高純度SiCを初めて合成した時に経験した還元炉の暴走原因は結局不明のままだった。暴走現象を再現することもできなかった。しかし、当時パワー半導体用ウェハーの原料にも使用可能な高純度SiCが簡単に得られた実験結果は、セラミックスフィーバーという時代背景を考慮すると無機材質研究所においてSTAP細胞と同様の衝撃だったはずである。ただ無機材質研究所長はじめ研究所の方々は冷静に対応され、機密扱いとされた。
またSTAP細胞の発見と異なるのは、還元炉の暴走で偶然得られた温度パターンは、温調器にプログラミング可能で、簡単に温度パターンを再現でき、その温度パターンでポリエチルシリケートとフェノール樹脂で合成された前駆体を処理すれば容易に高純度SiCを合成できた点である。これは十分に実用性のある経済性の高いプロセスだった。
ゴム会社ではこのプロセスを実用化するためにファインセラミックス研究棟の建設を始めている。そして11月に当方は社長に呼ばれプレゼンテーションを行っている。その場で2億4千万円の先行投資を受け、学位論文にもなった速度論解析実験に使用するための超高温熱天秤(SiC前駆体の品質管理に使用した)を開発したり、10kg/日で高純度SiCを製造可能なパイロットプラントも建設することができた。
怪奇現象と言ってもよいような条件で得られた数十ミリグラムの高純度SiCを合成できたおかげで、研究棟の建設や先行投資が得られたことは、この現象以上に驚くような展開だった。ゴム会社入社以来の夢が半分実現した。
実は、無機材研留学のきっかけとなったのは、ゴム会社創立50周年記念論文で応募したことである。この時、ゾルゲル法で高純度SiCを合成し、Siに代わる耐熱半導体を発明するなどの夢を描いているが、論文は佳作にもならずボツとなっている。ただこの論文のおかげで海外留学の機会が得られ無機材質研究所へ留学している。
この論文をさらにブラッシュアップし昇進試験(あなたが推進したい新規事業シナリオをのべよ、というのが問題だった)の答案として書いて0点を頂き、昇進試験に落ちるのだが、落ちたおかげで、高純度SiCの技術について実験する機会ができた。
この実験では還元炉の暴走で最適温度パターンが偶然得られるとともに高純度SiCもたった一回の実験で得られている。さらにこのたった一回の実験で得られた粉末のおかげで、事業化の決断がゴム会社でなされ、35年以上も続く事業が生まれた。
ゴム会社の入社面接では、あっと驚くような技術を開発し新事業を起業することが夢と語っている。そして入社後はその夢に向けて活動をしている。FD事件のため住友金属工業とのJV立ち上げまでしか推進できなかったが、夢を描き努力することでそれが実現することを体験できた。
人生とは不思議なもので、高純度SiCの事業をスタートできるまでは腐ってもよいような出来事ばかりだった。ただ逆境において常に会社への貢献と自己実現を軸に判断し、前向きに努力したところ、成功しても報われることのない夢を実現できた。FD事件では、被害者の立場であったが早期終息をするために退職を決断している。
この時セラミックス関係の会社へ転職する道が輝いていたが、あえてそれまでのスキルやキャリアを捨てて高分子開発を業務とする会社へ転職する道を選んだ。その結果、新入社員テーマで指導社員と約束したカオス混合の実用化を定年間際に成功できる幸運に恵まれたが、このカオス混合の成功でも定年で退職したためサラリーマンとして何も報われていない。ただし、科学で説明できないような現象と遭遇し、どちらかといえば楽しかった会社人生である。
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お化けは夏の風物詩である。お化けの話でもして気分だけでも涼しくなりたいが、今日ここに書く話は35年以上前に実際に起きた現象であり、当方一人だけでなく当時の無機材質研究所でも少し話題になったできごとである。
無機材質研究所へ留学して半年ほど過ぎた10月1日に人事部から当方へ電話がかかってきた。8月に実施された昇進試験に落ちた、という連絡だった。昇進試験には高純度SiCの事業シナリオを解答として書いていたがそれが0点だったという。横で電話を聞かれていたI総合研究官は、当方のモチベーションが低下しないように、一週間だけ自由に研究できる環境を用意されて、当方に挽回のチャンスを作ってくださった。
一日目に、ゴム会社の研究所へ出向き、フェノール樹脂とポリエチルシリケートを用いて10種類ほど高純度SiC前駆体を合成した。2日目はこれを無機材質研究所の還元炉で炭化した。3日目はこれらを分析し、前駆体中のシリカとカーボンの比を大きく4水準変化させた条件となる4種類の炭化物を選んだ。
そして、4日目に4種類の炭化物を無機材質研究所に納入されたばかりの新品の還元炉にセットし、SiC化の反応を行っている。還元炉の制御はすべて無機材質研究所T主任研究員が設定してくださった温調器のプログラムで行われた。1500℃まで順調にプログラムは動いていた。当方は実験がうまくいくように、還元炉の前でただ必死でお祈りをしていただけだった。
突然1600℃30分保持する条件に達したところで電気炉は暴走し始めた。慌ててT主任研究員に電話をしたところ非常停止をするように指示を受けた。非常停止ボタンを押したときに温調器の指示は1800℃になっていた。しかし非常停止された電気炉は、無事温度が下がり始めた。
T主任研究員が実験室に到着されたときに電気炉の温度は1600℃近くまで下がってきた。T主任研究員は、電気炉のスイッチをONにして異常を調べ始めたところ、温調器に異常は起きておらず、1600℃保持の動作に入った。その後、2時間ほどT主任研究員と電気炉を観察していたが何も異常は起きず、プログラムは終了し還元炉は冷却状態となった。
5日目の朝、電気炉をあけてびっくりした。ちょうど化学量論比となる炭化物前駆体の入っていたカーボンるつぼに真黄色の高純度SiCができていたのだ。I総合研究官もT主任研究員もびっくりして「一発で高純度SiCが得られたのは世界で初めてだ」、と言われた。
ここで3人がびっくりしたのは高純度SiCが得られたことだけでなく、それが偶然温調器が暴走して得られた事実である。すぐに還元炉メーカーの技術者に依頼し、還元炉の調査をしていただいたが、何も異常が無く、その後同様のプログラムを3回動作させても安定に制御されて動いた。
なぜ、還元炉が暴走したのか、安全委員会でも問題となった。また、その後の実験でこの暴走したために非常停止をかけ、テストのために再度電源を入れたりして偶然得られた条件が高純度SiCの合成条件として、もっともよいことがわかって、その不思議さが話題となった。
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以前この欄でニコンF100というフィルムカメラの裏ブタフックが、防湿庫で保管していただけでクリープ破壊して壊れカメラが使用不能になった話を紹介している。これは材料メーカーの責任ではなく、カメラメーカーの品質管理技術がお粗末なためにユーザーが泣かなければいけない故障である。
詳細は省略するが、裏蓋のフックについてどのように仕様を決めたのか、という問題と、裏蓋が開く機能に重要なバネ強度をどのように品質管理していたのかという二つの問題が関わっている。いずれもF100設計段階におけるミスである。
材料メーカーの責任は存在しないはずだが、材料メーカーの責任を問われるケースも出てくる。すなわち、フックの引張強度やその寿命を材料スペックとして材料メーカーが採用していた場合である。
この点については有料でご説明すべき内容であるが、少し書くと、強度にかかわる寿命については成形体に潜んでいる欠陥の影響を強く受ける。成形体を製造直後に十分な強度が出ていたとしても、時間の経過とともにこの欠陥が成長するような条件が揃うと欠陥の成長速度が成形体の寿命を支配する。
成形体に潜んでいる欠陥の初期のサイズやその個数の分布について知ることやましてや品質管理するには高度な技術が要求される。多くはこれらと相関しそうな間接的なデータで品質管理する以外に経済的な方法は無い。
ゴム強度の寿命が欠陥の影響を受けることは1960年代に論文発表されている。ゴム会社ではこれが伝承されているが、多くの企業では未だに知らない人が多い。また高分子学会の発表にもこの事実を全く知らずに研究報告をされている先生も存在する。
情報として教えてあげたところ、物性の専門家ではない、と言って叱られた(照れ隠し?開き直り?)時にはびっくりした。ゴム協会誌に掲載されていた情報なので50年も経っていればアカデミアでは、高分子の寿命を研究として扱う限り常識として知っていなければいけない。
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材料の品質データねつ造があっても、その材料を採用している製品には影響が無い、というニュースを聞いて奇妙に思った人は多いのではないか。また製品品質に影響のない材料の品質をなぜ管理しなければいけないかという疑問も出てくると思う。昨日はこのような事情になる原因を少し説明したが、具体的な高分子の劣化あるいは製品寿命について本日は書いてみる。
高分子材料が構造材料として用いられたときの寿命とは、例えば引張強度や曲強度、圧縮強度などの製品品質がそれら仕様として決められた強度の値を下回ったときである。このように具体的に分かっていてもその寿命を材料メーカーが品質保証するとなると難しい問題がある。
原因は、この寿命が高分子材料の品質だけで決まらず、材料が形になり製品に組み立てられた状態、ざっくり言えば成形技術と製品設計技術の影響を受ける。極端な例として、材料の品質など無関係で、例えばポリスチレンならばどのような品質のポリスチレンを用いても製品寿命を長くできる成形技術や製品設計技術というものが存在する。
例えば製品のコストダウンを図る場合には、どこのメーカーのポリスチレンでも使えるように製品組み立てメーカーは、このような技術を開発する。具体的には、各メーカーから販売されているポリスチレンの種類を誤差として見立ててタグチメソッド(TM)を行えばそれが可能となる。
このTM実験で使用する制御因子や調整因子については製品組み立てメーカーのノウハウであり、材料メーカーは知ることができない。仮に教えられても、基本機能の評価技術を材料メーカーは持っていないのでTM実験を同じように行うことができない。
製品組み立てメーカーは、TM実験によりどのようなポリスチレンを用いても可能であるにもかかわらず、一応実験に用いたポリスチレンのスペックを決めて材料メーカーへ発注する。そこに材料の寿命スペックを入れる場合もある。これを材料スペックとして決められると材料メーカーは、捏造の機会を抱え込むことになる。
材料の寿命を材料メーカーが品質管理する技術は、製品組み立てメーカーが同様に管理する技術よりも数段難しくなる。仮に寿命評価法をすり合わせたとしても、さらに成形技術を完璧に同等としても、製品の調整因子まで明らかにされなければ、その難易度は同等にならない。
材料メーカーのリスク管理の視点では製品寿命に関わるスペックを受け入れてはいけない。この点について質問のある方は問い合わせていただきたい。製品寿命について材料スペックをどのように決めるのかは難しい問題ではなく、***である。
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昨年暮れに材料メーカーの品質管理データねつ造があいつぎ、社長の謝罪会見が行われた。興味深かったのはトヨタ自動車はじめ川下のお客はすぐに製品品質について異常なし宣言をだしたことだ。これにより川上メーカーの火の粉をよけたわけだが、違和感を感じた方が多かったのではないか。
品質管理基準を満たさない商品を使った製品が安全であると宣言しているのだ。ニュースでは「特採」の存在まで丁寧に説明し、川上メーカーが不良品を川下メーカーに納めたにもかかわらず、川下で問題が起きないからくりを「わざわざ」説明していた。材料メーカーの当時の不祥事が大きな社会問題にならないような配慮だが、品質管理の考え方から見れば、実はこの説明にだれかかみついてもいい。
社会不安をあおることにもなりかねないのでこれ以上はニュースの説明に言及しない。ただし、この事件の流れについては「さすがトヨタ自動車」という正しいコメントが、建設的であり、また「組み立てメーカー」と「材料メーカー」の関係の問題及びこの関係において「材料メーカー技術者」の涙ぐましい努力と彼たちの築いてきた材料技術の裏側を浮き彫りにするので少し書いてみたい。
ニュースでは特採の実態について詳しく説明していない。これは説明しにくい話だからである。ニュースでは短時間の説明で素人が納得できるような内容だったので、おそらく品質管理業務に精通したどなたかがニュース原稿を作られたのだろう。
ニュースでは語られなかった重要な本音を述べると、組み立てメーカーの材料に関する品質管理手法や材料の品質が関わる部品の設計手法は外部に知られたくない重要なノウハウであり、これは科学の不完全性を示す事例である。換言すれば、これだけ科学が進歩したと言われているにもかかわらず、科学で完璧に説明できない現象が多いから、川上メーカーが知ろうとしても知ることができない川下メーカーのノウハウが生まれるのだ。
もし、材料物性と製品品質の関係を説明できる完璧な形式知が存在したならば、トヨタ自動車の宣言は大嘘かあるいは不誠実な発言ととなる。しかし材料品質と製品品質の関係を既存の形式知を用いて未だに完璧に説明できないので、川下メーカーは品質保証された材料が納入されても独自の品質基準でその材料で作られた部品の品質管理を行わなければいけないという実態がそこにある。
このような「完璧な形式知が存在しない」ことを誰もが暗黙の裡に知っており、トヨタ自動車の品質管理技術が世界一とよべるような信頼性が確立されているのでトヨタ自動車の鶴の一声で年末のねつ造問題は沈静化したのだ。
製品を開発する過程で「完璧な形式知が存在しない」ため川上メーカーと川下メーカーはお互いの技術内容を開示しながら「すり合わせ」で技術を創り上げてゆく。この時川上メーカーには正直に材料物性データを提出することが求められるが、川下メーカーからはその物性データがどのように製品品質と関わっているのかについてノウハウであることを理由に詳細な説明がなされない。せいぜい物性データについて〇×△の記号がつけられた一覧表が渡されるだけだ。
材料メーカーの優秀な技術者は、お客様である川下メーカーの〇×△データを唯一の手掛かりとして材料の品質管理基準を創り上げてゆく。その過程は、形式知を使い論理的に進めることができないという理由で科学の研究よりも難しい作業となる。材料が製品で機能を発揮している状態を心眼で見る必要があるからだ。
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6月末に上海で開催されたCMFデザインに関する国際会議で招待講演者として発表の機会があったので、30秒ほど弊社が開発した新技術についてお披露目した。講演の後、中国の放送局や出版社の取材を受ける決まりがあった。新技術について質問を受けた場合の回答を用意していたが、幸運なことに質問が無かった。
もっともこの国際会議の参加者は発表者も含めデザイナーばかりだったので30秒ほどの説明では気がつかれなかったのかもしれない。会社を起業してから7年になるが、カーボンクラスターの制御技術以外に新規技術がいくつか生まれている。
後発なので最初に紹介する技術として気が引けるが、CNTの水分散技術やこれを活用した樹脂の変性技術、同じくコロイド技術になるがホスファゼンによる皮革の難燃化技術、PC/ABSの新たな難燃化システムの開発、新規オリゴマーの開発とその機能、熱伝導性光散乱樹脂、絶縁耐性の高いPPSはじめPPS関係の技術など特許を書いていない技術も存在する。
多くは中国で開発し実用化している技術で単なる研究ではない。これらの新技術の一部はセミナーなどで公開しており、来月開催されるブリードアウトのセミナーでもブリードアウト防止技術として紹介する。またKRIからも講演依頼があるのでそこでもいくつかご紹介させていただく。ご興味のある方は弊社へご相談ください。
有料のセミナーで新技術を公開する理由はPRのためでもあるが、高価な参加料を支払って来ている方に学会では得られない情報提供をするサービス精神からである。当方のセミナーでは発明の方法や特許ネタも紹介しているので、その内容は学会発表よりも直接実務に役立つはずだ。
例えば皮革の難燃化技術は、皮革だけでなく他への応用も可能である。さらに単なるコーティングではなく革の内部にホスファゼンが浸透しており学術的にも興味を持てる内容である。おそらく結果をご覧になるとアッと驚かれるはずだ。これは日本の某中小企業から商品が販売されるはずだが残念なのは資金が乏しくそれがいつになるのか決まっていない点である。
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土曜日はサラリーマン時代に部下を学会へ出張させたときの話題を書いたが、学会以外にセミナー会社が開催している有料のセミナーがある。お弁当付きで5万円前後の価格で学会参加費よりはるかに高い。
退職後の技術成果は、もっぱらこの有料セミナーで公開している。理由はかつて若いころのトラウマと昨日書いたような実体を考慮してのことである。また、学会で発表するときにはお金を支払わなければいけないが、有料のセミナーでは逆に講演料を頂けるからわざわざ学会で発表するメリットが無くなる。
それでも学会から依頼されれば、講演料が無料でも条件付きで引き受けることにしている。その条件は学術データが無くても文句を言わないことである。すなわち、技術は機能の実現が目的になるので細かい機能と無関係のデータをわざわざ収集しない。
例えば、これは水に不溶のホスファゼンはじめコロイドになっていない難燃剤をコロイドにする技術の事例だが、この技術ではたった一日で皮革の難燃化まで実用化したため、公開できるのは正真正銘難燃性能に関するデータだけである。
オイル分散を使用せず、水不溶性の固体のコロイドを製造する技術は教科書にもいくつか書かれているが、今回開発した手法は、それらと全く異なる方法で学会で発表しても参考となる技術である。
しかし、35年以上前にフェノール樹脂とポリエチルシリケートから合成した前駆体を用いて高純度SiCを合成した成果を発表したときにSiCの反応速度論の話をしたら前駆体の質問が出た。企業の立場ではノウハウになるので答えなかったところ、無茶苦茶な言われ方をした(注)。
この技術発表以外にPPSと6ナイロンを相溶させた材料を用いた中間転写ベルトの学会技術賞の審査会では「嘘だろう」とか、有機無機複合ラテックスでは、「そんな技術は皆知っている」とか信じられないアカデミアの先生のご意見が飛び出した。
前者については企業の方がその後ポリマーフロンティアにおける発表の機会を設けてくださったのでカーボンクラスターの制御についてカオス混合技術を新たに開発した話として講演させていただいたが、これでは企業の技術者が学会発表をしなくなるのは当然だ。
このような経験から、新技術については有料セミナー以外では依頼されない限り学会で公開しないことにした。PPSと6ナイロンの相溶については審査会で透明なストランドを見せたが、6ナイロンが低分子量化したからだろうなどと適当な考察を言われた審査員の先生もおられたが、今そのストランドはスピノーダル分解が起きたために白濁している。
(注)その後この時の発表をベースに学位論文をまとめることになるのだが、国立T大某先生は頼みもしないのにまたその研究に関わってもいないのに勝手に自分を第一著者にして論文発表している。無機材研の先生方にしても必ず発表前には小生の許可を申し出てくださったがこの先生は勝手に自分のご研究のように発表された。それでも学位論文のお世話をしてくださったのなら多少は我慢できるが、結局T大のこの先生はなにもしてくれず、学位審査に関わる他の主査の先生から奨学寄附金の請求を受けたため、ゴム会社からすでに奨学寄付金が支払われていたこの大学を当方から辞退している。何もしなくても金さえ出せば学位を出すというような態度で腹が立ったばかりでなく、いかがわしい店と変わらない怪しげな扱いだった。その後中部大学で学位を取得しているが、中部大学では親切なご指導と英語とドイツ語の語学試験も実施されたフルコースの試験など丁寧な審査で学位の価値を十分味わうことができた。なおこれは25年以上前の話だが、当初英文でまとめた学位論文をすべて日本語に書き直している。理由は英文であるとコピペをされてもわからないから、ということだった。すでにコピペ対策が取られていたのだった。たしかに日本語であれば文体にそれぞれの個性が出るのでコピペ部分はわかりやすい。
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ASKAが年末にコンサートツアーをするという。それに対して賛否両論がネットに出ている。また酒井法子の、これまた不似合いな役回りの話もある。
麻薬中毒がどのようなものか知らないが、そこから立ち直るためには大変らしい。個人の努力だけではどうにもならない、と言われている。再犯率が高いのも麻薬の特徴であり、最近芸能界だけでなく一般にも麻薬が広まり社会問題となっている。
麻薬の罪の大きさはともかく、社会の麻薬撲滅に対する関心を高めるためにも、また一度犯した過ちから立ち直ろうとするASKAをサポートするためにも、彼のコンサートツアーは社会で応援してもよいのではないか。企画内容にもよるが、文部科学省推薦など得られたら、社会復帰も早くなるかもしれない。
ネットには、芸能界はそれほど甘くない、と書かれたりしているが、このコンサートツアーに失敗したらまた麻薬を使う可能性が高い人と思われているらしい。特別なASKAファンでもないが、ぜひコンサートツアーを成功させて無事社会復帰を成し遂げてほしい。
他人であっても過去の過ちを反省し、失敗から立ち直ろうと努力する人を応援したくなる性分である。世の中にはこの逆の性格の人もいるから厄介である。当方のFDを壊して仕事の妨害をした人などその例である。
それ以外に、入社し一年もたっていない時にホファゼン変性ポリウレタン発泡体を工場試作まで成功させて褒められるかと思ったら始末書を書かせられたり、設備仕様が合わず導入されてほとんど使われていなかった高価な設備を改良して実験に使えるような仕様にしたら、「君のために買ったのではない」と叱られたりと、頑張っていてモラールダウンする状況が多かったサラリーマン人生だった。
昔マラソンランナーが「自分をほめてやりたい」と名言を述べていたが、自画自賛は四面楚歌でモチベーションを維持する時には大切で、さらに遠くからでも称賛されれば向上心はアップする。それが分かっているのでASKAを応援したい。
ただ残念なのはCHAGEの参加が発表されていないことだ。サプライズゲストとして用意されているのかどうか不明だが、ニュースにはソリストとしてツアーを行うとある。CHAGEはASKAを見捨てたのだろうか。
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学会参加は知識獲得のための良い機会である。理解できなくても参加するだけで知識は増える。ただし、知識を求めようという意欲が無ければ無駄な時間を過ごすことになる。学会を情報調査の目的で行くのもよいが、知識獲得が正しい姿勢だ。
学会へ参加した部下のレポートが貧弱だったので書き直しを命じたことがある。部下の回答は、新しい情報が無かったからだという。日頃の仕事ぶりからそれほど知識があふれているとは思われないので、それは嘘だろう、と言ったら、予稿集を持ってきて、フィルム関係はこれだけしかなかった、と説明してくる。
予稿集を見てみると、接着に関する発表やコールコールプロットのグラフが載っていたり、その他直接現在担当している仕事とは無関係だが知識として整理すべき情報はたくさんあった。
そこで部下に「この講演はどうだった」と尋ねると、「それは電極の話で、仕事に関係ありません」という。フィルムのインピーダンスを研究していた時期だったので実験方法が参考になったかもしれない、と注意すると、講演を聞かなかったのでわからない、と頓珍漢な答えである。
彼の学会参加の目的は、知識にあったのではなく、仕事に密着した情報収集だけだったのだ。だから仕事と異なる分野には無関心となり、講演すら聞かない。これでは知識は増えてゆかない。
学会の良いところは、研究者の経験を共有することができる点である。同じ現象を見ても身に着けている知識が異なると見解が変わる。教科書には形式知に沿った説明しか出てこないが、学会の研究発表の中には偏見ともとれる考察を聞ける場合がある。
その見解が正しいかどうかは、当方は学者ではないので問題にしない。むしろそのような見解を語らせている経験知や暗黙知に注目する。やや癖のある見解に、自分とは異なる発表者の知恵を見ることができるので、質問をするようにしている。学会に参加して新しい情報が無い、という経験はあるが、勉強にならなかった経験は無い。
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この数年気になっていたことだが、雑誌の立ち読みをできないようにする書店が増えた。地元の駅前の本屋も昨年からすべての雑誌に紐がかけられている。仕方がないので立ち読みのできる本屋をわざわざ探し出して、今では車で15分ほどかかる本屋まで本の立ち読みに出かけている。
当方のこの行動から立ち読みのできない本屋は売り上げが減るのではないかと思っていたら、小学館がコミック誌の包装を廃止したところ売り上げが20%向上したので、各書店にコミック誌の立ち読みができるように呼び掛けているという。
そして最近数値として実績が出てきて、立ち読みが全くできない書店と立ち読みができる書店では売り上げベースでやはり20%ほど異なり、立ち読みのできる本屋の方が売り上げが高いという。
昔はどこの本屋でも立ち読みが可能で、本は立ち読みしてから購入する商品だと思っていた。しかし雑誌が痛むという理由で立ち読みができないようにする書店が増加し、その結果客足が遠のき、書店がつぶれていったのかもしれない。
とにかく小学館の呼びかけは歓迎したいが、不思議に思うのは、書店でもお客が減った原因として立ち読み禁止が関係していることになぜ気がつかなかったのだろうということだ。
以前この欄で書いたが、当方は雑誌の定期購読をしていない。本屋で立ち読みし面白い本を買うことにしている。多い月には4-5冊雑誌を購入する月もある。最寄駅前の本屋ももう一度立ち読みができるようにしてほしい。
ガソリン代と駐車料金で雑誌一冊分の値段になる。ガソリン代は今時燃費の悪い無鉛ハイオクガソリンを使った車の影響なので本屋に責任は無いが、本屋に行くためだけに電気自動車を購入する気にはなれない。
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