空前の半導体不足で自動車の生産も一部止まっているらしい。コロナ禍で国内の半導体工場の事故が影響している、と書いてあった記事がある。
今、何らかの高機能製品には半導体が使用されている。スピーカーさえもCPUが搭載される時代になった。身の周りの製品を探せば10点以上は半導体を用いている製品を容易に見つけることができる。
昔、半導体は産業のコメと言われた時代があった。その主食であるコメを政府は国内で製造しないという判断をしている。少なくとも現在の日本の半導体不足は国の産業政策の失敗が原因と思われる。
責任を取らないような組織の文句を書いてもしょうがないが、今産業のコメとなる半導体を自前で安定供給可能な状態にするためには1兆円規模の投資が必要となるので、民間企業が新規に進出するにはリスクが大きい。
10兆円以上の金額を書いている記事があるが、それはやや誇張だと思う。しかし、最低でも1兆円はかかる可能性が高い。現在韓国などで稼働している工場をそのまま建設するだけならば、半分以下の投資で済むかもしれないが、工場が建設された後十分な競争力があるようなプロセスとするためにお金がかかるのだ。
昔、高純度SiCの粉末について10kg/日で生産できる工場を2億4千万円で立ち上げたが、パワー半導体用SiCウェハーの工場を現在建設するならば数100億円以上かかるであろう。コメの原料部分の一部についてこれだけの費用がかかるのである。パワー半導体の最先端の生産プロセスを国内で建設する場合に数千億円は投資が必要となる。
パワー半導体はこれから伸びる領域であるが、それ以外の旧来のSi系半導体についても同額かかる。ゆえに1兆円以上の投資が必要と見積もっている。今国内にこれだけの投資をできる半導体関連事業者はいないので、どうしても国策で、となる。
日本における半導体生産に関するニュース記事に人材がいない問題も指摘されている。しかし、若い技術者はいないかもしれないが、定年退職した技術者で元気な人がいる。例えば当方もそのようなプロジェクトが立ち上がるならば参加したいと思っている。まだ若い技術者には負ける気がしていない。年寄りを活用すれば人件費を安くできる。
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機能は材料の構造因子を媒介変数として発現している、とイメージして現象を眺めるのが材料開発のツボである。これ以上は、弊社に問い合わせていただきたいが、機能から組成を直接想像しようとしたり、その逆に組成と機能を直接結びつけるような体系を創ろうとするのは、怪しい科学の姿勢である。
材料において組成と同様にプロセシングは機能発現に重要な役割をする。プロセシングは重要であるが、何故かアカデミアであまり研究に積極的ではない。
材料科学の視点でプロセシングが重視されない理由として、科学として取扱いが難しいためと思われる。難しいから重視しないというのは、研究者の姿勢としていかがなものかと思うが、機能にとって組成は必要十分条件ではないから機能から組成を決めることはできないが組成が決まれば機能が決まる、という詭弁だけは使わないでいただきたい。
もしそのような詭弁を使っている科学者がいたなら、弊社が教育指導する必要があるかもしれない。弊社が教育指導している材料科学の内容と異なるからである。間違いを標準にされると弊社が困る。
特定の組成でどのようなプロセシングを経過しても特定の構造1種類しか形成しない場合に限り、組成から機能が決まる、と言えるが、それが保証されていない時には、組成が決まったからと言って特定の機能が決まるわけではない。
例えばジルコニアでは、組成が決まっても高靭性という機能が決まるわけではない。それなりのプロセシングを行わない限り、高靭性ジルコニアを製造することはできない。
PPS/6ナイロン/カーボンの組成をバンバリーで混練する場合には、さらに複雑で、バンバリーの操作方法で発現する機能は変化する。すなわち、プロセス機器を決めてもその操作手順が変われば構造が変化して機能が変わるのである。
具体的に説明すると、高性能な混練機を購入しても、そこで発生する剪断流動や伸長流動を理解していなければ、コンパウンドの構造制御などできない。剪断流動や伸長流動を制御しているのは、スクリューセグメントだけではない。
組成を決めて、ハードウェアーを揃えたのにそれでも目的とする機能のコンパウンドができないケースでは、弊社にご相談ください。科学ではアイデアを出せません。技術的手法でアイデアを見つけ、見つかったアイデアに対して科学的研究を行わなければいけません。
高分子材料では設備を購入してもプロセシングのソフトウェアーが無ければ、機能発現が難しいケースが存在する。セラミックスから高分子材料まで研究した経験があるのでそれを当方は、この欄でアドバイスしている。
弊社では技術指導をしているが、材料科学に潜むいくつかのこのような誤解も指摘している。その過程で困るのは、アカデミアで材料科学について詭弁を使われる先生がおられることだ。詭弁だけならよいが、当方の研究論文を勝手に当方の名前を末尾にして論文を書いてしまうような先生もいた。
これを科学者と技術者の人間性の違いと言いたくはないが、当方のFDを壊した人間は、企業の優秀な科学者だった。このような経験から研究分野にも誠実さは重要である、と言いたい。材料技術では誠実に開発を行わない時には、市場の顧客を失い持続的な開発が難しくなる。
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高分子材料のシミュレーションの有効性がどの程度あるのか、例えば組成から機能をシミュレートできるのか、という問いに対して、一般の人の期待に応えるのは現在のところ難しい、というのが正直な回答である。
まず、組成から機能を科学的に決められる、という考え方に問題があるにもかかわらず、それがシミュレートできて、特定の組成で少し実験するだけで機能性コンパウンドを実用化できたなら、それは素晴らしいことである。
今の科学でそこまでできるという人は、ほとんど詐欺師と捉えてよいが、ここでは、シミュレーションに費やされた時間について少し書いてみる。
シミュレーションに1年もかけて、そのシミュレーション結果を利用したところ、1か月程度の実験で新しいコンパウンドができました、ならまだ許される。しかし、シミュレーション結果を利用しても材料開発に1年かかったらどうだろうか。
当方は、79年10月1日にゴム会社の研究所へ配属されて、樹脂補強ゴムの開発を担当している。そして当時としては世界初の防振ゴム用の加硫ゴムと樹脂からなるTPEを開発(特開昭56-122846)しているが、そこに要した期間は3か月である。
これは、指導社員が防振ゴムのシミュレーションをダッシュポットとバネによる粘弾性モデルでシミュレーションを完成していたたおかげで、3か月程度の短期間に実用配合が見つかった事例だが、もし午前中の座学の時間と休日も実験に振り向けられたなら開発期間は1か月まで短縮できたと思う。
しかし、それでも当時の指導社員は、シミュレーションで現象の説明はできるが、配合まで見出すのは困難だ、と言われていた。さらに、ダッシュポットとバネのモデルによる粘弾性論自体が21世紀には無くなっているだろうとも予測されていた。
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製品開発において品質評価技術は重要である。多数の部材の組み合わせで部品が完成するが、部品の品質評価技術は製品の品質を保証するものでなければいけない。
同様に部材の品質評価技術は、部品の品質を保証できるように開発される。当たり前のことを書いているが、この評価技術の開発が難しく、その結果なれ合いの品質基準となることがある。
例えば部材と呼ぶべきコンパウンドが、単にペレット形状だけの品質規格になっていたり、ひどい場合には開封して、ばらけていることが品質規格になっていたりする。
もちろんそれで製品品質を保証できれば何も問題とならないのだが、それほど市場は甘くない。わけのわからない品質問題と言うものが起きたりする。
これは、品質規格というものが、科学的に正しく決められていないからである。例えば、科学の時代では科学的ではないと言った瞬間に袋叩きにあうので、科学の香りをつけて規格を決めるような場合である。
しかし、川上に行けば行くほど科学の香りをつけるのが難しくなってゆく。材料開発者であれば、科学の香りをつけるインチキにリスクが高いことに皆気がついている。よく知っているが、化学分析の手間や設備コストの問題があるため、リスクに目をつぶり、適当な実験を進めたりする。
例えばペレット形状を何水準か変動させて、部品の不良率をペレット形状が決定しているように見える実験を行い、品質規格を作り上げる。無いよりましな品質規格である。
このようなことをすると、市場でわけのわからない品質問題が起きたときに訳が分からなくなるのだが、それでも品質規格が科学的に決められている前提で品質判定したりする。
製品開発者には信じられないかもしれないが、コンパウンドの品質規格がどのように決められているのか、一度チェックしてみるとよい。
押出成形で半導体ベルトを開発した経験がある。このテーマで前任者は外部からコンパウンドを購入して開発していた。ところが、半導体ベルト用コンパウンドであるにもかかわらず、ペレット形状とMFRだけの品質規格だった。ベルト抵抗を保証する規格が無かったのだ。
しかたがないので、コンパウンド工場を立ち上げた。この時、ペレット形状以外に電気特性に関するスペックと混練状態に関わるパラメーターをスペックに加え、コンパウンドの生産を開始した。
徹底したコンパウンドの品質管理によりベルトの周方向の抵抗が安定したベルトを安定に生産できた。成形安定性は、前任者の記録で最も悪い時に比較して、歩留まりが7倍に跳ね上がっている。ただし、中古機を買いそろえて3か月で立ち上げた混練プラントだが、品質保証用の設備は新品を購入している。
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昨日オリンピックの影響もあり、浜口親子を思い出し「気合いだ!」と叫べば新材料が簡単にできる誤解を与えるような表現になって後悔している。気合いだけで新材料はできないのである。
とかく材料開発は失敗と挫折の連続である。だから気合が必要なのだが、気合をいれれば必ずできるわけではないので、昨日の内容について補足を書く。
気合をいれても、頭が空っぽではレスリングさえできない。レスリングは喧嘩ではなくスポーツである。ルールの中で技を繰り出し、一瞬の攻めどころを見出して勝てるのである。だから、レスリングでもそれなりの頭脳がいる。
材料開発も同様で、形式知と経験知と言う明確な枠の中で技を繰り出し、新材料を創出するのである。レスリングが一瞬の攻めどころを攻めて勝てるように、材料開発では目の前の現象に暗黙知が刺激を受けたときに偶然できてしまうことがある。
セラミックスから高分子材料までありとあらゆる材料開発を経験してみると、実際に偶然できてしまった体験が重要であり、その感覚を忘れないように言葉として残しておき、これが後々の開発に大変役立っていることに気づく。
すなわち暗黙知を具体的な言葉に落とす習慣が重要である。STAP細胞ではハートマークの実験ノートが話題になったが、当方の実験メモには、わけのわからない妄想が幾つか言葉として表現されている。
下手な絵もいくつか残っているが、文章で残す努力をしてきた。樹脂補強ゴムの開発では、指導社員も飽きれていたが、検討候補の樹脂材料について10部づつ添加した配合処方30数種類を徹夜して一気に混練している。
理由は、日をまたぐと現象を眺めた感想の表現が変わる可能性があったからである。10部しか入っていない樹脂相がうまく海となった海島構造が目標とされたが、ナノオーダーの構造変化がロール混練プロセスでマクロな現象として観察できたのである。
本当に観察できていたかどうかは、翌日以降の電子顕微鏡写真との照合で確認している。昼食や夕食を抜いて続けて混練していると、微妙なマクロ変化の共通点が見えてきた。それが電子顕微鏡写真の結果と一致した時に暗黙知が経験知に変わる習慣だった。
これは食欲睡欲の二つの欲求を犠牲にして気合を入れて実験を行った成果であるが、得られた経験知をすぐに応用し、世界で初めての樹脂とゴムのポリマーアロイ防止ゴム配合処方を短期間に開発できた。ただし、短期間に開発できた要因はもう一つあるが、これは後日この欄で述べる。
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新材料を迅速に開発するにはどうしたらよいのか。幾つか体験事例を示す。詳細については弊社にご相談ください。
新入社員の時に、実用的な樹脂補強ゴム(TPE)の配合を3か月で開発している。その後この配合は、後工程で某自動車向けエンジンマウントとして実用化された。
ホスファゼン変性ポリウレタンフォームは、6か月で工場試作に成功している。そして始末書を書いているのでこの始末書は開発時間の証拠となると思う。
その始末書にホウ酸エステル変性ポリウレタンフォームの企画を書いている。そして5か月後には工場試作を行い、これはその後実用化されている。
フェノール樹脂天井材に至っては、いつできたのか明確ではない。某フェノール樹脂メーカーと共同開発するにあたり、発泡機を購入した。ところが、その発泡機を立ち上げる前に後工程が研究所へトラックで乗り付け、その発泡機を工場へもっていってしまった。研究開発期間をどのように捉えたらよいのか。
これをアジャイル開発と捉えれば説明がつくが、研究と開発が同時並行で進んでおり、研究所でとりあえずできた処方がすぐに市場に流れていった。
そして市場で問題が起きると品質規格を見直し、それを目標に処方開発を行っている。製品の品質規格の評価を研究段階でできたのでこのような開発スタイルとなったが、これはその後の良い経験となった。
高純度SiCの前駆体の基本処方は、フェノール樹脂天井材の開発で余ったフェノール樹脂を廃棄するために1日作業を行ったときに完成している。これが21世紀に日本化学会から賞を頂くことになった基盤技術である。
すなわち開発が終了し、大量のゴミとなったフェノール樹脂を廃棄するときに、ラテン方格を使い、実験計画法もどきの実験を行いながらフェノール樹脂を硬化させて、社内の焼却場で焼却処理できる状態にした。
だから研究予算をかけずに前駆体の処方は完成している。この前駆体を焼成してSiC化する条件は、たまたま昇進試験に落ちたために無機材質研究所で1週間自由に実験できるチャンスがおとずれ、その3日間で高純度SiCができている。
ゆえにゴム会社としては、高純度SiCのプロセス開発が開発費0でできたことになる。これが30年続き、当方が65歳になった時に(株)MARUWAへ事業譲渡されている。ちなみにこのシナリオは昇進試験に落ちたときの答案の内容に近い展開である。但し昇進試験の答案では、10年後に別会社とするシナリオになっていた。
横道にそれたが、無機材質研究所で高純度SiCができるや否や先行投資2億4千万円と研究棟建設が決まっている。研究棟が完成してから1か月後には10kg/日の連続焼成炉が稼働し壊れている。原因はプッシャー炉の設計が悪かったため、プッシャーの棒が折れやすかったからだ。
この折れやすいプッシャーの棒以外に、幾つかのドラマが生まれている。プラントが稼働し二回目の昇進試験を受験し合格しているのだが、答案の内容は1回目と同じである。
これ以外にサラリーマンとして誠実に生きる努力がどれほどつらいことなのか学ぶドラマを経験するのだが、忖度の道ではなくドラッカーの誠実真摯を目指した。その結果転職を選ぶことになったので気分は複雑である。
写真学会から賞を頂いているシリカゾルをミセルとして用いたラテックス重合は、当方のコーチングスキルにより瞬間芸的に合成条件が見つかっている。これは、弊社研究開発必勝法の事例として用いている。
まだまだあるが、退職前のカオス混合プラントは開発開始から生産立ち上げまで3か月である。6ナイロンが相溶したPPSベルトに至ってはシリカゾルをミセルに用いたラテックス同様に瞬間芸でシーズを見出している。そしてカオス混合プラントができるや否やそれが実証された。
退職を1年延ばし、2011年3月11日を退職日に設定して開発したPETボトルのリサイクル樹脂は、内装材用は2011年の新製品に搭載されたが、外装材は2年後である。これは10年前なのでここに書きにくい内容だ。
最後に30年前の話になるが転職の原因になった電気粘性流体の耐久性問題解決では、一晩の実験である。添加剤無添加のゴムを開発せよと言われて、明らかに不可能なゴム開発をしたくない一心で一晩で問題解決できる界面活性剤を見出している。
この界面活性剤とやはり当方の開発した傾斜機能粉体で電気粘性流体は実用化されているが、界面活性剤で電気粘性流体の耐久性問題を解決できない、という否定証明は、博士や修士の研究者が1年かけて行っている。
材料開発と言うものは、否定証明をやってしまうと永遠にできなくなる。笑われるかもしれないが、「気合いだ!」と叫びながら明るく開発できることを考えながらやったほうがよいかもしれない。そうすると、失敗してもくじけないのである。うまくできない時に科学で完璧に否定証明を行うには時間がかかる。そんなことを実行するぐらいなら潔く開発を中止したほうが良いが、その前に弊社へご相談してください。
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一軸押出機や二軸混練機は連続式混練機として使用される。着色目的で顔料程度の分散ならば一軸押出機でも構わないが、フィラーの分散やポリマーブレンドになると二軸混練機を使用しなければいけない。また二軸混練機でも十分な目的を達成できない場合がある。
この技術において難しいのは、「不適切な使用」をしているかどうかが分かりにくい点である。「不適切な使用」という表現にした理由は、100点満点の使用条件を当方でも出せないからである。
そもそも連続式混練機そのものが不完全なプロセスであることが知られていない。完全な混練プロセスがあるのかと言うと、どのような状態を100点満点の混練とするのかも明確ではない。
中間転写ベルト用コンパウンドを3か月で0から仕上げるにあたり、最初に行った仕事は、コンパウンドの混練状態の目標設定である。ベルトを押し出してみて、ベルトの周方向抵抗がばらつかないようなコンパウンドがゴールとなるわけだが、これをコンパウンド段階でどのように品質規格として設定するのか難しい問題だった。
二つの指標を設定して品質規格としたのだが、最初の一か月は大変だった。カオス混合装置がうまく機能するようになって安定化してきた。ただし、これはタグチメソッドの成果であり、二軸混練機本体がどのように改善されたのかは不明だった。
ただ制御因子から、いくつかの機能が推定され、コンパウンド工場が立ち上がった後にゆっくりと研究を行った。二つの設定した指標も適切な指標であり、特に一つはSN比で表示したのだが、二つの指標の間に相関性が認められ、結局SN比の指標だけで1年ほど品質管理を行い、安定化したのでこれも取り払っている。
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自動車の電動化とともに伸びているのが高純度SiCのマーケットである。パワー半導体はSiCウェハーが必須となるが、その他のSiウェハーを用いた半導体でもその治工具には高純度SiCが使用される。
特にSiウェハーでは大口径化とともに必要となった、たわみ防止のためのダミーウェハーが高純度SiCを用いて作られるので高純度SiCをホットプレスしただけの安価な円盤が高価格で取引され、製造メーカーは笑いが止まらないかもしれない。
SiCの治工具を製造するときに高純度カーボンで製造する方法や、やや純度の低いSiCで製造する方法、反応焼結体で製造する方法もあるが、いずれも表面にはCVDを用いて高純度SiCで被覆する。
高級品はすべて高純度SiCで製造された治工具であり、表面だけを被覆した治工具よりも耐久性が高い。表面だけ高純度化した製品では、一部欠けただけで使用できなくなるので管理も大変である。
この高純度SiCを製造する方法として、純度の低いSiC粉体を何段階かの洗浄プロセスにより洗浄して高純度化する方法があるが、この方法ではせいぜい99.9%程度までしか高純度化できないと言われている。
さらに高純度化したい場合には、高純度化された原料が必須となるが、セラミックス原料ではその高純度化にコストがかかり現実的ではない。そこに着眼した技術が、有機物を原料として用いる方法である。有機物であれば高純度化にコストはセラミックスほどかからない。
40年以上前にここに気がついた研究者がいたが、すべて有機物の原料を用いる方法が難しく、カーボン源として高純度カーボンを用いて、Si源に有機物を用いる方法と、カーボン源に有機物を用いて、Si源に高純度シリカを用いる技術が開発されていた。
なぜすべて有機物を原料とした技術が実用化されなかったというと、高分子を少しかじられた方ならピンとくるかもしれないが、フローリー・ハギンズ理論により科学的に証明される相分離が起きて原料として使えなかったからだ。
科学的思考は重要であるが、科学に思考を支配される必要はない。ここで技術的に思考すれば均一に混合する機能と均一に混合された材料の状態を固定化する機能を開発すればよい。
40年以上前にポリウレタンの合成にリアクティブブレンド技術が実用化されていたので、それを用いればできるかもしれないと当方は考えて実験し成功した。
この技術の成功要因は、思考から実験まですべて技術的方法により実行した点にある。科学の無かった時代では、確率が低い方法だったが、科学の進歩した現代ではデータ駆動による開発手法マテリアルインフォマティクスを使用して成功確率を上げることができる。詳細は弊社に問い合わせてください。
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強度が弾性率と靭性をパラメーターとする関数、という経験知を3回に分けて紹介した。これは、セラミックスや金属、高分子すべての材料開発を経験してたどり着いた経験知である。また、当方以外にこのような経験知を身に着けている技術者は多い。
弾性率について科学では物質固有の値があるという前提であるが、靭性については、未だに議論されているパラメーターである。かつてK1cという応力拡大係数が話題になった。金属やセラミックスでは、弾性率よりもばらつきが大きいが、欠陥との相関が認められ、形式知として検討されていた。
ちなみに靭性値は弾性率と欠陥サイズ、欠陥の存在確率で決定されるらしい、というところまでたどり着いた。しかし、これでは科学の形式知にはならない。
それでも、サンプルの強度試験サンプルの厚みが薄くなると、強度があがる現象、すなわち厚みが薄くなると破壊しにくくなる現象をうまく説明できた。
ただ、高分子材料では、この靭性値のばらつきが、金属やセラミックスよりも極端に大きく、その原因を科学的に説明できなかった過去がある。ゆえに未だ形式知とはなっていないが、経験知としては使用可能なので、シャルピー衝撃試験やアイゾット衝撃試験として、採用されている。
靭性値は形式知ではないが、最初に述べたように、材料の強度を説明するために必要なパラメーターである。ゆえにJISやISOでその計測方法やサンプルの作成方法などが細かく規定され、測定することが推奨されている。
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1980年代の材料科学のイノベーション、セラミックスフィーバーから40年近く経ちました。今デジタル化と脱炭素社会という二極化で材料分野のイノベーションが求められています。
セラミックスフィーバーでは、セラミックス材料という明確なオブジェクトが存在し、のちにナノテクの潮流を引き起こす超微粒子化とそのプロセシング開発という明確な課題が見えていました。
今回のイノベーションでは、デジタル化と脱炭素化という二大潮流が具体的なゴールを示さないままうねりながら押し寄せており、何もしなければ、誰も見たことのない未来へ流されてしまいます。
すなわち、潮流は明確ですが具体的なオブジェクトや課題が不透明です。すでにガブリエルにより「不確実性の時代のはじまり」とか、ドラッカーの遺作「ネクストソサエティー」には「誰も見たことのない世界が始まる」とか警鐘を聴かされましたが、答えは見えてきませんでした。
弊社では電子出版というサービスで提案を行いましたが大失敗しまして10年が経過しました。改めて事業を定義しなおすとともに新たな事業を計画中です。
現代の潮流の一つに見えない課題をビッグデータを活用して具体化し、そのソリューションを提供するビジネスを生み出す流れがあります。また材料分野に限れば、マテリアルインフォマティクスというデータマイニングが行われています。
まず、この潮流に応えるためにどこでも誰でも使える多変量解析のプログラムを弊社サイトで提供させていただきます。さらに順次このプログラムを活用し、どのように新しい企画やサービスを考えたらよいのか、事例をご紹介してゆきます。ご期待ください。
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