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2018.06/07 品質データ改竄その後

「大手鉄鋼メーカー 神戸製鋼所が製品の検査データの改ざんを繰り返していた問題で、東京地検特捜部と警視庁は、不正競争防止法違反の疑いで神戸製鋼の東京の本社などを捜索し、強制捜査に乗り出しました。

 

会社側の調査で改ざんされた製品の出荷先は600社以上に上っていて、特捜部と警視庁は組織的に不正が繰り返されていたと見て実態の解明を進めることにしています。」

 

昨日のTVニュースでもこのWEBニュースの記事を報じていた。東レ、日産、三菱自動車、スバル、三菱マテリアルとデータ改竄はじめ品質管理に関する不正があいついだ。

 

スバルでは最初に発覚してから半年以上が経過しても不正が見つかったのでCEOが辞任する事態に至っている。最初に不正問題が報じられたときに、この欄では科学の問題(形式知の問題)を指摘している。

 

すなわち、科学的に考えて品質規格からこれだけ外れても大丈夫、という判断で不正が行われている、と推定したが、案の定神戸製鋼所では代々の不正データの蓄積が受け継がれていた。

 

恐らくこれは技術継承のつもりでなされた可能性がある。川下企業とすり合わせて設定した品質規格に対して、川上企業で自分たちの品質規格を作り上げようとしていたのだ。

 

なぜ川上企業でこのような行動をとるのかは、コストダウンが目的であるが、それ以外の事情もある。これについては後日触れるが、この行動が形式知と経験知を混同していることは明確である。

 

形式知と経験知は区別して技術開発に適用されなければいけないが、最近はこのあたりが日本でうまく伝承されていない。

 

両者を混同して運用していった結果、法に触れるような事態に至った、というのが昨今の品質データ改ざんの実態と捉えている。

 

すなわちこれはSTAP細胞の騒動と問題が似ている。STAP細胞の騒動では未熟な科学者が問題となったが、品質データの不正では未熟な技術者集団により問題が起きている。

 

これは技術の伝承や技術者育成がバブル崩壊後軽視されてきたからではないかと推測している。また、団塊の世代の大量退職とも関係している可能性を否定できない。

 

当方はこのような現状を憂い弊社を起業しているが、なかなか事業が立ち上がらず苦戦しており、最近は外部のセミナー会社のお世話になっている。

 

今月は15日に混練技術に関するセミナーを都内で予定しているが、品質問題の対策として10月にはゴム・樹脂の信頼性についてのセミナーを企画している。

 

また、上海では今月末に材料をデザインに生かす講演会が企画された。台湾ではシリコーンポリマーに関するセミナーが行われるがご興味のある方はお問い合わせください。

カテゴリー : 一般 高分子

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2018.06/06 知識(3)

知識の整理は大切である。特に科学者は、何が形式知で何が経験知なのか正しく整理できていなければ、業務遂行が難しい。

 

5月30日に行われた伸長流動のセミナーで千葉大名誉教授大坪先生は、そこのところをきちっと説明されていたので、当方の知識の整理に大変役立った。

 

ところが学者の中にはこれがきちっとできていない先生もおられるから大変だ。昔非晶質酸化スズゾルのご相談を某先生にしたところ、とんでもない話が飛び出した。

 

およそ形式知から外れた話で、おそらく勘違いしておられたのだろうが、このような先生から指導を受けている学生を一瞬心配した。具体的に書くと某先生の権威にも関わるのでここでは公開しない。

 

実は技術者も形式知と経験知を整理しておくことは大切で、それらが整理できていると暗黙知なるものを自己の中に具体化でき、新たな経験知を獲得した時に二倍にも三倍にもそれを増やすことが可能となる。

 

俗に一を聞いて十を知るとはこのことではないかとも思っているが、当方は転職し専門外だった高分子を生業とするようになってから、サラリーマン人生をあきらめ、このあたりをごみ拾いをするように丁寧に経験知を拾い上げ整理するようになった。

 

そこでタイミングよく宇宙人のような人に会って、暗黙知なるものを活かす術を得た。知識とは単なる情報とは異なり、必ず人間と結びついている。

 

情報が、情報として独立し、それを得た人により異なる知識が生まれるのは、まさに知識が人に結びついていることを示している。

 

「ボーと生きてんじゃない」とはNHK番組の五歳の女の子の決め台詞だが、同一情報に接触してアウトプットを出す人と出さない人がいるのは、ボーっと生きているのではなく、知識がある人とない人の差である。

 

知識は努めてそれを求め整理してゆかないと身につかないものである。情報を単に記憶し雑学博士となっても技術開発ができない理由はこれで、形式知をただひたすら求める学者も技術開発が不得意になる。

 

技術開発にはどうしても豊富な経験知と暗黙知が要求される。形式知は本を見れば書いてあるが、経験知や暗黙知は自ら技術開発を行わなければ身につかない。老体に鞭打ち、今年からまた中国で実験を始めた。

カテゴリー : 一般

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2018.06/05 知識(2)

形式知については小学校から学んでおり、また受験勉強を行った経験のある人ならば、どのようなものかすぐに理解できるだろう。

 

新たな形式知は科学論文から吸収することが可能だが、人工知能(AI)の普及によりこの形式知を頭に放り込む作業が無駄になる可能性がある。

 

経験知もAIに奪われるかもしれないが、暗黙知についてさすがにAIに搭載は無理だろうと思っている。もしそれが実現したら、本当に人間と同じ思考ができるロボットが登場する可能性がある。

 

しかし、AIに搭載が難しいということは、この伝承も難しいことを意味している。最近AIが騒がれたのでふと思うことがあった。年寄りが真剣に取り組む必要があるのは、長い人生で暗黙知をどのように具体化し生かしてきたのか思い出してみることである。

 

写真会社に転職して面白い人物にあった。当方よりも年配の方であるが、宇宙人ともうわさされていた技術者だ。その方と話していると話があらぬ方向へよく飛ぶ。話がワープするから宇宙人と呼ばれたらしい。

 

しかし、真剣に話してみると、決して話はワープしていないのである。ワープしたと思われる軌跡には暗黙知の論理的つながりを垣間見ることができる。

 

その技術者と話していて、その軌跡に気がついた時にワープの途中で方向転換できる話題を出したところ、話がもとに戻ってきた。宇宙人と呼ばれていた技術者は決して精神分裂気味に話が飛んでいたわけではない。

 

このようにして当方は初めて自分の暗黙知の存在を意識したのだが、この方と話すまで、暗黙知なるものを意識的に経験知へ昇華する術を知らなかった。

 

多くの方もそう思っているかもしれないが、第六感というものを自由にひらめかせることができたなら、どれだけ便利だろうと長い間考えてきた。それがこの技術者と話していてできるようになったのだ。

 

おそらくこれが第六感を制御できる唯一の方法ではないと思っている。第六感がどのようにひらめいたのか、それを具体化できれば暗黙知なるものの伝承方法が見つかるはずだ。当方のセミナーではこの暗黙知のいくつかを経験知としてまとめて解説している。

カテゴリー : 一般

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2018.06/04 いつかはニコンに

いつかはニコンに、はトヨタ自動車クラウンのCMコピーで「いつかはクラウンに」が流行したときにカメラボーイの間ではやった言葉である。いわゆるオタク言葉なので知らない方もおられるかもしれないが、ニコンカメラはカメオタにとって憧れのカメラだった。

 

しかし、値段が高かった。昔ペンタックスが一眼レフカメラ分野でトップになったのは、「望遠だよ望遠だよ、ワイドだよ」というCMで人気を博しただけでなく、性能が良くても安かったからである。

 

例えば、50年近く前に望遠と標準、広角レンズの3本とカメラ本体を揃えるとニコンのシステムと2倍程度の価格差になったと亡父が言っていた。亡父は警察官だったので一眼レフはペンタックスよりも安くて性能それなりのコニカフレックスを使っていた。その前はパールカメラである。コニカカメラとサクラフィルムは官公庁ご用達のブランドだった。

 

いずれも小西六工業の製品で、当時写真業界では、小西六工業はフィルムからカメラまで製造する世界的な写真総合メーカーだった。

 

今はコニカミノルタと社名を変えて、BtoBを事業形態としているメーカーになったが、鳴り物入りで建設した有機EL工場まで他社に売却して、いつまで事業継続が可能かはらはらしながらその経営を眺めている。

 

ゴム会社は、入社した時に世界6位のメーカーだったが12年で世界1位の会社になった。成長する企業というものをインサイドで実感したが、写真会社はこのゴム会社と全く異なる企業風土である。企業風土は経営に大きく影響する。

 

二つの写真業界のメーカーが統合するときにカメラ事業をソニーに売却したのは経営判断として正しかったかもしれない。現在のコニカミノルタではおそらくソニーの様な事業展開をできなかった可能性が高い。

 

この統合前にもソニーは画像センサーからカメラまで製造していた。しかし、ニコンは残念ながら画像センサーを他社から調達する立場である。これがデジカメにおいて画像センサーまで製造するキャノンの後塵を拝する原因になったと思っている。

 

ニコンの隠れた強みは硝材からレンズを製造できる点だ。ところが旧ミノルタも硝材からレンズを作っていたので、それを引き継いだソニーもニコンと同様の立場になった。

 

ただしカメラにおいてソニーのブランドはニコンほど強くない。だからソニーはブランド力をカールツアイスで補い、カールツアイスレンズも揃えていたのだが、ミノルタのブランドαを引き継いでニコンの足元に近づいた。

 

いつかはニコンカメラを、は昔の銀塩フィルム時代の言葉だが、ニコンカメラの高い信頼性は今でも健在である(ただこれには少し心配なところがあるのでニコンの技術者が読まれていたらご相談ください。)。

 

NASAご用達カメラは、今でもニコンである。くっきりとコントラストの高い写りは科学写真に最も適しており、これはレンズ設計に影響を受ける。しかし、そのニコンもソニーに抜かれる日が来たのかもしれない。

 

ところで安くて品質の良いペンタックスは、新製品を出した時に旧製品について新製品並みの性能にできるサービスを開始した。日進月歩のデジカメでこのサービスは素晴らしいが、すでに勝負がついた市場ポジションでは訴求力が無い。

 

決して悪いカメラではないが、ペンタックスがここまでシェアーを落とすとは想像できなかった。いっそのこと、メーカー保証のレンズマウント交換可能なミラーレスを販売したら面白いと思う。ニコン、キャノン、ソニー、そしてペンタックスまですべてのレンズを使うことのできる最も安いミラーレス、としたらヒットするかもしれない。

 

ペンタックスのデジタル画像は、こってり系であり、ソニーのあっさり系と異なる。また、ペンタックス純正のレンズは昔ツアイスレンズのOEMをやっていただけあって、その設計がツアイスレンズに似ており、ボケも美しい。ツアイスに負けないレンズがそろっているので本当はもっと売れてもよいリコーカメラなのだが。

カテゴリー : 一般

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2018.06/03 ミラーレス一眼カメラ

ソニーの一眼カメラα7シリーズが評判になっており、キャノンもミラーレス一眼の新製品を市場に投入してきた。一気にミラーレス一眼の時代になると言われ始め、ニコンも新製品のアナウンスを非公式にしている。

 

ミラーレス一眼とは、一眼レフカメラのファインダー像を得るためのミラーを省略し、画像センサーの像をファインダーで見えるようにした一眼カメラだ。一眼レフデジカメのミラーを外しただけのペンタックスの意欲作はじめ10年以上前から商品として出ていたが昨年暮れにソニーが発売したα9で一気にブームになった。

 

なぜこのα7シリーズがここにきて爆発的な人気になったのか調べてみたところ、以前キャノンやニコンを使用していたプロカメラマンまでα7シリーズを使用していることが分かってきた。α7シリーズは、例えば純正マクロレンズが無いなど純正のレンズ資産が貧弱であり、買い控えてきたが、他社のレンズを取り付けるマウントアダプターが揃っているのだ。

 

ミラーレスのα7シリーズにはミラーが無いので、画像センサーとレンズとの距離が短い。ゆえに一般の一眼レフカメラ用のレンズマウントを焦点距離補正用レンズ不要で設計できる。その結果、各社のレンズをこのα7シリーズに使用可能だ。

 

さらに現在のソニー製一眼レフカメラはミラー固定タイプであり、α7シリーズをこのソニー製一眼レフと同等にできるマウントも販売され、実は現在のデジタル一眼カメラの中で最もレンズ資産の多いカメラとなっている。

 

しかし、大人の事情があるのかもしれないが、なぜかこのあたりをカメラ雑誌が大々的に特集を組んでいない。例えばα7シリーズにキャノン製レンズをつけたときとかニコン製レンズを付けたときの写真特集を企画したなら、ニコンやキャノンから広告をとれなくなるのかもしれない。

 

弊社は特にキャノンやニコンからお金を頂いていないのではっきり書くが、絞り優先で焦点調制が手動になるが、この前提でα7シリーズが現在最もレンズ資産の多いデジカメで、キャノンやニコン、ペンタックスのレンズマウントを介して各社のレンズを使用できる「可能性がある」。

 

最後の「可能性がある」としたのは、万が一不具合が生じたときに弊社では責任を負えないからである。もちろんソニーもそのような視点で、「国内販売の一眼レフカメラのレンズをすべて装着可能です」なんてPRをしていない。

 

しかし自己責任を前提にこれは事実であり、これこそ「αショック」である。昔「βショック」というのがあった。これは、ビデオテープでVHS方式とβ方式で市場シェアの競争をしていた時である。ソニーは「βは無くなるの?」というフレーズの一面広告を新聞に出して、一気に勝負に出たところ、一気にVHSへ市場は動いた。

 

「α以外一眼カメラはいらない、すべての一眼用レンズをαで使えます」と広告したら、おそらく「αショック」が起きて、一気に一眼デジカメはソニーになるのかもしれない。

カテゴリー : 一般

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2018.06/02 日大アメフト問題(3)

「面接で聞かれますね。『もし上司から法律に違反するようなことを命令されたら、あなたはどうしますか』と質問されたりすることはよくあります」面接の場でこのような質問を受けることに関しては、「率直にショックですね」と語った。

 

これは昨日WEBで見つけた記事の引用であるが、日大の来年卒業を控えた学生へアメフト問題が影響していることをその記事は述べている。日大幹部の不祥事だが、それが学生にこのような形で現れたことに同情しているが、日大学生諸君はこれを機会にショックと考えずドラッカーを読んでいただきたい。

 

ドラッカーを読めば、今起きている本当の問題を正しく理解でき、面接の場の出来事はショックにならないはずだ。むしろ面接の場では今回の事件が君たちに有利に働く。

 

国会を見ていてわかるように、社会のリーダーに相当する人たちが、皆誠実で真摯とは限らない。不倫しても当選すればそれを禊と言って大きな顔をしている女性議員もいるのだ。有権者の多数が不誠実だとこのようなことが起きる。

 

日大の問題は不誠実な人たちがリーダーになっているとどのような問題が起きるのかそれを社会に示した事件である。文科省を昨日訪問した学長は、「どうしてここまで否定されるのかわからない」と発言されたそうだが、このような人は社内ベンチャーとして他社と協業に成功し新規事業を苦労して一人で立ち上げ、これからというときにデータFDを続けて壊され、被害者でありながら潔く退職の道を選んだサラリーマンの決断など理解できないだろう。

 

本来組織はこのようなことが起きないように運営されなければならないが、どのように優れた組織であっても、腐ったリーダーを生み出してしまうのは、組織を運営しているのが人間だからである。

 

ゆえにドラッカーは、リーダーの最も大切な仕事は誠実真摯な人を後継者として選ぶことだと言っている。さらに誠実と真摯さとは生まれながらの資質だとも言っている。すなわち不誠実な行いをする人物を見極めるのがリーダーの役目だが、残念ながら日大ではそれが機能しなかった。

 

教職員が、日大トップの辞任を要求するのは当然であり、トップの辞任が行われなければ日大は生まれ変わることができない。当方はFD事件で被害者でありながら転職することになったが、組織と価値感が合わないならばその組織から出てゆくことをドラッカーは勧めている。

 

すなわち、冒頭の面接における質問もそれを目的としていると思われるが、不誠実なリーダーのもとで働くことは、それこそ組織に対して、さらには社会に対して不誠実な活動になるからだ。冒頭の記事では、不幸にも不誠実なリーダーと組織で出会ったときに君がどのような行動をとるのか、面接で尋ねているのだ。このような質問を今の時期に日大生にあえてする会社には他の問題があるがーーー。

 

もし日大から教職員や学生の誠実で真摯な人物が大量に逃げ出し始めたらどうなるか?日大は早急に体制を変革しなければさらに大きな問題を引き起こすことになる。6月はそのヤマバになるのかもしれないが、学長は今回起きた本当の問題を正しく理解していないようだ。

 

これは先日指摘したように舛添氏も同じであり、少しでも誠実さが認められるような社会を目指していこうと考えている大多数の人の価値観と彼らの価値観は異なる。

カテゴリー : 一般

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2018.06/01 高分子材料の信頼性(1)

以前この欄で、防湿庫に保管していたニコンF100の裏ブタのフックが破損した話を紹介した。裏ブタのフックが壊れると裏ブタを閉めることができなくなりフィルムが感光するので、フィルムカメラにとってこのフックはキーパーツのはずである。

 

フラクトグラフィーを用いて、このフックの破壊について解析すると、典型的なクリープ破壊で進行していたことがわかった。このキーパーツの設計において、設計時の寿命予測として仮に10年程度を考えていたとしたならば、初期故障と分類してもよいような短命で、破壊の仕方もそのように推定されたので、うまく品質管理ができていない可能性を疑った。

 

ところが某中古店でヒアリングしたところ、このF100のフックについて展示していただけで壊れるケースが多いという。中古店情報なので破壊寿命やその様子は不明だが、最近はフィルムカメラの需要も少なくなったので、長期間裏ブタの開閉をしないカメラF100も多い。

 

いろいろ考察を進め、この裏ブタのフックについて、設計段階でどのような寿命予測試験を行ったのか疑問を持つに至った。もう10年以上過去の話なので時効と思われるが、写真会社に転職してこのようなゴム・樹脂部品についてアーレニウス型の寿命予測が多く用いられていることにびっくりした。

 

ゴム会社では40年以上前からワイブル統計で寿命予測を行うのが一般的だったので、設計者になぜアーレニウスだけで行っているのか尋ねたところ、いままでこの方法で行ってきて問題がなっかった、という。ところが、当方が豊川へ単身赴任したところとんでもない品質問題が発生した。

 

詳細は省略するが、1980年代のセラミックスフィーバではセラミックスの品質管理にワイブル統計を導入する検討が学会で真剣に議論されていたが、高分子学会でそのような議論がなされた様子をこの30年間見ていない。ゴム会社で40年前に導入されていたのでワイブル解析は常識と思っていたが、某樹脂会社の人からワイブル統計を御存じないと言われたのでセミナーを企画することにし、3年ほど前から行っている。

カテゴリー : 一般 高分子

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2018.05/31 知識(1)

先日カオス混合装置のことを書いていて、暗黙知なるものに思いが至り、わけのわからない内容になった。

 

これまでの人生でアカデミアの方もびっくりされる技術発明をいくつかしてきたが、高純度SiCの発明とカオス混合の二つの技術は、驚かれただけでなく、高い評価をいただいている。

 

高純度SiCの技術では、自作した超高温熱天秤で反応速度論の解析まで行った実験をO先生に話したら、データを見せてほしいと言われた。そこでデータを見せたところ勝手に論文を出されてしまった。

 

早く論文を出さなければいけないから、とその理由の説明をされたが、ご自分をファーストオーサーとして書かれた点になると歯切れが悪い。このような不誠実な先生もおられるから企業の方はアカデミアの先生にご相談をされるときに注意された方がよい。

 

高純度SiCの発明は、形式知で考えていたら絶対にできなかった発明である。これについてO先生が熱く解説してくれた。すなわち、フローリーハギンズ理論で否定されるポリマーの組み合わせで実現しているからである。

 

そして、この理論で否定されるポリマーの組み合わせでもリアクティブブレンドならば相溶でき、この研究は、相溶できないポリマーの組合わせを相溶できる唯一の方法を提示している、とあたかもご自分が初めて成功されたような興奮で語ってくださった。

 

もっとも当方もそのように考えてフェノール樹脂とポリエチルシリケートの組み合わせで必ず成功すると思い、試行錯誤を繰り返し成功したのだから、その当方にこのような熱い語りをされても、ただ呆れるだけだ。

 

専門家が他人の研究を奪ってしまいたい、と嫉妬するくらいの発明は、優れた発明と言えるかもしれない。この視点でカオス混合装置も同様で、元神戸製鋼の技術者H氏は、某社セミナーの講演でカオス混合装置をご自分の発明と説明されていた。

 

特許を調べればこれが嘘であることがわかるので信じている人はいないと思うが、そこまで調べない受講者は信じている人もいるかもしれない。

 

昨日の当方の講演ではこのあたりの問題について30秒ほど触れたが、興味のある方は弊社へ問い合わせていただきたい。

 

H氏の講演では少し腹が立ったので、講演終了後H氏に注意をしているが、「大変すばらしい仕事をされた」と上から目線で褒められ呆れた。年を取った技術者は図々しい。

 

他人の研究を素晴らしいからという理由で自分の研究とする不誠実な人間だけでなくFDを壊して研究の妨害をする人もいるので、他人と共有化しにくい暗黙知の扱いは難しい。

カテゴリー : 一般

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2018.05/30 雑誌「カメラマン」今月号の編集がおかしい

雑誌を購入するときに内容を見て購入する習慣で、成人してから定期購読をした経験がない。理由は多数の分野の情報を知りたかったからだ。自分の興味のある雑誌を定期購読していたら、30年前は給与の半分が無くなっていたかもしれない。

 

しかし、当時に比較すると雑誌の数が大きく減少した。特にコンピューター関係と産業関係の情報誌、自己啓発誌が減少しただけでなく様変わりしている。例えば株式関係の雑誌が目立つところだ。

 

早い話がインターネットの時代でも読者を捉えている雑誌が今書店に並んでいるといってもよい。換言すれば書店に並んでいる雑誌を見れば世間の興味を持っている分野を知ることができる。

 

デジカメの普及とともに写真雑誌が多数出版されるようになったが、最近はそれも淘汰されてきて、一定の読者を抱えている雑誌だけが現在残っている。はじめて写真を投稿し入選した日本カメラは現在も出版されているが、その本の厚みは薄くなった。

 

出版不況とデジカメブームの沈静化、そして写真の楽しみ方がインターネット中心になったためにこれら写真関係の雑誌も苦労しているのだろう。そんなところで詐欺のような編集の雑誌を見つけた。

 

表紙に書かれたタイトルと本の内容が異なっているのだ。今月号の「カメラマン」の表紙には、テーマとなっている記事のタイトルが「ジャンル別プロの撮影極秘テクニック」とあるが、実際の中身は「作品ありきの写真周辺用語実例集」となっている。

 

この雑誌で過去にも類似のミスを見つけたが今月はもっとひどい。扇風機を購入したつもりが、箱をあけたら掃除機が入っていたようなミスだ。掃除機でも吹き出し口から風が出るので扇風機として使えない訳ではないが。

 

恐らく読者が減っており、雑誌編集に金をかけられなくなってきたのかもしれない。「CAPA」はどんな具合だろうと購入してみたが、相変わらずの内容だった。タイトルにつられて買った「カメラマン」の雑な内容のおかげで、今月は購入するつもりのなかったカメラ関係の雑誌を二冊も買うことになった。

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2018.05/29 日大アメフト問題(2)

舛添氏はじめ一部の知識人には社会が日大の問題に大騒ぎする理由が見えていないようだ。最初に関学から提起された、反則タックルにより選手が負傷しただけの話ならば、舛添氏らの意見が当たっているかもしれない。

 

しかし、社会はそのような問題から離れ、日大という一応ブランド力のある大学の幹部がとんでもない人物で、さらに組織が彼を守ろうとし、本来大学という組織として一番大切にしなければいけない学生を見殺し状態にした行動に驚いている。

 

これは大変にわかりやすい問題で、普通の感覚の人ならばすぐに憤りを感じる善悪問題である。ただ、舛添氏はじめ一部の知識人の書かれている「大した問題ではない」意見を読むと、この社会的影響力のある組織で発生した善悪問題とそれを放置した時の社会的影響に気がついていない。

 

悪人を許し善人をいじめる組織、そしてこともあろうにそれが教育機関である事実にいまや世論は驚いている。実は早めに日大側が幕引きを図っておれば、このような日大の組織の恥部をさらけ出すに至らず大きな社会問題まで発展しなかった。

 

さらに学長まで恥をかくような会見を開かなくても済んだ。腐った組織だが外から見れば立派に見える、というのは探せばいくらでもある。

 

世の中が勧善懲悪の舞台ではないことを大人であれば誰もが理解している。その中で少しでも良い社会にしてゆこうと多くの普通の社会人は毎日努力して生きているのだ。

 

その目の前で社会的地位を得ていた「悪人」とその「腰ぎんちゃく」が「弱者」に悪事を命じたシーンが演じられた。そして弱者は命じられたまま実行するが、良心に耐え兼ねて真実を話しても悪人は知らぬ、存ぜぬと言っている光景がTVから連日流れている。

 

しかし、鈍感な、あるいは日大アメフト部の監督の様な人物がリーダーになっている組織では、しばしばこのようなことが社会にどのような影響を及ぼすかに気がつかず、問題が泥沼化する。

 

当方はインサイドの立場で、このような問題が起きたときに早く幕引きをするように努力し組織へ問題提起したが、所属していた組織が常識に反する方向へ動いたので被害者でありながら傷を深めないようにするため転職する決断を選んだ。

 

その後、当方はもうその会社とは無関係の立場で事件を知ることになったが、数年後にはさらにとんでもない事件が起きた。人生誠実真摯に生きようとすると損をする風土ではいけない。そのような風土を放置すると健全な風土にまで問題が飛び火し全体がおかしくなる。

 

日大アメフト問題は、この時と同様に単にスポーツの現場で起きた問題から社会正義に反していると世論が感じる問題に発展し、そしてそれが教育機関であったという理由で大きく社会問題化しているのだ。分かりやすい問題ゆえに誰もがそれぞれの価値観からこの事件を捉えている。この問題に関して意見の違いは、それぞれの価値観の違いとなる。

 

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