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2019.08/02 高分子のプロセシング(26)

高分子材料のDSC測定で生じるTg曲線の昨日のような変位が現れるのを避けたいならば、DSCの昇温速度を変えて期待通りのTg曲線が得られるように条件を探す作業が必要になる。

 

このような変位以外に、現れるはずのTgが観察されない、といった現象も時折発生する。この現象では、Tgが現れる直前のところで昇温をいったん止めてその温度で2-5分程度保持後測定を開始すると、きれいなTg曲線が現れる。

 

これは、アニールと同じ効果を応用したDSC測定のコツであるが、なぜか分析関係の教科書に書かれていない。

 

やや胡散臭い方法に思われる方もいるかもしれないが、測定データについて不安がある時には、複数の試料を計測してTg曲線の異常の原因を探る必要がある。ただ、混練の実務でこの努力の優先順位は低い。

 

TGA同様にDSCを用いて動力学的解析を行うことが可能である。例えば結晶化速度の評価にDSCを使用できる。

 

ちなみに、無機材料の結晶成長に関する速度論では、結晶成長機構が多数存在するので速度式の解析は複雑になるが、高分子では核生成を仮定したアブラミ式だけが知られている。

 

これは、球晶の生成機構が必ず核の生成を伴うからである。すなわち紐の一部が局所的に規則正しく並び、そこから結晶成長が始まる。

 

そしてラメラが生成し集合体となり球晶となる。あたかもラメラの生成と球晶への成長との二段階で進んでいるかのように思える。

 

無機材料で一段階の結晶成長機構について速度論的解析を行うと、80%以上成長する領域までうまく解析できる。

 

ちなみに、高分子と同じように核生成機構で結晶成長が進行するシリカ還元法のSiC生成機構解析では、95%前後の結晶成長までグラフは直線になっていた。

 

ただし、高分子のこのようなグラフでは、30%過ぎたあたりからずれてくることもある。ここまでの指摘にとどめる。

カテゴリー : 高分子

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