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2013.02/09 弊社の問題解決法について<23>

 探偵小説の世界だけでなく、コンピューターの世界でも推論の向きによる二つの世界観があり、逆向きの推論によるエージェント指向ではフリーズしないコンピューターができると言われてます。このエージェント指向に似た問題解決法であればどんな問題でも解決できるかもしれません。

 

ところでオブジェクト指向プログラミングで使用される前向きの推論については、結論に至る道筋をすべて吟味しなければ解決の道筋を見つけられない、という特徴があります。一方、エージェント指向の特徴である逆向きの推論については、必要十分条件を前提に考えていますので、必ず結論に至る道筋だけを追及できる効率の良さがあります。

  

この推論の向きの特徴について、帰宅難民になりました2011年3月11日に考えた問題を事例にもう少し具体的に説明します。その日、都心の交通機関は止まったままでしたが、八王子駅周辺の交通機関は、一部動いていました。

 

「八王子駅近くの会社にいて、板橋区内の自宅玄関へ、出発時に予定した到着時間に確実にたどり着くにはどうしたらよいか」、

 

という問題で前向きに推論しますと、電車に乗った場合には、どこかの駅にたどりつき直接自宅玄関に着けません。自宅玄関につくためには、どこかの駅から、さらに歩く必要があります。最寄り駅についた場合も同様で、最寄り駅から自宅玄関まで歩く必要があります。ゆえに電車が順調に動いていない状況では、到着時間を予測することができません。

 

京王バスに乗った場合には、京王バスのどこかのバス停につきます。どこかのバス停から玄関までは、また電車に乗るか、歩かなければなりません。途中で電車に乗りました場合には、電車のどこかの駅にたどり着けますが、自宅玄関まで、そこからさらに歩く必要があります。電車に乗って無事に最寄り駅につけたとしても、最後に自宅玄関まで歩かなければなりません。

 

最初に電車や、京王バスに乗った場合には、自宅玄関に直接つけませんから、災害時には到着時間の予測もできません。八王子駅近くの会社から自宅まで、すべて歩いた場合にだけ、予想した到着時刻に直接自宅玄関にたどり着けます。

 

前向きの推論では、八王子駅近くの会社から板橋区内の自宅方向へ推論を展開し、電車、バス、徒歩の3通り以上の組み合わせを考えることになります。

 

しかし、自宅玄関から逆向きに推論した場合には、徒歩という手段だけを考えればよく、自宅玄関から八王子駅近くの会社まで行く見通しが一発で得られます。このようにスタート地点は八王子駅ですが、逆向きの推論では、ターゲットとなる自宅を起点に考えます。

 

インターネット情報では、当時自宅周辺の駅に停車する電車は、すべて運休していました。八王子駅周辺では京王バスが動いていましたが、自宅を起点に逆向きに推論を行いますと、途中で交通機関に乗車できる可能性はありません。サラリーマン最後の日は会社へ宿泊するという結論をすぐに出すことができました。

 

帰宅難民の事例ではゴールである自宅は変化しませんが、不確実性の時代における「あるべき姿」は、時の流れにより変化する可能性もあります。もし「あるべき姿」の見直しが必要になったなら、すぐに修正し改めて問題を設定しなおさなければなりません。問題解決で大切なのは「あるべき姿」であり、この「あるべき姿」をいつも正しく決めなければなりません。

 

本書では「あるべき姿」は不変として扱いますが、実際には変化するケースも出てきます。しかし、あるべき姿が変化する場合にもあるべき姿を修正した新たな問題で問題解決を進めればよいだけです。「あるべき姿」が時代に合っているかどうかの検証は、常に心がけねばなりません。あたかも「マトリックス」でエージェントがターゲットを追い続けたように、問題解決する時には時代に合った「あるべき姿」を追い求めねばなりません。

                       <明日へ続く>

カテゴリー : 連載

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