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2016.10/14 スピーカー

昨日音工房Zで開催されたスピーカーの視聴会に参加した。視聴したスピーカーはZ1000-108sol(以下Z1000)とZ800-FW168HR(以下Z800)の2機種で、前者は完成品として後者はキット販売されている、いずれも20万円前後のスピーカーである。結論を書けば、「驚いた」の一言で、この会社のホームページに書かれているスピーカー評価は嘘ではないようだ。
 
音工房Z(http://otokoubouz.com/)という会社の詳細についてはそのホームページを見ていただきたいが、オーディオマニア向けスピーカー自作をサポートしている会社だ。その昔、当方が学生の頃オーディオブームがあった。そのブームを支えていたのは、高度経済成長で毎年給料が上がっていた団塊の世代である。今その団塊の世代がリタイアし、潤沢な退職金と豊富な時間を手に入れている。
 
当方が会社設立時に音工房Zという会社を知ったのだが、必ずヒットする事業だと感じた。しかし、届くメルマガとホームページの内容はやや胡散臭く、一部のマニアには支持されるかもしれないが、多くの団塊の世代の心を捉えるには程遠い表現である。一度ご覧になっていただくとわかるが、自画自賛の内容が多い。また、誤字脱字や怪しい表現も散見し、せっかくの実験結果公開もどれだけの人が参考にしているのか疑問を持ってしまう。
 
しかし、100聞は一見にしかず、だった。やや誇張な表現も多いが、ホームページ書かれているスピーカー評価が正しいと感じた。当方の年齢を考えると高域がどうのこうのと言われても聞こえていないので関係ない、と思っていたが、その聞こえていないはずの高域を感じることができたのだ。特にZ800の音の輪郭表現はすごい。すごすぎてその辺のホールで聴くコンサートの生音とは別次元の音である。むしろ録音状態のそのままを聴いているのでは、と思いたくなる音だった。市販のスピーカーでは聴けない音である。
 
それに対しZ1000は、音の定位感や音の響きが自然でロンカーターの「ザ・マン・ウィズ・ザ・ベース」を気持ちよく感じることができた。JBLの100万円ほどのスピーカーと比べてもこちらの方が自然の音に近いという点で好みの音である。JBLの大口径のウーファーから出てくる低音はすごいが、Z1000の自然な響きを聴いてしまうと、どちらのスピーカーがよいのか迷う。
 
ただしZ1000の驚くべき特徴は、10cm前後の小口径のスピーカー一発でJBLに負けない低音を出している点だ。自作スピーカーファン向けにデバイス販売を行っているフォステックスの8000円前後のスピーカーが使われており、Z1000の価格の大半はスピーカーの箱の値段と言うことになる。Z1000では、木の箱に20万円前後のお金を払うことになると気がつくとその瞬間にこの会社がナレッジの会社と理解できる。
  
 

カテゴリー : 一般 電気/電子材料

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2016.10/02 高分子の難燃化技術講演会

創業から5年たち、いろいろな業務を経験することができました。その中で高分子の難燃化技術は、ゴム会社へ入社1年後から3年間担当した業務でした。ホスファゼン変性ポリウレタンやホウ酸エステル変性ポリウレタン、ケイ酸変性フェノール樹脂など燃焼時にリン酸ユニットを系内に保持する炭化促進型コンセプトで開発した技術は、40年ほど前では斬新な考え方で、学会の招待講演などでも高い評価を得ました。
 
その後、イントメッセント系難燃剤などが注目され、現在に至っておりますが、燃焼時にリン酸ユニットを固定し、炭化促進を行う難燃化手法は、三酸化アンチモンとハロゲンの組み合わせによる難燃化手法と同様現在でも主要な難燃化技術(イントメッセント系難燃剤も同様のコンセプトの発展形)として採用されております。
 
今回、この難燃化技術にさらに磨きをかけるため、新素材を開発いたしました。まだ特許出願中のため素材の詳細を開示できませんが、基本コンセプトについてわかりやすく解説する講演会を開催いたします。弊社へお申込みいただければ、新素材を開発した企業のご紹介等特典がございます。
 
なお、11月には科学にとらわれない思考法をベースにした問題解決法の講演会を予定しております。本講演会では、従来の科学的な問題解決法をおさらいし、そこに潜む問題点を明らかにし、新たな技術を創造するための誰でもできる発想法と当方がこれまで用いてきて有効だったノウハウを伝授いたします。
 
1.機能性高分子の難燃化技術とその応用
 
(1)日時 10月4日  10時30-17時30分まで
(2)場所:東京・西新宿
(3)参加費:48,600円
 
(注)評価技術に力点を置き、高分子物性を創りこむノウハウもご説明致します。
 
https://www.j-techno.co.jp/seminar/ID57NLFEZ15/%E6%A9%9F%E8%83%BD%E6%80%A7%E9%AB%98%E5%88%86%E5%AD%90%E6%9D%90%E6%96%99%E3%81%AE%E9%9B%A3%E7%87%83%E5%8C%96%E6%8A%80%E8%A1%93%E3%81%A8%E3%81%9D%E3%81%AE%E5%BF%9C%E7%94%A8/
 
2.高分子難燃化技術の実務
 
(1)日時 10月27日  10時30-16時30分まで
(2)場所:江東区産業会館第一会議室
(3)参加費:49,980円
 
(注)難燃性と力学物性、さらに要求される機能性をどのようにバランスさせ品質として創り込むのか、という視点で解説致します。

 
https://www.rdsc.co.jp/seminar/161026
 
3.11月度開催予定の講演会は下記

https://www.rdsc.co.jp/seminar/161116

カテゴリー : 学会講習会情報 電気/電子材料 高分子

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2016.09/09 高熱伝導性樹脂

高分子材料は熱伝導性が悪い。ゆえに熱伝導性を向上するためには、熱伝導性の良好な微粒子を添加することになる。この時にもパーコレーション転移が問題となる。ただ、絶縁体である高分子に導電性を賦与する場合と異なるのは、微粒子の物性があまり大きく影響しない(注)。
 
すなわち、ある微粒子Aと熱伝導性が20倍30倍良好な微粒子Bとを高分子に添加してその熱伝導性の変化を比較しても、同じような挙動を示す。あたかも微粒子の熱伝導性の差の影響が無いような変化である。
 
あるセミナーに参加した時には、熱伝導性樹脂を設計する時に微粒子の熱伝導性はあまり影響しない、とはっきり言われた。熱伝導性樹脂を開発された経験のある方は、大抵は同様の体験をしている。
 
導電性の場合とどこが異なるのかと言うと、電子伝導ではトンネル効果で微粒子の接触抵抗の影響が小さくなるが、すなわち接触していなくてもホッピング伝導で電流は流れるが、フォノンではトンネル効果を利用できないので、十分な接触が無いと伝熱ができないという説明がもっともらしい。
 
すなわち、熱伝導性樹脂では微粒子どおしの接触状態が重要になる。そこで、粒度分布を制御したりして熱伝導を改善する、というアイデアが生まれ、過去にそのような発明が公開されたりしている。
 
しかし、それでも大きな改善は難しいし、このアイデアでは力学物性の制御が難しくなる場合も出てくる。そこで高分子そのものの熱伝導性を改良しようというアイデアが生まれ、幾つか熱伝導性の良好な高分子が開発されている。ただこのような高分子はえてして他の物性がダメな場合があり、結局汎用高分子に熱伝導性フィラーの分散技術の開発となる。またコストも安くなる。
 
(注)絶縁体と導電体では、材料の電気抵抗は10の14乗倍異なる。しかし、材料の熱伝導率の差はせいぜい10000倍程度である。ここでは、フィラーの電気抵抗を10倍、1000倍と変えるとパーコレーション転移の様子が大きく変化するが、フィラーの熱伝導率を10倍、1000倍と変えても同じようなパーコレーションの様子を示すという意味である。
    

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2016.09/03 カーボンを分散した半導体樹脂

高分子の大半は絶縁体である。ゆえに世界で初めて導電性高分子を発明した白川先生はノーベル賞を受賞された。絶縁体高分子に導電性を与えるためには、導電性のフィラーを添加すればよい。多くの場合コストが安いカーボン粉末が使われ、1000Ωcm程度まで抵抗をさげることができる。
 
ところが、10の10乗レベルの抵抗を有する半導体をこの方法で製造しようとすると大変難しい。パーコレーション転移が起きるために、抵抗が下がり過ぎたり、抵抗があがったりするからである。もしカーボンの導電性が低く、10の5乗前後であればこの変動を小さくできる。
 
この微粒子を高分子に分散し、目標とする抵抗の半導体物質を安定に製造するための微粒子の抵抗やその分散状態については、科学で推定可能で、技術目標まで科学的に立てることが可能である。すなわち、パーコレーション転移のシミュレーションプログラムを科学的に作ることが可能で、現実の現象をコンピューターで予測することができる。
 
このプログラムでカーボンのような導電性が良い微粒子を用いて、安定に10の10Ωcmの半導体を製造するには、微粒子の弱い凝集体を高分子中に発生させればよいことが示される。すなわち、弱い凝集体が10の5乗Ωcm程度の半導体微粒子として機能し、パーコレーション転移による変動を小さくする。
 
科学では、このようにパーコレーション転移を制御し高分子の高次構造設計目標まで示すことができるが、実際にこの高次構造を実現しようとすると大変である。科学では易しい問題でも技術ではかなり難しい問題となる。混練技術が科学で完全に解明されていないからだ。
 
カーボン超微粒子の弱い凝集体を均一の大きさで高分子中に均一に分散させるためには、分配混合を進めればよいことが教科書には書かれている。そのためのスクリューセグメントも経験的に知られている。しかし、それでもうまくゆかないのだ。
 
10年ほど前、日本を代表するコンパウンドメーカーの技術者から「素人は黙っとれ」と言われた。すなわち素人では理解できない世界であるというのが当業者の認識である。ところがそのコンパウンドメーカーを信頼していたら、とんでもないことになり、半年で自前の混練工場を建てなければいけない事態になった。
 
教科書に書かれていた混練技術は役に立たなかったが、ゴム会社で3ケ月間担当した樹脂補強ゴムの開発経験は大変役立った。残業代も出ない新入社員時代であったが、徹夜したり、サービス残業の毎日が定年前の開発で役立った。
 

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2016.08/20 研究テーマ

研究テーマの設定は難しい。特に企業においては商品開発テーマと同等評価が得られるような研究テーマ企画と言うのは、それなりの実務経験がないと企画できないのではないか。
 
10年後を見据えた基礎研究です、というのは怪しいテーマが多い。しかし30年前はこのような企画を多く見かけた。ゴム会社だけでなく多くの企業でこのような研究企画が多数推進されていたのではないか。
 
高純度SiCの企画も最初提案した時には、怪しい企画が多く推進されていたにもかかわらず、それらの企画以下に扱われた。最初に提案してから3年後に無機材質研究所留学として実現したのだが、昇進試験の答案に書いたところ0点をつけられたので留学が島流しではないかと不安に思ったりした。
 
この企画は30年以上たった今でも事業として継続されているので、企業の研究企画としては優れた企画だと思う。また、この企画の中の小テーマの一つにSiC合成の反応速度論があり、2000万円かけて超高速熱天秤を開発し、生産に寄与する研究成果を出している。そして学位論文にもなっている。
 
しかし、ゴム会社の研究部門では、この企画は全然評価されなかった。評価されなかったどころか、昇進試験に落とされるぐらいのマイナス評価だった。
 
昇進試験に落ちた結果、研究を完成させる機会が得られたのだから、複雑な気持ちだが、とにかく研究部門における研究テーマの評価として低かったことは確かだろう。
 
しかし、無機材質研究所長はじめ留学でお世話になった先生方には、研究テーマとして高い評価を頂いた。当時セラミックスフィーバーの最中で留学希望者が多く、この評価が無ければ無機材質研究所への留学は実現しなかった。
 
ゴム会社の研究部門では散々な評価だったが、ゴム会社の故服部社長には大変褒めていただいた。「なぜ研究部門でこのような企画ができないのか」とまで酒の席で言われた。不思議に思い後日上司に尋ねたら、新事業部門の企画として最初説明されたらしいとのこと。
 
早い話が、当時の研究部門管理職の方々は、この研究テーマに関わりたくなかったと思われる。この研究テーマに関しては30年以上事業が続いている「不思議さ」以外にFD事件も含め奇妙な体験は多い。ただ、若い時の企業に貢献したいという「思い」の強さが成功に結び付いたと思っている。

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2016.07/30 ソニーの電池事業売却

少し驚いたのは、ソニーがリチウム二次電池事業を村田製作所へ売却したと28日のニュースで報じられたことだ。ただ、そのニュースで複雑な気持ちになったのは、ソニーがリチウム二次電池を世界で初めて開発した、と書かれていた点である。
 
リチウム二次電池の実用化であれば、ポリアニリンリチウム二次電池の開発として、昭和63年に日本化学会化学技術賞をブリヂストンは受賞している。すなわち、ブリヂストンが世界初である。
 
なぜ、ブリヂストンが世界初と報じられないのかご興味ある方は問い合わせていただきたいが、ブリヂストンではリチウム二次電池の火災の問題にも早くから取り組み、電解質の難燃剤であるホスファゼンを実用化している。この電解質に添加するホスファゼン化合物については、日本化学工業で事業が継承されている。
 
このようなことから、ソニーのニュースについて本欄で触れるかどうか悩んだが、リチウム二次電池事業の状況を示す重要なニュースとして書くことにした。
 
ハイブリッド車そして次世代の電気自動車に必要な軽量二次電池の開発競争は激しさを増している。また、その二次電池新製品の商品としてのライフサイクルは短い。次から次へと高性能の電池が登場している。このような状況では体力勝負となり、メーカーとして体力が落ちてきたソニーには少々きつい事業となったのだろう。
 
ブリヂストンでは、日本化学会から技術賞を受賞すると早々と事業を辞めてしまっている。社内では酸化物系セラミックスの正極開発も進められていたので当時は残念に思ったが、今回のニュースを読む限り、経営の判断として正しかったのだろう。
 
当時のブリヂストンでは、電池とメカトロニクス、ファインセラミックスを3本の柱として位置づけ、新事業開発に取り組んでいた。高純度SiC事業を提案した当方は、最初にテストマーケティングを始め、駄馬の先走りと言われたりしたが、おかげで大きな市場は無いが将来必ず成長するという確信を得ることができた。
 
そして、いわゆる開発の死の谷を一人で歩くことになるが、死の谷を歩きながら、他の二本柱の技術開発のお手伝いをしていた。どのような技術を開発したかは自慢話になるのでここで書かないが、電池や電気粘性流体の仕事でいくつか成果を出したために、住友金属工業と高純度SiCに関するJVを立ち上げながらも写真会社へ転職することになった。
 
ブリヂストンの三本の柱の方針は、半導体治工具用高純度SiC事業として化工品部門に移管され現在も続いている。また、リチウムイオン電池電解質の難燃剤は、日本化学工業で事業が続いている。

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2016.07/08 熱伝導樹脂

一般に高分子材料は導電性や熱伝導性がわるい。ゆえに樹脂の導電性の改良には、カーボンなどの導電性フィラーを添加し、熱伝導性の改良にはダイヤモンドやBNなどの熱伝導性フィラーを添加する。
 
このような高分子材料へフィラーを添加する物性改良方法では、パーコレーション転移が観察される。面白いのは導電性の改良時に現れるパーコレーション転移の挙動と熱伝導性材料で観察される挙動が異なることだ。
 
熱伝導性材料で観察されるパーコレーション転移の挙動は、弾性率の変化で観察されるそれと近い。理由を知りたい方は弊社へ問い合わせていただきたいが、古典的には、複合材料の教科書には、混合則として十把一絡げで説明されている。
 
また、少し手の込んだ方法としてMaxwell-Euckenの理論式やNielsenの理論式が知られている。しかし、高分子材料にフィラーを添加したときには、クラスター生成を確率的に捉えるスタウファーらによるパーコレーションの考え方で、統一的に理解可能である。
 
面白いのは、導電性材料で観察される不安定さでは、パーコレーションという現象を直感的に理解していただけるが、熱伝導や弾性率の問題では、ぴんとこない人が多い。
 
この理由は、例えばフィラーの熱伝導性が大きく変化しているのに、添加量と複合材料の熱伝導率の関係が一つの曲線上にプロットされたり、アスペクト比の効果が導電性ほど顕著に現れなかったりと導電性材料とは少し異なった挙動となるからだ。
 
現象を科学的に正しく理解できないと材料開発を進めることができないので、年に2-3件はこの関連の質問がある。科学的にはフィラーの分散をパーコレーションで説明でき、パーコレーションによる考察が可能となれば、あとは技術で改良するだけである。
 
ただし、科学的な美しいデータが得られないこともある。科学と技術の違いを理解できておれば難しい問題ではないのだが。また、熱伝導性フィラーとしてダイヤモンドが要求される場面は少なく、シリカやアルミナ程度でフィラーとして十分目的を達成できる場合が多い。

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2016.03/06 サウンドカード

今時PCを自作する人は減ったのだろう。書店に並んでいた自作PCファンのための雑誌がほとんどなくなった。また、久しぶりに秋葉原を歩いてみると、自作マニア向けの店も減少しており、マザーボードメーカーも数社になっていた。
 
最近のマザーボードは安くなったと思う。マザーボード一枚あれば、その他のインターフェースカードを買わなくてもよい。昔は、ビデオボードからサウンドカード、さらにはハードディスクを接続するSCSIIカードまで買わなければいけない時代もあった。
 
自宅で使用しているPCは、30年近く前から自作PCで常に先端のCPUが稼働していたが、この10年ほどは2台自作しただけである。CPUの進化に併せてPCを組み立てていたころに比べると、CPUの速度変化がOSに隠れてしまったので新しいPCが欲しくなる気持ちも薄らいできた。
 
昨年組み立てたPCと7年前組み立てたPCの2台使用しているが、日常の使用において速度感にそれほどの違いは無い。
 
最も昨年組み立てたPCには最上位のCPUではなく、Core-i7の安価なCPUであり、CPUの能力そのものが7年前の2.5倍程度なので、OSを介した速度は7年前の4コアのCPUと比較しても速度差が見えにくいのだろう。おまけに古いPCには、高価なビデオボードがついているので、WINDOWSの動きは、新しいPCよりも動作が良い。
 
しかし、サウンドカードの音質は2台のPCで少し異なっている。昨年組み立てたPCには、SE-200PCI-LTDが、古いPCには、SE-200PCIがつけてある。実は、昨年SE-300PCIを購入したのだが、SE-200PCI-LTDのほうが音質が良かったので、古いPCにつけていたボードを使いまわしで新しいPCにつけた。ところが、古いPCにSE-300PCIを取り付けることができない。
 
古いPCのマザーボードにSE-300PCIの規格にあうソケットが無いためだ。仕方がないので、SE-200PCIをつけている。SE-200PCIでも当時のマザーボードのサウンドチップよりいい音がするからだ。改めてSE-200PCIとSE-200PCI-LTDと比較して聞いてみると、音の奥行き感や楽器の輪郭のようなものが明らかにSE-200PCI-LTDのほうが優れている。
 
ONKYOに期待してSE-300PCIを購入したのだが、これがはずれだった。確かにSE-200PCIよりも音はよいのだが、SE-200PCI-LTDに比較すると、楽器の輪郭のようなものがやや甘い。例えばポールサイモンの古いレコードからの録音を聞くと、ギターの指板で擦る音ではSE-200PCI-LTDのような生々しさが無く、SE-300PCIでは少し優しい音がする。
 
フィルラーモンがどのようなニュアンスでレコーディングしたのか知らないが、レコード盤から聞く音に近いのがSE-200PCI-LTDの場合であることを考慮するとSE-200PCI-LTDのほうがSE-300PCIよりも再生装置として優れていることになる。
 
しかしネットオークションを見て驚いた。SE-300PCIが新品よりも高い値段で販売されているのだ。SE-300PCIは2年前に生産中止になったので、すべて中古品である。ゆえに新品より価格が下がって当然と思っていたら、当方の購入価格よりも皆高価な値段が付けられている。ここだけの話だが同じ中古品を購入するのなら、SE-200PCI-LTDのほうがお買い得である。Windows10でもトラブルなく動作している。

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2016.01/11 高純度SiCの発明プロセス(9)

フェノール樹脂の廃棄処理作業を利用して行った実験では、実用的な条件を見出せなかったが、フェノール樹脂とポリエチルシリケートとを混合して、シリカが沈殿せずいつまでも透明になっている液体を創りだすことができた。この1ケ月後には無機材質研究所への留学を控えていた。実験の続きは、2年間の留学を終えてから実施するつもりでいた。
 
しかし、留学したその年にその実験の機会が訪れたことは、一年ほど前の活動報告に書いたので、ここでは省略する。高純度SiCの前駆体ポリマーはこのように試行錯誤の結果完成したのだが、この前駆体ポリマーの合成条件については再現性やロバストも高く、実用性の高い技術であった。
 
ただ前駆体ポリマーの品質管理方法の問題が残っていた。すなわち、前駆体ポリマーが本当に均質であり、それを炭化した時にシリカが分子状態でカーボンに分散しているかどうかを科学的に証明(注1)するとともに、一定の品質を管理する方法を考えなくてはいけなかった。
 
この点については、最初から炭化物についてSiC化の反応を動力学的に解析してやろうと決めていた。すなわち、SiC化の反応速度論について、形式知として結論を出してやろうという野心をもっていた。
 
当時シリカ還元法の反応機構については諸説あり、SiC化の活性化エネルギーも形式知として存在していなかった。ゆえに、この形式知が定まっていない状態を科学的に終結させれば学位を取得できると考え、学位取得をめざしていた。
 
しかし、SiC化の反応をモニターするためには2000℃まで短時間に昇温可能な熱天秤(TGA)が必要だが市販品に無かったので新たに自分で製作しなければいけないという壁にぶつかった。この壁は2000万円かけて熱天秤を手作りして乗り越えたが、自作した高性能超高温熱天秤が完成して、美しいデータを見た時には感動した。
 
解析結果は、当方の学位論文を読んでいただきたいが、SiCの前駆体ポリマーの効果がそのまま現れているきれいなデータである。ただし、これは捏造ではない。熱天秤の生データも載せているので見ていただきたい。わずかであるが、プログラムで取りきれなかったデジタルノイズがでている。
 
アナログデータを出力し、チャートから解析する方法もあったが、速度論の解析をアナログチャートを使って人為的に行うとやや恣意的な解析も可能となるので、すべてコンピューターに解析をやらせた。すなわち、科学的研究では真理こそ真摯に追及すべきゴールなので、客観的なデータ処理(注2)に徹底して拘った。おかげで、C言語のプログラミングスキルを身に着けることができた。当時気軽に使えたN88BASICは計算精度とその処理速度に問題があったので、処理速度の遅いパソコンで計測制御を行うためには、アッセンブラーかC言語をどうしても学ぶ必要があった。
 
(注1)電子顕微鏡では、フェノール樹脂とポリエチルシリケートのコポリマー及びそれから製造された炭化物についてシリカが粒子として析出していないことを確認していた。また、SiOはフッ酸で除去できるので、表面をケミカルエッチングした状態も観察していた。しかし、電子顕微鏡観察という手法は、極めて狭い領域観察であり、科学的な証明に用いることができても、実際の生産になると、大きな領域での均一性が問題になる。そのためマクロ的な均一性をどのように確認するのかという問題が発生する。TGAの実験は、数百マイクログラムまでの量の均一性を評価したり、加熱条件の違いで反応がどのように変化するのか確認できた。すなわち品質管理に必要な装置であったが、SiC化の反応炉設計のためにも重要な設備だった。
(注2)STAP細胞の騒動では、論文データの扱いについてどこまで捏造なのか議論になった。40年前の学位論文を見ていただければ分かるが、その時の議論を当時の学位論文に適用したら、捏造と言われても仕方がない論文は多数存在する。ちなみに当初ゴム会社が国立T大に多額の奨学金をお支払いしていたので学位の面倒を見ていただいたが、お手本のためにみた学位論文にはひどいものがいくつか存在した。生チャートをそのまま載せるのではなく、写し取ったグラフを載せているのだが、本来存在すべきシグナルが何故か存在しないチャートを平気で載せている論文もあった。たまたまリン系の化合物について多数分析していたので気がついたのだが、それでも許された時代があったのだ。また許された、というよりもチャートから写しとって掲載するように指導もされた。ご指導されたとおり論文に掲載したが、今のようなデジタル処理ができない時代には、何でもありの時代だった。研究者が善人ばかりの時代の良き思い出であるが、疑問に感じていたので、データ収集から解析まですべてプログラムで処理する方法を選んだ。データ処理をどこまで凝るのかというのは、本質とのバランスだろうが、現代は40年前よりもデータ処理に関しては厳しく管理すべき時代と思う。
(注3)学位は子供の頃からの目標と夢であり、学位論文にはこだわりがあった。以前の活動報告に少し書いたが、わけあって国立T大で学位を辞退することになった。英文で学位は完成していたのだが、中部大学では、英文ではコピペを見落とすので全部日本語で書くように指導された。しかし驚いたのは、細部に至り厳しいチェックを何度も受けたことだ。見本でみた学位論文の品質から十分にそのレベルを満たしていた、と思った論文に容赦なく赤ペンが入り、書き直しを何度もすることになった。だから、STAP細胞の騒動で露見した学位論文の問題にはびっくりするとともに、学位とは何か、という問題を改めて深く考えさせられた。学位とは指導者にとっても責任を問われる作業なのだが、それを正しく理解していない先生がおられるのだろう。価値ある学位とは、授与する側とされる側が科学の真理に対し、誠実で真摯に対応したかどうかで決まる、と思っている。国立T大で受けた指導時間と中部大学で受けた指導時間では圧倒的に後者が長かったが、審査料8万円という金額で恐縮した。
  

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2016.01/10 高純度SiCの発明プロセス(8)

フェノール樹脂天井材の開発は、一年という短期決戦だったので、物量の投入スケールはものすごかった。ポリエチルシリケートの残量は、100kg程度であったが、フェノール樹脂については、世界中のフェノール樹脂メーカーから集められたあらゆる種類のサンプルがあった。恐らく廃棄処理したフェノール樹脂は1t以上だったように記憶している。酸触媒も30種類以上あり、すべてゲル化させるためには、2日ほどかかりそうだったので、徹夜覚悟で実験を行った。
 
試行錯誤の実験で成功するためには、考えられる実験条件をすべて実施することである。そしてそれを効率的に行う手段として、ラテン方格を用いる実験計画法があった。フェノール樹脂はすべてレゾールタイプであり、分子量で3グループに分けることができた。また、酸触媒もグループ分けができた。ポリエチルシリケートについては、低分子量のテトラエチルシリケートなども検討する必要があったが、ごみ処理のために購入することはできなかった。
 
結局材料と時間の都合で、すべての実験条件を実施することはできなかったが、フェノール樹脂とポリエチルシリケートと酸触媒を混合した時に透明な液体ができる条件をいくつか見出した。残る問題はゲル化だったが、このゲル化条件について最適条件をこの日見つけることができなかった。しかし、天井材の開発を行っていた時には、フェノール樹脂とポリエチルシリケートを混合した時に透明になる条件を見出すことができなかったので、大きな収穫だった。
 
8組ほど透明になった液体をドラフトに保管し、他はすべて廃棄処理場へ運んだ。翌日ドラフトに保管したサンプルを観察したところ、二つほど半透明のままゲル化していたサンプルがあり、実験の成功を確信した。後はゲル化時間を短くするだけである。
 
フェノール樹脂にはメチロール基があり、ポリエチルシリケートは酸触媒が存在するとフェノール樹脂に含まれているわずかな水分で加水分解し、シラノールを生成する。メチロール基とシラノール基あるいはフェノール性水酸基とシラノール基は反応する可能性があり、わずかな形式知からリアクティブブレンドの成功可能性は存在した。
 
しかし、ポリエチルシリケートとフェノール樹脂のχは大きいので、両者の反応前に相分離する問題があった。しかし混合撹拌しているときに両者の反応活性点がうまく衝突すれば反応し相分離しなくなる。ただそのような都合の良い条件があるという形式知が存在しなかった。
 
都合の良い条件について考察するための仮説については幾つか考えることは可能である。科学的に実験を行う場合には、そのいくつかの仮説を確認しながら進めることになるが、酸触媒の量とか反応温度とか撹拌条件とか考えなければいけない因子が多すぎる。仮説を確認しながら進めると言っても、結局は、ある特定の条件における確認作業になってしまう。形式知が少ない時の科学的な仮説に基づく実験の危うい部分である。
 
フェノール樹脂を廃棄するために行った実験の結果から、天井材開発で得られたデータを見直してみると、1年前は最適条件からかなり外れたところで検討していたことがわかった。ポリエチルシリケートが加水分解してシリカが析出する条件と、ポリエチルシリケートとフェノール樹脂とのコポリマーが生成し透明な液体となる条件とは大きく異なっていた。これは実験データを蓄積しなければわからないことで、科学的に見出すためには、多くの形式知を新たに蓄積する必要があった。
 
(補足)iPS細胞を作るために必要な4つの遺伝子を発見した山中博士も、遺伝子の全てを一つ一つ確認していてはこちらの命がもたない、と言って非科学的方法で実験を進めている。なんでもかんでも科学的に進めなければいけない、という硬直した考え方ではイノベーションを起こせない。しかし、非科学的方法で昔ながらの試行錯誤では、科学誕生以前の技術の進歩と同じ速度になってしまう。効率的な非科学的方法というものが存在し、弊社はその指導を行っています。すでに中国で実績が出ており、アジャイル開発も新材料の市場投入で成功させています。

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