電気粘性流体の増粘問題は、20年以上前に転職する遠因となった成果だ。ここで得た経験知は、混練と界面活性剤に関する科学体系の違和感に気づき整理できた。
企業に勤務する技術者のメリットに女神に遭遇できる現場をあげることができる。そこにいるのは男神かもしれないが、当方には皆女神に見える。
自分の目指すキャリアの方向と異なる女神でも大切にすべきである。やがて彼女らは自分のキャリアを変えてしまうかもしれないが、それも受け入れる寛容さが必要だ。むしろ煩悩と戦う苦しみより良い結果が生まれる。真摯に取り組む限り科学や技術の世界に不道徳とならない。
ゴム会社でセラミックスの研究を続けたことで科学の面白い側面に気がついた。同じ材料科学分野でも現象のとらえ方が少し異なる。
例えば結晶という概念は鉱物の研究から生まれた無定義用語であり、セラミックスと高分子では、結晶の取り扱いが異なっている。このように書くと大学の先生に叱られるかもしれないが、少なくとも当方には、高分子結晶や非晶の取り扱いはセラミックスにおけるそれと異なるように見える。
高分子結晶の研究では、セラミックスの結晶と類似の方法で現象を整理している。この意味で取り扱いは異なっていないように見えるが、それは高分子の結晶化がセラミックスのそれと同じ機構と仮定してのことである。
もし高分子の結晶化機構がセラミックスと異なるならば、異なる取り扱いをしなければならないはずだ。しかし、高分子の結晶に関する論文を読むとそのあたりが曖昧になっており、その曖昧さのため取り扱いが異なるように見えてくる。
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電気粘性流体で当方は半導体微粒子の開発を行っている。しかしこれは電気粘性流体のあるべき姿について解明できていなかったからだ。
フィラーの開発は難しくない。特性をみればその構造を設計できる。構造化された形式知を忠実に実現すれば、大半のフィラーは開発できるのではないか。
サラリーマンはとかく開発をしながら出世欲に惑わされる。その結果現象に潜む問題の科学的本質を見落とす。30年以上の研究開発の現場で、上司に忖度し科学的本質を見落とした研究者を何人も見てきた。
しかし、素直であろうと誠実真摯であろうと溶媒の役目をする高分子の開発は難しい。形式知が乏しかったり、科学者の都合に合わせた形式知だったりするからだ。形式知そのものが不純だったりずぼらだったりする場合もある。
高分子の教科書に書かれた内容は、形式知として正しいが、必ずしも経験知と比較したときにそちらが正しいわけではないことも知っておくべきだ。例えばフローリーハギンズ理論は不完全でありながらそれを憶えなくては大学のテストで点を頂けない不条理な理論だ。
このような理論はその考え方といっしょに理論に潜む問題点を形式知として整理しておくことが重要である。実務では問題点に注意して経験知を活用する姿勢が大切だ。
すなわち論文にまとめたり、学会発表するときに形式知は重要になるが、実務の開発では、このような形式知は参考とすべき知識の位置づけになる。
参考とすべきなので、整理してすぐに参照できるように頭の中に準備しておく必要がある。形式知を頭に入れる必要がない、と言っているのではない。ただテストで点を取るための憶え方でなくて良い。
例えば、初恋の人の名前を忘れてもその印象を憶えている、というような記憶の仕方である。どうでも良い位置づけの記憶というと言い過ぎかもしれないが、知識の中には、刺激を受けたときにぽんと飛び出してくるような程度で役立つ場合がある。
目の前に起きている現象を理解するときにまず参照すべきは形式知である。これは科学の時代の常識である。人類が科学の時代に技術を急速に進歩させることができたのは、新たに生み出される形式知を参照しながら技術開発を進めたためだ。
形式知を参照して、おかしい、と感じたら新たな発明が生まれた瞬間である。その瞬間を見失ってはいけない。自然の女神は、嫉妬深い。過去の形式知の美しさに目を奪われた瞬間に「さよなら」となる。
この意味で、研究は若い人に勝てないが、技術開発は経験豊富な「オジサン」のほうが女神の扱いに慣れているのでまだまだ現役で若い人に勝負できると思っている。明日の講演会では最近つきあっている女神の話を少しする。添加剤の話だが、怪しい話ではない。
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高分子にフィラーを50vol%以上添加しようとすると流動性に問題が出てくる。フィラーだけならば、1980年代のセラミックスフィーバーの時代にフィラーの流動性を上げる技術が開発されている。
しかし、高分子とフィラーの組み合わせでその流動性を改善する技術はノウハウであり、体系的な形式知として公開されていない。
しかし、当方のようにこのノウハウについて真剣に取り組んできた技術者はどこかにいるはずだ。当方がこの問題で大成功したのは電気粘性流体がゴムからのブリード物で増粘し機能を失う問題を解決したときである。
電気粘性流体は半導体微粒子と流動性を有する液体の高分子との組み合わせで製造され、電場をかけると半導体微粒子が電極間でクラスターを形成するために流動性を失い固体になる。
すなわち電場の制御で物質のレオロジーを制御できる優れものだが、実用化された事例は少ない。今はもう見向きもされない機能性流体かもしれない。
この流体は、溶媒の高分子と半導体微粒子との濡れ性が良いので少しチキソトロピーとなっている。ゴムからの抽出物が増加してくると次第にその性質が大きくなり、やがては流動性を失う。
微粒子の体積分率を20vol%未満にしていてもヘドロ状態になる。このヘドロ状態をどのように解決したのか。それはゴム会社から出願されている当方の特許をご覧ください。科学的方法で問題解決にあたって失敗したテーマを成功させました。
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昨日の悲しい結果は、2004年に無機高分子研究会で発表されている。熱伝導性の異なるフィラーを同一体積分率で樹脂に添加しても複合体の熱伝導性が変化しない、という現象は、フィラーの熱伝導性よりも高分子バインダーの影響が大きいことを示している。
そこで高分子側の熱伝導性を改良しようという新しいコンセプトのフィラーを用いた高分子の高機能化技術が最近開発されている。その技術によると、フィラーの熱伝導性の違いが複合体に少し現れるようになる。ただしわずかである。
高価なダイヤモンドを用いても安価なカーボンを用いた熱伝導性と変わらない高熱伝導樹脂複合体という結果はあまりにも惨めな結果だ。
ただし、樹脂への充填量を50vol%以上添加すると少しずつフィラーの熱伝導率の差が複合体に現れるようになる。これは充填量が高くなりクラスター間の接触が密になって樹脂の低い熱伝導率の影響が小さくなってくるからだ。
それでは、2004年の無機高分子研究会で発表した研究者は、なぜこのあたりまで充填率を高めた研究を行わなかったのか。それはここまで充填率を高めると複合体の実用性を損なうからだった。
実は特許などを見ていると60vol%を超える充填率で熱伝導樹脂を製造する発明が公開されている。この技術の難しいところは、得られた複合体ペレットをどのように成形するのかという点である。
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導電性フィラーを用いたときの機能性高分子材料設計における勘違いについて昨日まで書いてきたが、これが熱伝導性樹脂でも同様の状況で、ただ導電性フィラーと異なるのはバインダー側の開発をしようという動きが出てきたことである。
電子と熱では、それぞれを伝達するキャリアが異なる。電子も熱を運べるが、熱電導は主にフォノンすなわち振動で伝わる。ゆえに電子のように導伝体どおしに隙間があると熱はその隙間の伝導性に影響を受ける。
まずこれを正しく理解していない人が多い。すなわち、絶縁体でも熱の良導体が存在し、導電体では、電子とフォノンで熱を伝導できる。ゆえにCNTで熱伝導樹脂を設計しようという目論見も生まれてくる。
この熱の良伝導体の隙間の影響がどのような影響として現れるのか、具体的な事例で説明すると、熱を伝えにくい高分子に熱伝導フィラーを添加して製造した複合材料の熱伝導率についても導電体と同様にパーコレーション転移という現象が観察される。しかし、このパーコレーション転移の挙動が電子の場合と異なるのだ。
すなわち単純にクラスター形成過程をシミュレーションするプログラムでその様子をシミュレーションできない。その理由はクラスター間のわずかな隙間が熱伝導性に影響を与えるからだ。
さらに熱伝導性の異なるフィラーを樹脂に混練してその熱伝導性と添加量の関係を調べると、すべて同一の曲線に乗ってしまう。熱伝導性の良い銀やダイヤモンドを用いても安価な石英粉と同様の効果しか現れないのだ(2004年無機高分子研究会報告)。
これは高価なダイヤモンドを用いても安価な石英粉とその価値が変わらないという見かけ上悲しい結果だ。
フィラーの工夫で熱伝導樹脂を設計しようと考えている人には、少しショックな情報かもしれない。しかしそのような人がホッとする話を後日気が向いたら書く。ただし、結局バインダー開発が必要になる。
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1000Ωcm程度の導電性があれば、パーコレーション転移が起きたときに、どのくらいの添加量でどの程度の帯電防止性能を実現できるのかシミュレーションしたところ、15-18vol%の添加で10の10乗Ωcmという導電性が得られる、という結果が出た。
この値をゴールにしてバインダーとプロセシングの工夫をしたところ、酸化スズの量が18vol%でPETフィルムにタバコの灰付着テストに合格する、十分な帯電防止性能を持った薄膜を開発できた。ゴールの確認はインピーダンス法で行っている。
この開発を進めていた時に他のグループで帯電防止層を実現するためにライバル特許に抵触しないフィラーを探索していたグループもいたが、パーコレーション転移の制御ができず開発に失敗している。
写真業界は特許競争の激しい分野であり、高分子バインダーの開発をしなくてもよい(頭を使わなくてもよい、という意味かもしれない)利用しやすいフィラーについてすべてライバルに抑えられていた。
特公昭35-6616のおかげで、酸化スズゾルだけが唯一特許フリーの透明導電性フィラーとして残っていた。ゆえに技術開発の方向はバインダーの開発しか無かったのだ。
しかし、科学の視点では透明な無機物質は酸化スズ以外にも存在しフィラーを探索すれば特許抜けが出来そうに思われる。ここで使いやすいフィラーが容易に見つかると期待しフィラーの探索をするのか、高分子バインダーを開発するのかは技術者が責任を持って判断しなければならない。
現代は、インターネットでフィラーを検索すればいっぱい出てくる。しかし、目的に合う特性を持ったバインダー情報はフィラーほど得られない。このような状況で複合材料のいろは、とは高分子バインダーの設計法のイロハとなる。
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ひび割れの無い酸化スズゾルの単膜をガラス基板に形成する技術をディップ法で開発した。暗電流を評価したところ、その導電性は1000Ωcmで、さらに結晶性酸化スズでは観察されない導電性の準位が見つかった。
どうも単膜に水が含まれている可能性があり、熱分析結果から300℃前後でそれは抜けて、わずかに酸化スズ結晶が現れる。このような挙動の水は結晶の場合では構造水となるが、非晶質の場合では何と呼べばよいのか。
300℃前後で揮発する水分なので吸着水ではない。構造水のような水を含む非晶質酸化スズだが、とにかく結晶質の高純度酸化スズが絶縁体と言われているのに、非晶質の高純度酸化スズゾルが導電性フィラーであることが分かった。
酸化スズゾルは、そのまま単膜にして導電性を評価しようとするとクラックが入るため、絶縁体として誤解される可能性がある。またラテックスとともに薄膜を形成したときにはパーコレーション転移が生じにくいのでやはり絶縁体として誤解される。
写真会社の担当者はバインダーとしてゼラチンを用いていたので、さらにパーコレーション転移が起きにくくなっていたはずだ。もし酸化スズゾルという導電性フィラーの機能をフィルムの帯電防止層として活用するならば、パーコレーション転移が起きやすいバインダーを開発しなければならない。
フィラーを用いた高分子の機能化の考え方もこの事例と同じで、すでに開発された高機能フィラーについてその性能を活かしきるような高分子マトリックスの開発が重要である。
酸化スズゾルについては、信頼できる形式知が存在しなかったので、研究を行ったが、今やこのような怪しいフィラーを用いる研究開発は時代遅れだ。形式知で明らかにされたフィラーを用いて、マトリックスとなる高分子の開発を行うのが今どきの複合材料開発の方法である。
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酸化スズゾルに含まれている酸化スズが導電性か絶縁性か、あるいは結晶性か非晶性かは水を除去して酸化スズを取り出し分析すれば判明する。
ところが、ガラス基板に薄く塗布し自然乾燥させたところクラックが入り良好な薄膜を作ることができない。酸化スズゾルの営業担当から評価が難しいので苦労している、と説明を受けた。評価が難しい材料をどのように品質管理しているのか疑問に思ったが、指導する立場ではないので追及はしなかった。
何処かの大学の先生のご指導を受けたようだが、いい加減な先生に騙されたのだと思った。大学の先生の中には技術を理解せず適当なことを自信をもって説明される方もいるので注意しないといけない。
このゾルに分散している酸化スズが結晶かあるいは非晶かの判断については、ガラス転移点がないから結晶だと説明を受けたと営業マンは言った。どこの大学の先生か名前を出すと大学の名誉を傷つけるので書かないが、このような先生に指導を受けている学生がかわいそうに思えてくる。
高分子材料では、非晶質相はガラスと言ってもいいが、無機材料では非晶質体がすべてガラスとは限らない。ガラス相を形成しない非晶質物質も無機材料では存在するのだ。酸化スズゾルに含まれる酸化スズは絶対にガラスにならない。単なる非晶質体である。
ゆえに無機材料についてガラス転移点をもたないから結晶という判断は間違っている。ちなみに高分子の熱分析を行ったときにガラス転移点が現れないことが稀にある。
しかしそのような場合の対策については以前この欄で紹介しているのでそこを読んでいただきたいが、工夫すればそのような場合でも高分子材料では必ずガラス転移点を観察できる。
高分子は結晶化あるいはガラス化して固まるが、無機材料の中にはガラス化する組成とガラス化しない組成が存在することは、材料を扱う実務で重要な形式知である。この形式知をベースに積み上げなければいけない高分子に関する経験知が存在する。
また、実務ではこの形式知だけでは問題解決できない現象も多くあるが、形式知をベースにせず経験知を積み上げると、アカデミアとの議論がかみ合わなくなる。英語が公用語となっているように科学の形式知を整理しておくことは重要である。
形式知を整理せずに実務を進め品質問題を発生しがちなのが耐久試験のやり方である。11月7日に下記タイトルで講演を行いますので、ご興味のある方は問い合わせていただきたい。
「ゴム・プラスチックの劣化・破壊メカニズムと寿命予測および不具合対策」
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酸化スズゾルは、高純度の酸化スズが水に分散しているコロイド溶液である。高純度の酸化スズ結晶については1980年代のセラミックスフィーバーの時に無機材質研究所で絶縁体であるとの結論が出された。
だから写真会社の担当者がそれを評価して絶縁体であると1991年に結論したのは、形式知から正しいように見える。
ところが特公昭35-6616という特許には酸化スズゾルに含まれている非晶質酸化スズは導電性物質であると書かれている。小西六工業の特許だが、担当者はペテントかもしれないといった。
たしかにその特許のあと当方が1992年に特許を書くまでこの技術に関して出願がなされていない。そのかわりライバル会社からこの特許公開から1年後に結晶性酸化スズや非晶性五酸化バナジウムを用いた帯電防止層の特許が出ている。
特許の中にはインチキ特許もあるので注意が必要だが、子供の頃父親が愛用していたサクラフィルムで有名な小西六工業の出願している特許である。まず信用して追試をするだけの価値があると思った。
しかし担当者は無駄だと言った。理由は昔の特許に書かれている酸化スズゾルと実験室の隅に放置されていた、市販の酸化スズゾルは同じものだったからだ。
ところが市販されていた酸化スズゾルのカタログには結晶性酸化スズゾルと書かれていた。また、その製品に関係している特許も出願されており、小西六工業の特許があるにもかかわらず成立していた。
これは市販の酸化スズゾルが特許製品であることを主張するためにインチキ特許を出願していた可能性が高い。実際に酸化スズゾルを販売していた会社の担当者に話を聞いたら、インチキ特許であるとまでは白状しなかったが、苦しい言い訳をしていた。
しかし導電性の高純度結晶性酸化スズゾルでは、高純度酸化スズ結晶が絶縁体だと発表されているので誰も買わないだろう、と言ったら、実は全然売れていません、と回答してきた。
早い話が、当時酸化スズゾルを販売していた会社の特許がインチキ(注)でインチキ特許で事業をやろうとした事情は不明だが、形式知と矛盾している説明が書かれた商品カタログでは売れないのは当たり前だ。
なんやかやと酸化スズゾルメーカーの担当者とやり取りしていたら、結晶性という言葉がカタログから消えた。
(注)このメーカーのために少し補足すると、この会社の特許に書かれた実施例を実施しても非晶質酸化スズゾルしか合成できない。しかし、導電性は悪い。ただし合成条件を変えると特公昭35-6616と同程度の酸化スズゾルになる。この酸化スズゾルについては、合成条件を変えることで100000から1000Ωcmまで100倍程度変化する。またアンチモンを添加した酸化スズゾルも販売されており、こちらは導電性が10倍程度悪くなる。これは面白い発見だった。なぜなら結晶性酸化スズでは、アンチモンをドープしない限り導電性は出現しない、すなわち高純度結晶性酸化スズとアンチモンドープの結晶性酸化スズでは、絶縁体と導体の差があるのに、コロイド溶液では導電体と半導体の差程度であり、高純度非晶質酸化スズのほうが若干導電性が高い。高度な材料評価技術を持っていないとこの材料の真の姿を見ることができない。これはアカデミアでも同様で、当方は電気物性の測定については、その評価サンプルを当方および当方の部下が完璧な状態で作成し、二か所の大学に測定依頼している。そして、それぞれの大学で一致した結果が得られているが、サンプル作成を当方らが行った背景はそれぞれの先生がサンプル状態で測定結果が変わるとの、「正しい」アドバイスをしてくださったからだ。この結果は学会発表を行っていないが、非晶質ゾルの電気特性評価は難しい。
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大半の高分子は絶縁体である。高分子に導電性を持たせるためには、白川先生がノーベル賞をとられた導電性高分子を用いるか、絶縁体高分子に導電性フィラーを混ぜて半導体高分子あるいは導電性フィラーの充填率を60vol%以上添加して導電性高分子を開発する。
この時1000Ωcm前後の導電性でよければ60vol%未満でもカーボンを用いて導電性高分子を開発可能である。以前この欄で紹介したパーコレーション転移を活用すればよい。
繊維状のカーボンを利用すれば5vol%未満でも導電性高分子を製造できる可能性がある。ここで可能性があると書いたのは、実用化された商品では、まだこの程度の少ないカーボン添加量の高分子商品が開発されていない。
これはシミュレーションの結果であってこれを実現するためには、パーコレーションという現象を制御するための導電性フィラーと絶縁体高分子、そしてそれらを混ぜて成形するためのプロセシングの工夫が必要である。
この工夫の仕方はほぼ科学的に解明されており、機能実現の技術開発を行えばよいだけである。導電性フィラーについては繊維状物質を用いればよいのだが、高分子との相性の問題が出てくる。さらに繊維状物質を高分子に添加したときに混ぜるのが大変難しくなる。
ゆえに、この技術の難しさは導電性フィラーよりもどのように高分子を設計するのかという問題とプロセシング開発にあるのだが、良い導電性フィラーが無いのか、と考える傾向にある。
導電性フィラーについては、その表面処理技術が確立されているのでその情報を探すだけで済むが、絶縁体高分子とプロセシングの技術については、まだ開発しなければいけない課題が多い。
ただし導電性フィラーの表面処理については、電子のホッピング伝導ができる程度の厚みという条件が付く。
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