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2023.07/23 今時の車(2)

昨日日産自動車のリコールの話題を書いたが、自動運転技術で感心するのは、ぶつからないように制御されている安心感である。ただし、この安心感は砂上の楼閣のようなものだ。


ソフトウェアーにバグがあった場合には、制御が危険な方向に行われるか、制御不能となる。オーラに乗っていて感心した点は、多数のバグらしきものがあっても、常に車の基本機能が安全側に制御されていたことである。


新車納入後の点検のたびにクレームとして問題を指摘してきたが、また、最初にはA4用紙にクレームをまとめなければいけない事態だったが、それでも車を信じていた。


おそらく新車納入時の車が、中国の名もないメーカーの自動運転車だったならこのような安心感は無かっただろう。やはり「技術のニッサン」に対する信頼は大きい。


しかし、これは理解できることだが、ディーラーにクレームをつけてもソフトウェアーの問題は新しいソフトウェアーが提供されていない限り対応できない。


バグの修正のないまま乗り続けることになる。今回のリコール対象となった、プロパイロットをオフした時の急加速については、車間距離をとっている高速道路上であれば何ら問題を感じなかった。


最初は驚くが、車が運転者の操作に応答してくれたようで当方は好感を持っていた。おそらく車が頭脳を持ち進化していったときに怖いのはこの信頼感だろう。


10年ほど前に自動車の評論を読んでいた時に、自動運転車になれば事故が減るようなことが書かれていた。当方はこの意見に疑問を持っている。おそらく一定数まで事故は減少するのかもしれないが、0にはならないだろう。


まだ現在のレベルであれば、運転者は自動運転のミスを検知できる可能性が高いが、技術が高度化した時に自動運転のミスに運転者が気づけない場合が出てくる。


すなわち想定外のバグ発生に対する安全技術は、自動運転技術の高度化とともに難易度が上がってゆく可能性がある。すでにオーラレベルの自動運転でバグなのかそれが仕様なのかわかりにくいケースが出てきた。

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2023.07/22 今時の車

先日14日に日産自動車オーラやセレナのプロパイロットについてリコールが公開された。プロパイロットをオフにしたときに他の操作と重なると急加速するからだそうだ。


当方はオーラ4駆に乗っているが、これ以外にいろいろ不具合があった。例えばサイドミラーを格納し、次回乗車時にサイドミラーを使用可能にすると微妙にミラーの角度が変わっていたり、ナビシステムの不具合、プロパイロット使用時にセンターライン寄りになるなどである。


ナビシステムの不具合は、突然進路を示していたイエロウラインが消えたり、画面がメニュに戻ったり、ハードスイッチが応答しなかったり、と様々な問題が起きていた。


プロパイロット使用時にセンターライン寄りになるのは居眠り防止かと誤解していたのだが、トラックが近寄ってきたときにトラックの方に近づくので居眠り防止というよりも肝試しに近かった。


自動運転中は、安全側に制御されるので、車が好き勝手に動いてもそのまま任せていたが、今回のリコールでプログラムの修正が行われた車に乗ったところ、すべて解消されていた。


さて、リコール対象となったプロパイロットをオフにしたときの急加速について、当方はそれが車の仕様だと誤解していた。プロパイロットの使用は高速道路限定が鉄則で一般道での使用は想定していない、とマニュアルに書かれている。


一般道での使用を禁じているのは、赤信号でも突っ込んでゆく車について行ってしまうからだが、高速道路の使用でオフ時に急加速してくれるのは気持ちが良い。


ゆえに、当方は高速道路での急加速を異常と感じていなかった。車がOKと答えてくれているような感覚で使用していた。自動運転がさらに進化した時に、自動車と運転者とのコミュニケーションがとられるようになるのだが、その時何が異常なのか気づくのが難しくなるのではないか。

カテゴリー : 一般

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2023.07/21 研究開発のゴール

研究開発のゴール設定が難しい時代になった。ソフトウェアー業界では早くからアジャイル開発が行われるようになり、研究開発のゴールの陳腐化しない工夫がなされた。


セラミックスフィーバーの時にゴム会社の研究開発本部リーダーに就任したU本部長は、ソフトウェアー業界が導入する前からアジャイル開発を指向していた。


「まず、モノ持ってこい」と研究企画会議で管理職に命じている。「モノができないから研究を行う」と答えた管理職には、「女学生より甘い」と、今ならばパワハラや差別発言など非難されるような厳しい言葉がかけられた。


もっとも研究所の体質も新入社員に始末書を書かせて平気な係長や課長が管理職を務めていたような部門であり、さらに事業でも起業しようものなら周囲から袋叩きにあうような、研究だけやっていたいという甘い集団だった。


18歳からドラッカーを愛読書としていた当方には、その風土にびっくりしている。タイヤ事業部門の研究開発部隊は別組織となっており、同期の技術系社員の大半はそこに配属され、この甘い研究組織に配属されたのは博士課程出身者の1名と修士卒の当方含めた2名だけだった。


タイヤ事業部門に配属された同期からは、事業機会を逃がさないために残業の多さも含め厳しい職場環境の、ある意味幸せな愚痴が漏れていた。企業の技術開発にあこがれていた当方は大学よりもアカデミックな風土になじめず、苦労していた。


事業を目標としていない研究テーマにその意味を感じていなかったので、U本部長が就任された時には、研究所の風土が変わることに期待して無機材質研究所からこの研究所に戻っている。


さて、ドラッカーは担当した業務について「常にそれが事業の何になるのか問え」と言っていた。組織の中で働くときに担当した職務から事業が見えないケースは、組織が大きくなればなるほど個人の役割は抽象的になるので多くなる。


それゆえ、事業の何になるのか問う個人の努力が重要となってくる。方針管理は1970年代にQCが定着した頃から行われているが、個人の業務のゴール管理は、バブル崩壊後からではないか。


研究所においては、研究所のミッションさえ明確にしていないところも存在するらしい。いまや基礎研究でも個人の研究テーマのゴールを明確化すべき時代である。


しかし、DXの進展により時代の流れが40年前と比較できないほど早くなった。そのような時代に数年後のゴールなど設定できない。1年後でさえ難しい、と思っている。


たとえ難しくてもとりあえずのゴール設定をしなければ効率的な研究開発などできないので、どうしたらよいのか悩まれている方は弊社へご相談ください。

カテゴリー : 一般

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2023.07/19 高分子と火災と評価技術(6)

規格の存在が実験を難しくする場合がある。LOIはその一例だが、その他の火災に関する評価技術にもそのような規格が存在する。


電気抵抗に関する規格では、高抵抗の絶縁材料で評価不能となる場合があるが、これは抵抗が高いためであり、高抵抗ゆえに測定不能と書けば間違いない。


しかし、LOIで測定不能とすると、燃えにくいためか燃えやすいためか不明なので間違いのもとになる。とっておきの面白い話があるが、本日のテーマから脱線するので後日紹介としたい。


少し面白い話として、アラパフォメーターの体験を紹介する。煙量を測定できる評価装置だが、煙の原因が煤であることに着眼した評価技術だ。濾紙に付着した煤の量で煙量を評価する。


ほとんどの試料でうまく評価できるのだが、ハロゲン化合物と三酸化アンチモンで難燃化した試料では煤が多すぎて、測定不能となることがある。


一方ホスファゼンで難燃化したした試料でも煤がほとんど出ないので測定不能となることがある。その結果、LOI同様に測定不能とするとその結果が良いのか悪いのか不明となる。


この話のどこが面白いか説明しないので想像してほしい。少しニヤリと笑えた人は、それなりに火災と評価技術の問題を理解できた人である。トランスサイエンスを理解できると大笑いできるかもしれない。

カテゴリー : 一般

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2023.07/18 高分子と火災と評価技術(5)

LOIは継続燃焼するために必要な最低限の酸素濃度を指数化したものである。ゆえに、測定法を工夫すればどのようなサンプルでもその値を求めることが可能である。


工夫するにしてもガス流量と測定雰囲気温度を一定にすことは重要である。いずれの因子にもLOIは影響を受ける。また、LOIに影響を与えるが、センサーなどの部品が揃っているので精度よく管理することは可能である。


タグチメソッドの実験では、これらは誤差因子となる。もし、ガス流量や測定雰囲気の温度を信号因子にした実験を行うと、後者については悩ましい結果となる。


ガス流量も規格値を中心値として測定すると信号因子になりそうな結果が得られたりする。実験は面倒になるが、難燃剤の添加量を信号因子にすると、LOI値が23ぐらいまでは、線形性の良い結果が得られる。


UL-945VBに合格するためには、LOIは21以上が必要なので、それを目的とした材料の基本機能のパラメータとしてLOIを用いることが可能である。


LOIの測定を規格通りに行うと測定不能となる試料が出たりする。しかし、規格外の条件で工夫するとどのような試料でもその値を決めることが可能となり、その再現性も良い。ただし、規格外で得た値は、あくまでも規格外であることを忘れてはいけない。


しかし、難燃性を樹脂の基本機能としたときに用いるパラメーターとしてLOIは難燃剤の添加量や高分子の高次構造に対して線形性が成立するので、燃焼速度よりも扱いやすい。

カテゴリー : 一般

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2023.07/17 高分子と火災と評価技術(4)

高分子の不燃化は難しいが、燃えにくくする技術ならばできそうだ、と1970年前後の高分子材料の研究者は考えた。そして高分子の難燃化技術の開発がそのころから活発になるのだが、「燃えにくく」する技術の評価をどうするかが議論された。


1971年に書かれた書籍には、LOIに関して触れられていない。空気中で実際に燃焼させてそれを観察する評価技術が中心だった。


そのころ、燃焼とは急激に進行する酸化反応なので、どのくらいの酸素濃度で継続燃焼できるのか、という指標が科学者達から考えだされたばかりである。


1995年にJIS化されているが、当方は1977年にスガ燃焼試験機を使用し、PVAフィルムのLOIを測定している。その時PVAフィルムの燃焼速度が速いために使用法に書かれた条件では測定が難しかった。


点火器の炎の大きさなどを工夫し、測定可能な条件を見出して、燃焼を継続可能な最低限の酸素濃度を求めることができた。その同じ条件で、新規反応型難燃化剤で変性されたPVAについてLOIを測定したところ、添加量に対して線形性の高い関係が得られた。


LOIの測定法について書かれた論文には、ろうそくの炎のように燃焼、と書かれているので、測定法の工夫は、どのようにそのような燃焼条件を実現するのか、がコツとなる。


東日本大震災ではキャンドルアートが話題になり、最近再度そのアーティストが話題になっているが、規格に準じた測定において測定不能となるサンプルのLOI測定には、ちょろちょろと美しく継続燃焼できるように調整するアーティスティックなテクニックが重要である。


規格に準じて評価し測定不能と結論を出すのも良いが、実験の目的によりどうしてもLOIを知りたい時がある。その時には、規格外の方法であっても測定可能な条件があることを知っておいてほしい。


LOIは、ろうそく燃焼法として書かれた時代もあった。規格に準じて測定を行うことは大切だが、測定不能であっても工夫して測定値を求めると、タグチメソッドの基本機能として使用可能である。

カテゴリー : 一般 高分子

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2023.07/16 Lipton Milk Tea

激暑の夏に飲料水は欠かせない。高校生の時は、あのチェリオが流行しており、誰もがクラブ練習後に学校近くの少し汚れた店先のチェリオを飲んでいた。同じ価格でどの飲料水よりも量が多かったからである。


高純度SiCの半導体治工具事業を始めた1983年ごろキリンから午後の紅茶が発売された。紅茶ドリンクの流行が始まった頃だが、その翌年表題のミルクティーが500ml紙パック100円で登場している。


おそらく当時の高校生にはヒットしたのかもしれないが、午後の紅茶の大人の味とは少し異なる方向だった。ミルクティーでありながらさっぱりした味わいは悪くないのだが、また、コスパも良い。


コロナ禍となって森永は突然この銘柄の新製品を出してきた。しかし、新製品を出して1年でまた旧製品に戻したことが話題になっている。


話題になっていたので早速購入して飲んでみたのだが、500ml一気に飲めてしまった。ミルクティーでありながら飲み口がさっぱりしているのだ。昔はこれが安っぽく感じたのだが、夏の暑い日にはこのさっぱり感が合っている。


森永としては売り上げが落ちてきたのでより高級感のある新製品を出してみたところ、特に売り上げ増につながらず、愛飲者から昔の味に戻してほしいというラブレターが多数届き、結局旧製品に戻したという説明がついていた。


そして旧製品に戻したところ売り上げが復活したというので話題になっている。このような現象は市場調査による商品企画の難しさを示しているのだが、ロングライフの製品については多少売り上げが落ちたとしてもその市場動向の判断に注意を要する。


飲料水ではないが、日産フェアレディZの新型がなかなか納車されないという。この件については、EVへという業界の流れの中、モデルチェンジしても売れないだろうという日産社内の判断が働き、生産計画を極めて後ろ向きに設定した、との説明が新車発売時にあった。


ところが予約注文が殺到して現在もその消化のために追われているという。市場ニーズを読み間違え事業機会を逃がしたわけである。


ミルクティーもフェアレディ-Zも歴史のある製品である。このような製品では、隠れたファンの存在をどのように掘り起こすのかという戦術が重要で、長期的な戦略で市場活動を行う必要がある。

カテゴリー : 一般

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2023.07/15 半導体産業の凋落原因

日本政府はSUMCOはじめ海外の半導体企業の工場を日本に誘致し、産業の米とかつて呼んでいた半導体産業を改めて日本で育てようとしている。しかし、日本の半導体産業の凋落原因について本質的な反省が無ければ、国民の税金をドブに捨てることになる。


日本の半導体産業の凋落について、タイミングの良い投資など経営面の問題がよく語られる。すなわち、ヒト、モノ、カネの組み合わせ問題にその原因をもとめ、大型投資が必要だった半導体産業においてカネの決断ができなかった、というのである。


もっともらしい説明であるが、もし、半導体技術分野でリーダーとなれるソフトウェアー技術が育っていたなら、投資決断はそれほどの問題ではなかったと思われる。


そして大型投資を国がサポートするような今日と同様の体制構築をできたはずと、当方は以前より考察してきた。


例えば、CPUについてインテルの独走を阻むことができるぐらいの技術が日本に育っていたならば、現在のような状態にならない政策を政府に促し、トップランナーとなることができたかもしれない。


しかし、日本の半導体産業の凋落を語る時に、カネの問題が議論されることはあっても、そのカネを促す技術シーズの育成問題について本音のところが語られていない。


30年前、技術経営(MOT)のブームが起きた。バブルがはじけたときに、それまでバラ色の科学論が日本で展開されていたが、それが技術経営の議論へと変化した。同じころアメリカではトランスサイエンスが話題になり始めている。


すなわち、科学への疑問と技術に対する見直し議論が30年前に行われているが、ソフトウェアー開発では科学と異なるアプローチが求められ、そこにアメリカは気がつき、現在に至る。


ところが、日本ではようやく義務教育にプログラミング教育がカリキュラムとなった。このソフトウェアー技術に対する認識の日米の違いがどこから由来するのか、日本のリーダーは反省が必要である。

カテゴリー : 一般

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2023.07/14 高分子と火災と評価技術(3)

火災と言う現象と高分子材料について研究するテーマは、どれもトランスサイエンスとなる。しかし、うまくテーマ設定して科学的結論を出せるような雰囲気も感じたりする。


実はこの感覚が、誤った評価技術を生み出したりする。むしろ、トランスサイエンスを前提に評価技術を開発したほうがアウトプットを間違えないと思っている。


このあたりの感覚をお伝えすることも難しいかもしれないが、高分子の難燃化技術は、ほとんどが経験知ぐらいに思っておいた方が研究を進めるときに誤った結論に陥る確率を小さくできる。


例えば極限酸素指数(LOI)はJIS規格が存在し、大抵の材料についてこの規格に準じて測定すればおよそ0.5程度の偏差で再現よく求めることができる。ところが、規格に基づき測定すると測定不能となるケースがある。


この時、科学の姿勢としては測定不能とするのが正しい姿勢である。LOI以外の難燃性評価規格にも測定不能となる規格が存在する。しかし、これでは研究開発を進めることができない。


難燃性高分子の開発では、測定不能であってもその難燃性を何とか数値化したいという場合が多い。難燃性評価規格もそのために作られているのだが、例えばフィルムや発泡体のLOI評価では、多くの場合に測定不能となる。

カテゴリー : 一般 高分子

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2023.07/13 傾斜機能材料

住友金属工業と始めた半導体治工具用高純度SiCの事業化を一人で推進しているときに、研究所を管理する役員が退職のため交代した。そして新しく役員になられた方から電気粘性流体の仕事も手伝うように指示された。


電気粘性流体に用いられている材料についてプロジェクトリーダーに情報を尋ねたら、外部との共同開発テーマであり、機密情報のため見せられない、と言われた。


仕方がないので、電気粘性流体に用いる粒子について独自に材料設計し、3種類の機能性粒子を発明した。前任の役員から「まず、モノ持ってこい」式のアジャイル開発マネジメントを指導されていたので、企画書を書く前に3種の機能性粒子を合成したのである。


大成功であり、実験を初めて1か月ほどで3種の機能性粒子の高い電気粘性効果が確認された。とりわけ、傾斜組成の効果で粒子内部から表面にかけて電気抵抗が10000倍変化している粒子は、極めて低電力で高い電気粘性効果が発揮された。


この成果で、それまで社外から調達していた粒子をこの新技術で内製化することになった。こうなってくると一人で推進するには荷が重い。そんな大変なときにFDを壊されたりする妨害を受けている。


住友金属工業との半導体治工具事業とこの傾斜機能粒子は、当方の置き土産のようになったが、転職後それらの展開を外部から眺めていて、高純度SiCの事業と電気粘性流体の進捗は人間の欲を描いたドラマをみているようだった。


どのようなドラマだったのか、いつかまとめて発表したいが、圧巻はこの仕事も含めて学会賞の審査員に小生が偶然選ばれていた、神様のいたずらのような出来事だろう。最初の推薦書は高純度SiCの仕事に無機材質研究所も住友金属工業も書かれていない、とんでもない内容だった。

カテゴリー : 一般

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