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2023.10/10 データサイエンスを実務で活用する(2)

ゴム会社では日科技連の指導でQCを定着させ、「最高の品質で社会に貢献」という社是に恥ずかしくない会社となった。しかし、当方が入社した時には、統計手法の普及定着を全社で活動している時代だった。


研究所では人事部門の努力にもかかわらず、統計手法の導入に反対していただけでなく排除しようとさえしていた。タイヤ開発部門は実務で統計手法を導入していたが、情報工学の黎明期ということもありデータサイエンスまで勉強していた技術者は少数の優秀な方たちだけだった。


面白いエピソードとして、新入社員の技術実習の話題がある。当方含む5人はタイヤ構造設計部隊で世界20社のタイヤを解剖してリバースエンジニアリングするテーマを与えられた。


1か月かけてタイヤを解剖し、得られたデータを表にまとめた。そして、一部のデータについて単相関のグラフを指導社員の指示で作成した。グループメンバーの一人が情報工学科の卒業生であり、このようなデータは多変量解析で整理すると面白い、と言い出した。


メンバーの顔が輝いて、「では君が整理してくれ」の大合唱。「まてまて、それにはコンピュータが必要だ」となった。指導社員はすぐにIBM3033の統計パッケージのマニュアルを持ってきてくれた。


この段階で、情報工学科の卒業生は、「ごめん、ちょっと言ってみただけ」となり、「ばかやろう」の大合唱と大笑いとなった。指導社員も「英文のマニュアルしかないので使えない」と笑っていたが、当方は「今から多変量解析の日本語教科書を皆で学習理解し、これを使ってみよう」と提案した。


突然ドン引きされ、少し気まずい雰囲気になったので「僕が今から本を買ってくるから、それでやろう」と提案し、すぐに新宿紀伊国屋書店へ走った。


しかし、紀伊国屋書店の専門書コーナーにも、教科書として適切な本は奥野先生の「多変量解析」ぐらいしかなく、それを購入した。そして新品の本をばらし、皆で分担してIBM3033英文マニュアルの翻訳を行っている。


苦労の末、技術実習を構造設計部門の部長に褒めていただけるレベルまで、まとめ上げることができた。しかし、技術実習発表会の日、当方ら5人は自信を持って発表したところCTOから大きな声で「おおばかもん」と叱責され、長々と説教を受けることになった。

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