高分子の混練をなぜ行うのか真剣に考えてみた。混合目的でなくても一組成の高分子を混練しても意味があるのか、とまず考えて、光学用ポリオレフィン樹脂だけを混練してみた。
写真会社で、倉庫だった場所を改造した部屋が居室になった時である。丁寧に両袖机が窓際に置かれた。何をやっていてもよいと言われたので、ゴム会社の新入社員時代に学んだ混練の技術についてまとめてみようと思った。
フィルム技術は、写真会社に技術者や職人が余っている状態なので誰かがまとめるだろう。しかし、混練技術は、基盤技術も無ければ知っている人は当方しかいない。
ゴム会社ではセラミックスを担当していたので高分子材料技術の担当となる会社を転職先として選んだ。そのような気配りのためゴム会社の元役員にご相談したら、20年以上前の技術なので転職先で扱っても問題にならない、と言われた。確かに20年とは二昔であり、ゴム会社の混練技術も相当進んでいるはずだ。
そのときカモがネギしょって部屋に訪ねてきた、と言っては失礼になるかもしれないが、まさにそのようなタイミングよく相談の内容も至れり尽くせりの訪問だった。詳細な内容は少し差し支えるので省略するが、光学用樹脂の改良を相談されたのである。
写真会社には混練装置が無いので、試験用混練装置でよいから一式そろえてくれたらテーマを担当してもよい、と答えたら鍋から調味料まで一式用意してくれた。
この試験用混練装置で光学用樹脂だけを混錬したら驚くべき結果となった。これは当時学会でも発表しているのでここに書くが、部分自由体積の量が混練時間とともに減少するのだ。
そしてもっと驚かなければいけないのは、それが減少し安定化するのに30分程度かかるのである。一般のL/Dが40や50程度の二軸混練機では材料を投入してから出てくるまで3-5分程度である。
バンバリーでゴムを練る時なんかは3分程度である。すなわち部分自由体積の量が安定化するまで一般の混練プロセスでは、高分子を混練していないことになる。指導社員がロール混練を重視していた意味をよく理解できた。
この実験結果が頭にあったので、中間転写ベルトを開発していた時に、ペレットの一粒一粒の密度ばらつきを計測してみたら、大きくばらついていた。
この結果にはカーボンの添加量のばらつきも含まれているので、熱重量分析でカーボン量のばらつきを求めてみたらそれよりも大きくばらついていたのだ。
50歳前後のサラリーマンが窓際の席になり、時間を持て余す話はよくあるが、その後、この時ボーっと考えてみようと思っていた問題で忙しくなった。そして退職までの仕事は、それを特に希望していたわけではないが、混練が中心の仕事になっていった。
しかも、考える時間など無くなり、樹脂補強ゴムを開発していた時の様な本能的な仕事の進め方で肉体作業の連続のまま退職を迎えた。退職後は中国ナノポリスで窓際で考えたシナリオに基づき研究を進めた。中国で研究しなければいけなかったのは、日本で政府の補助金事業に応募しても何度も落ちたからである。
当方は重要だと思っているが混練など日本では必要のない技術と思われているのだろう。自信は無いが、この退職後6年間得られた成果から見ると、このような見識は間違っているのかもしれない。
しかし、自信のないことを積極的に提案するつもりは、もうないのでせめてセミナーや講演会だけでも活用して日本に貢献しようと努力している。来年には混練技術に関する書籍を出版する。
何も考えず肉体労働で仕事をやっていて少しある種の恐怖感を覚えたのは、新入社員時代の指導社員との会話で出てきたカオス混合を指導社員の期待通りに試行錯誤で実現できたことである。
30年前に現在の自分の姿を予測していたかのような感覚になると同時に、30年前の何もわからず指導社員に言われたまま活動していた時の記憶が鮮明に甦ったかのようだった。
また、当方がゴム会社でたった3ケ月しか担当しなかった混練技術について、もし、まとめようとしなかったなら、中間転写ベルトや環境対応樹脂など迅速に市場へ出せなかったかもしれないので、今から思い出しても不思議な体験である。
また、単身赴任中はよく徹夜をして過重労働を自らかして仕事をしていたので、正真正銘夢の中で仕事をしていたような気分である。
人生とは常に前向きに、そして腐ることなくチャレンジしてゆく姿勢が大切だと思った。また、どうしたら良いかわからなくなったなら、過去の成功体験を思い出してみるとよいかもしれない。すなわち温故知新である。
何か役に立つヒントをそこで見つけるはずで、若いときの厭世的な白日夢と異なり年寄りのそれは生きるための活力を求めるという意味で建設的である。
カテゴリー : 高分子
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9月は台湾ITRIからの依頼で講演会がありましたが、国内の参加者はいらっしゃらないと思い、案内を掲載しませんでした。10月には下記3件の講演会が開催されますのでご案内いたします。参加ご希望の方はお問い合わせください。また、弊社にて特別価格で行うセミナーもございますのでお問い合わせください。例えば高分子の専門外の方が高分子について学ぶ特別少人数セミナーを弊社事務所で休日の午後を利用して安価(15000円/1名、基礎の基礎編は時間が短く10000円です。)に開催しておりますのでお問い合わせください。また、企業向けの講演会も随時受け付けておりますのでお問い合わせください。
1.テーマ:リチウムイオン電池の信頼性向上・難燃化技術
開催日時:2018年10月9日(火)10:30~16:30
会 場:ちよだプラットフォームスクウェア 5F 503
〒101-0054 東京都千代田区神田錦町3-21
参 加 費:50,000円(税込) ※ 資料代含
弊社へお申し込みの場合には2割引きでご案内しております。
* アカデミック価格は 25,000円(税込)
2.テーマ:プラスチック/ゴムの劣化・破壊メカニズムとその事例および寿命予測法
開催日時:2018年10月19日(火)10:30~17:30
会 場:日本テクノセンター研修室
参 加 費:48,600円(税込) ※ 資料代含
3.KRIワークショップ’18
2018年10月24日京都リサーチパークで開催されますが詳細は直接KRIへお尋ねください。本件につきましては弊社で受付できません。
以上
カテゴリー : 一般 学会講習会情報 宣伝 電気/電子材料
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本庶先生は科学の研究を推進する姿勢について良いことを言っておられた。すなわち、自分の知りたいことを研究するという姿勢である。
科学とは真理を追究するのが使命の哲学であるから至極当然の言葉である。
しかし、研究者の中には自分のできることを繰り返している人がいる、とたしなめている。
当方もアカデミアの先生方の中に本庶先生が指摘されるような研究者がいることを残念に思っていた。自分のできることを繰り返しているならば、それは職人である。
これが分かっていない人が多いのではないか。企業の研究開発を担当している人にも職人は多い。
以前科学と技術についてこの欄で連載を書いているが、科学が真理を追究するのが使命ならば、技術は現象から機能を取り出すことが使命、と説明している。
この技術者の使命については、これまで著名な技術者が書かれた書籍を読んできて、その思想から思いついたコンセプトである。
技術者にとってそれが真理かどうかはともかくも、繰り返し安定に動作する新しい機能を取り出すことができれば大成功で、そこに進歩性があれば発明となる。
真理が不明な場合が多いので機能の動作にばらつきが生まれたときにその解決手法が要求されるが、真理の追究をしなくてもそれをできるようにしたのがタグチメソッドだ。だからタグチメソッドは科学というよりも技術の手法である。
技術者と自称している人の中にも職人の人が多い。すなわち技術者は自分のやりたいこと、やらねばならないこと、使命として求められていることを実現できる機能を取り出すことが仕事であるが、自分のできることあるいは自分のそれまでの経験の組み合わせで機能を実現しようとする人である。
技術者は自分の実現したい動作について諸事にとらわれることなく自然現象も含め多くの現象の中から、使える機能を取り出す努力をしなければならない。
このとき温故知新は凡才でもうまく機能を取り出すコツのコンセプトである。不易流動の現象をまえに俳句を詠むような気持で機能を取り出せばよいのだ。少し古くなったがピコ太郎のPPAPもよいヒントだ。
カテゴリー : 一般
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本庶先生に触発されたわけではないが、教科書を疑うことの必要を少し連載で述べてみたい。まず、高分子の混練技術について良い本が無い、というのが正直な感想である。設備屋により書かれた書物には二軸混練の実務で誤りを犯す危険のある書籍も存在する。また、間違いと言ってもよいようなことまで書いてある。
すなわちこれは実務に使えない教科書だ。そのような教科書の内容で頭がいっぱいになった技術者と議論し、らちが明かないので結局自分で混練のあるべき姿を追求し、数か月で二軸混練のプラントを稼働させて、中間転写ベルトの押出成形技術を開発した話を以前書いている。
この時二軸混練機を使うのは初体験のことであり、スクリューのセグメントを自由に取り換えることができることを知り感動している。なぜなら前任者から引き継いだ押出機ではスクリューは一本の金属棒からの削り出しで作られていたからだ。
前任者は長年押出成形だけを開発しており、スクリューの構造については自信を持っておられた。この前任者のすすめてきた開発方針をすべて見直し、中間転写ベルトの押出成形を成功させたい、それを実現するためには自分のできることだけでなくあらゆる可能性も含め何をやらなければいけないかを真摯に考えた。
その結果世の中のコンパウンド技術が教科書通りに発展しているので、それでは技術開発の成功は無いと判断し、外部のコンパウンダーに技術コンセプトの変更をお願いしたら「素人は黙っとれ」と言われた。
そこで、コンパウンドを外部から購入し、成形技術だけを開発していたスタイルをやめて、コンパウンド開発から成形技術開発まですべて行うスタイルに変更したのだ。
開発期間が1年もない中で、これは勇気のいることだが、ゴム会社の指導社員から指導された哲学、「混練はこのようにすべき」、という強い思いがあったからできたことだ。
これは自信ではない。ゴム会社の指導社員の哲学とその知識を信じての決断である。相撲道を追及して相撲協会を飛び出した貴乃花親方には及ばないが、ゴム会社の指導社員が目指していた混練道を少しこの欄で書いてみたい。
そもそも現在の二軸混練機は、豚肉や牛肉の加工機を元に発展してきた装置であることを知っておいてほしい。すなわち高分子のあるべき姿を追求して考え出された装置ではないということだ。
高分子に添加剤を混ぜるのによい機械が無いかと探したら、ミンチを大量生産している良い機械があったのでそれを改良して作り出されたのが二軸混練機である。
ハンバーガー程度であれば多少の混練機の違いで味が変わることは無いが、高分子のブレンドは、スクリューセグメントも同じで同じ型番の二軸混練機を用いても、レオロジー特性を評価すると異なる場合が出てくる微妙な技術である。
繊細な感覚の持ち主でなければわからない、というものではなく、射出成形体のばらつきとなって現れるから、誰でも気が着くはずだ。誤った内容が書かれた教科書で頭が満たされた技術者には、頭の中の知識でその感覚を阻害されたりする。頭の中が空っぽだった当方は混練技術者との議論の内容のおかしさにすぐ反応できた。
カテゴリー : 高分子
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9月は台湾ITRIからの依頼で講演会がありましたが、国内の参加者はいないだろうと思い、案内を掲載しませんでした。10月には下記3件の講演会が開催されますのでご案内いたします。参加ご希望の方はお問い合わせください。また、弊社にて特別価格で行うセミナーもございますのでお問い合わせください。例えば高分子の専門外の方が高分子について学ぶ特別少人数セミナーを弊社事務所で休日を利用して安価(15000円/1名)に開催しておりますのでお問い合わせください。
1.テーマ:リチウムイオン電池の信頼性向上・難燃化技術
開催日時:2018年10月9日(火)10:30~16:30
会 場:ちよだプラットフォームスクウェア 5F 503
〒101-0054 東京都千代田区神田錦町3-21
参 加 費:50,000円(税込) ※ 資料代含
* メルマガ登録者は 45,000円(税込)
* アカデミック価格は 25,000円(税込)
2.テーマ:プラスチック/ゴムの劣化・破壊メカニズムとその事例および寿命予測法
開催日時:2018年10月19日(火)10:30~17:30
会 場:日本テクノセンター研修室
参 加 費:48,600円(税込) ※ 資料代含
3.KRIワークショップ’18
2018年10月24日京都リサーチパークで開催されますが詳細は直接KRIへお尋ねください。本件につきましては弊社で受付できません。
以上
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貴乃花親方の提出した書類が退職届ではなくて引退届だったので受け入れられない、と相撲協会から発表の後、貴乃花親方側は粛々と廃業の準備を進め、昨日は講演会の方たちとの送別会が行われたという。
相撲協会側の慌てぶりが見える。サラリーマンの場合には、業務引継ぎなどを行う必要から退職の半年前に退職届を出すことになっている会社が多いが相撲協会のルールはどうなっているのだろうか。
また貴乃花親方は、記者会見で組織にいじめられていた報告をしているが、相撲そのものに対する不満を述べていない。むしろ弟子たちを思いやった言葉を述べており、そのあたりを中途半端だと指摘される方がいるが、当方は貴乃花親方の「本当はやめたくないが、今の組織体制では辞めるという選択しかない」という気持ちがよくわかる。
当方は二つの会社で退職願いを出しているが、ゴム会社には38歳の時であり、写真会社には56歳といずれも世間の常識からは中途である。いずれの会社も理由があったので中途であるが、後者は55歳から権利ができる早期退職制度を使い円満退社である。
すなわち、55歳になったところで担当部長という役職であり、ゴム会社では55歳役職定年にあたるので早期退職制度を使い辞めることを考え、役員と人事部に相談した。役員から環境対応樹脂の進め方の相談を受けたので、それを最後の仕事にしましょうということになった。
人事部は事務的に、定年では誕生日月となるが早期退職制度では3月と9月が退職日となります。どちらを選択されても、57歳で辞められるとちょうど20年です、と伝えてきた。そこで2011年3月11日を最終日と決めて直属上司に退職日の報告をしたら、早期退職制度では引き留めてはいけないルールなので残念だ、ともったいない言葉を頂いた。
当方も会社が嫌で辞めるわけでなく、ゴム会社で入社面接のときに社長になりたいと応えた思いを実現したいので起業することを伝えた。ゆえに写真会社は円満な早期退職であり、退職日には最終講演を2011年3月11日15時から準備していただいた。
ゴム会社の退職状況は貴乃花親方と似ており、それゆえ貴乃花親方の引退における一連の行動や無念の気持ちがよくわかる。もし協会内部でいじめが無ければ彼は退職という選択をしなかったと思われるし、協会のリーダーになる夢を持っていただろうと思う。
退職届ではなく引退届を出しているのもその表現のつもりだろう。彼は相撲を退職する気持ちは無いのだ。当方もサラリーマン研究開発職を辞める気持ちは無く、一方で高純度SiCの仕事を推進したセラミックスのキャリアからくる制限で高分子材料の研究開発を行える写真会社への転職を一年近く前に申し出ている。ただし、転職マニュアルに沿い会社名は伝えていない。
上司からは転職先を言わなければ退職届を受理しないとか、提出した退職願いは会社の所定の形式ではない、とか当初貴乃花親方状態だった。また、カーボンを製造している子会社の見学やらいろいろと会社に残る道を提示してくださり、遅々として退職手続きが進まなかった。
挙句の果ては、それまで一人で電気粘性流体と高純度SiCの住友金属工業とのJVの業務を担当していた状態を改善し、10名程度のプロジェクトの話が持ち上がった。ちょうど湾岸戦争がはじまったころである。
煮え切らないまま日々が過ぎたが、写真会社から10月1日までに入社すれば年末のボーナスを支給すると言われ、ゴム会社から年金手帳など退職の手続きが順調に進行しておれば頂ける書類一式を頂けないまま転職している。
当方が提出した退職届の日付は半年以上前であり、一応サラリーマンとして手順に則っていたが、すっきりしない退職だった。それでも転職した理由は、貴乃花親方の置かれた境遇と結局同じだったからである。
創業者の理念にあこがれた会社であり、その方針に沿って新事業を起業し、決して中途で退職などしたくなかった。また会社への悪い印象は持っていない。しかし研究所の組織風土があまりにも会社全体の風土と体質とは異なりすぎていた。
カテゴリー : 一般
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塚原夫婦の問題で考えなければいけないのは、指導育成の立場にある人たちのスキルと資質についてそのあるべき姿である。いくらAIが進化したとしても、人を指導育成するためには「人が関わらなければいけない」と思っている。
仮に指導育成について完璧に実行できるAIが作り出されたとして、すべてをAIに任せたならば、人が人であることを放棄した世界になるような危惧をしている。ただ、この心配について当方は自信が無い。感傷的に「人がしなければいけない」と思っているだけかもしれない。
また、人間よりも優れた教育者になったAIが出現するかもしれないと少し期待もしているが、その資質について問題なしと人が認めるために何をすべきか想像できない。
例えば、スキルだけの指導育成ならばAIでもできると思われるが、体操の内村選手が語っているような「美しい体操」という抽象概念をAIが作り出せるのかどうか。
もし「美しい」という抽象概念をすべて具体化でき、それをスキルに落とし込むことに成功したとしても、それを表現したり表現を美しいと感じたりするのは人間である。そのような表現をAIが生み出した時にそれを見て人間が感じるのは希望なのか絶望なのか。
ところで、塚原夫婦の問題に限らず、体罰はすべてが認められない時代である。子供の頃、書道塾で教師からよく体罰を受けた。その先生は全国的に著名な先生でいつも羽織はかま姿であった。
おしゃべりが多いといわれては扇子で唇を打たれた。また、筆の持ち方が悪いと同じように扇子で手を打たれた。人差し指を打たれたときにはしびれて思うように筆を握れず手が震えたところ、今度は二本重ねた扇子で頭を殴られた。
体罰に耐えかねて結局その書道教室を辞めることになったが、昔は指導方法に対する配慮などない時代だった。書道教室に限らず先生と名の付く人はやりたい放題だったような気がする。
数年前、ある書道教室における指導の様子をTVで放送していた。女性の書道家によるコーチングが中心のその風景には愛があふれていた。生徒の自由に任せて文字を書かせている。文字の形に囚われず、その活き活きとした個性あふれた文字は書道の本質を伝えているように感じた。
今の時代、毛筆で文字を書く機会は少なくなったが、日本語の賞状は今でも毛筆である。ところがその多くは印刷物である。息子が小学生の時に毛筆書体で印刷された賞状にボールペンで名前が書かれた無粋な賞状をもらってきた。しかもあまり上手な字とは言えない名前の書かれた賞状をしばらく眺めていて息子を褒めるのを忘れた。
字の上手下手程度の指導であれば、並のレベルまでAIに任せることができるかもしれない。しかし、新たな芸術として表現を生み出せる能力までの指導をAIができるのだろうか。それは人間でも難しい。
また、指導項目以外に指導者と生徒との日常の交流から生まれる場合もある。人間とAIとの交流でこのようなシナジーによる能力向上の機会を生み出すことができるのかどうか。
塚原夫婦の問題では、報道された事実に人間の欲望が見え隠れしている。そこから指導者としてふさわしくないと多くの人が思っている。かれらの資質に多少問題があったと感じた人がいてもこれまで合格点を与えてきたのだが、それが時代と合わなくなって問題となっているのが今回の騒動のように思える。
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LGBTについて不適切な表現があったとして異例の社長謝罪があった雑誌の休刊である。あわてて書店を捜し歩いたが問題となった雑誌は完売状態である。これでは炎上商法と言われかねない。
この雑誌に限らず、「雑誌不況」と言われて10年以上経っている。「雑誌不況」はその始まりから電子出版の影響ではないと思われる。20年近く前から目立ち始めた書店の店じまいの影響と考えられる。
その書店の減少は、日本人が本を読まなくなったことで始まっている。すなわち20年以上前から始まった読書人口の減少から書店の閉鎖、そして言論雑誌不況という流れだろう。
本を読まなくなったのはインターネットの影響と言われてきたが、いろいろ調査してきてそれだけではないように思われる。確かに情報化時代で情報入手の目的だけで本を買っていた人はインターネットに流れたかもしれない。
しかし、読書は単純に情報入手の目的だけではないはずである。一方で高価な技術情報本は、かつてほど売れていなくても一定量出せば売れている。当方に定期的に執筆依頼が来る。
おそらく本を読まなくなったのではなく、深く考えなくなったのではないか。他の人の意見を読んだり聞いたりして思索をめぐらすのは、人間の基本的欲求だと思っていたが、どうもそうではないような社会的風潮である。
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「日本人の約半数に不眠症の疑いがあり、7割の人が睡眠に不満―。
寝具メーカー東京西川(東京都中央区)が全国の男女を対象とした意識調査でこんな傾向があることが25日、分かった。」
以上は時事通信社WEB版の記事であり、下記の結論が書かれていた。
「睡眠の質では、「満足」が31.8%にとどまり、「少し」や「非常に」などを合わせた「不満」が7割近くに上った。「満足」は40代が最低の23.6%で、30代が次に少ない25.2%だった。同社は「働き盛りや子育て世代で満足な睡眠が得られない実態が明らかになった」としている。」
当方は57歳で早期退職し、現在の会社をスタートしているが、最近ようやく満足な睡眠がとれるようになり、朝4時に目が覚める。
4時に目が覚めるのは、前日21時に寝るからだが、7時間熟睡しているのかというとそうではない。老人になると仕方がないそうだが、深夜かならず用を足すために1度起きる。
当方は一度で済んでいるから大丈夫だが、友人は、数度起きるために熟睡できないという。当方が一度で済んでいる秘策を教えたらさっそく試したところ熟睡できたという。
とにかく満足な睡眠ができるかどうかは、心の持ちようも影響する。サラリーマン時代の睡眠は4時間以下で32年過ごしたので今はその約2倍睡眠をとっていることになる。しかし、サラリーマン時代よりも睡眠不足の様な気がしている。
睡眠不足だから昼間眠くなるのか、というとサラリーマン時代の様な居眠りは無くなった。残り少なくなった人生を考えると、居眠りがもったいないような気がするからだ。サラリーマン時代は会議中によく居眠りをしていたが、今は会議中でも居眠りをしない。
サラリーマン時代に睡眠が4時間以下で済んでいたのは、昼間の居眠りがその不足分を補っていたのかもしれない。ゴム会社に勤務中は実験室の隅っこで寝ていた記憶もある。
堂々と居眠りができたのは、新入社員時代に居眠りの常習者とうわさされたからで、一度それが定着すると怖いものが無くなり、堂々と居眠りができた。
またそれなりに大量のデータと成果を出していた。居眠り常習者が悪いのか、過重労働が悪いのか、そのような議論など誰もしなかった時代である。
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昨日貴乃花親方の退職記者会見が行われた。相撲協会という組織の中で貴乃花が文末に書いたように語らなければいけない気持ちは十分に理解できる。
妥協して相撲協会に残っても今後自己の信念に基づき何もできない可能性が高い。貴乃花親方の性格を考えると協会が追い出したようなものである。大相撲の歴史に残る大変残念な結果である。
これを組織内の単純なコミュニケーションの問題として貴乃花親方の批判をする人がいたならば、それは一連の流れから組織内で貴乃花親方がどのような扱いを受けていたのか想像できない人である。また、個人と組織の関係について現実の問題を考えられない人である。
組織とは、どのような優れた組織であってもその組織を統率するメンバーでその性格や組織内風土が形成される。すなわち、メンバーが不誠実な人ばかりならば、今回のような問題が必ず起きる。だからドラッカーは組織リーダーとして誠実な人を選ぶように主張していたのだ。
おそらく今後相撲協会は建前を繕うような動きを貴乃花親方に対して働きかける可能性がある。例えば、今回提出されたのは退職届ではない、だから再提出しなければ認められない、とすでにおかしなことを広報部長は記者会見で語っていた。
しかし、ここまで至ったならば貴乃花親方との関係修復は現在の体制が変わらない限り難しいだろう。残念なのは、周囲の組織がほとんど機能していない点である。大相撲評議委員会は何をやっていたのだろうか。
このような問題解決では組織の外部から貴乃花親方と組織の両方に働きかけないとうまく収束できない。暴力問題では貴乃花親方の行動にも問題があったが、隠蔽しようとした協会が一番おかしいのである。しかしその時にも評議委員会はうまく機能しなかった。
甘い当たり前の判断を示しただけである。しかし、相撲協会の中はTVで当時映し出された現実だけでも暴力問題について隠蔽体質が改善されていない状態であり、「当たり前」の判断をしてみても改革はできない。
仮に貴乃花親方が大人の対応をとり、今回組織に踏みとどまったとしても、組織から陰湿ないじめにあう。それは個人として精神的に耐えられないものであり、組織は外部から見えないように個人がつぶれるまでそれを繰り返すのだ。
これは経験していない人には理解できない状態である。個人がいくらこらえていても、組織の圧力は次第に大きくなり、最後は物理的な圧力として殺人まで起きる、あるいはそれを想起させる事態にまで発展する。例えばFDをナイフで傷つけたようにである。
このような組織の異常なまでの圧力は、組織内で気がついた人がいても同様のな処遇にあうことを恐れ被害者を救うことができない。救うことができるのは組織外のそれなりの立場にある人だけである。このような状況で被害者の能力の問題を批判しても問題解決できないのである。
すなわちここまでこじれると個人として可能な最後の手段は組織から外れる以外にない。今貴乃花はその最後の手段を世間に発表したのである。相撲という日本の文化をそれなりの立場にある人は真摯にこれを受け止め解決しなければいけない。
記者会見では「事実無根ではないと書面で説明したが、それを認めないと廃業せざるを得ないという有形無形の要請を受けた。また理事会で一門に所属しない親方は部屋を持てないと決まった。真実を曲げて認めることが私には出来ません」と、貴ノ岩の暴力問題に対し、告発状を出したことに関する遺恨、協会の重圧が引退の最大の要因だと貴乃花親方は語っていた。
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