科学の方法で完璧な手順は否定証明であり、統計の帰無仮説はこの手順に則り行われ、有意性が議論される。学生時代に統計を学習した時に、帰無仮説を立案する方法を奇妙に感じたが、科学的統計と緒言に書かれていたので納得している。
現象を見て、「もし**ならば、ーとなる」という仮説を立案し、**の条件で実験を行い、実験でーが否定されると、この仮説が棄却され、現象で生じている真実が証明される。
しかし、技術開発では、新しい機能を開発することが目的であり、仮説をたてて実験を行い、仮説が正しいことで機能が市場で正常に動くに違いない、という否定証明と異なる科学的方法で実験を行っている。
イムレラカトシュは、このような方法を科学の厳密的な方法ではないが、科学と非科学との境界は時代により、変化すると述べている。
そもそも論理学が完成し科学が生まれた、と、「マッハ力学史」には書かれており、また、科学史でもそのように扱われている。マッハはニュートン力学でさえも非科学的としている。
ニュートンは、「リンゴが落ちるのを見て、万有引力の法則」を発見しているが、これは逸話であり、思考実験を多用していたようである。
この思考実験(重)とは、頭の中で、風が吹くと桶屋が儲かる式に実験を行う方法で、それゆえ、マッハは非科学的と称していた。ニュートン力学は非科学的方法であるが、高校の物理学で学ぶ力学は、ほぼニュートン力学である。
面白いのは、高校時代に、数学の教師が独自に作成したプリントで、半年間ユークリッド幾何学を指導してくれたことである。当方の卒業した高校では、3年間に学ぶ指導要領に準じた数学(注)を1年半で終わるカリキュラムであり、半年間はユークリッド幾何学を学び、1年間は、高校3年間の復習をやっていた。
このユークリッド幾何学を授業で行うにあたり、科学教育の観点から指導要領から削除されたが、幾何学の知識として重要なので特別に行うと話されていた。
確かに、ベクトルや座標系を用いて幾何学の問題を解くような手順では無い。最初にキモとなる補助線に気がつくかどうかで、解くことができるかどうかが左右される。しかもその補助線に論理的根拠は無い。なれるより仕方がない方法だった。
このことから、科学とは、誰でも論理学を正しく活用しておれば、問題を解くことを可能にしてくれる哲学とも言える。ユークリッド幾何学のように、補助線を引けなかったら問題を解けない、ということにはならない。
ゆえに、科学を用いれば自然現象をすべて解明できると誤解したのかもしれない。素粒子物理学の体系はそれで成功したかもしれないが、高分子科学の体系は、面白いように未だぐちゃぐちゃである。
(注)学生社というところが、難問集という受験参考書を発行していた。日比谷高校や灘高はじめ受験校と言われた全国の高校の試験で出題された問題で、難問と思われる問題を集めていた。当方の卒業した高校の数学問題も取り上げられていたが、幾何学の問題は、ユークリッド幾何学を知っているとたやすく解ける問題ばかりだった。経験知の有無で解けるかどうかが決まる問題と言える。
(重)重要なことだが、思考実験を自由自在にできるようにしておくことは、アイデア創出を容易にする。妄想と馬鹿にする人がいるが、思考実験ならばやりたい放題できる。お金がかからないので、大胆な思考実験も可能だ。仮説を用いず、こうした思考実験の組み合わせで高純度SiC前駆体の実験を直交表により成功させている。モノを創造するときに科学は必ずしも必要ではないのである。むしろ科学にとらわれていると新しいモノを生み出せない場合もある。当方がこの高純度SiCの実験を無機材研で成功させたときに、研究所の人から、エチルシリケートとフェノール樹脂の組み合わせを考えたが、フローリーハギンズの理論から否定された、君はそれを知らないセラミックスの専門家だから成功した、と言われたが、当方は指導社員からフローリー・ハギンズ理論とその問題まで丁寧に指導されていた。高純度SiC前駆体の発明は、非科学的思考の重要性を証明した成果だと考えている。科学的には否定されても、形式知が未完成のため、その現象が科学に反して起きることは高分子科学でよくあることだ。コアシェルラテックスは、高分子化学会技術賞を受賞している科学の成果だが、この成果の裏返しの技術、すなわちあたかもコアをミセルにしてラテックスを重合する技術を成功させている。PPSと6ナイロンはχが0とならないので、相溶しないが、カオス混合によりこれを相溶させてMFPの中間転写ベルトを完成させている。非科学的方法でも技術を開発することができる、というよりもその方が独創性の高い技術を生み出すことができる。科学的には当たり前の結果しか出せない。
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データサイエンスも含めコンピューターを科学の世界で活用する方法をコンピューターサイエンスと呼ぶそうだ。コンピューターサイエンス、と呼んでいるが、データサイエンスがそうであるように、コンピューターを使った現象解析が、すべて科学的方法あるいは手順になるというわけではない。
コンピューターを使って、科学的方法で現象解析を進めることももちろん可能であるが、コンピューターを使う場合には非科学的方法となりやすい。すなわち、仮説が無くても既存のアルゴリズムを活用し問題解決できる場合など科学の方法とは異なってくる。
あるいは、コンピューターを使って問題解決する場合には、科学的方法にとらわれず、自由にできるといった方が良いのかもしれない。最初は科学的方法でコンピューターを使っていたが、問題解決してみたら、科学的ではなかった、という場合も出てくる。
ロシア生まれのTRIZという問題解決法が流行し、第3次AIブーム直前には、第二次AIブームの終焉を知らせるかのように、アメリカでUSITが生まれている。
これらは、コンピューターを使って、科学的に問題解決を行おうと目指していたが、普及していない。2005年に豊川へ単身赴任した時に、一生懸命TRIZやUSITを定着させようとしていた人がいた。
TRIZやUSITはコンピュータを前提に考案された科学的プロセスを取り入れた問題解決法なので、ペーパーの上でも問題解決に活用可能である。しかし、残念なのは、当たり前の回答しか得られないことである。
当たり前の回答しか得られない方法なので、面倒な手続きを行っている途中で回答が見えてきてしまい、手順通り進めてその回答以外得られなかった場合には、面倒な手続きが何だったのか、普通の人なら疑問に思う。
豊川で仕事をしていた時に、オープンスペースでTRIZ勉強会が開かれていて、そこで入社間もない人が、当たり前の回答しか得られていないじゃないか、と講師に質問していた。
何か険悪な空気になってきたので、割って入って、問題解決法について10分ほど蘊蓄を語り、やんわりとTRIZやUSITの存在を知っているだけでよい、と締めくくった。
義務教育から科学の方法を習い、その方法が身についている人にとって、TRIZやUSITは手間がかかるだけの方法であり、それを使用することがばかばかしく感じるようだ。
ひどい場合には、それを真面目に講義している人は、言葉は悪いが科学の方法を理解していない〇〇(注)ぐらいに見えてしまうようである。USITに至ってはオブジェクト指向のパクリではないか、という側面がある。
科学の方法をよく理解し、身につけておれば、TRIZやUSITをつかわなくても、当たり前の回答やアイデアを少しの手間で出すこと可能で、さらに形式知が身についておれば、ヒューリスティックに回答を示し、科学的な回答と新しいアイデアとの区別も瞬時に行うことができる。科学教育の成果である。
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(注)名古屋や大阪では軽い気持ちで使われる言葉であるが、不適切と思われたので、〇〇とした。TRIZの問題は、それを使わなくても、科学的に解ける場合が多い。さらに、少し力量のある人ならばヒューリスティックに答えが見えてしまってもそれを使えと言われたら、やはり○○と言いたくなる。そんな問題解決法である。
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発明者がテーマ運営の都合で報われないことは、それが企業という組織の業務であるという理由でたびたび生じる。ゆえに、ドラッカーは、働く意味を貢献と自己実現にあるとしている。すなわち働くことを貢献とし、その報奨として自己実現があるとしている。
しかし、報われないだけでなく、発明者の努力の成果が第三者に奪われ、第三者が栄誉を受けるという事態も生じる。ドラッカーは、知識労働者の業務において成果を出すためには、自分の成果を他の人に渡さなければならない、と述べている。
これは、知識労働者の貢献の方法を説明したものであるが、この意味では、イノベーターの発明を他の人が活用して成果に結びつけなければいけない、と言える。
しかし、「他の人に成果を渡す」知識労働者の仕事のやり方について、それを発明者が了解していることが前提になる。これは発明の成果が正しく管理され、発明者の納得する運営がなされていなければ実現されない。
企業で研究活動を33年続けて思うのは、発明の成果の扱いが、それが大きければ大きいほど理想とはかけ離れて扱われ、発明者を大きく傷つける非情な世界という現実の問題である。
アカデミアでは、社会に貢献できる論文を書くことが重要な業務であり、良い研究であれば自分の成果として書こうとする。ここで問題となるのは、その研究にどれだけ執筆者が貢献していたかどうかである。
企業で目標管理のマネジメントが行われれば、自分の成果を目標とした貢献に正しく昇華したかどうか主張しなければいけない。その時、その成果がどのように生まれたのか、正しく説明する責任と義務がある。
信じたくないことだが、著名な大学でも学位を見返りとし企業から研究を召し上げたり、逆に、企業では、アカデミアが関わった研究を独占しようとする行為が当然のように行われる。
前者は発表された論文が証拠として残り、後者は学会賞の履歴として残っている事実は、正しく貢献が成果に結びついていないという理由で、そこに関わった発明者の精神を傷つけ、イノベーションの士気を奪う。
バブル崩壊後の日本で失われた**年という言い方がなされたりするが、このような信じたくないことを経験してみると、若いイノベーターを社会が如何に育てるか、という前に、発明を如何に正しく貢献に結び付けていくのか、というドラッカーの提言の基本を、まず必死で問うことから始めなければいけない。
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この測定方法は、高分子材料をバネとダッシュポットの粘弾性モデルで表す考え方から考案されたと聞いている。1970年前後に測定装置の開発が行われていたようだ。
1979年にゴム会社へ入社してしばらくは、指導社員O氏の開発されたミニコン制御のスペクトロメーターと呼ばれる粘弾性装置を実験で使っていた。
1980年代になり、バイブロンが導入された時に、先端の測定装置がようやくゴム会社に入った、と喜んでいた人がいた。また、その担当者は、壊れるといけないのでレオロジーを知らない人間には使わせない、と言っていた。
このような状況から、現在のような粘弾性装置は1970年頃から企業で使われ始めたのだろう、と推定している。
ところが、ダッシュポットとバネのモデルでは、1970年代から高分子のクリープを説明できない問題が指摘され1980年代に破綻した。ゴム会社では、1970年末にこの考え方は、研究所で排除されたそうだ。
当方は1979年にゴム会社へ入社し、10月に研究所へ配属されたが、O氏は、京都大学出身の優秀なレオロジストで、小生が初めての部下だった。
その方から、高分子のレオロジー研究において、粘弾性モデルでクリープを科学的に扱えないという理由により不適切であること、その結果、粘弾性試験装置の測定結果について考え方も変わるかもしれないと教えられた。
また、ゴム会社の研究所ではダッシュポットとバネのモデルは過去のモデルであり、ゴムの粘弾性について新しいモデルを研究しなければいけない、と指導された。
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樹脂の難燃化で難しいのは、難燃剤の分散に高分子の高次構造が影響する点である。PCのように非晶性高分子と言われている材料では、問題がなさそうに思えるが、PPやPEは難燃化が難しい、と言われている。
1970年代から難燃剤の開発が盛んになったが、半世紀経過しても同様の相談がある。高価な難燃化技術の書籍には、答えが書いてあるが、その答えの理解が難しいようである。
すなわち、書籍に書かれた事例と実際に扱っている材料で現象が異なるという疑心暗鬼が理解を難しくする。当方は30年ほど前からその答えを書いてきたが、その答えさえ疑う人がいる。
分散技術の因子と難燃性能との関係が理解されていないためであるが、この関係を説明するのは難しい。しかし、ある程度のことはわかってきて、またその理解を実証するデータを当方は持っている。
困るのは、このデータさえも否定してくる人である。これは議論が難しい。なぜなら、科学的データではないからである。あくまでも当方の経験知を活用し、出した実験結果である。
本来は、高分子の高次構造と難燃剤の分散状態との関係を科学的に明らかにして、その結果を利用し、難燃剤の機能の発現に関して研究を進めるのが科学的であるが、これが結構面倒である。
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材料のプロセシングを誤解している人は多い。セラミックスでは粉体の混合から始まる。ゆえに粒子の大きさなど問題になりそうな因子が直感的に分かり、半世紀近く前のセラミックスフィーバーではゾルゲル法が盛んに研究された。
これが高分子材料になると、溶融状態で処理する場合が多いので、均一に混合されると誤解する。また、ラテックスの混合から製造された薄膜では、ラテックス粒子の大きさのまま薄膜のドメインが形成されていることを知らない人がいる。
2000年に行われた国研「高分子精密制御技術」では、混練が取り上げられ、ウトラッキーの伸長流動装置が検討されている。
これは、剪断流動で混練しようとする2種の高分子の粘度差が大きいと分散粒径が大きくなり、混練が進まないという結果が得られていたからである。
これを確認するために高速剪断混練機が試作され、1000回転以上の回転数でナノオーダーの高次構造を可能とする混練プロセスが実証されたが、スケールアップが不可能と言われた。
ちなみに、大型の混練機ではだいたい500回転前後が最大で、300kg/h以下の処理量の混練機で800回転が限界の様である。
そのため、粘度差があってもナノオーダーの分散が可能になるということで伸長流動装置が検討された。しかし、この装置も高速剪断混練機同様にスケールアップに限界があることがわかった。
セラミックスにしろ高分子にしろ、何らかの機能を持った成形体を作ろうとするとその材料の混合プロセスが問題となる。このプロセスについて未だ分かっていない事が多いために、コンパウンディングよりも成形プロセスに注力したりする。
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生成系AIが話題になって2年近く経過した。当初ワイドショーなどで取り上げられた時には、披露宴の祝辞や営業メールの代書が話題となったが、ハルシネーションの問題から、研究開発者には見捨てられたようなところがある。
しかし、情報調査に関してインターネットにつながったAIを用いると、ハルシネーションの無い整理された情報が得られる。ただし、そのためにはプロンプトデザインが重要になる。
AIが登場した時には、プロンプトエンジニアリングという職業が生まれるなどと言われたが、そこまでは必要が無く、「デザイン」さえできればよい。
これにはコツがあり、オブジェクト指向の理解が不可欠である。オブジェクト指向については、TRIZから生まれたUSITでも展開されたが、DXが定着した社会では常識となった。
このオブジェクト指向も取り込んだ質問でAIに樹脂の破面の写真を解析させるとフラクトグラフィーを実施した結果が出力される。破壊力学がもう少しで高分子分野でも科学として用いることができる見通しが得られている時代だ。AIは、最先端を理解している。
8月7日にシーエムシーリサーチでこれらの知識の復習と生成系AIを研究開発の武器とする使い方のセミナーが開催されます。弊社へお申込みいただきますと割引がございますのでお問い合わせください。
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水へ塩を溶解するような感覚で砂糖を溶かしていては、おいしいアイスコーヒーを飲めない。インスタントコーヒーの粉末が溶けにくいからである。
砂糖とコーヒー、少しのお湯無ければ水で最初によくかき混ぜて、滑らかなペースト状にする。まったく凝集物が無くなってから、攪拌しながら所定の冷水を入れると、おいしいアイスコーヒーが完成する。
必要に応じて、ミルクと氷を入れる。アイスコーヒー1杯飲むのにも攪拌プロセスは大変である。やはりアイスコーヒーは、氷が入ったコップに、コーヒーを抽出しながらいれて、ブラックで飲むのが一番おいしい。
塩と砂糖で分散の手間が異なるように、高分子へ低分子と高分子、あるいは微粒子を分散する時にもそれぞれ手間は異なるが、意外と無頓着な人が多い。
タイヤ用のゴムのコンパウンドは、射出成形体用コンパウンドに比較するとアイスコーヒーを作る手間以上の差があるプロセスで生産されていることを知らない人は多い。
射出成型体のほとんどは、適当なアイスコーヒーの作り方に近くてもそこそこのものができてしまうが、タイヤ用のゴムでは加硫むらが起きるなど様々なトラブルが発生するので混練プロセスの品質管理は厳しい。
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高分子の高次構造は、今でも難解な対象である。例えば自由体積部分を観察しようとしても苦労する。その量について、DSCで測定されたTg部分のエンタルピーと相関すると言われている。
それではこの部分と成形体密度とが相関するのか、というと、球晶が内部に生成しているときには、球晶の量の影響を密度も受けるはずなので単純ではない。
球晶の量は、X線小角散乱で計測し、それで量を確認できないかなどと一苦労する。ポリマーアロイや低分子の添加剤を添加するとさらに話は複雑になってくる。
相溶は球晶部分で見つかっていないので、ポリマーアロイの少ない成分のポリマーや低分子添加剤の分散は、非晶質部分で起きていると思われるが、非晶質部分には、自由体積部分も存在するのでその分散状態の考察は難しくなる。
ブリードアウトがマトリックスへの溶解度で決まる、と説明されても、それを信じていると市場で品質問題を引き起こすことになる。その溶解度をどのように見積もったらよいのかという難しい問題があるからだ。
難燃剤の効果も高次構造の影響を受ける。ハロゲン系難燃剤は多少その影響の効果は表れにくいが、リン系難燃剤では、分散が悪いと適切な量が添加されていても、残ジンが起きる。ひどい場合には、見かけ、効果が現れなくなる場合も存在する。
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一次構造があたかもフェノールとメチレンとの重合が進行して生成したような構造をしているフェノール樹脂だが、触媒存在下フェノールとホルマリンとの付加反応で生成したモノマーを含むオリゴマー前駆体のメチロール基が反応し、縮重合して合成される。
ここで、フェノールとホルマリンとの反応は、触媒と反応温度等で制御されるのだが、フェノールのホルマリン付加体が1種類ではなく、多種類の混合物となる。
酸触媒が用いられた場合は、ノボラック樹脂となり、レゾール樹脂はアルカリ触媒で合成されるが、それぞれのフェノール樹脂前駆体の構造を合成時の反応で1種類に制御することは困難である。
すなわち、ノボラック樹脂もレゾール樹脂も、その硬化後の高次構造の正確な情報を前駆体から得ることが難しく、その結果物性制御は、プロセスと原料管理で行うことになる。
難燃性について品質管理活動により、LOI値の偏差で1以内に追い込むことは可能だが、一般の樹脂は、0.5以内で管理できることを考慮するとこの偏差は大きいと言える。
問題は、フェノール樹脂前駆体のスペックをどうするかであるが、これはフェノール樹脂メーカーのノウハウに依存することになり、40年近く前はそのメーカー間の力量に大きな差があった。
あるメーカーAとゴム会社は契約を結び、高防火性天井材の開発を行ったのだが、M社の難燃剤が添加されていないフェノール樹脂発泡体の防火性能と同等の発泡体を得ることができなかった。
リバースエンジニアリングにより、前駆体の品質制御が重要ということを理解できたが、A社にはそのような制御技術が無く、それゆえ難燃剤を添加して防火性能を補わなければいけなかった。
M社のフェノール樹脂は、ソフトセグメントがほとんどないのだが、A社のレゾール樹脂を使用してフェノール樹脂発泡体を合成するとソフトセグメントが5%以上必ず生成した。
このソフトセグメントの量が防火性能に影響していると推定されたのだが、レゾール樹脂を硬化させる反応をいろいろ検討してもM社のように5%以下とすることができなかった。
すなわち、レゾール樹脂合成条件まで踏み込んで研究しなければ高防火性天井材開発を難燃剤無添加で開発することは難しかった。
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