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2018.09/15 科学は技術の道具である

技術開発において20世紀は科学の時代と言われたように、科学という哲学が技術者にとって唯一無二の存在だった。この時代に学生として化学の世界でアカデミアに裏切られ科学というものに疑問を持ったことはその後の人生に大きな影響があったと思っている。

 

昨日台湾におけるシリコーンの講演会について書いたが、4年生の時に在籍した講座でその後も研究者として学んでいたら、科学に対して批判的な目を持たず本当にシリコーン領域だけの専門家になっていたのかもしれない。

 

その後、ゴム会社の新人研究発表会でCTOから「大馬鹿モン」と言われたり、電卓で微分方程式を解きながらレオロジーという学問で高分子の問題は解けない、とつぶやいていた指導社員のおかげで技術開発において科学は道具の一つに過ぎないことを学んだ。

 

技術開発には科学以外にも多くの方法があり、弊社では研究開発必勝法としてまとめている。この中でヤマナカファクターを生み出したあみだくじ方式を紹介しているが、これは科学的ではないと「方法の擁護」に書かれている。

 

非科学的な方法でもノーベル賞を受賞できるという朗報で21世紀が始まっている。もうそろそろ世界中が科学は道具に過ぎない、と言い始めてもよいが、日本では未だに科学で未来を拓く会社というキャッチコピーの会社もあり、歴史の流れというものが極めて緩やかなものであることを知る。

 

科学誕生以前にも人類は技術開発を日々の営みとして推進していたことは、歴史的遺構を見れば明らかである。その中にはヘーベルハウスよりもはるかに耐久性の高い法隆寺という木造建築もある。

 

これまでの地震にも耐えてきて、柱や壁を触ってみてもブリードアウトなど起きていない。先日訪ねてきたヘーベルハウス営業ウーマンに今回屋根の張替を行ったら、法隆寺ぐらい持ちますか、と尋ねたら、あちらは木造建築ですよ、と言っていた。これは会話になっていない。

 

法隆寺を単なる歴史的遺構と片づけてはいけない。温故知新として眺めれば新たな建築技術のアイデアが生まれるかもしれないのだ。当時の技術が形として残っているわけだが、科学の無い時代の科学的成果と言ってもよいような技術のいくつかをそこで見つけられる。これは大変興味深いことであり、自然な営みの中で人は科学が無くても技術を生み出せるのだ。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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2018.09/14 シリコーンゴム・レジンの講演

今週月曜日台湾ITRI(日本の産総研のような組織)から表題の講演の講師として招聘されたので終日講演したが40名近くの聴講者がいたのでびっくりした。さらに終了してからの名刺交換会で熱心な質問に圧倒された。

 

質問は当方にとって簡単な問題だったが、質問者は真剣に質問されていたので、通訳の女性が少し大変そうだった。講演は通訳の女性の能力が高くスケジュール通りに終えることができたが、この質問攻めで会場の制限時間をオーバーし、会場整備担当の方に少しご迷惑をおかけした。

 

全ての質問は、参加者が日ごろ困っている問題であり、問題の内容はシリコーン特有の問題ではなく、その上位概念である高分子技術に関して理解していないことだった。

 

ただ、このようなことは国内のセミナーでも経験をしており、質問を受けながら改めて世の中に実務を配慮した高分子の教科書が少ないことを実感した。例えば講演の内容に関してシリコーンユーザーの視点で書かれた教科書が皆無であり、資料を作るうえで参考になる資料を見つけることができなかったことからもそれが明らかだった。

 

さらに、これまでシリコーンゴムや樹脂について特化した講演が未経験だったので資料を新たに作成しなければならず大変だった。しかし、資料を作成しながら当方がシリコーンの専門家であることに気がついた。セラミックスから高分子まで専門領域が広い、と言われたりするが、いわゆる皆材料分野の一コマに過ぎない。当方は実務経験が幅広く豊富な材料の専門家なのだ。

 

シリコーンではこのようなキャリアがある。大学4年の卒論研究はアメリカ化学会誌に紹介されており、これはトリメチルシリルメチルグリニア試薬の合成から始まり、ゲラニオールの全合成に関する内容である。すなわちカーボンファンクショナルシランの合成と応用技術を学んだキャリアである。シランについては知らんことは無い。

 

就職してからは、ポリウレタン発泡体やフェノール樹脂発泡体の開発でシリコーン界面活性剤について研究している。この研究で製泡剤や消泡剤へのシリコーンの応用技術や細かいノウハウを習得している。さらに学会発表もしている。

 

高純度SiCではシリコーンを前駆体の原料に用いているし、またそのリアクティブブレンド技術も開発している。電気粘性流体の開発ではシリコーンオイルのデザインから始まり、短期間でホスファゼン難燃オイルまで開発する成果を出している。

 

極めつけは写真会社で退職前の5年間にシリコーンLIMSを用いて定着ローラの開発を部下に指導していたことだ。およそ35年間のサラリーマン生活では恐らくシリコーンメーカーの技術者よりもシリコーンの応用技術に詳しくなるぐらいの勉強や研究をしていたことになる。

 

また、実際に、定着ローラの品質問題では、問題解決の必要からシリコーン御三家の一社である某S社のシリコーン技術者の指導もしていた。この講演会を引き受けてえられた最大の成果は、相談者やセミナー依頼が無かったので特に意識していなかった自分の専門について独自の資料のまとめから気がついたことだ。

 

来月は電池技術のセミナーや高分子の劣化に関するセミナーの講師を引き受けているが、企業の技術者が講演しにくい他の技術分野についてもう少し当方の身に着けている技術を棚卸してゆきたいと思う。

 

 

 

 

カテゴリー : 学会講習会情報 電気/電子材料 高分子

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2018.09/13 高分子のばらつき

高分子材料の物性はばらつくのは常識である。高分子のばらつきは、非晶質相に存在する部分自由体積を制御できないことから、0にできない、と容易に想像できる。

 

部分自由体積がばらつけば、密度がばらつく。密度がばらつけば、それと相関する弾性率や誘電率もばらつくことになる。

 

弾性率がばらつけば、引張強度や曲強度は必ずばらつくことになり、衝撃強度に至っては大きなばらつきとなる。

 

誘電率がばらついても同様に屈折率をはじめとした物性が皆ばらつくことになる。このばらつきを小さくするために、タグチメソッドはそれなりに有効である。

 

しかしタグチメソッドで最適化しても裏切られることがあるのは覚悟しておくべきである。これはタグチメソッドが悪いのではない。

 

高分子材料の高次構造はざっくりと書けば、結晶になりやすい部分あるいはすでに結晶化した部分と非晶質部分からなり、非晶質部分には部分自由体積というばらつきの巣窟がある。

 

またラメラの集合体である高分子の結晶には少なからず非晶質部分が存在する。すなわち、いくらタグチメソッドで最適化してもこれら構造に基づくばらつきの制御など安直にできないのである。

 

だから運悪くスペックから外れた品質データが得られたりすると捏造したくなる。捏造を防止する一番良い手段は、スペックに入るまで成形と測定を繰り返す、と仕様書に書いておくことである。

 

こんなことを書くと笑われるかもしれないが、高分子材料の品質とはこのようなものだと考えていると技術開発の正しい方向と品質管理のあるべき姿というものが見えてくる。すなわち高分子材料の仕様書を作成するとは、その行為自体がノウハウなのだ。

 

カテゴリー : 電気/電子材料 高分子

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2018.09/12 人事制度改革

バブル崩壊後、日本型の従来の人事制度を見直す会社は多い。多くは従来の日本の典型的な職能型から欧米の様な職務型への変更である。一方バブル崩壊後、失われた20年の間に200万円前後サラリーマンの平均年収が下がったと言われている。

 

バブル崩壊後にすぐに人事制度改革を行った会社は、会社の収益減と同時に連動し社員の給与が下がっていたからあまり不満は生まれなかったようだが、今人事制度改革に着手した企業は大変だろうと思う。

 

日本の大手企業は業績が回復基調であり、給与が上がりつつある中での人事制度改革で、社員のモラールへの影響はバブル崩壊直後よりも大きくなると思われる。

 

「大手菓子メーカーである江崎グリコの経営陣が急進的な社内改革を行っている。その一環で4月に幹部向けの新人事制度を導入した。これによって給与が下がった幹部が続出し、社内に波紋が広がっている。(「週刊ダイヤモンド」編集部 山本 輝)」と、紹介されている。

 

実はゴム会社は、バブル崩壊前にアメリカのタイヤ会社を買収し、買収金額以外に経営統合のための費用がさらにかさんだために、それから20年その立て直しに血を流すことになった。

 

その流れの中でバブル崩壊直前に奇人により引き起こされたFD事件の被害者でありながら、おかしな判断が出されたので当方は高純度SiCの事業を守るために転職している。当方が転職後事業は無事に立ち上がっていった。

 

急進的な社内改革では企業内の風土がおかしくなり、「おかしな人間が信じられないような事件を起こすようになる。」

 

FD事件から数年後、週刊誌や新聞に載るような、隠すことのできない事件まで起きている。経営の数値だけ追ってゆくと、大切な社内風土の崩壊を招き、改革が終了した時には、社内風土はすさんだ状態になっていた、では、企業の持続的発展は難しくなる。

 

ゴム会社にはカリスマ創業者の伝統があり、20年かけて昔の風土に戻ったようだが、はたしてグリコはその再生がうまくゆくのだろうか。

カテゴリー : 一般

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2018.09/11 プロセシング(3)

写真会社には生産技術センターと呼ばれるコーポレートのプロセシング研究グループがあり、当初そこのセンター長に混練プロセスの相談に行ったら、事業部で採用が決まっていないテーマでは話にならない、と簡単に見放された。

 

当方は電子写真事業部の生産技術センターに所属していたので、自分たちのテーマとして研究開発可能だった。しかし、混練の基盤技術など写真会社になかったから、コーポレート部門の研究所へ相談に行ったのだ。

 

結局、半年後に必ず生産立ち上げを行う約束で、当時の上司だった太っ腹のセンター長にお願いし8000万円の稟議をかけて頂く計画を立てた。

 

さらにセンター長は、事前に2000万円の中古の二軸混練機の購入まで決済をとってくださった。当方の退職前の花道の仕事と思ってくださったのかどうか存じ上げないが、全く初めての体験となる混練のプロセス開発でも当方を信じていただけたことがうれしかった。

 

この痩せてはいたが太っ腹のセンター長のおかげで、カオス混合プロセスラインは無事に立ち上がり、PPSに6ナイロンが相溶したコンパウンドの量産プロセスをアジャイル開発で実現できた。このプロセシング開発では、全員が素人だった。

 

 

カテゴリー : 一般 連載 電気/電子材料 高分子

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2018.09/10 高分子の劣化体験談

ヘーベルハウスの欠点はヘーベル板に塗装が必要なことだ、と我が家を購入するときに他メーカーの営業から説明を受けた。発泡コンクリートが雨風に弱いことは材料屋として理解していたので、この説明は無用だった。

 

むしろ塗装寿命の短い問題を他社の営業は指摘すべきだった、と思っている。実際に築5年で少し吹き付け塗装の劣化が気になってきた。指で削れてくる部分が見つかったのだ。この吹き付け塗装の寿命が短い問題を指摘してくれたなら外壁塗装のいらない某社に任せていたかもしれない。

 

当方も外壁の劣化が気になるくらいだったから外壁の15年メンテナンスプログラムを受け入れた。この時は、旭化成の技術力を疑っていた。やはり20年以上は耐久してほしい。

 

ところが新しい外壁は、新築時の材料よりも耐久寿命が延び、20年以上大丈夫だと説明を受けた。実際に外壁塗装をやり直してから10年経過したが、以前のように未だに指で削れるようなことはない。旭化成の研究開発成果が出ているのだろう。

 

さて、屋上やベランダの防水シートだが、新築から3年ほどで可塑剤のブリードアウトが完了し、それ以来硬いままだ。この早めのブリードアウトが良かったのかどうか知らないが、営業から劣化サンプルを見せられて、硬くなっていて危険だ、と説明されても、そのような手触りは築3年経過してからずっと同じだと説明したところ黙ってしまった。

 

しばらく考えて、硬くなって変形しだした、と写真を見せて説明してくれた。それは当然だろう。可塑剤がブリードアウトし硬くなれば昼夜の寒暖の差による緩和速度も遅くなるので、変形も起きるだろう。

 

なんやかやと防水シートの劣化の恐怖を営業担当はあおるが、高分子の劣化挙動は当方のほうが詳しいことを知らない。100円ショップの買い物とは異なるのである。車一台の料金になるような交渉事で柳の下の幽霊のような話をされても困る。

 

さて、高分子の劣化だが、教科書に書かれている内容は科学の話だ。もしそれが実際に材料全体で起きているならば、建築材料を高分子で設計することなど不可能になる。

 

それでは現実の高分子の劣化はどのように起きているのだろうか。ヘーベルハウスを購入してから観察してきたが、かつてゴム会社で解明された劣化挙動と同様だった。

 

その内容は、時々一部分ずつ紹介している論文を見かけるが、全体をまとめた話は無いようだ。40年近く経っているのでゴム会社から公開されることを期待しているが、ご興味のある方は問い合わせていただきたい。

カテゴリー : 一般 高分子

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2018.09/09 へーベルハウス

我が家の25年点検が行われた。定期的に築30年までは無料点検を行ってくれる、品質と信頼の旭化成ヘーベルハウスである。25年経った今でも住み心地には満足している。

 

特にゴキブリとの遭遇がめったにない点を気に入っている。めったにないから、稀に遭遇するとご近所に響きわたるぐらいの悲鳴と捕り物騒ぎになる。しかし、ヘーベル板の防音性能が高いのでご近所に知られることはない。

 

学生時代まで過ごした実家では、同居人の様な扱いだったので、捕り物担当は当方に回ってくるが、隙間のない建築物ゆえに取り逃がすことは無い。このようなときに、この建築物の品質の高さに思わず感動する。

 

快適な住まいではあるが、購入時からの不満は、メンテナンスプログラムである。購入時の説明では、15年で外壁塗装、20年で屋根の防水シート交換、25年でベランダ防水シート交換、30年で外壁塗装と無料点検の間に4回も足場を組みメンテナンスする工事が入る。

 

購入時にも文句をいったのだが、工事時期はお客様の判断で変更できます、と言われ、当時おそらくプレハブ建築では最も高かったヘーベルハウス2世帯住宅を建てた。

 

しかし、無料点検サービスがある種の脅迫に近いサービスで、メンテナンスプログラムは、快適な住まいを維持するためにお忘れなく、と言ってくる。

 

当方も年に1回は点検を行い、劣化状況を調べており、15年の外壁塗装はやむなく納得して行った。それから5年経過したところで屋上のメンテナンスを言われたが、異常が無いのにどうしてやる必要があるのか、当方が細かく材料の劣化挙動を説明したところ、パスすることができた。

 

実際に防水シートは築10年で現在の様な状態になり、その後は大きな変化はない。さらに幸運なことは、接合部の下地金具が外れてきたことだ。

 

これは運が悪いと、下地金具が外れずに、防水シートの継ぎ目がはがれる場合がある。おそらく設計段階で経年変化を考慮し、下地金具が優先してはがれるようにしているのだろう。その結果、継ぎ目部分へ応力がかからず耐久寿命が長くなっている。

 

この調子でベランダ防水シート交換までメンテナンス期間を引き延ばしたのだが、今回頭のいい営業がメンテナンスプランを持ってきた。

 

ベランダの防水シートのメンテナンスを少し早めて、屋根とベランダ、そして30年の外壁のメンテナンスを一緒に行うプランだ。こうすれば30年後まで足場を組むような工事は入りませんという。当方が修理を遅らせた結果をうまく利用された形であり、これには負けた。

カテゴリー : 一般

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2018.09/08 今という時代(1)

日本体操協会の塚原夫婦の問題では、この夫婦の人柄を誉める意見も出てきた。ニュースとして流れている情報を元に当方の独断で推定したこの問題の姿を描いてみると次のようになる。

 

誠実さに欠ける人物が若い時の成果で自己実現努力をしないまま社会のリーダーまで上りつめる。老人となったこの人物が、過去の時代の教育で身についた価値観で社会に貢献しようとしたところ、大きく変わった今の時代の多様な価値観を理解できず、唯我独尊で一生懸命行動する。その結果引き起こされたのがこの事件、と言える。

 

塚原夫婦は何がどのように悪いと批判されているのか、恐らく正しく理解できていないのではないか。ただ弁護士から指導されて発言に気を使っているだけに見える。ゆえにワイドショーに出てきてその発言にボロが出てしまい、またそれが批判されるといった状態になっている。

 

ゴム会社でFDを壊されたときに当方が最初に悩んだのは、過重労働までして頑張って、住友金属工業とのJVとして高純度SiCの事業を立ち上げたのに、何故仕事の妨害をされなければいけないのか(FDが壊されたのは1枚ではない)、それを上司に訴えてもなぜ事態の改善をしてくれないのか、という点だった。

 

この時会社は、想定外の隠蔽方向に動いた。ここで当方は自己の置かれた立場とFDを壊した犯人について考えた。犯人は電気粘性流体の耐久問題を一年かけて解決できず、科学的に完璧な否定証明を行った人だった。

 

事情を知らなかった当方は、その人の前でその証明を一晩でひっくり返してしまったのだ。その時問題解決に長時間かかって失敗したなどと知らされてなかったので、悪いことにドヤ顔で成果を見せていた。

 

この時の知らなかったとはいえ自己の無思慮の行動と、高純度SiC事業化リーダーという立場を誠実に自己批判した。立ち上がったばかりの高純度SiCJVを滞りなく継続するためには早期にこじれた事態を収拾しなければならないと仕事中心に反省し判断を下している。

 

当方のFDに犯人しか触れることのできないFDをベタコピーされたたためにデータがすべてなくなり、会議の準備ができなかったため、その事件を会議の席で発表したことは、当方の犯したミスと考えた。

 

犯人は同じ職場にいたので、その日から犯人と被害者である当方は従来と同様に仕事を続けることができなくなった。その結果転職する決断をして事態を収拾している。

 

塚原夫婦の問題においても、まず彼らが辞職するのが誠実な判断であると思われる。また、そうしても皆が納得する年齢でもある。しかし、それでも協会に判断をゆだねる、としている。

 

塚原夫婦は、ニュースで報じられている事実だけで、どのように考えても二人は自ら辞職の判断をすぐに下した方が誠実な人物とみなされる状況なのだが。

 

第三者委員会のリーダーは朝日生命と関係する人と言われているのでどのような結論を出すのか注目したい。

カテゴリー : 一般

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2018.09/07 技術開発における温故知新(1)

技術開発において科学を道具として使いながら科学を絶対視しない方法が今日の時代の技術者に必要である。具体的な方法の一つに温故知新がある。例えばこれでパーコレーションが関わる不易流行の技術を開発した事例を紹介する。

 

酸化スズは、1980年代に起きたセラミックスフィーバーの最中に「絶縁体である」と無機材質研究所で科学的に証明された。透明導電材料であるITOの発見から30年近くかかっている。科学の方法で一つの真理を導き出すには時間がかかるのだ。

 

子供時代に戦後20年式典と称して各種の行事が行われたが、この時20年前の戦争は、はるか歴史の彼方に感じた。ところがセラミックスフィーバーが始まってから30年以上たっているが何故か昨日のことのようである。

 

小学校入学前に名古屋大空襲で壊れた工場の跡地で遊んだ記憶が残っていても、それでも小学校の先生から聞いた戦後20年という言葉は「はるか昔」という響きに似た歴史の世界で使われる言葉だった。

 

セラミックスフィーバーの最中、高純度SiCの事業シナリオを解答として提出した昇進試験で「落ちた」という人事部長の連絡を受け翌日から5日間で高純度SiCの発明を完成させた思い出は昨日のことのようである。

 

この5日間では寝ていた時の記憶が無いほどの過重労働だった、と妻に話したら、誰でも寝ているときの記憶は無いでしょう、と言われ、寝る暇ももったいないと感じた5日間だったと説明しなおしたのは29年前だった。

 

人の心の中における時間の流れとは、まことに非科学的で一定の長さなどないのだ。光陰矢の如し、というが、高純度SiCを必死で開発した5日間の時間の流れは極めてゆっくりと流れていた。そしてそれは今でも昨日のことのようである。

 

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2018.09/06 就職活動が変わるかもしれない

経団連会長が現状の就活ルールの廃止について言及したことが話題になっている。また、他方では大手企業のインターン制度充実のうわさもある。

 

就職氷河期を脱した今の状況から経団連の意図を推測すると、単純に就職時期の問題だけでなく採用条件にまで影響を与えると予想している。

 

すなわち、現在一般に行われている新卒を一律の初任給で雇用して2年間の新人育成期間を設けている横並び形式を大幅に変更する企業が出てくるように思われる。

 

例えばインターン制度の中で従来の新人育成プログラムを稼働させるとどうなるか。この方法の利点は、従来採用してから新人育成プログラムを行ってみて育たない新入社員がいた場合にクビにできなかった問題が解決される。

 

すなわち、インターン制度なので、将来成長しそうにない社員を雇わなくてよいメリットが生まれる。あるいは、インターン制度期間中の実力をみて採用時に処遇格差をつけることが可能となる。

 

優秀な学生には採用時に外資よりも高い金額を提示し、確実に人材確保ができるよう対策をとれる可能性も出てくる。単純に労働力としての人材が欲しいのであれば、従来のままの初任給を提示すればよい。

 

おそらく学生は休み中に遊んでいる時間をとれなくなる可能性がある。また、大学のカリキュラムだけでは、高給を得るチャンスが無くなるので、学生時代から実務の勉強をはじめなければならなくなる。

 

もっともバブルがはじけても休み中に遊んでいる学生が多い学園風景が今も変わらないのはむしろ異常であり、ワークライフバランスに対する誤解も改善されるのではないか。

カテゴリー : 一般

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