昨日の続きだが、高級スピーカーと呼ばれるものには、かつて何となくクリスタルで話題になったJBLがあるが、最近は人気が無い。
このJBLスピーカーの特徴は大口径のウーファーとホーンスピーカーで音楽を壮大に聞かせる。しかし、デジタル化により、アンプの出力向上やSN比の向上により、高能率のスピーカーよりも繊細な音表現が好まれるようになった。
B&Wのスピーカーはまさにそこを狙ったスピーカーで能率は低いが音の分解能は高い。昔はソフトドームスピーカーをはじめとして、高域を駆動するスピーカーの材料は絹など軟らかい材料が用いられていた。
本来は高剛性で高周波数領域で内部損失の大きな材料がよいのだろうけれど、これは材料物性として二律背反となる。最近はアルミニウムやマグネシウムを用いてそのような材料加工ができるようになった。
B&Wは、アルミニウムやマグネシウム製の高剛性材料をツイーターに用いて成功した会社である。この会社の高級品はダイヤモンドを蒸着したツイーターが使われているが、蒸着ダイヤモンドは単結晶よりも少し弾性が落ちる。
今では分解能が高いと言われているスピーカーの多くは金属製のツイーターを用いている。ダイヤモンドでなくても聴感上変わらないのでわざわざダイヤモンドを使用しているのは、いかにも、という印象を受ける。
日本にはダイヤトーンというブランドが昔あったが、ダイヤモンドではなくボロンを使用したツイーターを過去に開発している。ボロンも硬い材料だ。ツイーターは硬い材料が良いのだけれど材料の固有振動数の問題で昔は柔らかい材料しか使えなかった。
ダイヤモンドを使用していないダイヤトーンよりも有名ではないが、日本を代表するスピーカーメーカーの一つフォステクスは、金属製の振動板を用いたウーハーやスコーカーを用いた高級スピーカーを販売しており、高級スピーカーメーカーの仲間入りをした。
ここは、スピーカーユニットを部品として販売しており、スピーカーの自作ユーザーには無くてはならないメーカーだ。最近B&Wの技術者が立ち上げた台湾のマークオーディオは、金属製の振動板を得意とするパーツメーカーの一つだ。
金属単体の振動板ではないが、金属をウーハー材料として最初に用いたのは日立LoDで、1970年代にアルミ箔とパルプのサンドイッチ構造の振動板を開発している。
パルプとサンドイッチにして材料そのものが振動するのを防いでいるが、硬い材料と柔らかい材料を複合化する手法が防振材料として使われるようになった時代である。
老舗のオンキョーは、金属とパルプのハイブリッド振動板をツイーターに用いたブックシェルフスピーカーを同社のハイエンド製品としている。
なお、最近話題のセルロースナノファイバーを最初に実用化したのはオンキョーで、ウーハーの素材に味の素の菌セルロースをスコーカーとかウーハーにかなり以前から使用している。
このハイエンドスピーカーは日本を代表する名器だと思うが、1台17万円と良心的な価格である。最近発売された同社のハイエンドホーンスピーカーよりも音楽を雄大に聞かせてくれる(明日に続く)。
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昨日音工房Zで開催されたスピーカーの試聴会に参加した。そこで面白い体験をした。B&Wの1台100万円を越えるスピーカーの音と雑誌の付録の5000円前後のスピーカーの聴き比べである。
実は前回同社の試聴会では、同じくB&Wのスピーカーとの聴き比べだったが、そこで用いられたのは、一世代古いB&Wの1台40万円前後のスピーカーだった。
まずB&Wのスピーカーについて簡単に説明を加えると、古いタイプはおそらく805ダイヤモンドで、新しい100万円を越えるスピーカーはWEBで調べたところ802ダイヤモンドだった。
いずれもツイーターは侍のちょんまげのごとく外部に搭載されており、振動板はダイヤモンドが蒸着されたタイプで極めて剛性が高い。
前回と今回では同じようなツイーターであり、その他の構成が異なるスピーカーと最初に比較し聴いたのは、同社のZ800-FW168HRSという2台1セット398000円スピーカーである。
前回と今回、このスピーカと異なるB&W社のスピーカーと比較したのだが、当方の試聴感では、40万円前後のB&W>100万円前後のB&W=Z800-FW168HRSとなった。
B&W社のスピーカーが古くて安い方が良くなる、というのは、ややおかしい感じがするが、これは当方の耳がおかしいのか、このクラスのスピーカーになるとアンプとの相性やスピーカーのエージングの影響、その他の影響などを受けているのか不明である。
しかし、昨日の結果は、その性能がほぼ同等に感じられた。すなわちその聴感上の差がわからなかった、という表現が正しいのかもしれない。また音工房Zの視聴会の目的もそこにあったのかもしれない。(明日に続く)
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最近山根会長の話題をTVで見られないと思ったら、富田林市の脱走事件にアジア大会のバスケットボール問題と、立て続けにマスコミが飛びつきたくなるような事件が相次いだ。
阿波踊り問題がもう少しTVで取り上げられるかと期待していたが、あまりにも次から次へと大衆見世物型事件が相次ぐのでかすんでしまった。
先日デジカメが従来のアナログカメラのデザインに戻ってしまった話を書いたが、阿波踊りの問題については、昭和の時代の利権が絡んだ臭い運営が問題の根底にあり、カメラがクラシックデザインに戻る問題より深刻で日本国民に与える影響も大きい。
ややオーバーな表現かもしれないが、観光立国日本を掲げ政府が観光に力を入れているときに、日本の重要な観光資源の一つ「阿波踊り」が、利権にぶらさがる人たちによって食いつぶされそうになっているのだ。
今年に限ったことではなくて、昭和から続いてきた典型的な利権産業のなれの果てが顕在化した問題である。もしこのまま続けていったなら、あと10年もすれば、観光客は50万人台まで落ち込むかもしれない、と懸念している。
10年しなくても、今年の観光客100万人以上という数値がインチキで実数はすでに50万人以下になっている、という調査結果も発表された。チケットの売り上げも昨年の半分という報告もある。このあたりの正確な数値が出てこないところも怪しい。
その中で、市長をリーダーとした主催者やその利権団体に反発し、「有名連」の人たちが総踊りを決行したのは、しかも無料席でそれをやってのけたのは、革新的試みで日本人はもっと注目すべきだろう。ただし従来通り見世物興行的だったのが残念だが。
当方はTV以外で阿波踊りを見たことが無いが、機会があれば一緒に踊ってみたいと思っている。しかし、今の阿波踊り観光はこのような願望を寄せ付けない「お客を無視した利権がらみの観光」の運営になっている。
このままならば、永遠にTVで見るだけで終わるのかもしれない。「見る阿呆」の中に、TVで見ている潜在的なニーズがあることに気が付くべきである。このニーズを掘り起こすためには、「踊る阿呆」に引き込むことだ。すなわち見物型観光からの脱却である。リオのカーニバルを越える世界の阿波踊りを目指してほしい。
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「製薬大手ノバルティスファーマの高血圧治療薬「ディオバン」の論文データ改ざん事件で、ディオバンが他の治療薬より有効とする名古屋大の研究論文について、掲載した米科学誌が撤回していたことが24日、名大への取材で分かった。」
これは時事通信社のJIJI.comからの転載記事である。この記事では、事件の説明として以下の内容が続けて書かれていた。
「名大の調査報告を受け、8日付で削除された。
ディオバンの臨床研究は名大や京都府立医大など5大学で行われ、各大学が脳卒中や狭心症に効果が高いとする論文を発表。後にノ社社員の不適切な関与が判明し、名大を除く4大学の論文は既に撤回されていた。」
母校の不名誉な記事であるが、なぜ他大学よりもアクションが遅れたのか気になるところであるが、関わった研究者は懲戒免職に相当するだろうと思われる。また、他大学よりもアクションが遅れた原因は不明だが、調査にあたった内部委員には「対応の遅れ」という責任があるのではないか。
すでに当方の学位取得の体験に基づきアカデミアの先生の中には、社会常識をわきまえないどころか善悪の価値観もおかしいとんでもない先生がおられることを書いた。
まさにこれはそのような先生方を扱った記事だが、当方が呆れたのは、不正論文の撤回まで遅れたことである。アカデミアの使命を真摯に実行したならば、不正に対して迅速に対応できたはずだ。
真理を追求するのがアカデミアの最も重要な使命なので、それが遅い、ということは能力が低いアカデミアかあるいはおかしい先生が委員を務められたのか、とにかくアカデミアとして許されることではない。
社会に現れた事件や自己の体験から大学の偏差値が必ずしも大学の正しい姿を示していないと思っている。偏差値が低くても学位審査はじめ大学運営を立派に実行している優れた大学がある。
また、当方が存じ上げている大半の先生方は、誠実で真摯な研究者である。ただしそれでもおかしな先生の方が目立つのである。母校は、他の誠実な先生に迷惑がかからないよう、さらに世間が納得するようにこの問題に厳しく対応してほしい。
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22日のセミナーは好評だったようで、参加者からメールをいくつか頂いた。参加人数も多かったが、翌日の反響の大きさも久しぶりだ。
ブリードアウトについては多くの方が困っているのだろう。これだけ科学技術が進歩していても簡単な現象で製品の品質が損なわれる。1980年代に科学では現象解明ができていてもその対策が現場に展開されていないためだが、その原因は技術者にある。
当方のセミナーでは、科学よりも現場の技術に力点を置いて説明している。だからといって科学を無視しているわけではない。先日でもブリードアウトの現象について科学的に解明している論文を回覧している。
この論文については、参加者から問い合わせがあれば無償サービスでpdfファイルとして送っているが、昨日のセミナーの参加者以外でも何らかの形式でサービスしたいと考えている。
この論文を読んで理解を深めたとしても当方のセミナーの実戦的な内容の価値に影響がないからだが、世の中には科学で現象を解明できてもノウハウを知らないと製品技術としてそれを生かせない事例が多い。
このブリードアウトという現象については、科学的には、高分子の溶解度と拡散速度で現象を説明することになるのだが、この説明によればブリードアウトは必ず起きる現象、という解しか得られない。さあ、どうする?
(注)中国で指導してきた経験からカオス混合でもブリードアウトが改善されることが分かった。すなわちブリードアウトの原因については、配合やコンパウンディングの段階まで考えなければいけない。
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昨日ブリードアウトの講演会で、ブリードアウトに関する最近の研究のベースになっている論文を回覧したところ、講師のところまで戻ってこなかった。参加者が多かったのでどなたか回覧途中で持ち帰られたようだが、全員に回覧されなかったのは残念である。
もし、参加者でこの回覧物を見ることができなかった人は弊社へ問い合わせていただきたい。不心得な参加者のために不利にならないよう対応させていただきます。
さて、昨日の講演会でも説明したが、ブリードアウトという現象は、高分子中における物質の溶解度と拡散速度から説明できる。
科学の視点でこれは正しいが、実務レベルではこの説明に満足していると痛い目にあうことを実例を交えながら昨日説明した。すなわち市場で起きるブリードアウトという現象は科学論文に書かれているようなきれいな話ではないのだ。
例えば、低分子の液体への溶解度は温度が上がれば溶解度は一般に上がるが、高分子溶液では温度上昇とともに溶解度が下がる現象を通常経験する。射出成型で金型が汚れるのは、高温度で溶解度が下がり添加剤がブリードアウトしやすくなるからだ。
また、混練プロセスもブリードアウト現象に影響を与える。すなわち、同じ配合処方でも、混練プロセスにばらつきがあれば、ブリードアウトしやすいコンパウンドができる。
フィーダーに異常が無くてもブリードアウトしやすいロットができる可能性があり、その対策も昨日示した。このような問題でここまで説明しているセミナーは他に例がないと思う。当方の中国における指導経験の成果である。
担当した時間内に用意した資料を説明できない、と思ったので、帯電防止剤の説明を数枚飛ばして説明したら20分ほど逆に時間が余ってしまった。
休憩時間も飛ばして質問時間を余らせるようにしたのだが、少し時間配分を間違えた。長時間のセミナーではたまにこのようなミスをするが、そのようなときには飛ばしたところに戻り説明をすることにしている。しかし昨日は帯に短し、という時間だった。
ところで10分余らせるところを20分余ったので多数の質問が来るかと思っていたら3件ほどでがっかりした。この手のセミナーでどのような質問が来るのかは予想されたので参考資料を多数用意していたのだが、当てが外れた。
セミナー終了後講師控室で休憩していたら2件ほど質問が来た。ブリードアウトの問題は他の企業の方の前では質問しにくい問題のようだ。今朝すでに一件昨日の参加者からメールが届いていた。質問時間を考慮して余裕を作るために帯電防止剤の事例を飛ばしたことを反省している。
次回の機会では、今回の聴講者が質問をしにくいテーマである、という反省をもとに少し構成を変えて講演を行おうと考えている。単純なブリードアウト問題は少なくなり、少し技術に関わる問題へと変化してきたようだ。
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金足農高の吉田投手は、甲子園で全先発881級投げたという。短期間のこの球数は異常と言われているが、それを実現できたのは、ハンカチ王子斎藤投手と同じ症状だったという。
その斎藤投手は決勝戦までに652球であり吉田投手よりも100球程度少ないが、やはり2006年夏異常な球数でも衰えなかった球威が指摘された。
彼らは、甲子園で試合を重ねるにつれ、球速が遅くても威力のある球を投げられるようになっていった、とそれぞれの捕手が指摘している。
実際に本人吉田投手も日大三高との対戦が最も調子がよく、楽に投げられて三振が取れるなら、決勝戦まで投げられる感触をつかんだという。
医学の常識を精神力で越えた、と書いている記事もあるが、そうではないと思う。当方は、サラリーマン時代過重労働を好んで実践してきたが、これは疲れてくると、不思議にも頭がさえてきたからだ。
写真会社の最後の大仕事として混練プラントの短期立ち上げがあるが、これでは3日間徹夜に近い労働をしている。その時いろいろと素晴らしいアイデアが浮かぶようになっていった。
当初立案していた立ち上げ計画を変更し、さらに短期に縮小し、プラントが完成した時には、すぐに生産に入っている。
過重労働で頭がさえる経験(注)は、ゴム会社の新入社員時代に体験し、それ以来言われなくても過重労働を率先してきた。過重労働はもちろん医学的に肉体的にも精神的にもよくないが、自らを追い込み、その能力の極限で仕事をしてみると、見えてくる新たな世界があることは確かである。ただし見えてくる世界が極楽浄土の場合もあるので過重労働を他人に強いてはならない。
(注)高純度SiCの研究を無機材質研究所で1週間でモノにしたときには、信じられないほどの速度で論文を読むことができた。英文は日本語のように見えてきて、特許は斜め読みではなく、垂直に読めた。また、事業シナリオだけでなく、学位論文の内容はじめ研究計画などこの1週間でその骨子が出来上がっていた。極限で医学では説明のできない能力を発揮できるのは自らも体験しているので、報じられている内容から吉田投手の潜在能力の高さが理解できた。しかし、SiC化の実験をしているときに電気炉が暴走し、最適条件でSiC化できた事実には、驚いている。一心不乱に電気炉の前でお祈りをしていただけである。電気炉の暴走原因は、その後科学的に調査を行っても不明のままだった。
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今月23日にニコンから重大発表があるという。かねてから噂のあったミラーレス一眼の発表のようである。ニコンのホームページには1か月以上前から思わせぶりの広告が掲載されてきた。
ニコンが今後100年間使い続けるZマウントという新しいレンズマウントを搭載したミラーレスカメラは、ソニーのミラーレスカメラよりも大きいらしいが、いかにもニコンのデザインである。
20年以上前からニコン一眼レフは117クーペやピアッツアのデザインで有名なジウジアーロデザインの外観で、グリップ部の赤いアクセントが特徴になっている。
ホームページの事前予告画像にもその赤が残っているので、同じくジウジアーロデザインによるものか興味深い。
あと3日もすれば詳細がわかるので本日ここでそれを取り上げても意味が無いが、興味深いのは「今後100年」というニコンの意気込みである。果たして100年後も現在のようなカメラが使われているのだろうか。
ソニーのミラーレスは当初ファインダーレスで登場し、未来感を少し感じさせたが、いつの間にか旧来のペンタ部がそのカメラにくっついたデザインになってしまった。
カメラという道具にファインダーは不可欠ということのようだ。ニコンの新製品にもしっかりとペンタ部が存在するが、それはソニーよりも立派な大きさでがっかりした。
デジカメではどこにファインダーをつけてもよいはずだが、何故か未だにこれまでの歴史を引きづったデザインになっている。あたかもカメラという道具の基本形はこの形と言わんばかりである。
一眼レフカメラという道具は技術革新で大きくデザインを変更できない商品のようだ。その形が商品に価値を持たせているようにも見える。
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毎日どこかの局で何かグルメ番組をやっている。最近は毎日の食事そのままを番組にしたものまで登場した。このような番組を見ていると、おいしいものの適正価格というものが見えてくる。
美味しいもの、といっても個人で味覚の趣味が異なるので適正価格などないはずだが、食べ歩きの番組を見ていると、視聴者への忖度が入るのか、極端に高価な食事メニューは登場しない。
ラーメンがグルメに入るのかどうか知らないが、おいしいラーメンは大体700円前後である。まれに1000円を越えるものも登場しているが、ラーメンに700円を投じてまずかったら二度とその店にはゆかない、という感覚になる。
家の近所には30店舗程度ラーメン屋があり、そのうち一割程度は毎年消えてゆき新店舗が登場するという新陳代謝が繰り返されている。
開店当初の価格を下げて頑張っている店もある。このような店はお客により値段が決められたようなものだ。
このような状況で450円から1000円程度の範囲で我が家の近所ではラーメンが提供されれているわけだが、やはり価格と味の相関はあるようだ。
ただ、450円のラーメンがまずいかというとそうではない。その逆もあり、750円出してもただ辛いだけ、という残念なラーメンもある。
しかし、これは当方の評価であり、このただ辛いだけのラーメン店にお客の列ができているので、当方の味覚が偏っているのかもしれない。
子供の頃食べた、寿がきやスーちゃんのラーメンがおいしかった、という思い出がある。当時100円台で提供されOLにも評判のラーメンだと新聞に書かれていたので格安グルメの一つだったのだろう。
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居合抜きの昇段で金銭が動いていたという。すなわち最上位の段位がお金で売られていたのだ。ニュースを聞いて驚かなくなった自分に驚いている。
アマチュアボクシングの奈良判定が話題になったときも、あまり驚かなかった。格闘技には八百長が当たり前という感覚があったからだ。アマチュアではあってはならないことだけれども人生経験を積んだ結果「やっぱり」となるところは少し悲しい。
このようなたぐいの問題や事件でこの数年間本当に驚いたのは、STAP細胞の騒動で自殺者が出たことくらいである。実は昨年暮れから今年にかけて起きた品質データの捏造や無資格検査にもそれほど驚いていない。
人間が犬に噛みついたらニュースになるが、犬が人間に噛みついてもニュースにならない、と昔聞いたが、両方ともニュースにならなくなった時代である。しかし、それでも社会に問題提起がニュースの使命のごとく珍しくないことを報じているように見えてしまう。
資格や標準化規格などでお金儲けをしようというのは、今ではビジネスモデルの一形態となり、それがたとえ不適切であったとしても段位で金もうけをしようとする倫理とか道徳とかを考えない人が現れても不思議ではない。
当方は某国立大学の先生に学位を勧められて高純度SiCの速度論データを公開したら勝手に論文を出された上に寄付金を持って来いと言われた経験がある。だから居合抜きの昇段がお金で左右されるぐらいでは驚かない。
このようになってしまった感覚に自分で驚いているのだが、倫理観の基準が見えなくなった時代になったのではないか、と懸念している。
勝手に論文を出した先生は、「君の名前も入れておいたから学位の一論文として使える」と悪いことをしている感覚などなく、学位取得の手助けしたような態度で平然とされていた。
ただし、他の主査の先生から寄付金まで請求されると学位の権威を揺るがす問題となる。お金で学位を買うようなことをしたくなかったので、当方は潔く国立大学での学位取得を辞退している(注)。
その後、国立大学と変わらない学位審査料だけで学位を授与してくださった中部大学に感謝している。フルコースで試験もありびっくりしたが、学位授与式の荘厳さとともに本当に価値ある学位を取得できたと思っている。
段位や資格を取りたい人が、それにどのような価値を求めるかが重要である。学位だろうが、入学資格だろうがお金で自由にできる時代と皆が信じていれば、本当に取得すべき価値ある資格だけが残ってゆく。茶道や華道の師範の資格以外に女子短大の存在すらも危なくなってきた。
(注)本来は勝手に論文を書かれた時点で問題としなければいけなかったが、学位を取得できると言われ我慢した。これが良くなかった。甘く見られたのである。しかし、高純度SiCの速度論データはすべてゴム会社で行われた研究であり、この研究が行われた時に某国立大学など関わっていなかった。ただ上司がせっかくの研究成果だから学位を取ったらどうだ、と勧められ、ゴム会社が奨学寄付金を支払ってくれた。ところが途中で写真会社へ転職したことからおかしなことになった。写真会社からも奨学寄付金を持ってきなさいとなったわけだ。高純度SiCの速度論解析では、2000万円かけて2000℃まで1秒で昇温可能な超高温熱天秤を開発し特許出願を行っている。そしてこの熱天秤でデータを収集しているのだが、すべて当方のアイデアで実験も当方だけが行っていた。論文の筆頭著者の先生は、まったく研究の遂行にはかかわっていなかった。30年前のことだが、学位審査で本来はあってはならないことだ。ゴム会社の退職金もあったので奨学寄附金を支払って無難に某国立大学から学位を取得する選択もあったが、なぜか惨めな気持ちになった。研究まで献上し、審査料以上の金を払って取得した学位がどのような意味なのか考えると空しくなった。居合抜で高額な金を払って取得した段位を恥ずかしいとは考えなかったのだろうか。
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