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2018.12/30 1980年前後の高分子難燃化技術(1)

1980年代は、高分子の難燃化技術が大きく進歩した時代である。難燃剤有力メーカー大八化学で縮合リン酸エステル系難燃剤が多数開発された。大八化学はこの時代を代表する難燃剤メーカーである。

 

また、ホスファゼンの日本メーカーによる事業化もこの時代に数社がスタートしている。大塚化学はその老舗メーカーで、当時からホスファゼンの研究開発を続けている。

 

LOIやUL規格もこの時代に普及した。建築材料評価法のJIS難燃2級が欠陥評価法であり、プラスチック天井材の新たな規格である準不燃規格はダンフレーム登場後3年経過して制定されている。この準不燃規格制定にあたり筑波にある建築研究所のお手伝いを半年行っている。

 

当方は、大学4年生の時にシクラメンの香りの合成に成功後大学院は大学の都合で無機の講座へ進学しなければいけなかった。学問の自由など学生には認められていなかった、と感じるような出来事だが、半分やけくそになって無機の講座へ進学している。

 

もっとも、授業料は免除され、企業の奨学寄付金や奨学金を頂けたので、家庭教師のアルバイト収入も含め今よりも裕福な研究生活をおくれた。また、おもしろい個性的な先生のご指導を受けることもでき、やけくその選択が良い結果をもたらした。

 

1979年ゴム会社へ入社するまでの2年間、ホスフォリルトリアミドについてその応用研究を行っている。重合様式の研究や燃料電池用プロトン導電体、ホスファゼンとのコポリマー、PVAの難燃化と2年間にしては多くのテーマを企画し研究を進め、ショートコミュニケーションも含め、2年間の研究で5報論文を書いている。

 

色材協会へ投稿した論文では、ホスフォリルトリアミドホルマリン付加体を用いてPVAを難燃化してLOI法によりその性能評価を行っている。この時高分子の難燃化について調査をしているが、今のように多数の教科書が無かった時代であった。

 

色材協会の論文をまとめたころに、東北大学村上先生から良い本を出版するから、とご紹介を頂いたが、とにかく情報の少ない時代だった。LOI評価装置も普及しておらず、近くの女子大にあることをスガ試験機の営業の方から紹介を受け、研究に使用している。

 

この時、某女子大の先生には測定法のご指導などいろいろお世話になったが、まさかゴム会社で高分子の難燃化を担当することになるとは思わなかった。しかもゴム会社の指導社員は、この時お世話になった方よりもさらに世話好きで、高分子の難燃化と言うテーマを今日まで続ける十分な動機の一つになっている。

 

1980年前後の高分子の難燃化研究は、このような出会いが無ければおよそ好んでそれを研究しようと興味を持てない分野だった。元名古屋大学武田先生がこの分野の研究を始められたのは、臭素系難燃剤などが登場し、高分子の難燃化技術が出そろって研究分野として面白くなってきた頃である。

 

 

カテゴリー : 一般 高分子

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