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2023.08/30 酸化第二スズ

酸化第二スズ単結晶は絶縁体である。しかし,これがアモルファスになると1000Ωcm前後の導電性を示す。ここで注意しなければいけないのは、酸化第二スズの非晶質体はガラスではない、ということだ。


そもそもガラスとは何か。これが意外にもあまり教科書に書かれていない。ガラスは非晶質体であるが、非晶質体には、ガラスとガラス以外が存在する。


それでは、ガラスとガラス以外は何が異なるのか。それはガラスはガラス転移点を持つが、ガラス以外の非晶質体はガラス転移点を持たない。


酸化第二スズ非晶質体のDSCを測定すると結晶化温度は存在するが、ガラス転移点は観察されない。ゆえに酸化第二スズの非晶質体はガラスではない。


四塩化スズを加水分解すると、酸化第二スズゾル(以下酸化スズゾル)が生成する。この酸化スズゾルには、わずかな水が含まれている。非晶質ゆえに存在する構造水と自由水に分けられ、自由水で導電性が発現するのではないかと想像している。


想像している、と曖昧なことを書いた理由は、1年ほど研究して明確な真理とできなかったからである。ただ、酸化スズゾルを加熱して、重量減少を測定し、導電性を計測すると、重量が減少し始めたところで導電性が1桁悪くなる。


さらに加熱してゆくと300-500℃あたりで、半導体となるがその抵抗を一定にできなかった。また、X線散乱の実験を行い、アモルファスハローの部分を観察すると再現性のない変化を観察できる。


おそらくこのあたりについては、実験数を増やしてゆくと、あるばらつきの範囲で形式知とできるかもしれないが、時間が無かったのと担当者が異動したので研究を辞めた。


どうもこのような地味な研究は若い人に嫌われるようだが、世の中にはきれいなデータを収集できない現象は多い。STAP細胞の実験ではそれを少し手抜きしたので大騒ぎとなった。


「あの日」を読むとマウス云々のところが気にかかるが、世の中には不誠実な学者は多い。形式知を扱う学者は誠実であってほしい。


当方も某国立大学の不誠実な先生に当方のデータで勝手に論文を出されたりして、研究成果を盗られた経験があるが、形式知を扱う研究者は誠実であることが求められる。


ゆえに当方は酸化スズゾルの研究について形式知まで追い込めなかったので、正直に形式知とできなかった、と述べている。しかし、実験結果から想像を膨らませると、酸化スズゾルの合成条件により導電性が変わると予想できる。


そこで実際にいろいろと実験を行ったところ、100Ωcm程度の導電性を示す酸化スズを合成できた。ここまで低くなると、ITOに肉薄する。すなわち、Inをドープしなくても同等の導電性にできたならCDが可能となる。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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