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2012.09/20 ホスファゼン変性ポリウレタン(2)

修士課程2年間は、ホスフォリルトリアミドとホルマリンの共重合を研究していました。論文を2報ほど出すことができました。修士論文をまとめた後、ブリヂストン入社まで3週間ほど時間がありましたので、ホスファゼンの3量体を合成しました。そして側鎖基の異なる数種類の誘導体を合成し、ショートコミュニケーションをアメリカの化学会誌に投稿することができました。迅速に研究を行いすぐにその成果を学会誌に投稿する、という姿勢は大学4年から3年間の名古屋大学における研究生活で指導された習慣です。ホスファゼンにつきましては、新しい誘導体が研究開発されている時代で、日本でも誘導体の原料だけが市販されている状態でした。

 

ホスファゼン変性ポリウレタンを開発するにあたり、イソシアネートと反応しうる官能基を持った誘導体を開発しなければなりません。入社前に合成した原料の結晶が300gほど残り、一部を窒素封入したガラス管に入れ部屋に記念として飾っていましたので、それを使うことにいたしました。当時はMSDSなどの管理をしていなかった時代です。

 

1ケ月ほどで新しくデザインした誘導体とイソシアネート基との反応様式のデータが揃いましたので、TDI80(イソシアネート基を有するポリウレタンの原料)とのプレポリマーを合成して、軟質ポリウレタン発泡体に用いることにしました。重合と発泡のバランスが取れた安定な発泡体の合成技術開発は結構難しく苦労しましたが、2ケ月ほどで工場試作できるレベルの技術ができあがりました。難燃性能も当時市販されていた難燃剤よりも高く、低発煙という特徴を備えていました。

 

新入社員テーマとしてホスファゼン変性ポリウレタン発泡体を完成させることができ、この技術を課長が後工程の化工品開発本部に紹介してくださいました。その後のいきさつは新入社員時代の出来事でよく分かりませんが、課長に呼び出されて始末書を書くように言われました。学生時代に合成したホスファゼンを会社の実験で使用した件で叱られたのかと思いましたが、どうも様子が違います。始末書の原案を課長が作成してくださり、そこへ署名する形になりました。始末書は、ホスファゼン変性ポリウレタンを企画した責任をとる内容でした。内容から新入社員である自分がサインしてよいものか迷いましたが、企画から実験、技術の完成まで実行した人物を明確にできると解釈しサインをしました。サラリーマン1年目で始末書を書くような事態になりました。

 

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カテゴリー : 高分子

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