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2025.08/03 関経連会長発言の問題

「郷に入っては郷に従え」-。関西経済連合会の松本正義会長(住友電気工業会長)(80)の発言が波紋を広げている。中国でスパイ行為の罪に問われた日本人社員が実刑判決を受けたことに端を発する。


発言に先立つ同16日には、中国でスパイ活動をしたとしてアステラス製薬の日本人男性社員が北京の裁判所で実刑判決を受けていた。


この問題の記事の多くが中国社会の実情を知らずに書かれている。まず、中国で怪しいことは何事もやってはならない、という原則を忘れてはいけない。おそらく、アステラス製薬の社員は何らかの怪しいことをやった可能性がある。


知らずにやってもアウトである。また、空港に着いたら、そこからすでに行動がチェックされていることを知らなければならない。空港のトイレにもカメラがある。


当方はコロナ禍以前の10年以上中国で仕事をしてきたが、日本で生活するよりも気を使っていた。また、戸外で写真を撮るときには、必ず中国公安に確認をとっていた。


ゆえに戸外の写真には必ず中国人1名以上は入っている写真ばかりである。日本人だけを戸外で撮ることは無い。そのくらい気を使っていても問題が起きる。


たまたま二週間中国で仕事をしたときに、飛行機の時間が1時間遅れ中国滞在時間が1時間伸びて、出国審査で捕まった。知人の中国人に電話をかけて問題解決できたのだが、金銭を要求された。


中国ではこのようなことは日常である。これを賄賂だ、なんだと騒いではいけないのである。騙されたつもりで500元支払った。


支払う必要のないお金でも制服を着ている人や、眉間に傷のある人には、さっさと財布の中身を見せて、お金を支払うのが身のためである。ゆえに当方はいつも財布を3つ持って中国へ出張している。


こうしたことに文句を言いたくなったり、腹を立てたりするような人は中国で仕事はできない。「郷に入ったら郷に従え」とは、そのような意味である。


中国社会のこのような風習を知っておれば、問題は起きない。10年前は日式カラオケが全盛だったが、今虹橋近くは壊滅状態なので夜遊びには気をつけたい。ぼったくりの店が増えており、遊びに行くときには中国人と行くようにしたい。


中国の夜は、安全な場所は日本よりも健全であるので、商談には向いている。不健全なところは日本よりもリスクが高いことを知っておくことが賢明である。2010年前後と2016年以降では大きく変わったので、昔の武勇伝を信用しない方が安全である。

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2025.08/02 最高気温39℃

chatGPTに1970年の東京の最高気温を質問すると8月29日に33.5℃が記録されていたという。当方が高校生の時に夏の合宿は、一日中高校の校庭で行われたが、水道水で十分だった。


しかし、今の東京の夏休みの日中の温度では、一日中校庭でテニスをしていたら死んでしまうのではないか。熱中症どころの騒ぎではない。サウナの中で運動するようなものである。


地球の平均気温が4℃上がったら、などと話題になっていた時代が懐かしい。すでに日本は平均気温で50年前より4℃近く上昇し、最高気温については6℃以上も上がったのだ。


子供の頃の猛暑日には、人間の体温近くになるのを心配していたが、今は人間の体温など簡単に超える猛暑日が連日続いている。


二酸化炭素の影響である可能性が科学的に示されているので、増加防止ではなく、削減を目指さなければいけない。そのための研究も行われているようだが、効率的な方法は植物利用である。


ミドリムシという藻があるが、この繁殖力はすごい。これを東京のビルの屋上で栽培してみてはどうだろうか。きれいな水で栽培すれば、パラミロンを取り出すことができる。


パラミロンは酢酸があれば簡単にミドリムシから取り出すことが可能なので、料理のように個人がミドリムシを食べれば健康増進につながる。ユーグレナを買わなくても良い。

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2025.08/01 定着ローラの品質問題

8月1日になると思い出すのは、複合プリンターの定着ローラで発生した品質問題である。中間転写ベルトの歩留まり向上だけを考えて、2005年に豊川市にある生産技術センターへ単身赴任したら、この問題で揉めていた。


研究開発段階でゴムの耐久寿命については、某国立大学の著名な先生のご指導を受けたアーレニウス法で科学的に完璧に機械本体の寿命よりはるかに永い、との結果を得ていた。その結果を否定する1か月未満という寿命しかない定着ローラが量産試作で発見されたのである。


当方が赴任した時には、量産試作が始まって1か月の段階であったが、市場から回収された20本の不良ローラが山積みになっていた。


赴任したばかりで、MFPの構造すら理解していないのに、原因を尋ねられても普通の人なら困ったと思われる。ただオブジェクト指向を身に着けていたので、目の前のオブジェクトを簡単に説明してみた。


「これは、ゴムの動的破壊が短時間に進行した結果であり、全体の設計に問題があるのか、ゴム材料に問題があるのか、分けて考えなければならないが、発生率が10%未満なので、ゴム材料起因と思われる。」


と、あたり障りのない回答をしたところ、すぐに福建へ飛んでください、となった。中国の福建にあるベンダーの工場で生産されたものらしく、工程の異常を見てきてください、ということになった。


1時間後総務の女性からパスポートを持ってきてください、と連絡がきた。中国出張など考えていなかったのでパスポートなど持っていなかった。日米写真学会の招待講演でカナダに行ったときにパスポートを作っていたが4年前であり、少し心配になった。


品質保証部長から明日東京出張してパスポート持ってきてください、と連絡が入り、単身赴任したばかりなのに、東京へ戻ることになった。なんやかやと訳の分からないまま、周りに振り回されて、気がついたら、福建の日式カラオケで歌っていた。


初日にベンダーの接待でカラオケとは、と疑問に感じたが、とにかく一息つけた時間だった。飛行機の中では、開発担当の一人から、科学的に耐久寿命を行った経緯をべらべら説明されたので、考える時間も無かった。


1曲歌って、定着ローラの製造工程について何も知らないことに気がついた。そもそも開発担当は、大学の先生から学んだ知識を当方に説明してくれたのだが、製造工程については何も教えてくれなかった。


オブジェクト指向の観点からは、成形オブジェクトと加硫工程オブジェクトが、その振る舞いから定着ローラの仕上がりに影響を与えることぐらいが想像できる程度だった。


福建に到着して翌日工程監査のやり直しを行ったが、ベンダーの説明を聞く前に、1時間ほど成形と加硫工程を見せてもらった。そして、二つのオブジェクトのふるまいに影響を与える3つの因子を現場で見つけた。


この3つの因子のうち一つは、慣れてしまえば、疑問に思わないが、初めて見た場合には不思議な因子である。現場で質問したところ当たり前の説明がなされたが、その後これが最も大きな因子であることが分かった。


オブジェクト指向の良いところは、各オブジェクトについて全体との整合性を捉えることができる点である。科学的に一つ一つの因子に問題が無くても、それらが絡み合った結果、異常を起こすことがある。


工程問題には非科学的であるが、オブジェクト指向で頭の中で各オブジェクトのふるまいを検証する思考実験が有効である。E・S・ファーガソンの言葉では心眼である。

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2025.07/31 技術者の仕事のやり方(1)

当方の体験した実話をもとに、仕事のやり方を書いてみたい。


まず、転職の原因となった、電気粘性流体の改良技術を担当することになった時の仕事のやり方を公開したい。


当時、高純度SiC半導体治工具事業を一人で担当し、住友金属工業とのJVを立ち上げて、大変忙しい時に、本部長が交代した。新しいI本部長は、6年間研究が続けられても実用化の目途が立っていない電気粘性流体の仕事について、当方に加硫剤も添加剤も入っていないゴムを開発するように命じてきた。


当方に部下が増えるわけではなく、住友金属工業とのJVをやりながらの担当である。すでに過重労働状態でサービス残業をしていたので担当は不可能だった。


プロジェクトリーダーが、ゴムの配合アイデアを出すだけで良い、と言ってきたので、無茶苦茶なテーマなので一晩考えさせてほしい、と答えている。


当時ファイアーストーンの応援のため、ゴムの研究者が研究所に残っていなかったので、当方が一番ゴムについて詳しい研究者という立場になっていた。


一晩考えるにあたり、耐久試験で増粘した電気粘性流体を入手した。当時の電気粘性流体は、耐久促進試験で1時間も持たなかったので、有効な界面活性剤を見つけるには時間がかからなかった。


そこで、「あらゆるHLB値の界面活性剤を用いても、耐久試験を通過できない」という否定証明の研究が、多数の界面活性剤を取り寄せ1年かけて行われたのである。


この科学的に完璧な研究成果をもとに、I本部長は無茶苦茶なテーマ設定をしただけでなく、前本部長が立ち上げたJVをつぶそうとしてきたのだ。


タイヤ事業で世界トップメーカーでありながら、なぜ新事業が育たないのかは、伝統的にこのようなマネジメントが行われている、と言っていた人がいるが、まさにそれを体験するような状況だった。


なんとか新事業をつぶさず、電気粘性流体の仕事も推進することができないか考え、オブジェクト指向とデータサイエンスで乗り切ることを考えた。


そこで界面活性剤のカタログデータを主成分分析したところ、5種類ほど他の界面活性剤と異なる集団が見つかっり、それを用いて耐久試験を朝まで行ったところ、増粘せず、たった一晩で有効性が確認された。

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2025.07/30 考える

探偵小説を推理しながら読んだり、日常の異変について原因を考えたりするときに、科学的思考法を誰もがとるに違いない。


科学教育が徹底している日本では、科学的思考法が標準で行われている。これは良いことだが、その結果、ブレーンストーミング等でアイデア出しを行っても皆同じアイデアしか出てこないというつまらない状態になった。


1980年代は、ロジカルシンキングやシステムシンキングなど科学に基づく思考法が流行した。しかし、こうした科学的思考法をセミナーで学んでも当たり前の解答しか出てこなければ、解決できない問題も増えてくる。


ドラッカーは、異なる見解にこそ耳を傾けよ、とか異なる見解を大切にせよとか、著書で自分と異なる見解の重要性を指摘している。


それでは、情報化時代の情報が溢れている状態で、異なる見解を生み出すにはどうしたらよいのか。それは、科学以外の思考法をする以外にない。


科学以外の思考法とは非科学的思考法となるのだが、人類は科学誕生以前にも思考して問題解決してきたので、現代の繁栄がある。


これを思う時、非科学的思考法にも目を向けるべきではないか。この10年マテリアルズインフォマティクスが流行しているが、これを新帰納法とごまかして科学的思考法の中で説明されている。


何故素直に非科学的思考となることを言わないのだろうか、イムレラカトシュの科学の方法を読めば、データマイニングによる知識の絞り出しは、科学的検証がおこなわれない限り非科学的知識である。

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2025.07/29 問題(2)

ドラッカーは問題を定義し、正しい問題を見つけることが大切だ、と指摘している。そして、正しい問題を見つけるだけで、目の前のトラブルは80%解決したようなものだと語っていた。


但し、彼は、問題の解決法まで示していない。あくまでも正しい問題を見つける方法について書籍で展開していた。それは、社会という抽象的なオブジェクトを具体化するためのものの見方である。


彼の書籍の普遍さはこの点にあり、資本主義社会が終焉し知識が経済に、そして社会にどのような影響を与えるのかを語っていた。ゆえに、彼の書は、問題解決法の書として読むことが可能で、そのような読み方をしたときにかなり厳しい言葉が引っかかるようになる。


例えば、「優秀な人がしばしば成果を出せないのは、正しい問題を解いていないからだ。」とか、「間違った問題の正しい答えとはどのような意味があるのか」など、心に刺さる言葉である。


さらに、「時々、優秀な人たちにより導き出された、間違った問題の正しい答えで社会に混乱を創り出している」と軽快である。

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2025.07/28 問題(1)

問題と課題とは異なる。概念として、課題は問題を構成する因子であり、問題が決まると課題が明確になる性質がある。それでは、問題とは何か。


これに明確な答えを示したのは、ドラッカーであり、1980年代には問題学なる学問が生まれている。ロジカルシンキングやシステムシンキング、TRIZなど問題の解法に関するセミナーが流行ったのは1980年代である。


問題の解法としてその基礎になっているのは論理学であり、どの問題解法セミナーでも論理学を基にしており、結局同じような内容を見方を変えて分かり易く教えようとしているものだった。


すなわち、論理学の成立とともに誕生した科学という哲学が分かりにくいので、それをセミナーで教えようと、指導しようと1980年代流行している。


しかし、科学教育が進化するとともに、教員も当方の世代にいた教員の質よりも科学教育という観点で高くなった。昔は、科学をよく理解していない義務教育課程の先生が多数いた。


いまは、生徒の裸の写真を撮影したり、それを科学の力で共有したりする道徳の無い先生がいても、科学を理解していない先生は皆無だ。むしろ科学を悪用したりするぐらいだから、科学教育という観点では50年前よりはよくなった。


その結果、1980年代人気だった科学的な問題解法を教えるセミナーに人が集まらなくなった。弊社は非科学的な問題解法を中心にそれを普及しようと立ち上げたのだが泣かず飛ばずである。


ところが、中国からお声がかかり、ナノポリスでこの非科学的方法を指導したら、人気となりコロナ禍前までいくつかのローカル企業を指導した。


今週高分子同友会でこの手法について勉強会が開催される。ただ与えられた時間が短いので教材をまとめなおすのに苦労した。

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2025.07/27 今回の日米交渉

「赤沢経済再生担当相(64)が26日、NHK「サタデーウオッチ9」(土曜後9・00)に生出演し、相互関税を巡る米国との交渉で合意文書をかわさなかった理由について説明した。重視したのはスピード感だという。「米国から取ったものは、関税率です。25%を15%に下げる。ここに“遊び”はまったくないので、取ったものをピン止めする必要も何もなくて、この合意を、大統領令を出して実現してもらうことだけが必要」と説明した。<以上スポニチ電子版>


赤沢経済再生担当相は、野党はじめ自民党内でも共同文書作成を言っているのはピント外れだとも指摘していた。とにかく1日でも早く関税を下げることが重要で共同文書はそのあとだとも。


このようなケースを当方は何度も経験してきた。スピード重視の仕事を目指せば当然犠牲にすべきところが出てくる。そこを外野は手伝って補おうとするのではなく、やんややんやと騒ぎ立てるのである。


当方の仕事で、3か月間でカオス混合のコンパウンド工場を立ち上げたときに、この手の輩が最初に騒いだ。


しかし、当方は退職する決断もできていたので、この手の輩含め、これが年内に成功しなかったら新製品を出せず5000億円の赤字になる、と書類をばらまいたら静かになった。


5000億円が正しい数値かどうか当方も自信はないが、皆赤字になればボーナスが下がることは知っている。さらに5000億円という数値は一部門の管理職の責任で済まないことも理解していた。


常識では1年半かかる仕事を3カ月でやり遂げたことの不思議さには誰も関心を示さなかった。当方が自腹で出張したり、休日を返上した成果でもある。そのような苦労はだれも関心を示さないのだ。

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2025.07/26 バンバリー

化学工学で低粘度の、例えば水の撹拌機の研究は、20世紀に完成しており、シミュレーション技術もかなり精度の高いソフトウェアが存在する。


ラテックスの合成や酸化第二スズゾルの開発では、アイデアを練るために活用し、その精度に驚いた。しかし、これがゴムなどの高粘度の撹拌機になると、途端に話が変わる。


未だ二軸混練機のシミュレーターで良いものが無い。しかし、スクリュー開発では十分に役立っていると聞くので、スクリュー技術を疑っている。


様々なニーディングディスクやローターが作られたが、バンバリー+ロールのプロセス以上の混練を進めるスクリューに出会ったことが無い。


ところで、このバンバリーについては誤解があり、密閉型ニーダーと混同されている方がいる。もっとも装置メーカーのカタログを見ていると、バンバリー型ニーダーなる装置が載っていたりするのでめまいがする。


バンバリー社が作った密閉型ニーダーをバンバリーと呼び、歴史的に唯一の装置である。進化した現代のニーダーとは、スクリュー形状やオイルシールの構造が異なる。


バンバリーでカーボン配合を混練すると軸受け部分からカーボンの微粒がガスのように吹き出たりする。これが、最新のニーダーでは起きない。


バンバリーの方が性能が悪いように見えるが、どのみち3分程度しか混練しないので、バンバリーで十分なのだ。すなわち、ゴムの混練で重要なのはロール混練で、コンパウンド性能はこのプロセスで決まる。

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2025.07/25 高分子の品質管理で重要なパラメータ

高分子成形体の品質管理で重要なパラメーターを一つあげよ、と言われたら密度と応えたい。


成形体の用途により、かわるだろう、というツッコミがあったとしても、密度は上位2番目までには入る。フィルムであれば、密度に代わりフィルムの厚みでも良いかもしれない。


とにかく密度は重要である。高分子の自由体積部分を制御することが難しい、というのがその理由だが、高分子の球晶さえもその密度がばらついていることを知ると、ますます密度の重要性が高まる。


物質の結晶は、物質の密度を決める重要な因子であるが、高分子の結晶は、アモルファス部分をその構造に含む球晶であり、密度が多少ばらつく。


ところが、高分子のアモルファス部分(非晶部分)には、部分自由体積と呼ばれる構造があり、その構造の量の影響を受けて密度がばらつく。


密度がばらつけば、密度と相関する弾性率や誘電率がばらつく。光磁気機能を要求される分野では、誘電率が関わるので、その機能が密度のばらつきに影響さればらつく。


弾性率は、引張強度や衝撃強度にも影響を与えるので、同様に密度のばらつきの影響を受ける。またケミカルアタックも注意深い実験を行うと密度依存性を見出すことができる。


さらには、物質の変形も密度の影響を受けるのだが、これが意外と知られていない。昨年燃料ポンプのエンペラーの不良でリコールを大量に出した会社があるが、その自動車会社のホームページには密度管理できていなかったことが書かれていた。


実は密度がこのように影響することは50年以上前から知られていたのだが、軽視する技術者が多かった。PETフィルムでも厚みを軽視していたりした状態を見て目が点になった。

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