そもそも入社して8か月後の1月8日にこの主任研究員のグループへ異動したことが理解できなかった。入社二年間は職場異動が無い、と研修で説明を受けていたからである。
もっとも、1年の予定であった防振ゴム用樹脂補強ゴムの配合設計を優秀な指導社員のおかげで3か月で完成させたので新しい仕事が必要になり、異動となった、と指導社員から説明を受け、納得している。
そして指導社員から定時退社を約束させられた。すなわち残業無しの業務遂行である。美人の指導社員は時々食事に誘ってくれて、楽しい日々だった。
樹脂補強ゴムの開発では、指導社員が優秀な方で粘弾性のシミュレーションからさらにゴールとなるゴムのサンプルまでフロントローディングでできていたので、当方は必要なデータ収集と耐久試験その他業務が明確であり、毎日サービス残業を行い、短期でテーマを完成させている。
しかし、美人の指導社員は指導計画さえも作成しておらず、これから一緒に1か月かけて作るのだという。一方で、主任研究員は、世界初の難燃性軟質ポリウレタンフォームを発明してほしい、そして新入社員発表でできれば工場試作までやりました、なんて言えれば大成功と発破をかけられていた。
異動となった最初の打ち合わせは、No.2の係長職の人と美人の指導社員、当方の3人で、難燃性軟質ポリウレタンフォームの開発計画作成だったが、この打ち合わせで不思議に思ったのは具体的な技術手段は何も書かれておらず、業務のアローダイヤグラムだけだった。
このアローダイヤグラムでは、1月末に具体的技術手段の調査結果を打ち合わせることになっていた。そこで当方は大学院を修了し、ゴム会社へ入社するまでの3週間大学に残って研究し、論文作成を始めていたホスファゼン誘導体について、この打ち合わせにおいて説明した。
そして、この誘導体を用いれば、ホスファゼン変性軟質ポリウレタンフォームができるかもしれない、というビジョンをさらに説明している。
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始末書騒動の経緯は以前にも書いているが、丁寧に書いてみるのでマネジメントの参考にしていただきたい。また、新入社員を甘く見てはいけない。新入社員の意欲をうまく活用して指導することができない管理職はこれからの時代、ますます不要になるだろう。
始末書を書けと命じた主任研究員も、いなくても良い存在だった。また、当時の部下誰もがそう思っていたらしい。No.2に相当する係長職の方が、予算からテーマ何もかもこの主任研究員の仕事全てを担当していたからである。
1年に1回管理職と部下とのコミュニケーションを図るために30分面接があるのだが、この始末書の騒動から3年後この係長も含めてメンバーの全員がこの面接で異動したいと申し出たそうだ。
当方は、無機材研留学が決まっていたので、留学への抱負を述べたのだが、主任研究員は少し涙目で、当方だけ異動希望を述べなかった、ありがとう、と感謝された。
その感謝の言葉の後、なぜ全員が突然異動希望を一斉に書いたのか、教えてほしい、と質問してきた。あたかも、誰か中心人物がいてクーデターでも起こしたと勘違いされていたようなので、当方へ始末書を書くように命じたときのことを回顧しながら話を進めた。
当方はドラッカーの著書をほぼ80%ほど読んでいたので、そこからいろいろこの主任研究員に説明している。困ったのは、当方の一言一言にうなづきながら聞かれていた姿勢だった。
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国会でも話題にされたハルウララが亡くなった。29歳だった。小泉総理がその負けっぷりを話題にしたのは20年ほど前で、よくぞここまで負けを重ねてもこの馬を走らせたものだ、と感心する。
武豊騎士が乗っても勝てなかったのである。当時の負けっぷりもすごかった。武豊騎士はダービーで優勝してもここまで話題にならない、と驚嘆の記者会見を開いているが、これがサラリーマンだったならここまでチャンスをもらえたかどうか分からない。
負け組の星などと言われているが、ここで注意しなければいけないのは、ハルウララが自らの意志で走っていたわけではない点である。負けても負けても走らされたのである。
視点を変えればこれほど残酷な仕打ちは無い。もっとも競争馬として使えない馬は馬肉にされるので負け続けた話題のおかげで、寿命を全うできたという見方もできる。
馬肉で思い出したわけではないが、負け組の星として勝南桜がいる。ただしこちらは0勝ではなく3回勝っている。3勝238敗である。
一度も勝たなかったハルウララの方が価値があるのか、3勝しかしてなくてもあきらめず相撲を取り続けた勝南桜に価値があるのか知らないが、人生最後まであきらめていけないことは確かである。
馬については分からないが、人は生きている限り努力を続ければ、何らかの成長がある。その成長を喜びとする人生を送りたい。40にして惑わない生き方も立派である。
しかし、死ぬまで努力する生き方も亡父の姿を思い出すたび孔子に負けていないと今日も頑張ってます。ハルウララは千葉で過ごした余生に何を考えていたのだろう?
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表題の言葉が流行語になっているそうだ。言葉の意味はインターネットで調べていただければわかるが、これを悪と捉える管理職は時代遅れである。
部下育成のチャンスである。業務の効率化を進めるためにこれを活用すべきである。この意味の分からない管理職は、少しマネジメントの初歩から勉強をされたほうが良い。
50年ほど前になるが、新入社員時代に始末書を書け、書かないと、1週間上司ともめた体験がある。そもそも始末書を当方が書かなければいけない理由が、全くわからず、また、上司もその理由を明確に説明しない。
さらに、当方は入社して1年の新入社員であり、指導社員やその上司の係長に相当する人物がいて、工場実験を成功させたから、始末書を書けと言われても責任の取り方そのものが分からなかった。
状況から、美人の指導社員が始末書を書くべきだが、その指導社員が、本来は課長である主任研究員が書くべきものを新入社員に書かせようとしている、と噂になっている、とここだけの話として説明してくれたのだから、当方としてはますます謎が深まった。
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材料の力学物性において、弾性率は形式知のパラメーターであり、弾性率の大きな材料は硬い。このことから、硬さと弾性率は相関する。しかし、硬い材料の曲げ強度あるいは引張強度が大きくなるとは限らない。
例えば、樹脂製のお茶碗と陶磁器でできたお茶碗とでは後者の方が割れやすいことから強度が低いような感覚を日常持っていると思う。
また、この感覚を確認することはやや危険だが難しくなく、二つの茶碗を押し付けてみると分かる。樹脂製の茶碗は変形するかもしれないが、押し付けている途中で陶磁器の茶碗が割れる。
面白いのは、この実験をノリタケチャイナで行うと樹脂製の茶碗が壊れる。必ずしも感覚がいつでも正しい結果とならない。ノリタケチャイナは高級ブランドであり、高価だが、それなりの技術力で製品が設計されているので瀬戸物とは一線を画す。
この経験から、硬さ以外に破壊のしやすさをコントロールしているパラメーターがありそうだ、と気づく。それが、脆さのパラメーター靭性であり、Kで表される。
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現在の化学系の講座で破壊力学の授業があるかどうか知らないが、50年前は無かった。50年前でも金属材料系の講座では、材料力学と破壊力学の両方を学ぶことができた。
これは、現在も状況が変わっていないが、高分子材料について破壊力学の体系が完成していないからである。しかし、高分子材料を扱っている技術者は、金属工学関係の書籍で破壊力学を学んでおいた方が良い。
当方のセミナーでは、1日で破壊力学のエッセンスと実務で遭遇するであろう材料の破壊に関する事例説明から、形式知の体系が存在しない高分子材料の破壊力学について、経験知と事例の問題解決体験から暗黙知まで伝える努力をしている。
高分子材料の破壊現象について、昨日の粘弾性同様に分子論的見地からの研究も行われているが、芳しい結果が得られていない。
また、線形破壊力学の観点からの研究では、これまで異なるパラダイムで研究されてきたゴムと樹脂のそれぞれの破壊が同一パラダイムで説明できることが分かってきた。
50年の科学の進歩であるが、その間にも破壊現象に関わる品質問題は解決されてきた。これがどのように解決されてきたかは、弊社のセミナーを受講してください。
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高分子材料は、バネのような弾性という性質と、粘っこい粘性という性質を持っている複雑な物性を示す。身近にある各種ケースやスイッチレバーに用いられている樹脂は、弾性が強く現れ、ゴム紐は弾性と粘性が混ざっていることを感じさせる。
ゆえに高分子材料の粘弾性について、弾性の性質をバネで表現し、粘性の性質をダッシュポットで表現して研究する学問が古くから発展してきた。
すなわち、高分子材料の力学物性は、ダッシュポットとバネで表現できる、という仮説を形式知にする努力が50年近く前まで、高分子科学の一分野として存在していた。
これが1980年代になると風向きが変わり、分子論的な研究すなわち、高分子1本の力学的性質から積み上げてバルクが示す力学物性を表現しようという研究へパラダイムが変わった。
当時講談社から発売された「高分子緩和現象」という本は、少し癖の強い本であったが、学術書としては異例のベストセラーとなっている。この本には、明確にダッシュポットとバネのモデルを忘れましょうと宣言されていた。
当方がゴム会社に入社した時には、このパラダイムの変換が始まった頃であり、粘弾性論の研究者は研究所で肩身の狭い思いをされていた。
そのような状況を見てきたのと、ホスファゼン変性ポリウレタンフォームの工場試作を成功させた後、始末書を書かされたこともあり、ゴム会社の研究所における科学偏重の姿勢を批判的に見るようになって、オブジェクト指向で研究開発を進めるようになった。
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樹脂材料のリサイクル材が高騰している。バージン材と同等以上の価格がついている素材も出てきた。確かにバージン材は生産可能だが、リサイクル材(再生材)は、廃材を利用するために生産量に限りがある。
例えば、HDPEの廃材でバージン材に近い再生材を得たい時には、哺乳瓶の廃材を使用する。これが少子化の影響を受けて国内では減少傾向にある。ゆえに無色のHDPE廃材は、バージン材よりも高い価格で取引されるケースも出てきた。
ゴミが付加価値を持つ時代になったのである。ここで冷静に考えなければいけないのは、樹脂廃材で分別可能な資源と分別不可能な資源があり、後者はサーマルリサイクルとしてエネルギー回収以外に資源としての活用方法が無い現状である。
サーマルリサイクルについて日本ではリサイクル技術の一つになっているが、欧米では二酸化炭素発生を理由にリサイクル技術として認めていない。
ケミカルリサイクルが他の方法として考えられるが、現在取り組まれている技術は、分別回収された技術が中心である。また、どのような組成になっているのか不明の原料をケミカルリサイクルする技術はかなりハードルが高そうである。
ここで考えられるのが、組成が不明(ただし、有害物質は取り除かれている)の樹脂をブレンドしても物性を制御可能な黒色ポリマーアロイというコンセプトである。
黒色樹脂は物性さえ品質管理できるならば、樹脂の種類を問う必要は無く用途は広い。130円/kg前後で供給できれば、自動車部品市場を狙える。
これは、難しいようで、意外と簡単に開発できる可能性がある。関心のあるかたは弊社にご相談ください。まず、特許出願からお手伝いさせていただきます。
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自動車用途にPPSフィルムの市場が拡大している。東レだけでなくリニアタイプのPPSを製造しているメーカの何社かは、東レを追いかけてその生産に乗り出した。また、中国の某ローカルメーカーもその生産を始める準備に取り掛かり人材を集め始めた。
よく知られているようにPPSは脆い材料で、フィルムは傷をつければ簡単に引き裂くことが可能だ。繰り返し折り曲げて切れるときの回数MITをその脆さの指標にしているが、だいたい1000以下である。
通常PPSフィルムは二軸延伸されるので結晶化しているが、これをアモルファス状態でフィルムにするとMITは3000程度になり、少し脆さは改善される。
さらに、6PAを相溶させてフィルムにすると著しく靭性は改善され、20000以上となる。問題は二軸延伸で6PAを相溶させたままフィルムにできるか、という問題がある。この答えを知りたい方はご連絡ください。
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高分子材料の射出成形は、押出成形やブロー成形よりも易しそうに見えるが、ポリマーブレンドやポリマーアロイでは、難易度が上がる。
コンパウンド設計が完璧に行われておれば問題は起きないのだが、二軸混練機だけの混練では完璧なコンパウンドを製造することが難しい、というよりもできない、と述べた方が分かり易いかもしれない。
不完全なコンパウンドを何とか射出成形しているのが、現在の状況である。ところが、これをなかなか信じてもらえない。射出成形条件を多少変更すれば、カイゼンできたりするのでコンパウンドの問題をあまり深刻に考えない。
しかし、ロットが変わったら射出成形条件を再検討しなければいけない問題が発生し、いろいろOWの範囲で検討して解決できなかった時に少し疑問を持つ人がいるようだ。
20年近く前にコストダウンのため中国ローカルメーカーのPC/ABSに切り替えようとしたところ、様々な外観不良が発生した。現場で対応して、使える条件が見つかったので採用となったが、不良品を中国ローカルメーカーに見せてコンパウンディング条件の見直しを提案している。
タグチメソッドL18でロバストの高い最適条件を求めたところ、現行よりも30dBの改善効果を見込める条件が見つかった。この結果にローカル企業の総経理は驚いていた。
コンパウンディングを一因子実験だけで最適化を行っても、必ずしも最適条件となっていない原因について質問されたが、タグチメソッドを理解することです、と答えている。
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