容易だった。ロール混練のように樹脂が溶解する混練条件を探す必要は無かった。
しかしこれは見かけの容易さだった。ニーダーでうまく混練できたかのように見えるコンパウンドでも加硫ゴムにして物性評価するとロール混練の最適条件で混練されたコンパウンドを加硫したゴム試料がよい物性になった。
当時は不思議で気味の悪い仕事に見えたが、セラミックスもプロセス依存性のある材料であり、慣れてた。40年あまり様々な材料開発を行ってみると大学では教えないプロセシングの重要性を感じ、その技術伝承のためコンサルティングを事業の一部として行っている。
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樹脂補強ゴムの開発を担当して自動車用防振ゴムに使用可能な配合を見出した。それが後工程ですぐに製品展開されたが、新入社員の2年間は査定が付かないだけでなく残業代も無い、というルールで深夜残業代も頂けなかっただけでなく成果に対する評価も0だった。
それでもこの3か月の間に指導社員が座学で指導してくださった先端の高分子科学の知識は千金に値するような内容だったので、このテーマと指導社員に感謝している。
さて、当時の高分子科学の状況は高分子合成が中心であり、大学の授業でも重合反応に関する内容ばかりだった。一部工業分析の科目で高分子のNMRや熱分析の話が取り上げられていた。
1973年に「高分子物性と分子構造」という化学増刊シリーズの1冊が化学同人から発売されているが、著者が通学していた大学の教官であったにもかかわらず、不思議なことに授業ではその内容が反映されていなかった。
高分子のレオロジーに至っては、授業で2時間程度出てきただけである。化学系の学科でこのありさまなので当時の大学の授業で満足な高分子物性の授業が行われていなかったと思う。
しかし、高分子を製品として実用化するときには、高分子の合成に関する知識よりもレオロジーや物性に関する知識のほうが重要である。高分子合成の知識が不要というわけではなく、高分子合成の知識もレオロジーや物性から構築すべきで、大学の授業で行われていたような反応中心の知識は実務で役立たない。
指導社員の座学はそのように感じさせる十分な迫力があった。松岡先生の「高分子の緩和現象」という名著が1995年に発売されているが、そこでもレオロジーを学ぶのにバネとダッシュポットを忘れろ、とある。それを指導社員は、著書が発売される15年前の1979年に当方に教えてくださったのだ。
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