1975年に東北大矢島教授により、ジメチルポリシロキサンによるSiC繊維の発明がなされている。そしてこれがパイロットプラントで試作されたのが1978年である。
その3年後の1981年にゴム会社で、フェノール樹脂とポリエチルシリケートとをリアクティブブレンドで均一なポリマーアロイとする技術(高純度SiCの前駆体技術)が開発されている。
この技術を実用化するために、当時セラミックスフィーバーを背景にゴム会社の研究所で高純度SiC事業化企画を提案したがボツとなった。
その後故服部社長がゴム会社のCIを進めるにあたり、「電池とメカトロニクス、ファインセラミックス」を3本の柱とする多角化戦略を発表され、50周年記念論文の募集があった。
この記念論文に高分子技術でファインセラミックス事業に進出するシナリオ(注)で応募したが佳作にも入らなかった。しかし、これがきっかけとなり、1983年4月に無機材質研究所へ留学している。
この年に昇進試験があり、「推進したい新事業についてA4用紙にまとめよ」という問題に、「高純度SiCの半導体治工具とウェハー事業」を解答として提出し落ちている。
しかし、この昇進試験に落ちた知らせが、1983年10月1日に無機材質研究所所長室にかかってきて、T所長の許可を得たI総合研究官から「1週間だけ自由に実験できる許可を与えるので、試験答案に書いた内容を実現してみなさい」とありがたい言葉を頂いた。
すでに前駆体技術を開発していたので、この時から4日後に高純度SiCの製造プロセスの元になる研究データを揃えることができた。初めての実験では真黄色のSiC粉体が得られ、無機材質研究所でちょっとした騒動になっている。
その後、この時合成された高純度SiCの粉体技術について服部社長から2億4千万円の先行投資とセラミックス研究所の建設が決定され、30年間ゴム会社で事業が続くことになる。
先日SP値に関するセミナーがあった。フェノール樹脂とポリエチルシリケートはSP値が大きく異なるがリアクティブブレンドにより、それを均一にブレンドすることができる。この体験談を解説した。当方の学位論文にもなっている技術であるが、その内容を講義するとなぜか気分が若返る。
ゴム会社で何度も却下された企画が事業として30年続き、今は愛知県にある(株)MARUWAで事業継承されている。
若い人に伝えたい。パワハラはじめ企業内環境は40年以上前に比べれば比較にならないぐらいよくなっている。他人のFDを壊して仕事を妨害したり陰湿ないじめなど少なくなった。
たとえ上司に否定されても事業の大きな夢があるならばそれを持ち続けてチャンスが生まれるまで我慢する胆力と日々の学びを行い強みを磨けば必ず夢を実現できる(夢を実現できてもひどい目に会うかもしれないが、夢を実現できた成功体験とそれにより広がる視界は、本当に努力しないと得られない。)。
本来のあるべき姿は、無機材質研究所で出会ったような人々が上司や同僚である組織だが、バブル崩壊後停滞した日本企業から噴き出した様々な問題や、昨今の各種ハラスメントを排除しようという社会動向から問題のある企業がまだ多いのだろう。
(注)SiCが半導体物質であることが研究段階だった時代で、高純度SiCを低価格で量産できる事業が大きなニーズとなっていた時代である。レーリー法でアチソン法によるSiCを高純度化する手法が知られていたが、何度も繰り返す必要があった。当方の考案した前駆体法は単位操作一回で高純度化できた。当時オール電化がブームとなっており、電気自動車やエンジンで発電しモーターで走るハイブリッド車が話題になっていた。ハイブリッド車についてはエネルギー保存則から、日産のePower方式では実用性が無いとされた時代である。そこでトヨタプリウスが「20世紀に間に合いました」と登場している。インバーターとして用いるパワー半導体のニーズが急激に高まった。Siウェファーでは冷却技術にコストがかかったので現在のSiCウェハーの低価格化が期待されていた。シナリオではエンジニアリングセラミックスとして半導体治工具事業を行い、ウェハー開発を行う壮大な話を展開しており、現実的ではないという理由で評価されなかったのだろう。バイオテクノロジーによる豚と牛の賭け合わせで作った量産性があり旨い肉やそれを食べながらマリンスポーツを行う論文が1席に選ばれている。セラミックスフィーバーと同時にバイオテクノロジーも注目が集まり始めた時代で、10年後には第一次藻類ブームが起きている。
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自動車のEV化のスピードが速くなった。自動車エンジンがモーターに変化するので事業が消えてしまう産業界は大変である。例えばエンジンマウントは1980年前後から大きく進化し、高級車には電子デバイス化された製品が搭載されている。
電気粘性流体封入マウントも研究されたがコストの問題で不採用となり、電気粘性流体そのものも事業として育っていない。
エンジンを支える部品が電子デバイスに進化した原因は、高速走行時とアイドリング時でエンジンから発生する振動周波数が異なるためで、ゴム単体ではその性能が不満足だったからである。
すなわち、エンジンをただ支える部品でもエンジンにデバイスとしてエンジンに合わせた設計が必要だった。動力がモーターに代わることで複雑な振動モードの問題が無くなり、これまでの高性能マウントは不要となった。
そのため早々と防振ゴム事業を売却した企業も現れた。ここで不思議に思うのは、エンジンマウントを設計できるだけの技術を有していたならそれを他の事業なりに発展できないのか、という疑問である。
また、EV車の開発は、現在のところ従来の自動車の概念で進められているが、コストダウンや機能の設計見直しで防振技術あるいは防振デバイスが重要になる可能性が考えられる。
自動車の機能として乗り心地は重要であり、自動車の足回りの設計は未だに高い技術が要求される。自動車エンジンが無くなることで自動車自身の発生する振動が無くなった、と思われているが、これは従来の設計においての現象である。
また、人間の欲求には限界が無く、現在の技術で作られたEVが普及した後、より乗り心地の良いEVを求める可能性が高い。現在はエンジン自動車が比較対象となっているが、すべての自動車がEV化されたときには、EVが比較になる。
動的商品において、音や振動を0とする技術は未完成である。40年前と違って未来技術を研究する組織を廃止した企業は多いが、再度自動車の未来を研究する組織を復活する必要がある。弊社にご相談ください。
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反応速度論では、速度論という学問の目標を明確に反応機構の推定が目的である、と説明している教科書がある。そこでは、衝突因子とアーレニウス式の関係を説明しつつ概念の拡張をする場合の注意を指摘している。
蛇足になるが、アーレニウス式による寿命予測に限らず高分子科学では、科学の厳密な形式知と呼べない知が形式知として扱われたりしている。
例えば結晶成長の速度論においてアブラミ式ですべてを説明していたり、フローリー・ハギンズ理論のχをはじめとした研究論文の中に、高分子材料のプロセシングを開発する技術者の自由な発想を妨げる記述がみられたりする。
アーレニウス式による寿命予測では、よりどころとなる速度論という学問のこのような問題だけでなく、その体系の類似性から式を展開して寿命予測法として使われている問題がある。
それが実際の製品寿命をうまく説明できた実績があったので、現在寿命予測法として広く使われるようになった。
ゆえにアーレニウス式で寿命予測を行う場合には、高分子材料あるいは製品の機能の劣化が予測式に従い進行しているのか市場で調査する活動が欠かせない。
市場における劣化進行速度が実験室で予想された速度式に従っていることが確認されて初めて寿命予測式を使用することができる。
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材料力学は、一応完成した体系として大学4年間に学ぶ。しかし、その一部高分子のレオロジーについては、20世紀末にダッシュポットとバネのモデルの体系が崩壊している。
そして、分子一本から積み上げその体系を見直す研究が現在も行われている。OCTAは高分子物理を可視化できる優れたシミュレーターである。
高分子物理については今も発展途上である。ゆえにその体系が必要となる混練の体系も未完成と言わざるを得ないが、分配混合と分散混合という粉体の混合技術の体系が混練の体系として一般的に用いられている。
不思議なのは、当方がゴム会社に入社した時にはこの体系は無く、ダッシュポットとバネのモデルを使ったレオロジーの視点で学習している。もっともこれはOJTの中で毎日午前中3時間の講義を3か月指導された体系であるが。
今一般的に用いられている分散混合と分配混合による体系では、混練を単純な混合と分散技術としてとらえるときには便利でわかりやすい。
しかし、これではゴムや樹脂の目標物性をデザインしようとする時に応用できない。ゴムや樹脂では練りの要素が物性に現れるのでどうしても混練プロセスのレオロジーによる理解が必要になる。
少なくともロール混練では、ロール間距離の考え方や返しの技などが何故必要なのかを理解するためにレオロジーの視点がどうしても必要になる。
また、バンバリーでは投入順序により出来上がるコンパウンドの状態が変化する。これも分散混合や分配混合の視点から合理的な説明ができない。
さらに、カオス混合を実現したいと思ったときにどのようにプロセス設計すべきか分配混合や分散混合からアイデアをひねり出すことができない問題がある。
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加硫ゴムと樹脂では耐久性が異なるような感覚を持っている技術者は多い。脆性破壊する樹脂が多いためにそのような感覚になるのだろう。
また、当方は14年間気にいった車に乗り続けたが、その間にタイヤを一度も交換しなかった。5万kmも乗らなかったのでトレッドも摩耗しなかったためだが、ゴムの耐久性の高さに驚いた。似たような体験をした人もいるかもしれないが、感覚的にゴムの耐久性は高い。
しかし、ゴムと樹脂の期待されている機能に着眼すると、耐久性が材料の機能により異なる点にあることに気がつく。言い換えれば、単純にゴムと樹脂の耐久性の差を論じることはできない。
このことに気がついていないと、時間温度換算則を活用した耐久性試験を実験室で行い、そこで得られた耐久寿命を鵜呑みにして失敗するリスクが高い。
ゴムでも信頼性の低い材料設計を行えば耐久性は低くなり、樹脂でも信頼性の高い設計を行えば耐久性は高くなる。すなわち、材料の耐久性は、機能のばらつきの分布が故障分布に重ならないように安全率高く設計されているかどうかに依存する。
タグチメソッドはそれを実現できる手法の一つだが、一般には信頼性工学を導入して材料設計を行えば耐久性の高い材料を開発可能である。
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人生の思い出と問われて夫婦の出会いの感動や我が子の誕生を答える日本人は過去において少なかったが、最近のTVのインタビューでは増えてきた。ワークライフバランスの影響かもしれない。
当方はゴム会社における新事業立ち上げ時に同僚に妨害された思い出がトラウマとなるぐらいに強烈に残っている。また、転職後も業務引継ぎのために転職先の業務終了後1年尽力したにもかかわらず、「もうゴム会社へ来るな」という内容の手紙まで頂いたので散々な思い出である。
手紙は理不尽な扱いを受けた証拠として保管してある。このほかにもこの思い出には幾つか証拠を保管している。転職条件としてセラミックスのキャリアを捨てるように言われ、とにかく技術者生命を賭けた壮絶な思い出となった。
その事業は30年近くゴム会社で継続後、愛知県のセラミックス企業へ売却されたのだが、当方への妨害は企業内部で隠蔽化され写真会社へ転職している。
この新事業立ち上げ業務時における転職の出来事は精神的に辛かったが、エンジンマウント用樹脂補強ゴムの開発は、天才的な指導社員との出会いや、ゴム会社で初めて担当した研究テーマという理由だけでなく、その成果が実用化されたこともあり、これとは対照的な楽しい思い出である。
ところがこの仕事の成果が原因で、転職のきっかけとなった電気粘性流体を担当しているのだから皮肉である。電気粘性流体とは、電気のONとOFFにより、流体から固体までそのレオロジーを制御できる流体である。
電気粘性流体の開発は、故服部社長の時代に電池とメカトロニクス、ファインセラミックスを新事業の3本の柱とする方針が出されたときにスタートしている。すなわち当方が前駆体高分子を用いる高純度SiCの企画を提案した時と同時期である。
高純度SiCの事業は社長承認を経て住友金属工業とのJVとして起業されたが、電気粘性流体はその耐久性について問題解決できず、基礎研究段階にとどまり研究所内で風前の灯状態だった。
ところがファイアーストーン社の買収でシナジーを期待できるとして、耐久性について大型研究プロジェクトが実施された。そこでは、界面活性剤では問題解決できないという否定証明の研究が推進され、添加剤が入っていない電気粘性流体のケースとなるゴムを開発する、という企画が新たに提案された。
ゴムについて少しご存知の方ならば、これがいかに馬鹿げたテーマであり、実現できない企画であることをすぐにご理解いただけると思う。
しかし新しくリーダーとなった研究開発本部長はこのテーマを認めただけでなく、この企画のもとになった否定証明の報告書を科学の研究として秀逸である、とほめあげたのである。そして、研究所内でゴムに詳しい研究者として小生を指名した。
そこで指名された当方は、添加剤の何も入っていないゴムなど実用性は無いから1週間考える時間を欲しい、と申し出て、一晩徹夜して電気粘性流体の耐久性問題を解決している。
そもそも当方に白羽の矢が立った理由は、ゴム会社の研究所でありながら、ゴムについて詳しい研究者が当方以外にいなかっただけでなく、材料の耐久性問題について否定証明を推進するようなレベルまで研究者の技術力が落ちていたからである。
当方にとって不運だったのは本部長がかつて防振ゴムなども担当しており、樹脂補強ゴムの成果をご存じだったことだ。運が悪いと諦めた当方は、電気粘性流体の耐久性問題を解決しただけでなく、実用的な電気粘性流体用3種の粉体を開発している。そして一気に実用的な電気粘性流体を完成させた。
この電気粘性流体はアクティブサスやアクティブエンジンマウントなどに採用されそれらデバイスが試作されたのだが、コストの問題があり、当方が転職して数年間事業として行われたこのテーマは消滅している。
ゴム会社では自ら企画した高純度SiCを用いた半導体治工具事業の業務が職歴として長く、これで学位も取得している(注)が、防振ゴム材料の研究開発で技術者としてスタートし、最後は電子制御の防振ゴムに用いる電気粘性流体が最後の仕事となったのは皮肉である。
高純度SiCの研究については学位としてまとめたが、ゴム技術者としてのまとめは、2年ほど前にゴムタイムズ社から混練の書籍を出版している。弊社にご注文いただければ送料消費税サービスで4800円お振込みいただきますと郵送いたします。学位論文は100冊印刷したものが売り切れましたが、雑誌「材料技術」に2か月間の連載で20年ほど前に発表されました。ご興味のあるかたはお問い合わせください。
(注)音と振動の研究者だった本部長は、経営の視点で研究所を運営していなかったが、このリーダーの前任者は、優れた研究所経営を行っている。その結果、住友金属工業とのJVとして高純度SiCの事業を立ち上げることができ、さらには当方の学位にもつながり、人材育成と事業立ち上げという経営者として理想のマネジメントを行っていたが、厳しく事業を求められたので研究所メンバーには評判が悪かった。しかしリーダー交代後、研究所から30年続くような事業が誕生していないことから、研究所リーダーのマネジメントには事業を意識した厳しさが求められるのだろうと思う。ドラッカーも「それが何になるか、常に考えろ」と述べている。とかく研究所に所属していると、研究のための研究を研究者はしがちである。電気粘性流体の否定証明はその典型例である。面白いのは「科学的にできない」と証明されたにもかかわらず、機能を技術で実現できたことである。科学と技術は異なる行為なのである。
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射出成形体の強度は、C-C結合の強度から計算される値よりも低い。ゆえに引張試験を行ったときの破断強度が他の要因により低くなっていることを想像できる。
欠陥がその一つの要因だが、欠陥以外に様々な歪や巨大化した球晶も強度を低める要因だ。例えばPPSを200℃で6時間熱処理すると強度は低下するが、これは球晶が成長したためである。
弊社で開発したPH01という添加剤を添加してやると球晶の成長を抑制するので強度の低下を抑えることができる。また弾性率は下がるが、カオス混合により6ナイロンを10%程度相溶させても同様の効果が得られる。
また、シャルピー衝撃試験も改善される。この高分子の結晶成長で強度が低下する現象はあまり知られていないのか21世紀でもポリ乳酸の劣化問題について球晶の巨大化であると考察した論文があった。
結晶成長はX線の小角散乱を行えばその成長をモニターできるので強度低下との関係を論じやすいが、樹脂内部に生じた歪については研究が難しくなることがある。
この場合は電子顕微鏡でうまく破断面の写真を撮る技術が必要になる。また、どのような電子顕微鏡を使用するのか選択眼とその顕微鏡に適したサンプル作成技術が必要になる。
射出成形体の強度を測定するだけであれば簡単に見える作業だが、そのデータの背景を詳しく知ろうと思うと途端に難しくなる。
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昨日は怪しいボイドの話を書いたが、結晶性樹脂の結晶成長により力学物性が低下する研究は多い。例えば環境対応樹脂のポリ乳酸は、加熱して耐久加速試験を行うと球晶が成長し、力学物性は劣化する。
すなわち、結晶成長により靭性が低下し強度が低下する。このような強度低下でも劣化したと判定される。PPSも同様で、例えば200℃で放置すると2-3時間で強度低下する。
PPSについて弊社が開発したPH01という添加剤を添加するとこれを防止できる。PH01以外にもカオス混合を用いれば対策手段は増え、用途に応じてこの10年材料開発を進めてきた。
興味深いのは、このような結晶成長抑制剤は、ある程度の量を添加しないと効果が発揮されないところである。結晶化促進剤は少量でも効果が出るが、結晶成長の抑制のためには5%以上の添加が必要である。
5%以上の添加となると、添加剤による可塑化効果が出始めるので、用途に応じて手段を変えることになる。結晶性樹脂の耐久劣化防止の技術を難しく感じるのは球晶やボイドの成長により力学物性に影響を与えているときである。
高分子の自動酸化や光劣化の研究データは多く発表されているが、このような球晶の成長やボイドが力学物性にどのような影響を与えるのかという体系的な研究は少ない。
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射出成形体にボイド(穴)が存在することをご存知ない方が多い。射出成形条件を最適化し0にできるかどうか知らないが、巣の入ったペレットを使ったりしたときに多数発生することがある。それ以外でもナノオーダーのボイドは0にできないのでは、と思っている。
この10年機会があれば射出成形体の破断面を観察し、このようなことを考えている。ナノレベルのボイドならば力学物性に影響しないが、このボイドが成長する可能性が出てくると、ボイドに対する考え方が変わってくる。
20年近く前にレンズ材料でこの現象に遭遇し、この現象がレンズ機能の耐久性と相関したので特許を出願している。光学的にも影響のないボイドなのだが、アニールしてやるとこれが大きく成長する。
科学的な研究を行っていないので空想のような話になるが、高分子材料には自由体積が存在する。もしアニール前後で自由体積の変化があればこのようなボイドの成長を理解できる。
おもしろいのはこのボイド観察を行った樹脂のDSC測定で得られたTg部分のエンタルピーを比較してやると、ボイドの変化と相関が出たのだ。
このような面白い現象が話題にならない点が不思議だが、その気にならなければ見つからない現象なのでご存知ない方が多いのかもしれない。
また、ボイドの成長の仕方は樹脂により異なる。もしこのようなボイドが経時で力学物性に影響を与えるほどの欠陥まで成長する可能性があるならば、射出成形体の劣化メカニズムの一つとしてとらえる必要が出てくる。
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高分子の成形体は金属のそれよりも信頼性が低い。結構おおざっぱな表現だが、品質管理の視点から多くの技術者が持っている印象だと思う。
それではセラミックスと比較した時の信頼性は、どちらが高いか、という問題は回答が難しい。セラミックスの成形体技術には金属並みの信頼性を持たせる技術が存在するからだ。
電気・電子特性に限定するとセラミックスの方が信頼性が高い。ゆえに有機半導体が一時期ブームになったが、有機ELなど一部の製品化に限定されている。
無機ELも存在するが駆動方式の差異から表示装置用素子として扱いにくく、扱いやすい有機ELが普及したが、電球に関しては、寿命の長い無機材料のLED電球が普及している。
電球を有機ELで作ろうとした会社があったが、そもそも企画段階で寿命が短いと分かっていても事業化したので苦労している。
当たり前の話だが有機材料と無機材料とを比較した時に熱的安定性が大きく異なる。空気中で有機材料はどう頑張っても270℃を越えて安定でいることができない。
人間なんて45℃以上の熱湯さえも我慢できない。一世を風靡した熱湯コマーシャルは、皆その結果が分かっている馬鹿な試みを真面目にチャレンジしていたので注目された。
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