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2017.09/21 ゴム・樹脂の混練に関する講演会

「コンパウンディング & フィラー分散のいろは」と題して、来月27日に「東京・大田区平和島 東京流通センター 2F」で講演会を1日(10:30-16:30)行います。

 

サイエンス&テクノロジー社主催の講演会ですが、弊社へお申込みいただければ、30,000円(消費税別)で受講できますのでお問い合わせください。

 

内容は、高分子材料に関する基礎から押出成形や射出成型までコンパウンディングが影響する分野について解説いたします。

 

総花的な解説ではなく、実戦的な内容で、最近中国で開発した実例も紹介いたします。

 

もし混練技術について、教科書を読んでみてよくわからない、と感じられた方は、ぜひご来場ください。

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2017.09/20 科学の活用方法(1)

技術の方法なり哲学は、科学誕生前から存在した。例えばエジプトのピラミッドが高度の技術の賜物であることはすでに解明されている。また歴史の遺物を見ると、技術開発の方法が、「作りたいもの」あるいは「欲しいもの」を追求した結果であることがわかる。すなわち、先日書いたように「結論からお迎え」方式である。

 

これに対して科学では「仮説設定」から入り、その仮説が真であるかどうかを確認するための実験からスタートし、真となったものを積み上げ完成する、前向きの推論形式である。

 

ゴム会社に入社したときに多くの人から「科学ではモノを造れない」と言われた。また新入社員実習では多変量解析を駆使し世界中のタイヤの構造解析を行い、そこからタイヤの性能を維持しながら軽量化因子を見出して設計したタイヤを誇らしげに見せながらプレゼンテーションを行ったら、CTOだった故S専務に「そこにあるのはタイヤではない」と一喝された。

 

これは大学を卒業したばかりで、将来は企業の研究成果で学位を取ろうと燃えていた当方にとって大きなカルチャーショックだった。同期で同様のカルチャーショックを受けて、配属の日である10月1日に転職し、転職した会社の社長を務めている人物がいるが、当方は故S専務の言葉を考え続けてきた。

 

ゴム会社は、故S専務の哲学による文化とアカデミアにそっくりの文化が共存していた会社で、当方の配属先は後者の研究所だった。居心地の悪さを感じつつ、12年間勤務し、技術の方法と科学の方法を駆使して高純度SiCの事業を立ち上げた。その間に故S専務の哲学がモノ造りでは重要で、科学の方法でモノ造りをするにはやはり問題があるという結論に至った。

 

だからと言って科学を否定しているのではない。科学には役割があり、それをうまく使いこなすことでモノ造りのスピードアップと開発された技術の再利用を容易にする。

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2017.09/19 科学の重要性

産業革命以前の技術開発では、科学の方法が使われていなかったが、産業革命以降、科学の進歩とともに技術が劇的なスピードで発展する。ただし最初は技術の方法と科学の方法によるそれぞれの技術開発が行われていたはずだ。

 

歴史家ではないので想像しているだけだが、おそらく科学は主にアカデミアで技術とその開発の方法を積極的に成長させたのだろうと思われる。科学は技術分野だけでなく人文科学という分野も成立させて現在に至っている。ただ、人文科学を見ていると、科学で嘘を言う方法が開発されているような気がする。

 

科学の問題は、美しい論理展開でその誤りを見えなくする場合があるのだ。科学分野の捏造はそのような科学の弱点をうまく使っている。科学にこのような問題が潜んでいても、20世紀には科学こそ技術開発を成功させる唯一の方法として教育に取り入れられ、ものの考え方は科学一色となった。少なくとも偏差値が高い大学の受験で科学に無知のまま合格するには不可能である。

 

以前この欄でフェノール樹脂とポリエチルシリケートから高純度SiCを合成した話を書いた。今もゴム会社で事業として継続されているが、この技術開発で科学は重要な役割を担っている。合成プロセスは技術の方法で開発しており、世間が驚くほどのスピードで開発し、先行投資を受けた半年後にパイロットプラントの建設に至っている。

 

ただし前駆体ポリマーの品質管理技術は、当時不明だったSiCの反応機構を明らかにした手法を用いて開発している。この手法については当方の学位論文を見ていただきたいが、科学が無かったとしたら、この技術の品質管理はかなり難しかったと思う。科学のおかげで容易にできたのだ。

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2017.09/18 不気味な世相

山尾衆議院議員の不倫問題について、文春第二弾が報じられた。しかし、第一弾と内容は変わらないのである。部屋の中で何をしていたかは当人以外不明であり、周囲は妄想を描くしかない。

 

これは、ほぼ皆が同じ妄想を描くに十分な状況証拠ゆえに話題になっているわけだが、不思議なのは、北朝鮮の核開発やミサイルが日本の上空を悠々と飛んでいる状況でも国防の議論(注)が活発化しない世相である。

 

青春時代にダスティン・ホフマン主演の映画「卒業」を観た。刺激の強い内容であり多感な年頃だったので、同じ映画を何度も観た記憶がある。当時は二本立てで、もう1本は「ジェレミー」という純愛ファンタジーだった。

 

「卒業」では、大学を卒業したばかりのベンジャミン(主人公)が、ガールフレンド、エレインの母親ロビンソン夫人と不倫をする物語である。(この映画音楽を担当したS&Gの楽曲、ロビンソン夫人というロックがヒットしている)

 

エレインは最後(結末の結婚式場のシーンはカップ麺のCMにも使われた)ベンジャミンを許し、二人でバスの最後尾の席に座っているシーンで終わるのだが、その二人の表情も含め、恋愛というよりも人間のあり方を考えさせられた映画だった。過ちがあったとしても、未来に進むためには勇気と寛容な選択が重要である。

 

山尾議員の問題は、もう許してあげても良いのではないか。次の選挙で選ばないようにすれば良いだけである。女優の不倫問題も重なり、毎日のように報道があるが、今もっとも心配しなければいけないのは、北朝鮮問題である。

 

北朝鮮問題では、「戦争」という概念について世界の常識に接することになる。一方で中東でまたしても不穏な動きが出てきた。米国は、中東と北朝鮮で戦争をするつもりなのか。グローバル化の中で戦争が拡大すれば、日本は必ず巻き込まれる。

 

不倫問題よりも遙かに怖い現実。その怖さを吹き飛ばそうとするがごとき不倫報道をするマスコミの動きは不気味である。日本という国のおかれた現実を考える報道をマスコミはすべきであるが。戦争に巻き込まれる恐れのある状況で日本人はどのような行動をしなければいけないのか、難しい問題である。

 

(注)今朝のWEBニュースで衆院の解散が行われる、という予想が流れている。政治空白のリスクがあるが、戦争になる可能性がある中で、早めに国民に現状の問題について問うのは賢明である。衆院の任期が一年弱という状況なので、タイミングとしては今しか無いと思われる。世界情勢はあまりよい流れではない。

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2017.09/17 温故知新(2)

PPS・6ナイロンポリマーアロイを押出成形して製造される中間転写ベルトは、カオス混合で製造されたコンパウンドを用いている。このカオス混合装置は餅つきをヒントにした温故知新技術である。

 

餅つきを経験すると不思議な現象にでくわす。例えば食紅を餅のつき始めに添加すると、あっという間に餅が着色される。この着色の様子は子供の頃から不思議だった。

 

親は当たり前だ、と言っていたが、当たり前に見えなかった。カオス混合装置を発案したときには、工場の現場で部下のマネージャーから、現場の騒音の変化は当たり前だ、と言われた。ところが、騒音の原因についてすぐにアイデアを確認している。

 

何か自分の経験と異なり、不思議とか奇妙に感じた現象について、「当たり前」という言葉が出たら、その当たり前の現象を疑った方がよい。あるいは、科学的に奇妙であるが、古くから何気なしに行われてきた習慣については時に思い切って変更したり、辞めてみることは大切である。また、古い技術であっても、それを新たな科学の視点で見直しを進めることも重要である。

 

当たり前のこと、あるいは過去に存在していた技術をどのようにしたら温故知新で新しい技術に展開できるのか。これは難しいことではない。その機能に新しいノイズを与えれば良い。例えば、古い商品を新市場に投入しても新しいノイズを機能に与えたことになる。これも技術開発の手法である。科学的ではないかもしれないがーーー

 

中間転写ベルトの開発では、6年間行われてきた開発スタイルを変更し、半年で歩留まりを5倍以上改善した。それは、樹脂開発では当たり前のスタイルだったが、ゴム材料開発では奇妙なスタイルだった。

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2017.09/16 温故知新(1)

20世紀における技術開発は、どこも科学的研究(基礎研究)から新たな技術を育て上げる戦術がとられてきた。この戦術が必要だったのは、科学的に明らかでなかった現象が多かったからだ。企業の中にはアカデミアよりも先行し、優れた研究成果を出した企業もあった。

 

21世紀になり、金属や有機合成分野はほぼその科学の大系が完成し、セラミックスも未だ議論の必要なところもあるが、ほぼ構造と物性の関係も含め明らかになってきた。

 

高分子については、合成技術はできあがったが、高分子物理については、まだ道半ばである。しかし、20世紀に明らかになった内容で、技術開発では不自由しない程度である。

 

すなわち材料技術に関しては、基礎研究を行わなくてもほぼ技術開発が可能な状態になった。さらに全ての材料分野について階層的な考え方も定着した。

 

このような状況まで科学が進むと、温故知新という言葉どおりの技術開発が効率的な方法になってくる。例えば、酸化スズゾルの帯電防止技術は、昭和35年に公告になった特許をもとに開発された技術で、コストパフォーマンスに優れていた。

 

この技術では、評価技術も含めたパーコレーション転移の制御技術(注)が新しく開発されたが、シミュレーションプログラムや、インピーダンスの測定装置、バインダーのラテックスなどすでに存在する技術を組み合わせて新しい技術としている。

 

(注)プロセシングと材料の組み合わせ技術

 

 

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2017.09/15 風が吹くと桶屋が儲かる

科学的な推論の進め方には向きがあり、仮説に対応して推論を結論に向けて進める前向きの進め方と、結論から推論を展開する逆向きの進め方がある。

 

そして両方向で成立すれば必要十分条件となる話は、高校の数学で学習する。風が吹くと桶屋が儲かる、というのは、前向きの推論の問題が見え隠れするので面白い。

 

風が吹いたときに発生する現象は、ゴミをまき散らすだけではない。洗濯が速く乾いたり、着衣に風がまとわりついて歩きにくかったり、さまざまである。

 

本来この風が吹くことにより発生するそれぞれの現象について検証をしながら、次の議論を進めなければいけない。それが科学的な推論の展開方法である。

 

しかし、風が吹くと、の話はそのような厳密な展開がとられていないために、風が吹いて本当に桶屋が儲かるのか保証されない。また、仮に保証されたとしても桶屋が儲かるのは、いくつもの事象の中の一つの結論であり、それが「風が吹いたときに」いつも成立すると保証されないどころか、この話において風が吹いたときに起きる現象について全てを網羅し考察することは至難の技である。

 

ところが、結論である桶屋が儲かっているかどうかという事象や、風呂桶がネズミにかじられて故障している現象が多いかどうかは、調査すればすぐにわかる。さらに、結論となる事象から逆向きに推論を進めると、結論につながる一つの推論の道筋だけを確認することになるが、それだけで結論に確実につながる一つの推論を示すことが可能となる。

 

このように、結論から逆向きの推論を進める方法、すなわち全体が十分条件であることを示す方法は、必要条件を述べる前向きの推論よりも圧倒的に効率が良い。

 

技術開発も同様で、市場で要求されている機能とその機能を実現する方法を考案し、プロトタイプを創りそれをまず市場でテストする手法は従来の技術開発の進め方を革新する。

 

ゴム会社のU取締役は、「女学生より甘い」なる迷言も残されているが、「まずモノもってこい」という一喝はアジャイル開発を命じた名言である。この一喝により、SiCるつぼやダミーウェハー、SiCヒーター、SiCターボチャージャー、SiC切削チップなどが、試作され市場調査が可能となった。

 

高純度SiCの粉を持って社外のメーカーにお願いし、製造設備を借りながら試作実験を進めた苦労は楽しい思い出として今でも夢に出てくる。滋賀県の某メーカーの現場で出されたお弁当で腹痛を起こし苦しんだこともあったが、O157でなくてよかった。食事前は必ず手をあらいましょう。

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2017.09/14 技術の方法が注目されつつある

情報化時代となり、IOTが進行して、その結果得られるビッグデータがもてはやされている。このビッグデータの時代では、意外にも科学の方法ではなく、風が吹けば桶屋が儲かる式の議論が重要になってくる。すなわち、科学の時代に知らず知らずに技術の方法が復活しつつある。また、技術の方法でなければビッグデータを迅速に生かすことができない。

 

ビッグデータによる現象理解では、「結論からお迎え」式の逆向きの推論が前向きの推論よりも大切になってくる。この推論の向きについて、科学では、前向きに進めるのがお決まりである。そしてそれが必要十分な条件であることを言いたいときに逆向きの推論も行うと高校数学で習う。

 

ビッグデータの解析がどのように行われているか桶屋の事例で示す。桶屋が儲かっているというデータの傾向が明らかになると、どうして桶屋が儲かっているのか調べる。IOTにより、ふろおけの故障モードの情報が得られているのでそれを見ると、ネズミにかじられて穴ができたという故障が多かった。

 

ふろおけのクレーム件数の伸びとネズミの数の年次変化のグラフを見比べると相関がありそうだ。どうしてネズミが増えたのか知るために猫の統計情報を眺めると、野良猫が減ってきている。猫の革の用途の一つ、三味線の売り上げ情報と野良猫の減少傾向とは妙な関係があり、どうも三味線の生産が増えたことにより、猫が乱獲されたのだとデータベースで結論を出す。

 

盲人は三味線を弾くので盲人が増えていないか調べてみると、視力の悪い人が増加しているデータがあった。さらに最近は竜巻などの異常気象の日が多くなったので、風がまき散らすごみで目を傷める人が増えても不思議ではない。

 

桶屋が儲かっている、という市場情報から逆向きに推論を進め、風が吹くと桶屋が儲かるという一つの法則が見つかった。これが今行われているビッグデータを用いた解析の事例である。ただしこれは架空の事例であることをお断りしておく。今の時代、三味線の生産台数が特に増えているわけではない。ギターは団塊の世代のおかげで少し増加傾向であるがーーー

 

 

 

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2017.09/13 技術による解法2(9月8日の続き)

電気粘性流体の増粘問題の解決法を検討するときに多数の界面活性剤を集めていた。また、その材料のカタログも入手していた。そこでカタログ数値をマトリックスで整理して、多変量解析にかけた。

 

昨今のビッグデータの扱いと同様の方法である。すなわち、各特性値の関係について科学的な考察を行うのではなく、ブラックボックスとして扱い、統計的なつながりをよりどころにして各データ間の関係について考察を行うのである。

 

このようなデータの取り扱い方法により、データを考察するときに先入観が入るのを防ぎ、純粋にデータのつながりと変化の関係について情報を取り出すことが可能になる(科学の仮説も、先入観の一つともいえる)。

 

ビッグデータがもてはやされているのは、このようなデータの扱いで、人間が思いも及ばなかった相関を発見できる可能性があり、その相関関係を考察することにより新たな真実を生み出すことができるからだ。

 

ただこの時注意しなくてはいけないのは、ビッグデータの集団が変化すれば、過去に見いだされた真実が容易にひっくり返る可能性がある、ということだ。科学の世界で見いだされた絶対的な真実は科学で議論している限りその確実性は保証されている。これは科学で技術開発を行うときに便利な科学という哲学の特徴である。

 

界面活性剤のカタログデータを主成分分析したところ、第一主成分にはHLB値が現れた。これは界面活性剤の定義から当然の結果だったが、それでも15%ほど他の特性値の寄与が第一主成分に含まれてきた。

 

そこで第二主成分を見たところ、HLB値が10%ほど寄与していたが、2種ほどの組み合わせで70%以上の寄与をする特性値が見つかった。そこで第一主成分と第二主成分でサンプルデータをプロットしたところ、この平面に8つほどの群を作りデータが分布した。

 

驚くべきことに、同一HLB値でも第二主成分の意味づけを考慮すると界面活性効果が異なる可能性のある群も存在している。さらに、増粘した電気粘性流体の問題解決に寄与しそうな界面活性剤は、そのようなある群に集まっていた。

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2017.09/12 技術開発の方法(15)

フィルムのインピーダンス評価を行うのに電気の知識はあれば便利という程度である。すでに当時販売されていたインピーダンス測定装置にはフィルム用電極が用意されていただけでなく、自動計測が可能だった。GP-IBでパソコンにつないでやれば、計測データを簡単にパソコンへ取り込むことができた。

 

さらに、N88BASICにはGP-IBがサポートされていたので、プログラムも簡単にできた。今どきの技術者は分野に関わらず、計測制御のプログラムぐらいはすぐに作れるようにしたい。当時と比べ今はC#がUSBなどをファイルとしてサポートしているので切った、はったでプログラムができてしまう。

 

ところでフィルムのインピーダンスを計測してどうしたか。ここでも頭など使わない。他の計測データとインピーダンスの測定値をコンピュータに放り込んで多変量解析しただけである。測定器から吐き出された訳の分からないデータでも訳の分かっているデータとの相関がみえると、そこから理解が進む。

 

データの整理ができて、パーコレーションの評価ができるようになったところで、CTOからインピーダンス評価法について質問が飛んできた。科学を重視している会社ではこうなる。頭を使っていないから質問にすぐ答えることなどできない。

 

すぐに電気化学に詳しい先生のところへ相談に行った。そしたら、客員教授を依頼された。客員教授になって学生を指導しながら質問の答えについて研究してみたらと言われた。これは運がよかったと思っている。研究成果はカナダで開催された国際写真学会で報告した。このように科学の研究は大学で行えば早く結論を出せる。

 

科学よりも技術が先行した場合には、アカデミアでもすぐに回答を出せない。このとき、現象をブラックボックスとして扱っているのが問題だというのは科学の視点である。ブラックボックスの中を見える化する必要があるならば、産学連携で研究を行えばよい。

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