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2014.07/01 高分子中のカーボンクラスターの設計

絶縁体である高分子に導電体のカーボンを分散した半導体材料は、多くの分野で用いられている。この材料技術で最も難しいのはカーボンクラスターの制御である。いわゆるパーコレーション転移の制御を生産技術で実現できるかどうかにかかっている。

 

導電性の高いカーボンで10の9乗Ωcmを安定に実現するのは大変である。すぐに10の5乗Ωcmレベルまで下がってしまう。押出成形において押出工程でパーコレーション転移の制御を行うことは難しく、コンパウンド段階で目標となる抵抗を実現できるように創りこんでおかなければいけない。

 

このとき、どのような材料設計が理想かと言えば、カーボンの同じ大きさの弱い凝集体が均一に分散している構造が理想である。これは科学的に考察しモデルをつくりコンピューターでシミュレーションすればすぐに理解できる。

 

弱い凝集体もカーボンのクラスターだが、この凝集体のパーコレーション転移を制御したほうが、カーボン粒子の分散をあげる設計よりも技術的に容易である。すなわち1Ωcmの粒子が分散した時に生じるパーコレーション転移は急激に抵抗が下がるが、弱い凝集体では、その抵抗は凝集状態で制御でき、パーコレーション転移を穏やかに制御できるようになる。

 

すなわちカーボンの凝集体は凝集が密になればなるほどその抵抗は下がる。高分子の中にできるカーボン凝集体の抵抗は、おおよそ10の7乗から10の3乗Ωcm程度まで変化する。目標とする抵抗の凝集体ができるように高分子の配合設計を行えば、パーコレーション転移をうまく制御できるのである。

 

このように科学的なモデルで説明できる知恵が、なぜ教科書に書かれていないのか不思議である。「目標とする抵抗の凝集体を作る」という部分が技術的に難しいが、試行錯誤にプロセスで制御できる因子を動かし、カーボンクラスター生成の様子を体系化すればよいだけである。この部分は科学的に考えると意外と実現が難しくなる。

 

カテゴリー : 連載 高分子

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