技術者の使命は、自然界の機能を取り出し、人類に役立つ新たな道具なりサービスを生み出すことである。
この時、他の技術者による優れた製品の機能をまねて使命を実現することもできる。温故知新はまだ許されるが、パクリは許されない。
この20年日本のGDPは、横ばいである。すなわち付加価値が生み出されていないような状態で、これは技術者の怠惰が数値に現れたような結果となっている。
この20年学会に一度も出席したことのない技術者は、怠け者の上位にランクされる。自然界から新たな機能を取り出すためには、自ら実験を行うのか、学会で発表される新たな知を活用しなければいけないはずだ。
特許調査は機能取り出し作業として、良い悪いの判断を出しにくい行為である。学術論文を読むのとは少し意味が異なるからである。
特許調査のうまいやり方は、不易流行の世界を新たなコンセプトで旅し、温故知新で特許を味わう方法である。
特許をただまねる技術者は、やはり怠け者である。技術は科学の真理と異なり、いくつもその可能性があるはずである。
不易流行の意味が分からなければ、まずまねてみることは良い方法であるが、そこで終わってはいけない。
機能が同じでもその機能の働かせ方が異なれば、異なる技術となる。視点を変えろとよく言われるが、視点を変える前に、機能をよく観察する作業が重要である。
怠惰な技術者は、このような作業でも手抜きをする。まったくアイデアが浮かばないならば、徹底して観察することである。
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技術者は人類に役立つ機能を自然界から取り出し実用化することが使命であるが、科学者は常に新しい知を自然界から見出し、それを人類に示さなければいけない。
その新しい知が人類に役立つかどうかは、評価の問題であって、科学者の使命ではない。その意味で、昨今のアカデミアの研究者が置かれた環境には同情する。
新しい知について有用無用の視点は、科学の研究をミスリードする。これを防ぐために科学者は、新しい知について、わかりやすく伝える使命を同時に持つことになる。
新しい知を分かりやすく伝えることは大変難しい。新しい知を機能として表現できれば、少し伝わりやすくなる。さらに、それをモノまで仕上げれば、さらにわかりやすくなる。
今社会は科学者に過剰な期待をしているのかもしれない。本来は技術者の仕事を科学者にまで求めている。科学者の使命を考えていると、技術者の怠惰が見えてくる。
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研究とは、新しい知を見出すために行う。これは研究者だけでなく技術者もよく意識しなければいけないことである。
もしこれを正しく意識したならば、捏造という行為が研究の世界にはいってこないはずである。
STAP細胞の騒動では、新しい知を明確に示すために、データの改ざんが成された。余分なシグナルを消したり、図を借用したりした捏造は、およそ新しい知に対する姿勢として不適切なものである。
新しい知は、真実である。これを示すためには、「真理」であることが大切である。技術では、実際に機能していることが重要なので、製品を手にすれば「真理」であることを確認できる。
科学の研究者は、新しい知を論文で示さなければいけない。これが技術者よりも研究者を不適切な道に導くことになる。
技術者は機能している「モノ」を作らなければいけないのでごまかせばすぐ品質問題となるが、研究論文ではごまかされてもすぐに問題が明らかとならないことがある。
この意味では、技術者の方が新しい知を見出した時にそれを示すのが難しく、研究者には、問題をごまかすことができるゆとりがあるという意味で易しい職業と感じたりする。
しかし、問題が起きたときに、科学の研究者はその職を一切失うことになる。技術者はお金で解決がつくので、研究と言う仕事を遂行するときに技術者は研究者より気楽な職業なのだ。
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研究とは、新しい知を発見するために行う、恐らく故小竹先生はそのように伝えたかったのだろう。ただし当方は、伊藤先生から冊子を頂いただけであり、故小竹先生とは直接お会いしていない。
伊藤先生も故石井先生も恐らく故小竹先生とは仲が良かったのかもしれない。そうでなければ、講演録を渡すのではなく、ただ学生であった当方にそのままの言葉を自分の言葉として伝えていたかもしれないからだ。
この冊子を渡された当方は読み始めたときに、言葉で伝えてくれてもよいように感じていた。むしろ、文章を読む面倒な作業を疎んだ。
しかし、古い冊子を読み終えた後、それをわざわざ渡された先生方の気持ちも伝わってきた。わかりやすい言葉で書かれた冊子そのものをこの先生方は尊重されていたのだ。
それが、この冊子を余計に重くしていた。この冊子を読んでから実験に対する姿勢も変わった。研究者として実験に向かうようになり、シクラメンの香りが完成した。
ジケテンを不飽和カルボン酸のシントンとして用いたテルペン類の合成、という論文をまとめ、アメリカ化学会誌に投稿した。
残念ながらショートコミュニケーションとして学会誌に採用されることになったが、短時間に研究をまとめ上げた喜びを今でも覚えている。
新しい知を見出すのが研究であるが、その知の価値が厳しくジャッジされる世界があることも同時に学んだ。
技術者は機能を製品にまとめ上げる能力が要求され、製品が多数のユーザーに支持されるかどうかが勝負である。
エディターによる論文の厳しいジャッジとユーザーのジャッジでは厳しさのベクトルが異なる。その結果、研究のベクトルも、科学者と技術者で異なる。
残念ながら学校で教えてくれるのは科学者の研究で、技術者の研究については、技術の伝承で学ぶ以外に方法は無い。
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研究とは何か、という問いに、故小竹無二雄大阪大学教授の講演録が的確に答えている。大学4年生の卒論を指導してくださった伊藤健児先生が故石井義郎先生から頂いたので読んでおくように、といわれた冊子である。
学部で卒業する予定で第二外国語も受講せず卒研を遂行していた当方にとっては無用の冊子だったが、それを読んでから時間を惜しんで実験をするようになったことを記憶している。
研究とは、という問いに対して難解な哲学ではなく、「何か新しいことを見つけるために」研究をする、と簡単で分かりやすく説明していた。
この冊子では、化学者が研究する意味を、そしてその時化学実験が重要な役割をなしていることなどわかりやすく説明していた。おそらく阪大の学生向けに語られた内容なのかもしれないけれど、感動したことを覚えている。
化学実験が面白くて小学生の頃から遊びの一環で実験をしていた。近所に実験器具の問屋があったのも影響していた。試験管やらビーカーをお小遣いで買っていたので、今から思い出すとこの問屋の社長が不用品を当方にくれていたのかもしれない。
実験と言っても難しいことはしていない。当時「子供の科学」という本に連載されていた実験をトレースしていただけだった。それでも十分に面白かった。
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炭素と炭素とが共有結合でつながっている高分子では、昨日の考え方を少しイメージしにくいかもしれない。
しかし、原子の独立した球が結晶を構成している無機材料でこの概念を導入すると形式知を体系化するうえで都合が良い。
セラミックスの研究では、このような相関を意識して進められ、主に焼結体の構造と機能との関係、そして焼結体の構造と原料粉末の物性との関係などが20世紀に体系化された。
高分子科学が、主に高分子の重合研究、すなわちまず原料を製造するところから研究が始まり、合成された新規高分子についてその用途開発へ進んだ流れとは少し異なっている。
21世紀になるやいなや、「精密制御高分子プロジェクト」が5年間推進され、そのプロジェクトでは、強相関ソフトマテリアルという言葉が使われている。
これは、20世紀末に主に高分子材料あるいはその成形体で事業を営んでいるメーカーで、従来の高分子(ポリマー)設計手法を見直し、商品性能をターゲットにした材料設計手法を行うようになってきた技術の進歩を表現している。
そして高分子の高次構造だけでなくメソフェーズ領域も注目され、高分子材料を階層化してとらえて、物性との相関を調べてゆこうという動きが出てきた。
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セラミックスの粉砕技術を参考に粒子の混合と分散について説明したが、無機材料科学の進歩の過程で、強相関物質という以下の概念が生まれている。
固体や液体は凝縮系(condensed matter)と呼ばれる原子の集合体と捉えられる。
この凝縮系の物性を測定した時に最も対照的な値を示すのは、金属(導体)と絶縁体である。
今、典型的な金属を考え、仮想的に原子間の距離を広げてゆくと、孤立した原子の集合体となる。
この時孤立した原子の集合体ゆえに電気は流れないはずで、さらにこの系の変化は原子間距離の関数として表現でき、その連続関数の途中で金属から絶縁体へ相転移を起こすはずである。
この仮想物質で変化している物性について理解を進めるには、金属側から考えるアプローチと絶縁体側から考えるアプローチがある。
両方のアプローチを統合し、すべての物質を統一的に記述することが物性物理の究極の目標という考え方が、無機材料の形式知にある。
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セラミックスでは造粒と呼ばれるプロセシングノウハウが開発されている。
これは粉砕技術(ブレークダウン)の進歩や、ビルドアップにより超微粒子化したために取り扱いにくくなった微粒子を取り扱いやすいように、形状制御された凝集粒子を製造するプロセシングノウハウである。
このプロセシングノウハウを応用して、混練前に高分子とその他の添加剤とを用いて造粒することが可能である。
この前処理により、多成分を配合して製造されるコンパウンドを1台のフィーダーで生産する時に発生する組成ばらつきを抑えることに成功している。
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例えば、ポリエチルシリケートとフェノール樹脂の有機無機複合ポリマーアロイを前駆体に用いると、焼成条件を制御して1nmの超微粉から取り扱いやすい0.3μmまでの高純度SiC粉末を製造することが可能である。
このような粒子を製造するための前駆体(前駆物質や前駆プロセスを総称)を用いて超微粒子を製造する手法をビルドアップと呼び、逆に大粒な粒子から粉砕技術により超微粒子を製造しようとする手法をブレークダウンと呼んでいる。
超微粒子というターゲットに対して、このような両方向のプロセスからアプローチする手法は、加工される物質にプロセシングの視点を置くことから生まれている。混練についてもこのような視点の置き方は重要である。
前駆体を工夫し超微粉を製造しようというセラミックス粉体のプロセシングアイデアを高分子のプロセシングに取り込んだ事例がある。
例えば、粘土鉱物を前処理してから高分子と混練し、高分子にナノオーダーの粘土鉱物が分散した有機無機複合高分子を製造するプロセシング技術が開発されている。
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コンパウンディングで使用するフィラーは、その供給メーカーにより粒度調整がすでに行われている。
しかし、カーボンのようなストラクチャーを形成している粒子を添加する場合には、混練中にそのストラクチャーが破砕されて分散する場合もある。
このような粒子の粉砕理論については、1800年代にRittinger (1867年)とKick(1885年)により法則が発表されて以来研究されてきて、Bond(1952年)の仕事により形式知が完成したと言われている。
すなわち、固体の粉砕に必要なエネルギーとその粒径、あるいは生成比表面積との間には一定の関係がある。
ちなみに、粉砕による微粒子化の限界は、1987年頃0.5μmと予想されていた。しかし、現在では10-30nmの粒子を簡単に生成できるようになった。
ただし、一次粒子を小さくできても高分子にフィラーとして添加されるときには数μのアグリゲートとなっている。
粉砕による微粒子化には形式知から限界が見えていたので、化学合成や蒸発、晶析などを活用し、一次粒子の超微粒子化の努力がセラミックス分野で1980年代になされている。
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