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2025.01/12 イチロー氏の国民栄誉賞

イチロー氏(以下イチロー)と松井氏の対談がニュースになっている。残念ながら当方は見ていないが、イチローが何故国民栄誉賞を固辞するのかも話題になっていたようだ。


過去に立小便ができなくなるから、と言って固辞された野球人がいる。その後立小便を続けているかどうか知らないが、イチローの理由は何だろう、と思わず考えてしまう。


過去に一度醜聞で週刊誌を賑わせたが、それっきりである。不倫で国会議員をやめて二度目の不倫も週刊誌にすっぱ抜かれたにもかかわらず妻から許された人物とは事情が異なる。野球に対してストイックなイチローなら国民栄誉賞でもおかしくないと思う。


彼自身の受賞の基準が固辞する原因であるが、イチローが受賞しなければ大谷選手も困るのではないかと心配している。もしかしたら、既に大谷選手に政府は断られた実績があるのかもしれない。


大谷選手の国民栄誉賞が公になったら、大谷選手にイチローが受賞していないことにどのように思うのか質問してみたいような気がするが、質問されて困るかもしれない。


受賞に値する人が固辞するような賞とはどのような価値なのか?立小便を理由に断られた野球人は賞に対してそれなりの敬意を払っているように思うが、イチローの場合には、まだ明確な理由を明かしていない。


立小便を理由に断った野球人は、受賞を機会にその習慣を辞めなければいけないことと天秤にかけたのだが、イチローが固辞する理由は、どのような習慣と天秤にかけているのだろうか。

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2025.01/11 コンサル会社の倒産

東京商工リサーチ(1月10日配信)によると2024年の「経営コンサルタント業」の倒産が154件(前年比7.6%増)に達したそうだ。集計開始以降で年間最多だった2023年の143件を上回り、過去最多を更新したという。


弊社は電子ブックで起業したのだが、まだ参入者が続いていた時に参入者の顔ぶれを見て業界ではトップで撤退している。


一日多い時で300人ほどの訪問者がいたが、増加の見込みが無いと判断しての撤退である。その後コンサル業に注力し、中国ナノポリスから顧問の依頼があったのを手掛かりに売り上げを伸ばしたが、コロナ禍で一気にそれらが吹き飛んだ。


その後国内のWEBセミナーに特化し現在に至るが、コロナ禍があけても国内の顧客よりも海外の顧客の比率が高い。現在は感染症が怖いので海外についてはWEB相談だけにしている。


国内でもWEB相談であれば、低価格で対応しておりアカデミアの利用者もいます。各種問題解決から材料技術まで広く対応しております。また、タグチメソッド解析プログラム生成プログラム(Pythonコードを吐き出すAIです)を開発しましたのでお問い合わせください。


なお、3月にはゴム協会のシンポジウムで招待講演者に選ばれており、DX時代の配合設計について解説いたします。DXによる業務変革がうまく進んでいない方も気楽にご相談ください。


昨年は、日本化学会で深層学習による難燃性予測の研究成果を発表したり、中国で開催された再生材に関する国際会議で招待講演を依頼されたり致しました。高分子材料技術で悩まれている方も気楽にご相談ください。セラミックス材料に関しましても対応できます。

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2025.01/10 暗黙知(5)

部下の思い付きのアイデアをすぐに否定するリーダーがいるが、発明や発見についていろいろ調べてみると,これは誤った指導法であると言わざるをえない。


思い付きのアイデアが暗黙知から出ている場合もあるからで、ただ否定するのではなく、それをオブジェクトの形式にまとめる方法を指導しなければいけない。


そしてオブジェクトに対して体系的にそのアイデアの位置づけを明確に説明させる指導をするのが正しいリーダーの姿勢である。


コーチングによりそれを行えば、思い付きのアイデアかどうか明確になり、本人はすぐに謝罪するかもしれない。しかし、背景に暗黙知があり、それがアイデア提案者の経験知や形式知の体系に結びついておれば、本物である。


リーダーは、思い付きのアイデアを嘲笑するのではなく、その提案者の経験知や形式知の蓄積に注目しなければいけない。他の人に無い独特の経験知に紐づいた暗黙知による思い付きのアイデアならば千金に値するアイデアとなるかもしれない。


昨日の内容は20年前の実話であり、コンパウンドメーカーの技術者にアイデア提案したところ、素人は黙っとれ、と言われている。そして、カオス混合プラントを自分で建ててみろ、と。


それで、ラインを3か月で立ち上げ、問題解決したのだが、その後そのメーカーから10件近くのカオス混合に関する特許が出願されている。これを検索していただければ、当時の状況を時系列的に確認できる。


ただし、当方の発明には、混合装置の形状を明らかにしているがカオス混合という言葉を用いていない。形式知として定まっていないからである。急激な引き延ばしと折り曲げがその特徴と言われているがカオスである。

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2025.01/09 暗黙知(4)

PPS中間転写ベルトの仕事を引き受けるのかどうか、少し悩んだ。55歳早期退職するまで、窓際で過ごすのも悪くなかったからである。また、当時昨年のような表立ったリストラが行われていたわけではない。


ゆえに、当方同様に退職を数年後に控えラインを外れた多くの管理職は、皆静かなる退職状態で仕事をしていた。40年近く働いてきて、管理職まで昇進できた人は運とそれなりに頑張った人なので、それが許されていたのだろう。


当方も転職時の条件が他の会社との統合で反故にされたので、静かなる退職を決め込んでも文句が出ないだろうと思ったりもした。しかし、定時退社の生活を半月してみて、気分が悪くなった。


慣れないことはしない方が良い。結局早期退職するまで貢献と自己実現を目指し、一生懸命働いていた方が精神衛生上良いということが分かり、豊川事業所のプラントへ出かけてみた。


そこで1日PPS中間転写ベルトの製造工程を眺めていたら、カオス混合のアイデアが浮かんだ。このアイデアが浮かぶ一番のきっかけは工程内の音の変化だった。暗黙知を工程の音の変化が刺激したのである。


それが、どのような関係か不明だったが、世界初の高純度SiC合成プロセスを4日間で開発した体験が同時に浮かんだ。頭の中は訳が分からない状態だったが、粘弾性装置で思いつきの実験を行っている。

その実験データにより暗黙知が具体化され、コンパウンド工場まで建設している。研究開発においてアイデアがどのように浮かびそれが実現されてゆくのか、いろいろなケースがあるだろう。

しかし、短期にコンパウンド工場を建設し成功させた中間転写ベルトの量産化の成果は、センター長はじめ統合した会社の方々が体育会系のノリで当方の暗黙知を信じて一緒に走ってくれたおかげである。


暗黙知がどのような知なのか、言葉でうまく説明できないが、やる気が無い時にふと湧き出てくる情熱や欲望も暗黙知のおかげかもしれない。当時本来は落ち込んでいる状態なのに、何か体の中からむらむらと湧き出てきたのである。

それが、何であるのか分からないままその時の状況を言い換えれば、暗黙知により欲望が沸きそれが行動に結びついている、と書くと理解していただけるかもしれない。

そして周囲もうまくゆくかもしれないと盲信して走ってくれたのだ。部下の課長だけ冷静に出来損ないのコンパウンド評価を粛々とやっていたが、歩留まり100%のコンパウンドができてから、君子のように態度が変わっている。

さて、工場を眺めていて音の変化を感じた前後のサンプルを欲しいという欲求が出てくる。何故欲しいのかは不明であるが、サンプルを手にして、満足するまでさわっていたら粘弾性測定をするアイデアが浮かんできた。

ゆえに欲望という表現がふさわしいと思っているが、粘弾性測定の動機についても科学的に間違っている現象の確認なので仮説とは言い難い。かつての指導社員から教えられた経験知による自然な行動である。

その結果PPSと6ナイロンの系ではフローリー・ハギンズ理論に従がったならば起こりえない「相溶」という現象に遭遇しびっくりして、それが正しい結果なのかDSCで確認している。

分析担当に依頼していたTEM写真には、6ナイロンの島相が無くなっていたのでそれは確信となる。この欲望の行動のままセンター長に8000万円の決済を頂いている。これは今話題の欲望の代償9000万円より少ないが。

「欲望の果実」という娘の欲望が家庭をカオス状態にする古いイタリア映画同様に、欲望の果実としてカオス混合プラントが異常な3ケ月という短期間で立ち上がる。

この結果について特許を基に3月に行われるゴム協会のシンポジウムで2時間講演するが、そこでは欲望の果実ではなく、欲望が隠蔽化されたオブジェクト指向によるデータ駆動の成果として解説する。

発明や発見をやりやすくする方法があるかどうか知らないが、過去の事例を深読みすると発明者の理由が分かりにくい行動から暗黙知の存在やそれに刺激された欲望を見つけることができる。

SiCはエジソンの弟子、アチソンの発明だが、その発明過程から科学的というよりもエジソンの欲望を読み取れる。ヤマナカファクターでさえ、早くiPS細胞を見出したいという山中博士のむき出しの欲望を発見で用いられた科学の禁じ手から感じることができる。

招待講演では、欲望の果実を冷静に改めて企画にまとめなおした(注)体験談である。この他に退職日を2011年3月11日に設定しなおして、欲望ではなく恣意的にオブジェクト指向によるデータ駆動の実験で成果を出した新しいポリマーアロイの設計法も紹介する。

(注)組織活動における研究開発では、だれしも納得する企画書によるデザインレビューが求められる。問題は、科学的データが無い中でどのような企画書を作り上げるのか、そのコツを中間転写ベルトの体験談で解説する。

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2025.01/08 予備校の倒産

二週間後には共通1次試験があるというのに予備校が倒産した。正確にはまだ倒産していないが、閉鎖状態ですでに料金を前払いした生徒の授業を停止しているという。


不思議なのは、去年の5月ぐらいに経営状態ぐらいわかっていただろうに、この時期に倒産していることだ。予備校の役割から捉えると反社会的な経営といえる。


関係する受験生があまりにもかわいそうなので、数学や物理について入試直前の最低限やっておくべきことを箇条書きで下記に。

1.受験範囲に関係する公式は、条件反射的に書けるようにしておくこと。数学は暗記科目と思って、とにかく公式は、正確に書けるようにしておく。

2.これまでの受験勉強あるいは模擬試験でできなかった問題について解いてみる。その時、すべて解けたならば、自信をもつこと。解けなかった問題について、周辺の知識を徹底的に復習すること。不安になる必要はない。1週間後再度解いてみて、解けなかったなら、その問題周辺は諦めると覚悟を決めておくこと。試験直前に悩んでも仕方がないのである。できない問題が試験に出たならあっさり捨てる覚悟をすると不思議に落ち着く。

3.文章題は、結論から考える方法を確認すると良い。解けなかった問題について、答えの最後から逆にたどってみると問題の答えが見えてくる。できなかった問題について、諦められない人は、このような結論から推論を進める練習をしておくこと。

4.数学や物理は、入試に限らず、不思議にも難しいと感じると難しくなる。易しく感じる方法は、問題を見てすぐに答えが浮かぶ状態にすることである。これは、社会で実務を行う時にも通じる訓練である。入試直前には問題と答えを一通り声を出して読んでみるのも一つの方法である。


この4番目の項目は重要で、ヒューリスティックに問題解決するコツを述べている。問題を見て、あるいは困難な状況に遭遇して、すぐに解決策を一つ浮かぶようにするには、問題と解答の事例を覚えておく(注)ことである。事例の貯金が多いほどヒューリスティックにアイデアが出やすくなる。とかく、数学や物理を暗記科目ととらえない人がいるが、形式知や経験知を身に着けるためには、一度面倒でも暗記する必要がある。日本史や世界史を暗記するのに数学を暗記しない、というのはおかしいのである。数学のできる人を頭のいい人だと思っている人がいるが、そうではない。数学はできるが頭の悪い人もいる。誰がそうかと書くと問題になるので書きにくいが、例えば、数学者で芸能人と結婚して離婚した人がいるが、離婚した談話を読んで頭が悪いと感じた。数学ができるから頭が良いとはならない。逆に頭が良い人でも数学をふくめ勉強のできなかった人がいる。昨今の詐欺やホストのかかわる事件を読んでいて悪事に働かせる頭を社会に活かしたらすごい貢献ができそうだ、と思うような時がある。DXの成果を迅速に業務に活かすことが求められているが、業務のイノベーションにおいて犯罪の巧妙化のスピードの速さに驚いている。警察よりも犯罪者に頭が良い人が増えてきたのかもしれない。この予備校の経営者も確信犯かもしれない。なぜなら、予備校は前金制なので昨年初めに集まった生徒数から現在の状況が見えていたはずである。

(注)どこまで記憶すべきか、と問われても困る。この場合に良い方法として、オブジェクト指向を使える。また、アイデアが出ない時に万能のデータ駆動という方法もある。これらについては、3月に開催される日本ゴム協会主催のシンポジウムで招待講演者となっており、二時間説明するのでご興味ある方は問いあわせていただきたい。

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2025.01/07 製造業の未来(6)

最近のギター生産ではかなり機械化が進んでおり、普及品の価格は50年以上前とあまり変わらない。また、ハンドメイドギターと言っても大半の部品を機械で製造し、仕上げに一人の職人が組み立てているだけである。


ただし、そうではないメーカーも存在するが20万円までの価格帯でハンドメイドギターと称しているものはこのような組み立て方法と30年ほど前に見学したギター工房で説明を受けた。


また数人の職人が一組となり、それぞれの得意作業を手作業で行い、ギターを組み立ててもハンドメイドギターと称しているところもあるらしい。すなわちかなり機械化が進んでいるので、人間の手による精度向上を期待できる部分を機械を使わず「ハンドメイド」している。


日産自動車も100台限定生産の車について、手組を謳い、さらにそのエンジンを組み立てた職人の名前をエンジンに貼り付けておく、とホームページで説明している。


かつては機械化、オートメーションが注目されたが、その結果手作業で行うことに価値が出てきたように見える。工業製品の場合に機能品質が等しければ、コストの安い方が優れている、と言われてきたのでコストダウンに励んだのだ。


ギターでも自動車でも手作業の方が作業性と品質が向上する工程でそれが選択されただけであり、わざわざ機械でできるところを手作業としているわけではないのだろう。


コモディティー化した製品について、職人の手作業あるいは名前を付けたりしてプレミア製品とする動きがあるが、これがどこまでその価値を訴求できるのだろうか。


ギブソン社のおよそ2倍以上の価格で販売されているギターに、それほどの価値を認める人がいるのだろう。倒産しかかったが持ち直してきた。


フェアレディZやスカイラインの限定生産品は完売し、その中古品が新品価格よりも高い価格で取引されている状況をみるとブランド戦略が、コモディティー化した製品の未来の姿となるが、やはり製造業は新しい価値を製品に作りこみ発展してゆくのがあるべき姿だろう。

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2025.01/06 暗黙知(3)

ゴム会社に入社し、10月1日に研究所へ配属された。その後の3か月間はゴム会社で最も幸せだった時間かもしれない。指導社員からレオロジーに関して多数の形式知と経験知、そして暗黙知まで伝授していただいた。


午前中は座学で形式知と経験知のご指導、午後は樹脂補強ゴムの混練実技を学んでいる。実技指導の最初の1カ月は、指導社員が常に作業に帯同されており、安全指導も含め丁寧に暗黙知を教えてくださった。


ロール作業では、危険作業をたびたび指摘された。ゴムの返し作業では、マッチ棒を用意し、返しの回数を数えるように指導された。また、ロール作業で混練がどのように進行しているのか確認する作業も教えてくださった。


このロール作業の過程で、カオス混合についてどのようなミキシングなのか教えてくださると同時に、二軸混練機でどのようにそれを実現したらよいのか、その方法を宿題として考えるように言われた。


残念ながら、3カ月の間にその答えを出すことはできなかったが、その後PPS中間転写ベルトの開発を担当するまで考え続けることになる。


しかし、30年近くそればかり考えていたわけではない。指導社員から教えられたレオロジーに関わる現象に接する時に思い出していただけである。様々な現象について具体的な数式とか流動様式を学んでいたわけではない。


パイ生地の練りや餅つきで現れる現象で、ロール混練ではこのように現象が起きている、と目の前でカーボン分散の現象を観察しながら、経験知の伝承を受けただけである。


研究所では、面倒な作業という理由でバンバリーとロール混練のプロセスを敬遠する人が多かった。ポリマーを混練するだけであれば、ニーダーでその目的を達成できる、と多くの人は信じていた(注)。


しかし、指導社員はゴムの混練を行うのであれば、ニーダーを使わず、バンバリーとロールを使用するように、と強く言っていた。実際の工程ではバンバリーとロール混練でゴム練りが行われているのがその理由であった。


材料を成形体にするプロセスにおいて、成形体の物性がプロセス依存であることは知られていた。とりわけ、高分子材料はコンパウンディングの影響が大きいと言われていた。


これは経験知であり、プロセスにおいてどの因子が成形体物性に影響しているのかは、技術者により見解が異なる。また、プロセスに関わる暗黙知も技術者により異なる。


指導社員は、プロセスで発生する音に注意するように言われていた。ただし、それがどのような意味なのかは、現象により異なり説明できないとも。そして、ロール混練でわずかな音の変化に注意することは、安全作業にもつながると。


新入社員の時に使っていたノートには、こんなような音と擬音が描かれ、そこにおかしな絵が描かれているが、これは文章にできなかった情報の表現である。


STAP細胞の騒動では小保方氏の実験ノートが話題になった。ハートマークとかネズミとか落書きしか書かれていなかったそうだ。暗黙知の表現ならば価値がありそうだが、そうではなかったことが悲しい。


(注)ニーダーによる混練で得られたコンパウンドと、バンバリーとロール混練で得られたコンパウンドでは、異なるのだが、科学を信奉している人は同一と捉える人が多い。両者のコンパウンドを用いて成形体を作成し、物性に差異が現れる場合もあれば現れない場合もある。指導社員は、物性値が等しい結果となってもプロセスが異なれば異なるコンパウンドであることを忘れないように、と言われた。それが30年後、PPS中間転写ベルトの開発で生きた。カオス混合装置の開発であるが、3か月で建設したラインであるにもかかわらず、高分子技術でトップメーカーのコンパウンドよりも高性能のコンパウンドができた。今年3月に招待講演者として選ばれたゴム協会のシンポジウムでも事例として発表する。オブジェクト指向の配合設計事例である。

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2025.01/05 製造業の未来(5)

1970年代のフォークブームでは、猫も杓子もギターを抱えていた。それも1960年代までのクラシックギターと異なるスチール弦のフォークギターである。


1970年代にアメリカマーチン社ドレッドノートのコピーが大量に発売され、その時の中古ギターでハカランダとスプルース、指板がエボニーのギターは当時の価格以上の値段でビンテージギター(注)として現在販売されている。


ハカランダは伐採禁止となった樹木であり希少価値と、当時でも高級ハンドメイドギターに使われていた材料なので20万円以上の価格がついていたりする。もちろんマーチン社のオリジナルであれば数百万円もする個体が存在する。


1970年代の日本に多数のギター工房が生まれている。モーリスにK.ヤイリ、ヤマハは当時から知られた量産メーカーで、アリアギターは商社であり、いくつかの工房と提携しギターを供給していた。その中の松岡良治手工ギターは高級品として4万円以上の価格がついていた。


当時大卒の初任給は数万円以下であり、ギターの普及品は1万円前後だった。ちなみに家庭教師の1か月のアルバイト代は週2日指導で1万円の時代である。当方は高3生を専門にして3万円という価格でアルバイトをしていた。菓子パン1個は20円の時代だった。


今アコースティックギターの普及品は3万円以下で購入でき、高級品は20万円以上の価格がついている。大卒の初任給は25万円前後、菓子パンは130円なので、高級品はほぼ物価に連動しての価格となっているが、普及品には割安感がある。


このギターの価格から、普及品はもはや日本で製造していては事業にならないことは明らかであり、実際に多くのギター工房が倒産している。


春日楽器に松岡工房、初代S/ヤイリ、木曽スズキ、マツモク楽器など当時大手の工房が消えた。マーチン社の下請けから始まり独自ブランドキャッツ・アイを販売していた東海楽器は、高い製造技術があっても経営難の状態である。


アイバニーズブランドの星野楽器は、設計と商品企画だけ行い、生産場所は日本とアジア地域である。その生産拠点は、韓国から中国、そして現在はインドネシアへと変わっている。


おそらくギターという楽器は、今後もポピュラー音楽に欠かせないので残っていくと思われるが、職人の人件費の安いところで普及品が作られるのだろう。


日本では、高級品のみの製造となるが、高級品を必要とする市場は大きくない。ゆえに、現在生き残っているギターメーカーでもブランドを棄損したならば一気に倒産する可能性があり、ブランド戦略が生き残りの最終手段となる。


このブランド戦略による経営も簡単ではないことは一度倒産したギブソン社の状況からうかがい知ることができる。例えばES-335というジャズやロックで使用されるセミアコースティックギターがある。


ギブソン社の発明によるこのギターは、多くの工房で類似品が作られ、アイバニーズも同様のデザインを改良したギターを販売し成功している。アイバニーズのセミアコースティックギターは、本家ギブソンのES335よりも高い品質で世界で売れている。


ギブソン社のES335は、現在ブランド戦略がとられ、新品でも40万円以上の価格で取引されている。その40万円以上の製品よりも実売10万円前後のアイバニーズのほうが高い品質である。


当方は、ギブソン社が倒産する直前の20年ほど前にお茶の水でES335新品訳アリを格安の20万円で入手したが、18万円で下取りに出し、7万円で定価16万円のアイバニーズ新品をネットで購入している。


そのギターは下取りに出したES335よりも生音も材料も良いのでびっくりした。アンプを通した音には歪が無く、またアコースティックな音色も抜群である。ただし、ES335のような荒削りの太さや独特の歪は無いので、好みによっては品質の悪いES335を良品とする人もいるかもしれないが。


ギターメーカーの変遷とその商品品質を50年近く見てきて思うのは、ギターという研究しつくされた製品でもブランドを始めとした付加価値で生き残ってゆくことができる。換言すれば、付加価値を見出せず、それを製品に作り込めないメーカーは淘汰される。


(注)当時表板は単板だが、側板と裏板は単板よりも合板の方が良い、とされていた時代であり、当時の価格が10万円以上の製品であっても合板が存在する。当時の合板は同じ材の積層板であり、最近の合板のように中身が廉価な板材の合板と異なる。また、1枚板を裁断しわざわざ合板にしているので単板と合板の見分けが難しい製品が多い。ビンテージギターを購入するときに注意しなければいけないのは、表板の変色である。また、当時高級品はローズウッドかハカランダであり、現在のようなマホガニーの高級品はほとんどなかった。塗装も高級ウレタン塗装が出始めた時で、恐らく黄変している。ゆえに材木の黄変と勘違いしないように。また手入れが悪いとエボニーの指板がひび割れているときがある。しかしこれをうまく修復している場合があるので注意する。型番と価格は相関しており、例えばD-60であれば6万円と分かり易い。また、名古屋の楽器量販店では3割引が当たり前の時代であり、6万円のギターは4万円で購入できた。Sヤイリは当時の人気商品だが、アジャスタブルロッドが入っていないのでネック調整に数万円かかる。東海楽器のキャッツアイはマーチン社と同等品質だったので、マーチン社の高価なビンテージギターを購入するのであれば、キャッツアイでも満足できる。裏板は緩やかなRがついているが、表板は平板なので注意してほしい。保管が良い場合には50年経ってもギター内部に木の香りが残っているはずで、サウンドホールで確認し、臭いビンテージギターは避けた方が良い。

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2025.01/04 暗黙知(2)

暗黙知は、生まれたときに芽生えるようだ。子供を観察していてそのように感じた。よく言われるが、幼児の質問には丁寧に答える必要がある。それは、暗黙知を必死に経験知に変換しようとしている瞬間だからだ。


初めて四則演算を習ったときに、何故九九を必死に覚えなければいけないのか、疑問に思った。疑問に思いつつ、毎日算数の時間に順番に皆の前で唱えなければならない、という理由で1日で記憶した思い出がある。


この思い出を鮮明に記憶しているのは、初日の九九唱和に合格したからである。当時は塾がよいの児童は稀であり、初日合格した数人は親の教育努力の賜物だった。当方の母親も前日一生懸命だった。


計算すれば出てくる値を何故暗記しなければいけないのか母親と激論を交わした記憶もある。「知っている」ことと「すぐに言える」ことは、全く異なる、と叱られたが、これが大切な言葉だと気がつくまで時間がかかった。


社会人になって、いつ受けた研修で聞いたのか忘れたが、「知っていても、すぐに行動できるとは限らない。行動できる状態で、知識が身についたといえる」と講師が語った時に、母親の偉大さを知った。


暗黙知も類似のところがあり、文章化できない暗黙知は、すぐに活かすことができない。しかし、何かもやーと感じている事柄について、メモ書きや九九のように言葉にしてみることは大切である。


メモ書きした内容やブツブツ言葉にしてみた内容が経験知として未完成であっても、やがてそれらを経験知として活かせる時がくる。もっともそれを期待している気持ちがあるので、もやーと感じるのであるがーーーー。

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2025.01/03 暗黙知(1)

暗黙知とは何かという問いに答えるのは難しい。知には、科学で見出された形式知と非科学的な経験知、そして形式知でも経験知でもない知が、すべて暗黙知とされているからである。


形式知や経験知の明文化は可能であるが、暗黙知についてそれが難しいことは、暗黙の了解になっている。暗黙知を具体化し明文化したとたんに、それはまず経験知と呼ばれる。


経験知から仮説が生まれ、それが何らかの科学の方法により真偽が決定される。そして真となったものが形式知となる。すなわち、形式知はいかなる条件でも成立する知である。


経験知は、そのような検証がなされていないので、外れることがあるが、技術開発では品質管理によりそれを統計的に外れない確率を上げて製品に活かす。


暗黙知は明文化できないので技術開発で使えないか、というとそうではない。ヒューリスティックなアイデアとは、暗黙知の成せる技なのだ。現象に触発されて暗黙知が偶然明文化される経験を積み重ねるとそのコツがわかってくる。


アイデアマンと呼ばれる人はそのような人で、ステレオタイプに現象を形式知と経験知でまとめてしまう人は、暗黙知の乏しい人だ。暗黙知を豊富に持っている人は、現象を記述するときに躊躇する瞬間がある。アイデアが生まれる瞬間である。

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